第6話 日本のヒーローは獣人の村に行く!!
大深淵の森の奥深くの木漏れ日すら差さない闇の中、空気は湿って重く道らしい道などない険しい大地を数本の松明の灯りだけを頼りにひたすら進む...
そんな静寂を打ち消す様に、一人の元気っ娘が大声で叫ぶ
「んがーーーなんスかそれっっ!!王族だか何だか知んねっスが許せねっス!!!」
「ちょっ!?杏子あんまり大きい声出さないでくれる?また変な攻撃的なモノが来たらどーすんのよ!!」
「あぁ?電子っちはムカつかねーんスか!!ヌガーーーッッ」
『おい落ち着け杏子、魔獣や魔虫の縄張りを避けて通ってるとは言えあまり刺激するな、あと俺の耳元で叫ぶナ...』
杏子は今だに【白虎獣人のガイハ】の背中に引っ付きながら皆で獣人の村へ向かう途中、寧々達はこの世界の事を色々聞いていく
「それでここは序列の第4位国の土地かい?」
寧々が聞くと【狐獣人のコーク】と【女兎獣人のレイビィ】が答える
『イヤ俺達が兵士奴隷をしてたのが第4位国だっただけで、ここは第7位国だゼ。兵士時代にこの国の王は頻繁に奴隷狩りをしないって事を聞いて脱走する時こっちの土地に逃げてきたんだゼ。』
『特に大深淵の森は手つかずらしいって聞いて隠れ住むには持って来いだと思ったカイ?ただ長年 兵士奴隷やってきて腕に自信はあったけど この森に住みかを作って落ち着けるまでに半分以上の仲間を失ってしまってねぇ』
レイビィが長いウサミミをペタンと垂れ下げて苦笑いをすると、コークはそれでもやむを得ない犠牲であり その甲斐はあったとのだと言う
それはこの森のただの獣ですら他の土地の同種よりもデカく凶暴で未知の生物も多数 棲息しており、一介の冒険者や兵隊ですら高確率で死の危険が伴うなか 奴隷から逃げ出した何の装備も持たない獣人がこの地に足を踏み入れて生き残れるはずはない...奇跡的に生き延びられてもその僅かな奴隷の為に奴隷狩りを敢行し命を危険に晒す馬鹿はまずいない
ましてやこの森で村を築き暮らすなど正気の沙汰どころではないのだが、彼達は奴隷兵時代に命を賭けて培った魔獣・魔物討伐の経験を活かし想像を絶する苦難と仲間の死を引き換えに森に順応する事ができた...それは危険すぎる場所ゆえに奴隷狩りをする人間達からは逆に安全を手にした事でもある
「でもさ、そんなに危ない所なら...奴隷は絶対イケない事だけど、それでもここよりは兵士として働いていた方が安全だったんじゃないの?」
しかしそんな彼等の事情や、この世界の非情なる歴史や文化をまだ目の当たりにもしていない電子は奴隷兵の方がマシなのでは?と軽々しく口にしてしまうが、それでも【モヒカン狼獣人のカリード】は怒らず鼻で笑い飛ばしながら軽く答えた
『おいおい冗談ジャネェよ嬢ちゃん。俺達兵士奴隷はな、最低限の飯とボロい装備しか与えられず賃金もねぇんだ...なのに戦じゃいつも前線で囮役だしよ、敵ごと魔法や弓で射たれもするし それこそ命がいくつあっても足りねーよw』
「.....。」 パチッ
電子は少しハッとした顔を見せるがそのまま静かに唇だけを噛んだ
すると今度は【チーター獣人のシチャ】が続いて語りだす
『フッそれで三年前位か?第4位国で魔獣 鳥頭翼獣討伐中隊が組まれ遠征した時、グリフォンの不意を喰らって人間側の兵士が全滅してな...そこで俺達も死を偽装して脱走したのさ。』
『まっそん時に高値で売れるってその"指輪"を退職金がわりに頂戴したんだゼ。獣人の中には人の言葉を上手く使えない奴もいるから統制する為に兵士長以上は必ず支給されんのさ...つっても獣人じゃ売れねぇんだけどなぁ』
そしてコークが寧々達の着けた指輪を指差してガックリと項垂れると そこへこの獣人達のリーダー【ライオン獣人のレオム】が先を見つめ口を開く
『さぁ着いたぞ、ここが我々の村なノダ。』
そこは今までの少しの日も差さない薄暗い森林から上に段差のある大草原が広がっており、森と草原の境には森の樹を削り、隙間なく木杭として打たれた高さ6メートルの塀に囲われていた
その木杭塀の門を越え草原を歩いていくと木造の小屋らしき建物が幾つか見える
「あ~気持ちいいwまだこんなに日は高かったのね」
「そっスね~とりあえずやっと落ち着けるっス」
