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第9話 日本のヒーローは獣人達と王都へ向かう!!


 大深淵の森...その重く暗く不気味な空気を漂わせた道無き道を、兎獣人のレイビィが先頭に立ち斥候しながら慎重な足取りで進む。


 そして少し離れた後ろを白虎獣人のガイハ、杏子、電子、寧々が歩き

 狐獣人のコークが後衛を警戒しながら後に続く...


「ガイハさん、さっきからグネグネ曲がりながら進んでる見たいっスけど何を警戒してんスか?」


『あぁ、この森には俺が知るだけでも五体のヌシがいるんでナ、そいつらの縄張りを避けて通ってんのさ。』


「そんなん寧々さんと電子っちに退治して貰えばいいじゃないっスか。村の皆さんもその方が安全っスよ」


「いやぁそう単純じゃないとおもうよ~杏子ちゃん、恐らくは均衡バランスを気にしてるんじゃないかなぁ?」



 ガイハの尻尾をモフりながら質問する杏子に寧々が周囲を警戒しながら言葉を紡ぐと、コークが詳しく説明してくれた


『寧々の言う通りだゼ杏子、この大深淵の森には何体も【ヌシ】はいるが そいつらは互いの縄張りには不可侵だ。

 それは争えば勝っても無事には済まねぇし、傷付いた所へ別のヌシがその機を逃さず襲ってくるだろう...その繰り返しで奴等は本能で分かってんのさ、初めに喧嘩をおっぱじめた奴から死ぬってな。つまりヌシの縄張りと縄張りの境こそが安全地帯で、俺達の村もその境界線上にあるから無事なんだゼ。だから下手にヌシに死なれて勢力分布図が変わっちまえば俺達の村はいつでも飲み込まれちまうって訳さ』


「だったら尚更 退治しないと危険じゃないっスか? そのヌシ達の命も無限じゃないんしょ~し、いつかは均衡が崩れるっスよ?下手すりゃ今日かも...」


 杏子がもっともな事を言うがしかしレイビィはその危険と同等に恩恵もあると言う


『ま~そうだけどさ、そんな場所だから獣人狩りの連中も森の奥深くまで来れないし安全ってのもあるカイ? 他の奴等にはヌシの境界線なんかまず分からないし、うちらもそれが分かるまでは大分苦労したってもんさ。』



 大深淵の森の奥深くに巣まうヌシ達は縄張りに足を踏み入れる者を手当たり次第襲うわけではない。

 ヌシは主に捕食以外での殺生はせず、己れの寝床に近づく程に警戒され攻撃対象にはなりうるが危険はないと判断されれば放置される。


 それはヌシが派手に暴れ捕食対象達エサが他の縄張りへと移れば己れの飢餓にも繋がり、その先にあるのは餓死か他のヌシの縄張りへ命を賭しての侵攻しかないからだ。


 しかし軍や冒険者など森を知らないものが入れば、魔獣や魔虫に普通の獣ですら人を捕食しようと戦闘が始まり それをヌシが目の当たりにすれば当然 危険認定され襲い掛かってくる。


 ガイハ達がヌシに目をつけられないのはヌシ達の境界線上を活動範囲にしてるだけではなく、魔獣虫が嫌う香を焚いたり活動時間や行動範囲を把握し、なるべく魔獣虫との接触や戦闘を避ける事で危険視されないよう努めているからである。


 

