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私はすべての人間を、毎日々々、恥をかくために生まれてきたものだとさえ考えることもある。3

「ではそろそろ夕食の準備をするか。相沢、食材は忘れてないだろうな?」


「それは流石に忘れてないぞ!」


 杉崎の家に泊まる事になるので、夕食に関わる食材を持ち寄ってご飯を作ろうみたいな話になっていた事は忘れていない。俺は野菜全般を担当しているので、玉ねぎと人参とジャガイモを用意した。


「私は牛肉をもう冷蔵庫に入れさせて貰ったよ!」


 亜理紗はお肉担当。


「私はカレールーとお米を用意してありますです」


 源は残る食材だ。


ちなみに枝折と恭弥に関しては食材準備に関わってない。これは別に仲間外れとかじゃなくて昼食の買い出し班が二人の仕事だっただけだ。なお、昼食は駅前のファーストフード店でハンバーガーである。


「じゃあここからは女子の仕事だね! 男子たちは休んでていいよ!」


「私はあんまり料理をしないものだから、亜理紗と源に任せるか」


「先生もちゃんと料理するですよ」


「チクショウッ! 私も女子の宿命からは逃れられないという事か……!」


「そこまで重々しい事です!?」


 亜理紗と源に連れていかれる杉崎。


部屋には俺と恭弥と枝折の三人だけが残る。


流石に枝折も女子達が席を外しただけで俺へセクハラを仕掛けてくるつもりは無いだろうし、のんびり待たせてもらう事にしようか。


「所で武」


「ん? どうした恭弥」


「先ほど荷物を仕舞わせて貰おうと隅にカバンを置いていたんだが、こんな物を見つけた」


 恭弥が取り出したのは……明らかに成人向け同人誌だった。


「……え、どこにあったって?」


「あそこの隅、旅館とかにありそうな小さな襖があるだろう」


 小っちゃい小物入れになってる所な。


「そこに大量にあった」


「そこは見て見ぬ振りしてやろうぜ!?」


「他にどんなのがあるかなぁ? 霜山下先生とかのBL本とか先生の趣味に合いそうなんだけど」


「枝折も嬉々として探すんじゃねぇよ!?」


「えー、でも武君も友達の持ってるエロ本とか気になるタイプじゃないの?」


「……気になる」


 ちなみに小六の頃に恭弥の部屋に遊びに行き、内緒で部屋を物色したが何も出てこなかったのは、今となっては懐かしい思い出だ。そもそもコイツは女体というモノに興味がなかったんだな。


「うわぁ、結構キツイ同人誌あるなぁ……これなんかケモナー向けだよ?」


「すっげぇ、BLも百合もあるし、何だったら全年齢も結構網羅されてるな……極上の拳の同人誌とかマニアックな……」


「む、これはマンピースのキャラではないか? しかし絵柄が違うな」


「あぁ、これは同人誌って言って、その作品のファンが二次創作物として絵やストーリーを自由に描くっていう文化だよ。夏に夏コミとかニュースであるだろ? ああいう所で布教するんだ」


「それは著作権法違反ではないのか?」


「グレーゾーンだな。作者が訴えたら多分勝てるけど、一種ファン達による布教活動みたいな所があるから、大抵の作者が見逃してる。でもそれで荒稼ぎしてる人もいるから、物議はあるよな」


「ふむ……おお、男同士のキスシーン等もあるんだな」


「BLってジャンルだ。ボーイズ・ラブ。枝折も結構持ってたよな?」


「一度貸した事あるよね。あ、下先生がこの間ネット通販だけで販売してた新刊もある。凄い品揃えだ……っ」


 三人がそれぞれの同人誌を読み漁っている。傍から見たらどういう光景なんだろうか。


しかし手が止まらない、枝折は女性向けBL本を穴が開かんかと言わんばかりに見ているし、俺は極上の拳におけるライとコンシロウのカップリング(全年齢)を手に汗握るという文体が似合う心境で見ているし、恭弥は元々好きなマンピースの同人誌という物自体が気になるように、ページをめくっている。


「よし」


 恭弥がポンッと本を閉じて、元の場所にしまう良い子な所を俺達へ見せた上で、言う。



「武、キスをしよう」


「するかバーカ」


「むう、しかしあれだけ仲の悪いガンジとニョロがキスをしているのだ。親友である俺と武ならば、キス程度は」


「BLは一種のファンタジーでーす!」


「ならばこのモザイクがかかっていてよくわからない事はどうだ? きっと武ならばわかるだろう」


「余計するかバーカッ、バーカッ!」


「はぁはぁ……下先生の薄い本はやっぱいいなぁ……! なんかこう、男と男の事を分かってるというか……っ!」


「何だこの阿鼻叫喚図……」


 そんな時、杉崎がやってきてくれた!


「杉崎助けて!」


「人の同人誌勝手に読み漁った上で助けを求めるとはこれ如何に」


「すまんそれは恭弥が見つけたんだ、俺は悪くねぇ!」


「だとしても人の家に来て部屋を物色するでない。しまえしまえ」


 杉崎の言葉には正論しかなかったので、俺はそそくさと、恭弥と枝折は渋々と言った様子で襖の奥へINして閉める。


「所で飯班から離れてよかったのか?」


「包丁の使い方で生徒にガチギレされて心折れた……」


「ドMのお前がそこまで心折れるって相当なキレ方だったんだろうな!?」


 試しに演じてみて貰ったが、手に持ったジャガイモに向けて包丁を思い切り突き刺すという危険極まりない使い方で、多分俺でもガチギレしてたと思う。


「いいもん、私はコンビニさえあれば生きていける……っ」


 普通に泣き出してしまったので、何やら話題を変えられればという事から、枝折の腰を軽く突いた。


(おい枝折、お前お泊り会やろうって誘ったんだから、なんかレクリエーション的なの用意してないのか?)


(武君いきなり腰を突かないでよ、エッチな気分になるじゃん)


(ホント不用意にすみませんでした謝ります。けど何か用意してないの?)


(んー、じゃあ先生が良しと言うかだけど)


 枝折がガサゴソとカバンの中を漁り、出してきたのはトランプだった。


「先生、トランプしよ?」


「む、トランプか……普通にやるのでは詰まらなさそうだが」


「じゃあ脱衣トランプ」


「良しやろうルールはどれにするブラックジャックかポーカーか?」


「決断が速いっ!!」


 しかもアカン方向に速いっ!!

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