『つかレオム、門の見張りがいねぇジャネェか...』
『うむ、妙だな...他の者も見当たらんノダ』
レオム達が村を見回すが誰一人の姿もなく不審に思っていると、奥の方から突き刺す様な視線と多くの気配を感じた
そこには老若男女の獣人や人間の顔をした手足や耳が獣の亜人など五十人程が一ヶ所に固まってひしめきあい震えていた
その前には武器を構えた数名の獣人がレオム達に対峙する
『おいお前ら何やってんだゼ?』
コークが話かけると、その警戒する獣人達は怯えながら叫んだ
『ダ、ダにじゃねぇッ!?ダぜ人間連れて来ダッッ』
『人間に捕まッたノかっ』
『レオムッど~言ウ事だーー!!』
その言葉にレオム達は何か気づいたような顔を見せると ゆっくり肩を下し村の皆を落ち着かせる
『あぁそ~かカイ...なんか当たり前の様に一緒にいたからすっかり忘れてたねぇ』
『まぁそりゃ驚くわなぁ~』
『フッ』
そしてレオム達は村の獣人達に軽く説明をすると、詳しい話はこれからと村の主要メンバーと共に外にある20人は座れる大テーブルに着いた
席には、寧々達・レオム・ガイハ・カリード・コーク・レイビィ・シチャ・熊獣人・アルパカ獣人・老犬獣人・狸獣人・鼠獣人・栗鼠女亜人・蜥蜴亜人・梟亜人が座り、
寧々達を警戒する様にその後ろに、鷲獣人・モグラ獣人・女猫亜人が武器を携帯し立つ
更にそこから少し離れた所で村中の者達が陰から此方を窺っていた
「ねぇあなた達 脱走兵なんでしょ...あんな年配や子供まで兵士にされてたの?」
その様子を見た電子がふとした疑問を持つ...それは先程コークらに聞いた奴隷兵から逃げてきた割りには明らかに小さい子供や年寄りなど兵に似つかわしくない者達が多く見られたからだ
するとレオムが訂正を入れる
『いや私達みたいに奴隷から逃れ森に隠れて住んでた者達だ。流石にこの大深淵の森にはいないが人里近くの山の麓には稀にいるノダ。そのような者を探しては村に誘っている...でお前達や小鬼と出くわしたノダ。』
「へぇーー そ~だったんスね。」
するとレオムが今度は寧々達に向い質問する
『それで次はこちらから質問だ...森へ迷い込んだのは聞いたが何故そうなったノダ?その辺を詳しく話してほしい。怪しむ訳ではなく単純にお前達は謎が多過ぎる...』
「あっ寧々さんその辺宜しく。」
「あ~はいはい何処から話そうかなぁ...」
電子が質問を丸投げすると寧々は顎に手を当て少し考えながら遠くを指差した
「皆さんはこの指の先をひたすら真っ直ぐ進んだらどうなると思う?」
その寧々の問いに獣人達が各々に己の知識を述べだす
『あぁあれか?この世界は一枚の板の上って話だナ?』
『ちょっガイハ、何言ってるか分からねえベ』
『だからこの方向にずっと進んだらって話だゼ』
『そりゃ大陸の端は崖になってて落っこちまうベ』
『アタシは見た事無いけど海っていう湖よりも大きい水溜まりがあるって聞いた事ないカイ?この大陸を囲んでるって...』
『その海の向うには別の大陸があるって話ジャネェか』
『フッ更に別大陸を進むと又海があり その海は途中で途切れ滝になっていると聞いたことがある。海の水ごと果てし無い奈落の底に落ちていくのだという...』
『早い話がこのテーブルの上に私達が今いる大陸や海や別の大陸があると言う事なノダ。』
『そーだったんだべか!?知らなかったべ!!』
寧々がニヤリと笑いを浮かべると、テーブルに指を立て答える
「まぁ皆がこのテーブルの世界の住人なら、僕達は別のテーブルの世界から来た住人なんだよ」
『『『『『『『『はあっ?』』』』』』』』
寧々も博士と同じく地球の常識を語るよりもこの世界の知識にあわせて話を始める、もし彼等が先を進むと【一周】して元の場所に戻ると【星】を連想させるなら別の星から来たと説明しただろう
それでも獣人達はおろかこの異世界の誰もが信じられるはずもない話ではあった
『イヤイヤ何言ってんだゼっ流石に俺でもそりゃ嘘だって分かんゼ!!』
『吹いてんジャネェっ板の先は奈落の底なんだろ?どうやって飛び越えて来た!?』
『フッ寧々よ、答えてみろ』
その場にいた獣人達が証拠だ根拠はと詰め寄ると 寧々は深く息を吐き皆を見据え、その答えに全員がゴクリと喉を鳴らし息を止める。