「ねぇあの小鬼ゴブリン達と遭遇したのは彼らの縄張りだったって事なの?それなら倒して大丈夫だった?」



『いや小鬼どもは棲みかを転々とする流浪でありゃ偶然つけられただけだから構わねえゼ。

 ただ巨大悪鬼トロールを連れてた事を考えると電子達が会った蝙蝠翼頭竜ワイバーン騒ぎを察知して調べに行こうとした途中だったのかもな。』


「派手に騒いだっスからねぇ。」


 電子が心配そうに問い掛けるがコークの言葉にホッと胸を撫で下ろし杏子が肩をすくめて溜め息をついた



『まぁあの辺は森の中でも浅い場所だったから暴れても大丈夫カイ?』


 レイビィいわく、まさお達が騒いだ場所は人里にも近く流石にヌシ的な魔物が現れれば王都からの大軍隊が討伐 もしくは追い払われるのでヌシ系の魔物はいないとの事だった



『フフッ』


『ん?どーしたガイハ、急にニヤケやがって...』


『いや何でもないナ。』



 ガイハは、杏子達が獣人を...そして村の者達を自然と気遣うその姿に得も言われぬ不思議な感情が笑みを浮かべさせていた


「きっと モフられて気持ちいいんスよ」


『杏子...それは違う...』


『なるほど、そ~ゆ~趣味だったカイ?』


『カハハハハハッッ』


『.....違う』



 薄暗い森の中とは対照的に明るく賑やかな一行はそれからもひたすら森を下って行き、所々で魔獣虫に遭遇するも寧々の氷霧アイスミストで敵の視界を遮り戦闘を回避しつつ、

 途中バテた電子はガイハに背負われ やっとモフモフを堪能する事に成功した。



「わはははははははっっっ!!!」

 


 ○

 


 そして大深淵の森の奥地とは違い徐々に周りの樹木が低く細くなっていく...鬱蒼としていた先程とは違い樹木の間隔も拓け草原も垣間見えた


『もう少し行けば町に出るが、ここはもうドコぞの領地の筈だゼ。』


「あっ遠くに畑が見えるっスよ!」


『ほえぇ~こんなにも早く着くもんカイ?アンタらの能力ってのは便利なもんだねぇ。』


 それは普通なら魔獣虫との戦闘をやり過ごす為にその場に留まったり、適度に休憩を挟みながら進めばガイハ達といえど三日は掛かる距離を、上りの崖や険しい道のりは杏子の瞬間移動テレポートと下りは寧々の作った氷スライダーで時間短縮しながら更に氷霧で敵との戦闘を回避するという裏技があって出来る事だった



『さて、我々は寧々達を人里まで案内するという役目で今まで一緒ともに付いてきた訳だが...』


「えぇ有難う御座います、すごく助かりました。 ガイハさん、コークさんにレイビィさんも村の皆さんにも宜しくーーー」



 ガイハが一呼吸ついて仕切り直すところで寧々は礼を述べたが、ガイハはコークとレイビィに向き直り静かに口を開く。


『コークとレイビィはこのまま村に戻るんだナ、俺は寧々達に着いていく。』


『はあぁ!?おい待つゼっっ!!』


『ちょっと何言ってるカイ?ガイハッ』



 突然のガイハの言葉にコークとレイビィは驚き否定じみた反応を示すがガイハは話を続ける


『すまんナ、だが麓まで案内するとした時から決めていた...この世界を知らん寧々達をこの先も補佐する者が必要だからナ。

 悪いがお前達は村へ戻ってこの事を伝えて欲しい。もしかすれば もう二度と...』



 突然 別れを口にするガイハに対し、コークとレイビィの先程の否定的な反応は別の意味で返された。


『ガイハ!ふざっけんじゃねぇゼッ、こんな面白くなりそうな事をお前だけにさせてたまるかっ!!』


『そうさっ最後まで着いて行くカイッじゃなきゃこの先 気になって夜も眠れないよ!!』


『と、止めないのだナ?』



 ガイハが少し面食らいつつもちょっと寂しげに呟くがーーー、


 

『『お前が帰れっっっ!!!だゼッカイッ』』



『ぐぬぬ...』


 コークとレイビィのまさかの反応にガイハは言葉を無くすが、よくよく考えれば村で一、二を争う好奇心旺盛で面白好きでひょうきんな二人が寧々達を前におめおめと帰る訳がなかっと溜め息だけが吐かれた。