ーーーが、
「いやぁ僕達も爆発に捲き込まれて気づいたらこの森にいたんで分からないんだけどねぇ...」
『『『『『『『『おいっ!!』』』』』』』』
『やっぱり嘘だゼ!!んな訳あるかっっ』
皆がツッコむが、当然 想定範囲内の寧々は電子にスマホを求める。
無い・見れない・分からない事を論じるよりも百聞一見にしかず、論より証拠と寧々は考えた
「ん~ま~これを見れば少しは納得して貰えるかな~。 電子ちゃん携帯電話貸してくれる?」
「え?嫌です。自分の使えばいいじゃないですか...」
しかし電子が即 拒否るとそこへ杏子がジロリと睨みを利かせ嫌味を言う
「アッシと寧々さんのは電子っちの度重なる電撃放出でイカれちまったんスよ...博士が作った電子っち仕様の電磁波軽減頑丈特製スマホじゃないんスから。」
「うぐっっし、仕方ないわね...変なとこ開かないでよ!ーーーないけどね!!」
渋々電子がスマホを渡すと寧々は音楽やら写真に動画などを撮って見せる
それは商人のトルネ達の時よりも遥かにその価値観を一変させる程のものだった
獣人であり奴隷兵の彼等は常に戦地に身を置き住処は野営...なので人の家や人の住む市街地にすら足を踏み入れる事などなく、楽器の演奏はおろか一枚の絵画ですら中々お目にかかれない娯楽とは無縁の人生を歩んできた
そんな鏡すら見た事がない自分達を撮影した写真や動画見てを皆が子供のように大いに盛り上がり、心なしかこちらを窺う周囲の獣人達の距離も縮まる
『コレを押せばいいのカイ?』
ガリガリ...
「だっ爪はやめてっ!?指の平の方でっ」
『ダハハ何だテメーのこの顔マヌケ面だゼ!』
『フッ目が半開きだな』
『オデの顔こんなだったんだべ』
『確かに錆びた剣や水に映る自分では良く見えんノダ』
『これ何で演奏してんだ?すげージャネェか』
「電子っち結構アニソン多いスね」
「ちがっまさおに漫画本とかアニメのDVDとか借りるからソレでよっ!!」
「イヤいいんスよ...アッシもそうだし。」
皆でひとしきり騒いだ所で一旦落ち着き再びテーブルに着いて話の続きを始めるが、アルパカ獣人がまだ村の連中と電子のケータイを弄って盛り上がり ハクビシン獣人は子供の成長記録を撮影していた。
『ねぇ、もしかしてアンタ等の世界の獣人は奴隷じゃないのカイ? だから獣人に優しくしてくれるのかねぇ?』
ふと聞いたレイビィに杏子が答える
「いや獣人さんは一人もいねっスよ」
『『『『まさか皆殺しっ!?!?!』』』』
「違~~う」
電子がツッコミ その後に寧々が付け加える
「僕達の世界...地球では元々人間しかいないんですよ。勿論 獣や動物はいますが喋りませんし、人の 生活をする者は人間のみです。」
『そ、そうだったのだナ? 焦った...』
白虎獣人のガイハが汗ビッチョリで驚くと、寧々は自分達の世界...地球の歴史について端的に説明をする
《人しかいない世界でも世界中で戦争が起きた事》
《王族や貴族が民を虐げ奴隷も存在した事》
《しかしその多くの悲しみと愛に人々を立ち上がり平和を築いてきた事》
【そして民主主義の世界.....】
『おいおい何の冗談だゼ...奴隷禁止だぁ?』
『王族貴族と対等なのかナ?』
『庶民でも国の王になれるって...じゃあ極端な話アタシでも人気がありゃなれるってカイ?』
「いや、勉強も出来ないとダメよ」
『でも義務教育ってのがあるんだろ?【誰でも】タダで学べるって話ジャネェか!!』
『そんだべっ羨ましいべ!!』
『フッ平和で平等な世界などあるのか...夢の様な話だな』
獣人達は口憤りを口々にしながらも寧々の話に前のめりに食いついては素直に羨んでいた
「まっそんでも悪い奴はいるし差別やイジメもあるっスよ、だからアッシらヒーローがいるんス。」
杏子がシュタッと立つとロッキーのテーマを口ずさみながら、シュシュシュっと幻影ボクシングを始める
『『『ヒーロー?』』』
「そっス!悪い奴ぶっ飛ばす正義の味方ス!!」
獣人達が聞きなれない言葉に首を傾げると杏子はジョジ○立ちをしながら格好良くポーズを決める
『何だいアンタ等は衛兵だったのカイ?』
「いや違ぇっス、それは警察って組織でーー...」
カチャンッ!!
そこへ皆に水の入った木のコップを持って来た犬の子供獣人が杏子の言葉に動揺しコップを落とす
『悪い奴...ねぇぼくラチ捕まっちゃうの?』
すると電子が脅え震える子供獣人の頭を撫でながら優しく微笑んだ
「ん~ん違うよ(*´ω`*)だって何も悪い事してないでしょ? フフッ」
「フフフッ」
「フフフフフッ」
「んフフフフフフフフッッ」
シュシュシュシュシューーーー
「ちょっ電子っち ハゲるッス!? その子の頭ハゲるッスから!!!」
『たったじゅげで~~~!!?』
電子は子供獣人の頭を火が出るかってくらいに撫でまわし、杏子に羽交い締めされた
『それで、つまりお前等は義賊だったのだナ?...だったら止めとけ。この大陸でも苦しむ人々の為に王族に立ち向かった者はいたが洩れなく処刑されてる』
『フッ流石に獣人の為なんて酔狂はいないがな。』
『違ぇねえっ俺達の為にイキナリ王族に喧嘩を売る馬鹿なんざいるわきゃねぇゼっワハハ!!』
ガイハの言葉にシチャとコークが自虐な笑いをし、他の獣人達も鼻で笑っていた。しかしーーー
《《《 イヤっいるっっ!!!... 》》》
冷や汗をかく寧々と電子と杏子の頭の上には思いきり まさおの顔が浮かぶ...
「まぁまさおでもイキナリ全面戦争ふっかける程バカじゃないでしょ...」
「そっスね..流石に【まだ】大丈夫っスよ...まだ」
寧々達が少し淀んだ空気をかもし出すと、奥からそんな雰囲気を払拭する声が辺りに響いた
『お待たせ~食事の用意ができたよ~』
カンガルー風な恰幅のいいオバチャン獣人が木皿に湯気を漂わせた温か料理を両手に次々と皆の座るテーブルに並べ、先ほど水を溢した子供獣人も再度水の入ったコップを置いていった。
『おぉ~旨そう!!すげぇ腹へってたんだゼ!!』
『今日は色々あったカイ』
『寧々達よ、お主らも食べるノダ。この程度の事しか出来んが子供達を救ってくれた礼なノダ。』
「マジっスかっありがとうっス!!」
「うれしぃ~ずっと飲まず食わずだったしね!」
「それでは御相伴にあずかります」
皆がテーブルの上に広がる料理に喉を鳴らして眺めると、レオムのひと声と共に全員が一斉に手を伸ばした。
電子は水をガブ飲みし「キンキンに冷えてやがるっっ犯罪的だ!」とか叫び、寧々は串を手に取り杏子はその辺の料理に齧りつく。
そして電子も水を飲み干したあと何から食べようと料理を愛でながら手を伸ばそうとした時ーーー
「きゃああぁあぁぁぁーーーっ!!?」
電子が突然の悲鳴を上げ 皆が何事かと電子を見る
「カッ、カエ...虫...」
そのテーブルに並べられた料理とはーーー
[一つ目ガエルの丸焼き]
[トゲ抜き芋虫の串焼き]
[毛百足(けむかで唐揚げ]
[甲羅山椒魚のスープ]
[草団子]
ーーーだった。だが寧々は普通に芋虫を口に運び、杏子はカエルの横っ腹に噛みつく。すると寧々はニコリとしながらーーー
「僕は昔、世界中を旅してたから こういうのは平気なんだよぉ。むしろ懐かしいねぇw」
「イ、イヤ寧々さんはともかく杏子... アンタ ナンデヘイキナノ?」
「いや電子っち、せっかく出された料理に好き嫌いとか行儀が悪いっスよ?」
「うぐっ...ま、まぁそうね...あっこれならイケるかも!?」
年下に諭された電子は、獣人達が普段 食べているであろう食事を拒絶するのは確かに失礼だと恐る恐る草団子に手を伸ばし齧るがーーー
「ニッガ!!苦ーーーいっ!!?」
草を磨り潰して丸めた草団子はその苦味と青臭さを放ち、少し口にしただけでも電子は悲鳴を上げノタウチまわった
そしてそれを見ていたレイビィがポツリと呟く
『あ~やっぱり人間の口には合わないカイ?でもこの周囲で採れる物っていったら こんなもんしかなくてねぇ...』
『そりゃ~肉がいいよな~、でもこの辺の獣は強くてデカイくて凶暴でよ。だからって森の麓で行って弱い獣を狩っても、血の臭いをさせながら村まで帰るのはスゲー危険なんだゼ...血の後を追って魔獣や魔虫が村まで来ちまうしな』
「うぅゴメンなざい...せっかくの食事会を...でもやっぱ無理イィ~~」
コークが獣人達の食事事情を話すと電子は地面に突っ伏しながらビエェェェと泣いた
「ったく...仕方ないっスね~~」
そこへ杏子が溜息まじりに背中のバックパックを取り出し それを開けてひっくり返すとーー
そこから出るわ出るわ まるで菓子の桜吹雪や~
【ハイチュ○】
【うま○棒】
【ハッピ○ターン】
【ばか○け】
【ブラックサ○ダー】
【か○ぱえびせん】
【ポ○キー】
【じゃが○こ】
【コ○ラのマーチ】
【歌舞○揚げ】
【カントリ○マァム】
【チョ○パイ】
【プリ○グルス】
そして秘宝【カップヌ○ドル】!!!