『ふぅすまないナ寧々よ、もう少し着いて行く事になるが構わないか?』


「勿論ですよ、まだ初めての事ばかりが続くと思うので とても心強いです。」


「宜しくっス」


「まぁ寧々さんがいれば奴隷狩りなんちゃらもヘッチャラよ!」



 この先もガイハ達が同行することに寧々達は快く賛同し、心機一転 皆で声を掛け合った


『さぁ日が暮れちまうから早く町へ行くカイ?』


『そうだなっ...とその前にだゼ、ホレ杏子!』


 コークが腰につけた小さい布袋を取り出し放り投げ、受け取った杏子がその中身を確認すると そこには数十枚の硬貨がジャラッと音をさせた。


『お前らの持ってる紙っ切れの金はこの世界じゃ使えねぇからな、それは兵を脱走した時にくたばった奴等から頂いたモンだゼ。』


「それって遺品の盗品...」


『お、おい電子っ人聞きの悪いこと言うんじゃねぇゼ!無給で働かされてたって言ったろ?ただの退職金代わりだゼ!!』


「まぁあの世に金は持ってけねっスからねぇ~、え~と銀貨が13枚、銅貨が36枚...」


「杏子...」



 ゴブリンとの戦いや村での食事の時もそうだが、元々この世界の住人かというぐらいに順応する杏子に電子は少し恐ろしくなる



『まぁまぁ町に入るなら金は必要カイ? ーーって言ってもアンタ達の金もアレはアレで高値で売れる気もするけどねぇ。』


『とにかくそっちで持っててくれ、獣人が金を持ってたら怪しまれるゼ。』


「わかったっス。」



 そう言って杏子達は一面広がるのどかな畑や農場を越え、その向こう側に建ち並ぶ建物の一角を見つけ向かった


 そこはイギリスの都心部から離れた田舎町のような石造りの家で出来た建物がつらなり、まるで絵本の世界に飛び込んだようなファンタジーと歴史あふれる景色が広がる


 更にその先へ進むと商業施設の建物が町の賑やかさと共に増え、行き交う人々も又、映画やアニメに漫画でしか見た事が無いファンタジーさながらの格好をしていた


 その幻想的な光景に杏子と電子は暫し呆然と立ち尽くし思わず笑みを浮かべる...



「ドラク○だ...」


「ドラ○エっスね...」


『おい どーしたんだゼ? 別に普通の町だろ。』


『寧々の世界では何か違うのカイ?』


「そうだねぇ、似てる造りの建物はあるけど流石にコレは初めて見る光景だし圧巻だなぁ。」


 その思わず見惚れてしまう空間に杏子達が浮かれているとガイハが小さな異変に気づく。


『少し変だナ、町の様子がおかしくないか?』



 ガイハが周りをよく見ると町の建物の至る所が破壊され住民はその修繕作業に追われており、多くの衛兵や冒険者達も怪我だらけでエラく殺気立っていた


 電子は何があったのかをそれとなく町民達に話し掛けるが皆が口をつぐみ、そそくさとその場を離れていく...