「お...おぉおぉぉお前は神か...」
電子が全身奮えながらカップ麺を掴むと
「電子っちとアッシの仲ス!!どれでも千円でいいスよっ!!」
「お、おぉ.....はい千円...」
電子は杏子の株価を超下落させつつ、ラグビー選手さながらにカップ麺を脇にガッチリ抱えるとお湯を求めて何処かへ彷徨っていった...
そして周りの獣人達が杏子のお菓子に釘付けになる。
『おい杏子なんだゼ そりゃぁ...』
『変わった模様の包みカイ?』
『あぁ初めて見るジャネェか』
「コレはアッシらの世界の食いもんスよ、お菓子っス。」
『『『『『お菓子っっ!!!?』』』』』
テーブルにいた獣人達全員が目を見開き叫ぶと、それを聞いた周りの獣人達も一気に杏子達との距離を縮めた
『お菓子って王族や貴族しか喰えんってあれだナっ?』
『杏子!!アンタ貴族だったのカイ?』
「いや親父はゴリゴリの寿司職人ス。アッシはただの庶民スよ...」
『初めて見たノダ...生きて拝める日が来るとは。』
『ありがたや~ありがたや~だべ』
『おいっ金っ...て、んなもんはねぇしっ そうだその指輪やるっっ。売れば高値がつくゼ! だから一欠片だけ譲ってくれ!!』
この世界の流通網はフィボコや蜥蜴などの【馬車】が主流な為、大量の荷の輸送には膨大な人手と手間と金がかかる
そして輸送ルートには盗賊や魔物類いも現れるので護衛をつければ更にコストは跳ね上がり、特に砂糖や塩など決まった場所でしか収穫・製造出来ない物に関しては配送先次第で莫大な金がかかるのだ
故にこの世界での【お菓子】という物は金持ちにしか食せない高級な食べ物となり、奴隷はおろか一般人でも滅多に食べる事などできない【お菓子】に獣人達は目を丸くし拝む者までいた
「別にタダでいいっスよ? ここで金取る程 鬼畜じゃねぇっス。」
『『『『『マジかっっっ!!!?』』』』』
杏子の一言に獣人達全員が絶叫する程の驚きをみせ、そして我先にとコークがお菓子に手を伸ばすがその手をシチャが剣で凪ぎ払う
『危ねっ!?何すんだゼっシチャ!!』
『フッ俺はまだそこまで人間を信用してはおらん。ましてやそんな高価な物を無償でなど絶対にあり得ん....だから私が先陣をきって毒味しよう』
『『『いやお前が先に食いてーだけだろっ!』』』
皆が一斉にツッコむもシチャの言葉に急に半信半疑になった獣人達はシチャに最初のひと口を譲り見守る事にした...
するとシチャはフッと笑いながら暫しの間お菓子を眺め、そっと【チョ○パイ】を指差した。
杏子は箱から中身を取り出しシチャに渡す...
ごくっ...
村中の獣人達 全ての視線がシチャに集まる
いつも冷静沈着なシチャが少し震えていると言う者の声が聞こえてきた
皆が固唾を呑んで見守るなか、寧々だけが変わらず食事を続け、電子はお湯を求めて未だ彷徨っていた。
パクっ
『モグモグ...』
『モグモグモグ.....』
『モグーーーーー!?』
『ウゲ~~~~~~~~』
『『『『『っっっ!!?!!!?!?』』』』』
シチャが咄嗟に後ろを振り向いてお菓子を吐き出し、同時に周りから悲鳴が上がるーーー
『ぎゃーーー毒だべっやっぱり毒が入ってたんだべっっ!!!』
『大丈夫かシチャっ!!?水を飲めっそして全部吐き出すノダ!!』
『死ぬんジャネェーーシチャぁ~』
『オノレ人間メッ許サン』
村中の獣人がパニクるなか、シチャは何事もなかったかの様に澄ました顔で振り返るとーーー
『フッ...美味い.....!!!』
村中の獣人達全員がズッコケた
『『『(#`皿´)おお~~い(# ゜Д゜)』』』
『フッ余りに美味すぎて胃が受けつけなかっただけだ...こんなウマイ物は食ったことがない』
皆がホッと胸を撫で下ろしたのも束の間、次の瞬間何人か眼がギラつく
『くっ俺にも寄越すんだゼっ!』
『オデにも分けてくれろだべっ!!』
『渡せっっ!!!』
シチャの言葉にコーク、熊獣人、アルパカ獣人がシチャの食べかけのチョ○パイを千切って口に入れた
そしてーーー
『ウゲゲ~~~~...』
『ウゲゲ~~~~...』
『ウゲゲ~~~~...』
「あの...出来れば食い物粗末にして欲しくね~んでスが...」
『す、すまねぇ杏子...でもなんだコリャ!?ウメェ!!頬がキュゥゥってなんゼっ』
『か、神の食い物か?』
『こ、ここはどこだべ...オデは誰?あ、ばぁちゃん...』
『おお~い!!戻ってくるカイっ!?』
村中は超騒然となり、まるでゾンビの群れの如くお菓子を欲しがる者達が杏子へと押し寄せた
そんな村人達を順番に整列させ何故か仕切りだすアルパカ獣人に、杏子はお菓子を全て渡し後を任せる...
大抵の獣人が美味すぎてお菓子を吐き出してしまう為、まずは少しづつ食べ慣らすよう講義まで始まるなか、涙を流しながら食す者や王族貴族がいつもこんな物を食べていたのかと激怒する者もいた。
『おいちぃーーー!!』
『ちぃーーー!!!』
そして比較的子供達は順応性が高い為か吐き出すものはあまり居らず、満面の笑顔でお菓子を頬張っては喜んでいた
そしてやっとお湯を見つけて戻ってきた電子が席につく。
ベリベリッ
「でもアッシ等だけ腹一杯にしていいんスかね、博士達は今頃森ん中で飢えまくってねっスかね?」
ふと杏子は はぐれた博士達を思い出しポツリと呟いたが、寧々は特に気にした様子もなくそれどころか まさかのまさおの特殊能力を教えてくれた
「杏子ちゃんは優しいねぇ、でも心配は要らないさ。まさお君は内氣巧で免疫力を高められるから毒とかあまり効かないんだよ?だからその辺の草花木の実 果実キノコとか毒味役させれば大丈夫さ!」
「寧々さん何気に結構酷い事言ってるスが、まじスか...でも意外と草食ってる まさおの姿しっくり来るっス.....」
トポトポトポ~~
『んっもしかして ハグレた仲間の事カイ?』
するとレイビィが幸せそうに【じ○がりこ】をポリポリと齧りながら会話に入ってきた
『確かたった三人で装備もなかったナ...この森の魔物は夜行性も多いし気が気ではあるまいなナ。』
『大体何でハグレたんだよ?この森で不測の事がない限り散らばらないのは鉄則だゼ!』
ーーーと、その言葉とは裏腹にガイハとコークも笑顔で馬鹿ウケしながら【ばか○け】を口に入れ会話に交じる
(チッチッチッ...)