 そんないぶかしむ一行に杏子がニヤリと笑いエヘンと無い胸を張った


「分かってないっスね~!こーゆー時こそ金の力っスよ? んで情報と言えば酒場っス!!」



 杏子は完全にゲームの知識でその辺の酒場っぽい建物を見つけ、外で店のマスターっぽい男が水を蒔いている所を掴まえ話し掛ける


「ヘイ、マスター。ちょっくら情報が欲しいんスが...勿論タダとは言わねっス。取っときな!」


 そう言って杏子が銀貨一枚を店のマスターっぽい男に放り投げた


『バッッ杏子っヤりすぎだろーーーっっテメェ銀貨一枚ありゃ30日は食ってけんゼ!!』


「ふ、ふふふふふ...何言ってんスか、これは情報だけじゃなく信用も買ってんスよ。今後もいい付き合いが出来る様に...」


『なるほどっそーゆー事だったカイっ?やるネェ杏子!!』


「いや嘘よ...顔にシマッタって描いてあるわ」



 電子のツッコミに「グゥ」っと歯噛みする杏子に銀貨を受け取った酒場のマスターは、その拳を強く握りしめながら冷静を装いすまし顔で口を開く


「その嬢ちゃんの言うとおりだ。相手に上客だと思わせりゃ長い付き合いも出来るってもんよ...」


「いや、アンタも返したくないだけでしょ...」



 電子のツッコミに「うっ...」っと口ごもるマスターに電子は項垂れながらも話が先に進まないので取り敢えず現状の訳を聞いた


 それは昨日、突然現れたボサボサ髪の半ケツ黒ずくめの少年が獣人を庇いその奴隷を解放しようとした事...


 その少年を取り押さえようとした何十人もの衛兵や冒険者達が羽虫の如くぶっ飛ばされた事...


 あろう事か王族と遠縁にある領主まで手に掛けた事...



「あ~まさおっスね...」


「まさお君だねぇ」


「あのバカ。」



 『『『ブーーーーーーーッッッ』』』



 ガックリと肩を落し呆れる電子達を尻目にコークは思い切り吹き出しその場で笑い転げ、レイビィは腹を抱えて突っ伏した


『ワーハハハッ流石まさおだゼッッやってくれたなーーーッワーーハハハハ!!』


『ウヒヒヒヒィーいくらウチラでも同胞の為に王族にまで手をあげたりしないカイーーーッウヒィーーヒヒヒィ』


『おいお前ら止めないかっっブフゥッわ、われっフッ我らのどっどぉうほぅのっっクフゥッ...ブーーーーーッッッ』


 そして笑いを必死に堪えながら まさおをフォローしようとしたガイハも結局 吹き出してしまう


「なんスかね..アッシらが笑われてる気分になるのは....」


「まぁ別にいいけどね...」


『グッスマンっ杏子に聞いていた通りの者だったからついナーーー』



 ガイハは謝るが電子は気にした様子もなくいつもの事だと肩を落とすと、その会話を聞いていた酒場のマスターが慌ててガイハ達を制す


(おっおいお前らっっまさか半ケツ少年の知り合いじゃねぇだろなっここはそのガキにやられた奴等がまだ彷徨うろついてんだ!ましてや王族が絡んでんだぞっその事であまりデケェ声出すな!!)



 それは王族に手を出した者の身内ともなれば即刻に捕まり尋問・拷問・処刑すら有り得るからだであり、ガイハ達は先程のバカ笑いとは打って変わって急に顔を青ざめさせ硬直フリーズすると、マスターが続けて進言する


「それとその獣人はアンタ達の奴隷か?他人の主従関係に口を出す気はないが獣人の口の利き方には気を付けさせた方がいいぞ、王族や貴族が目にしたら例え他人の奴隷でも〔人間への無礼〕で叩き斬られちまうからな。」


「ん?何言ってんスか?このーーームグッ」


『申し訳ありません、ご助言感謝いたします』



 ガイハは咄嗟に杏子の口を塞ぎマスターに片膝を着き礼を述べ、コークにレイビィも又静かに片膝を着きこうべを垂れた


 ガイハ達は長い間 人との接触を避け、そして杏子達があまりにも優しく自然に接してくれたので忘れていたのだ...



 この世界の残酷さをーーーー



「とにかくあのガキの知り合いって事は知られるなよ。領主が追っ手を放ってるって噂だが、確かに腕の立つ荒くれの冒険者らが今日は見ねぇ...」


 マスターの助言にガイハは思わず息を飲む...王族に手を挙げるなど冗談の様に聴いていたが、実際は王族に対し危害を加えるなど【口にするだけでも】命を賭けねばならない


 そしてそのまさお達に合流するという事は己れ達の死も意味する事を...