「いやだからその不測の事態が起きたんスよ。いきなりドデカの眼が九個の蜘蛛に襲われて...」
『おい、まさか影梟蜘蛛かよっ!流石にそれに襲われちゃぁ~無事には済まねぇゼ!!』
「あ~それは何とかなったんスよ。」
『なったのだナ!?では一体何がっっ?』
ベリッ
ホワワッ
「ふ~っふ~~~っ.....」
「あ~そのあと竜に襲われたんスよ...蜘蛛より更にデッカイ竜にーーー」
『嘘だろ!?おいレオムッ』
その竜という言葉を聞いたカリードが頬を弛ませながら【ハイチ○ウ】をクチャクチャと噛んで立ち上ると、レオムは【ブラ○クサンダー】を口の中で転がして舌で溶かし味わいながら静かに口を開いた
『あぁ間違いないチュパッ蝙蝠翼頭竜なノダ。この時期に南から北へ群れで移動するノダが、必ず群れからはみ出す好奇心旺盛な奴がチュパパッ何匹か現れる...いつかこの辺りにもとは警戒していたが本当に来るとな。』
ズズ...ズズズ~~~~
『フッ蝙蝠翼頭竜に遭っ...てよく無事に逃げれたな...』
『あぁでも気の毒だが他...の仲間はもしかすりゃ....だゼ』
『とりあえず覚悟だけは~~...』
ズズズズズ~~~~~~~~ッ
『『『『『........。』』』』』
『『『『『電子ぉ何だそりゃーーー!!』』』』』
獣人達が一斉にカップ麺を啜る電子に食いついた
「ふぇっカッフゥラハァ~ウェンらへほ?」
もぐもぐ・・・
『何だゼ!?カッフゥラハァ~ウェンって!!寄越せっ』
「いや カップラー麺っス」
『さっきからずっと気になってたナッッ!!?』
『一口っ一口でいいカイ?』
『汁だけでもいいべっっ!!』
「嫌ぁーーーーー!!!?」
『フッ毒味は任せろ』
『いやもう本人が食ってるジャネェか...』
皆が揉みくちゃになりながら電子のカップ麺を取り合うのをレオムはゴクリと横目に見つつ寧々と話を進める...
『それで寧々よ、蝙蝠翼頭竜は何匹いたノダ?この村へ来るやも知れん、大体でいいからどの方角へ行ったか分かるか?』
「ん~そうですねぇ、数は一匹でしたが方角は言っても宛にならないですかねぇ...」
『それは何故だナ?』
すると杏子が肩を竦めながらレオムの問いに返す
「あ~それは まさおってのが竜さんを思いっきりブン殴って怒らせて、その後は色んな方向にグルグル逃げ回ったからスよ...」
『『『『『はぁっ!!?』』』』』
テーブルに座っていた獣人達もカップ麺を取り合ってた者達も一同が硬直し杏子へと視線を注いだ...
そしてーー
『『『『『ブーーーッ
ワ~ハハハハハハハハハハ!!!!』』』』』
『ギャハハッワイバーンを素手で殴っただ~~?馬鹿だゼぇ!!』
『さっ流石にそんな奴は初めてカイ?ウヒヒィ~』
『ガハハっそいつはやるな!!男ジャネェかぁ~~』
『馬鹿だべっオデより馬鹿がいるべ~~!!』
『フッフッフ...ブーーーッッ』
『グフゥッおいあまり笑うナ、ブフーーッッ』
何千年もの時のなか、暗闇と静寂に包まれた大深淵の森をこれ程までに笑い声で響かせたのは恐らく今日が初めてであろう...
それほどの超大爆笑をかっさらった事をまさおはまだ知るよしもなく、その記念すべき初代 爆笑王の称号をまさおが獲得した事に杏子は複雑な表情を浮かべていた
「あ~なんスかねぇ...このアッシらが恥かいてる気分になるのは。」
『いや すまないノダ..クッ、ワイバーンと言えば王国の兵士長の剣技でもブフォッ外皮の堅い鱗を傷つけるのは難しぃイ、それをフォッ素手で殴..グフゥ...スマン』
「別にいいケドね、いつもの事だし...」
もぅ毎度の事と電子が汁だけになったカップ麺を啜っていると、それから暫しの間 杏子のすべらな~○話・まさおがやらかしたランキングで超絶盛り上がったのは言うまでもない
『ヒーヒー腹がイテェゼ...』
『アハハハハ嘘だべーまさおーーw!!』
『でっどうなったカイ?全裸になったまさおはーーーーーっ!!!?』
『ガハハハハハウゴェッ』
『も、もうヤメテくれナ...息がっ』
~~~~~~~~・・・
...そして大分夜も更けた頃ーーー
お眠の杏子と電子は寝床へと案内され、村の大半の獣人達も己の家へと戻っていった。
そして当初のテーブルについた十四人の獣人達が今後の寧々達の処遇について話し合いが始まる
レオムは隠す事ではないと寧々にも同席を求めたが、しかし寧々はその席に断りをいれてドコかへと消えて行った。
『さて、では寧々達の今後の事について話をしたいノダが...それについて皆の意見を聞きたい。』
レオムが皆に問いかけると、まずは白虎獣人のガイハが口を開く...