 ガイハは今さら死を恐れたりはしないが やはりコークとレイビィだけはと二人に向き直ると、既に決意してるとばかりに二人は静かに微笑み返し首を横に振った



「んでマスター、その半ケツ馬鹿野郎はど~したっスか?」


 杏子の問いにマスターは額に手を当て答える


「あぁ、何でも奴隷を解放する為に王様に直談判するとかで王都に向かったらしいが とても正気の沙汰じゃないよ...と言ってもあの領主が殴られたと聞いた時は俺も思わず吹いちまったがねぇ。おっとこれは内緒だぜ?」



『『『おい嘘だろっっ?』』』



 ガイハ、コーク、レイビィが先程の断固たる決意を瞬時に揺るがす程の衝撃の事実に震える


 まさお達と合流の後は姿を眩まし、あわよくば自分達の村で共に生きるのも悪くはないと考えていたガイハの想いは脆くも消え去った...



 そして寧々が酒場のマスターに聞く所によると、王都はここから馬車で三日との事だが日中だけではなく夜も走り通しならば丸一日で着くという...


 まさお達の状況を考え、寧々達はこの町での休息は取らず すぐに王都へ向かうと事にしたのだが、そこへ酒場のマスターが王都へ向かう迄の荷馬車を勿論有料ではあるが貸してくれるとの事で、

 寧々達はその申し出を有り難く受け取る事にし早速出発の準備にかかる。




「どうも こんばんわ!!」


 そこに現れたのは酒場のマスターの一人息子で《ココ》という青年で、二匹のフィボコ馬車の御者台から声をかける


「あっどうもっス。」


「悪いねぇ無理をさせてしまって...」


 寧々が軽く礼をするがココは気にもせず明るい口調で返事を返した


「いやいやお気になさらずに!その内 王都へ仕入れに行かなきゃならないんで。皆さんを乗せ お金も貰えて仕入れもする...一矢で二ピピムですよ!!」


「どゆコトっ!??」


(電子...ピピムってのは鳥で....カイ。)


「あ~ 一石二鳥って事ね...」


「さぁさ 皆さんお急ぎなんですよね? 王都までカザスネの如く休まず走りますので乗ってください!!」


(電子...カザスネはムネミの一種で....だゼ。)


「余計ワカランわッッ!???」



 そして一行は王都迄の食糧と水を積み込み皆が荷馬車に乗り込もうとしたその時、遠くから身体中からだじゅうに包帯を巻いた男が杖をついて引き連れる兵士を怒鳴り散らしやって来た


「まだあのガキは見つからないかゾェェェッッ!!!」


「も、申し訳ございませんっ、 ですが捜索の得意な者達に追わせておりますので時間の問題かと...」


「グヌゥッ他の王族にバレて尻拭いされてはチンの面子が丸潰れゾェッ死んでも貸しなぞ作らせてはならんっっ!!」



 そのチンと名乗るこの町の領主の姿にココは素早く御者台から降り頭を下げ、通りの町民達もまた同じ様に平伏していく


 そんな状況を瞬時に察したガイハ、コーク、レイビィに寧々や電子も皆と同じ姿勢を取ってやり過ごそうとするなか、杏子だけがポケットに手を突っこみ領主をガン見していた


「ちょ、ちょっと!?アナタ何してるんですかっ?あの御方はこの領地の領主様ですよっ、早く頭を下げて下さい!!」


 ココが慌てたように杏子に促すが、


「はぁ?何言ってんスか、頭を下げる相手は自分で決めるっス。」


 一切聞く耳を持たない杏子にコークらも必死に杏子の服を引っ張って懇願した


(何言ってんのはオメーだゼ杏子っっ!!)

(頼むからゆ~事聞くカイ!!?)

(今は問題を起こしてる場合ではないナっ)


「えっ嫌っス。まっすぐ自分の言葉は曲げねぇ...これがあっしのヒーロー道っスから」


「火影かっ!?初めて聞いたわっっ」



 電子が電光石火のツッコミを入れ寧々が横でクスクス笑うなか、不意に領主と杏子の目がバチっと合う...


「...ぬっ、おいお前、何故頭を下げぬぞェ。チンを誰と心得るか?」


「あっ? お前じゃなくて杏子っス。お前こそ誰スか?」



『『『おい杏子おぉぉーーー!???』』』



 卒倒するガイハ達をよそに、領主へ超メンチを切る杏子に領主の側付きの兵士が前に立ち塞がる


「くそガキがこの御方を知らぬとは嘆かわしい...いいかよく聞けっっこの御方こそが序列第7位国 元君主 デスラム王の母方の祖父の~~...の~え~と何だっけ~面倒クセェな、ともかくなんやかんやでコイツがこのチンベルグ自治領の領主である チンドルグ様なるぞーーー!!」



 側付きの兵士の紹介に領主はババ~ンと胸を張り杏子を睨み付ける


「昨日の奴はガキと思って【大目に】【甘くして】【逃がして】やったが 流石に今日はガキであろうと許さんぞェーーーッ」


「コイツはスルーするんだ...(;´д`)」


 ビクッ 「っっっっ!!!?」


「上等じゃっかかっちゃられらっスーーー!!!」


 ついツッコンんでしまった電子の言葉に側付きの兵士がビクッと肩を上げつつ、領主と杏子が昭和のヤンキーみたいにメンチの切り合い合戦へと発展する


 その一触即発の状況に周囲がピリついた次の瞬間、寧々が一歩前へ出るより先にガイハが領主と杏子の間に割って入る



『申し訳御座いませんっ領主様のご無礼をどうカご容赦下さい!このむすめはーーー』



 ベシイィィィーーーーーッッ!!



 領主は杏子を庇うガイハの頭を持っていた杖で容赦なく叩きつけた


「獣人がチンの前に立つなぞェッ」


 ベシイィィッ


「獣人が許可を得ず口を開くなぞェッ」


 ベシイィィッ


「獣人がチンへ話しかけるなぞェッ」


 ベシイィィッ


 領主は次から次へとガイハを杖で打ちつけるが、ガイハはその大きな体を小さく丸め、ひたすら謝罪の言葉を口にする...

 その光景にコークとレイビィはただ震えながら俯いていたが、寧々と電子の眼は徐々に鋭く温度を下げていった



 だがそれよりも先にーーー...



 ボコオォォォーーーーーッ



 杏子の右ストレートが領主の顔面を捉えた。そして杏子はそのまま領主の胸ぐらを掴んで己れの顔近くまで引っ張っると頭突きをかまし、


「テメェ、あっしのダチに何してくれてやがんだコラ...ブチコロスぞ!!」


「グハッ痛っっっえ?...いやチンは領主...」


 

「.....はっ!?、き、貴様っ領主様に何をっっっ」

 


 突然の事に周囲が一瞬呆気に取られ固まっていたが、すぐさま側付きの兵士が我を取り戻すと杏子に向かって脇差しの剣に手をかけるーーーが、



 チュズドーーーーーーーーーーンッッッ...



 何処からともなくソコソコにデカイイカヅチが、側付きの兵士、領主、そしてその胸ぐらを掴んでいた杏子に落雷し、三人はドサリと膝から崩れ落ちた...それは後に、雷に打たれた瞬間 骸骨がいこつが見えたと謳う町民がいる程であった


「電子ッチ.....覚エテロ...」


 恨み節をボヤキながら杏子は気を失い、町中に轟いた雷鳴に他の町民や兵士達が何事かと駆けつけると、急に電子が三文芝居にも劣る棒読み演技をし出した


「きゃーー大変っ領主様にカミナリが落ちたわ!? 誰かっあっソコのお主っいえ兵士様お助けを!領主様が!!」



 駆けつけた兵士達は領主の一大事に助けを求める電子の大根演技など気にする余裕もない程に慌てふためき現場は大混乱した


「領主様ぁーーーーっ!!?」

「おい領主様が雷に打たれたぞーーー!!」

「あれ?でも空は晴れて...」

「いやそんな事よりも早くお屋敷に運べっ」

「専属の治癒術師ヒーラーを誰か呼びに言ったかっっ?」

「こっちの護衛も誰か運んどけ!!」

「君が助けを呼んでくれたのか協力に感謝する!」


「テヘペロ(≧ω≦。)!!」


 この惨事に初めから見ていた周囲の町民らも杏子の暴挙などスッカリ忘れ大騒ぎし、その隙に寧々は気絶した杏子を連れ静かにフェードアウトする...


 そして騒ぎが収まる前に皆が逃げる様に荷馬車へと乗り込んで町を後にしたのだが、ココはとんでもない者達に関わってしまったと今後の事を思い御者台で操舵をしながら明け方まで泣いていた...



 ーーーーーーー。



 幾つもの峠を越え 王都へ続く林道をひた走り、その道中ガイハ、コーク、レイビィ、寧々とで盗賊警戒の為 交代で休息を取ると同時に御者経験のあるコークとレイビィがココとも操舵を変わり、フィボコ馬車を疾走させる


 王都への道とはいえ、地球の都会の舗装された道路と比べればその悪路とも言える道に 当然サスペンション等付いてない荷馬車は揺れも振動も激しく、又馬車の荷台には座る為のクッション性のある物など常備されておらず電子は幾度となく口からキラキラを出した...そして杏子は気絶中の為に悪路酔いは免れていた。


「杏子...感謝セイヨォオロロロロ~~~」





 .....やがて夜が明け日が昇り始める。


 その眩しい程の朝焼けが世界を白く染めるが既に電子は真っ白く燃え尽きていた...


『電子しっかりするカイ?』


「誰ガワダジヲゴロジデ~~」


「バチが当たったんス。」



 レイビィが電子を介抱している所へ少し前に起きた杏子がプンスカ怒りながら嫌味を口にするが、コークが電子をフォローした


『いや杏子...言っちゃ悪いが電子は良い判断だったと思うゼ、いくらガイハの為とはいえな。』


「あっしゴト電撃じゃなくていいじゃないっスか!」


「うぅ...アンタが一度キレたら治まるまで暴れまくるでしょうが...」


『スマン杏子、俺のせいで迷惑かけたナ』


「別にガイハさんは悪くないっスッこの優しくない世界と電子ッチが悪いっス!!」


「...まだ言うか...」



 そんなやり取りに胃をキリキリさせながら聞いていたココが遠くを指差し明るい表情に変わる


「あっ皆さんっ最後の峠を越えますよ! 後は平坦な道が続くだけでその先がお待ちかねの王都です!!」


 

 ここまで来れば盗賊や魔物類いの心配はないというココの言葉に皆がホッと胸を撫で下ろす。


 大深淵の森とは違いこの王都まで続く道にある森の木々は地球のものと同じくらいの高さであり、最後の峠を下る山から見るその異世界の広大な景色に寧々達は感慨の息を吐いた。


「ほら見えますかね~?あの地平の奥にあるアレが王都ですよ!」


「ん~よく見えねっス。つかあと何十キロ先なんすか~?」



 杏子がボヤくその時 ココはある異変に気づく


「アレ何でしょう?あの煙...」



 その言葉にレイビィ達も遠くを眺め、


『王都なら商業施設や鍛冶工房なんかが盛んだし、その煙ではないのカイ?』


「いやそれはそうなんですけど、あんな黒煙を一ヶ所から幾つもの出す施設なんてあったかなぁ。」


『確かにただの火を焚いただけの煙にしては規模がデカすぎな気がするゼ?』


「よく見えるわね~全然わかんないわ」



 電子がム~っと眼をしかめて呟くと突如ガイハが強い口調で叫び出した


『おいお前ら何をっ平和ボケするナッーーーーーーあれは戦の煙だ!!』



 その言葉にコークとレイビィがハッとしながら毛を逆立てる、奴隷兵時代そのキノコがかった煙が立ち上る時 幾度と己の命が危険に晒されたことか...そして多くの同胞の命を失ったことか...


 ガイハの言う通りコークとレイビィはいつの間にか平和ボケしていた自分に腹を立て歯噛みするなか、寧々が冷静に状況を整理する



「えぇ~と ココさん。王都まではアトどれくらいかかりそうですか?」


 ココが言うには、この先の道は平坦で進み易くなるとはいえ一直線ではなく幾つかの河川を通る為に曲がりくねった道が続き、どんなに急いでも王都へ着くのに昼ぐらいはかかるという。



『アワワワワ、でも誰かが戦ってるといっても まさお達じゃない可能性もあるカイ?』


「な~に言ってるんスか、近くにまさおが居て何かが起きたら【それは まさおが犯人ス】よ~。」


「ヒドイ言われようね...まぁあながち間違ってないけどさ。」



 その仲間の危機かもしれないという緊張が走るなか、天然の緩和を入れて呑気に話す電子と杏子にガイハ達は若干ヒキつつ先をかすーーーすると寧々は何か思いついた様に静かに空を見上げた。



「なら、上から行こうか?」



 ガイハ達は寧々の言う事に首を傾げ、電子ですら「ん?」という顔をするが杏子は依然見たことあるかのように察した顔をする。


 そして善は急げとばかりに杏子は皆を荷馬車から降ろして一ヶ所に集めると、その後 突然の別れと礼を告げられたココも他の皆と共に首を傾げ一行を見守った。



 「ーーー氷掌アイスパーム。」



 寧々が呟いた瞬間、寧々達が立っていた地面から直径2メートルの氷の手の平が突出し物凄い勢いで全員を空へ空へと押し上げる


『おおぉおおおぉぉおぉーーーっっ!!』

『あわわわゎわーーー落ちるカイーーっ』

『振り落とされんじゃねーゼっし、死ぬぅーー』

「わーーーーーーーーーーーーーっっっ!!?」


 

 そのまま【氷掌アイスパーム】は百メートルほど上へ伸びた所で粉々に砕け霧氷となって散ってゆく


 しかし寧々達は勢いをそのままに更に上空へと飛んでいき、地上から三百メートル地点で勢いが徐々に弱まり落下を始める...だがそこから杏子は百五十メートル上へと皆を連れ瞬間移動テレポートする。


『うぉわっぐむぅ高いぃぃナ』

『ヒイィヤァーーー助けぇてカイ~~~』

『こ、これは確実に死ぬゼェ~~~ッッ』


「あ~ビックリした...寧々さん先に言ってよっっ!!」


 

 突然の出来事に電子はともかく、人生で初の足元のない高度 四百五十メートルの高さにガイハ、レイビィ、コークは涙眼になりながら必死に杏子に掴まり震えながら叫ぶ


「ぐ、ぐるじぃっズ...寧々ざん早ぐ」



「ははっ了解、氷滑空機アイスグライダー。」



 寧々が氷のハンググライダーを造ると杏子達は瞬間移動でその機体の上に乗っかった


『おぉ...これは...』


『かはぁっスゲーゼ!空を飛んでやがるっ』


『信じられないカイ...こんなの...シチャやカリードが聞いたら悔しがるネェ!』


「杏子ズルい~知らなかった~!!」


「ははっ。」



 そして皆が広大な絶景に眼を見張り、ハンググライダーの高度が下がれば杏子が再び瞬間移動で高度を上げ王都へ向かい大空を飛び進んでいく...しかし徐々に皆の顔が緊張に包まれていく



 王都に近づくにつれ立ち上る煙の多さと大きくなる怒号...



 そう...王都では既にまさお達との決戦の火蓋が切られていたのだ。


 

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