それは周りの温度が少し下がる程の鋭い殺気を乗せた口調に周囲が思わず息を飲んだ
『まず俺は人間を信じない...人間が我ら同胞へしてきた積年の怨みを決して忘れる事もなければ許す事もないナーーーがしかし、それはこの世界の人間がという意味で あいつ等は違う...』
その殺気の隠ったガイハの言葉とは裏腹な答えに信じられないと言った感じで狸獣人と鼠獣人が声を荒げる
『おいまさか別世界なんてあんな与太話を信じるのか!?』
『嘘だろ!よく考えてみろっあり得ねぇっっ』
そこへコーク、シチャ、レイビィが激昂する二人を諌めるように割って入った
『いや思えば初めからオカシかったんだゼ。兵士奴隷なら魔法に接する機会は多々あるが寧々達の魔法は詠唱も魔方陣も無ぇし、杏子に至っては【伝説の魔法】を使ってやがった...まぁ俺達が脱走してから三年の間にこの世界の魔法事情が変わっただけかも知れねぇが、多分違ぇゼ』
『フッそれに国によって多少の訛りなどはあれど、この大陸の人間の言葉は序列第1位国の母国語【シディミア語】が基本だが寧々達は違う。辺境の町や村の集落では独特の言葉を使う人間もいるが、そんな出身でもないだろう...』
『確かにそんな出の人間がこんなお菓子を手に入れれるかねぇ。それにお菓子の包自体こんなの見た事あるカイ? ...質もそうだけど模様に変な文字まで。昔、人間兵士の大隊長がお菓子を皆の前で自慢気に食べてたのを見たけど全然違かったカイ』
まさか仲間が人間側を擁護するとは思っていなかった狸獣人と鼠獣人は しどろもどろになりながらも他の獣人に目を向けると、それを察した蜥蜴亜人が反論の姿勢を見せる...
『まぁ仮にあの者達がその別世界から来たとしよう。そしてそれが人間しかいない世界だったとしよう。それならば同じ人間というだけで獣人達を虐げてもいないあの者達を恨むのは筋違いだ...しかしそんな証拠はドコにある?本当はあの者達の世界にも獣人がいて虐遇しているのかも知れんぞ?この場を切り抜ける為の嘘をついてるだけの可能性もあるのではないか?』
しかしそれに対し、ハァと溜め息混じりにモヒカン狼獣人のカリードが蜥蜴亜人を一瞥し口を開いた
『あのなぁ~もしそうなら寧々達は自分達の世界の獣人にすげぇ恨まれてんだろなぁ。逆を言えば寧々達も獣人達を信じはしねぇ...この世界の人間と獣人の様にな。でもあいつ等は何の疑いもせず出された水や料理を飲み干して齧りついたジャネェか。俺は自分を信じてくれた相手を裏切る真似はしねぇ...この世界の腐った人間共と同じ様にな!!』
カリードのその言葉に皆が押し黙った。
ーーーしかしそれでも栗鼠女亜人と梟亜人が震えながら小さい声で反論する
『で、でもさ怖いんだよ私達は...感じるんだ、見てると今すぐ殺されてしまいそうな..よく分かんないけど...近くにいるのも恐ろしい気配がするんだ』
『そうだ!...お前等は感じないのか?あいつ等は普通じゃない...その辺の人間より怖く感じる』
その言葉を聞いて初めて寧々達と森で出会ったメンバーらは互いに目を見合わせ突如 大声で笑い合う
それを見た残りの獣人達は訳が分からないとレオム達に詰め寄り理由を問いただす
『いやスマン、確かにお前達が臆するのも無理はないノダ。何故ならこの大陸の歴史を聞いた時からずっと.....ずっと彼等は怒っているノダ』
『あぁ。俺達は奴等のその怒りが【何処に】ーーーそして【誰に】向いてるのか知ってたからナ。』
『あいつらは隠そうとしてたが全然抑えきれてなかったゼ』
『杏子に関しちゃ隠そうともしてないカイ?』
『フッ』 『ガハハ』 『だべ~』
レオムの言葉にガイハが続き、そして他の初期メンバーらもそう言って静かに笑うとーーー
『ちっ何が皆の意見だよ。もう決まってんじゃねーか馬鹿野郎共が...』
『まぁあんたが長だレオム、あんたが信じるなら俺達もそうするよ.....解放するんだろ? もしそれで奴隷狩りを連れて来たなら別の所に移りゃいい...ずっとそうやって逃げてきたんだ。』
その様子に狸獣人と鼠獣人が肩を竦めて納得し、反対派の獣人達も諦めたように溜め息をついて承諾した...
『でもよ、解放するったってどうせ奴らハグレた仲間を探しに行く気だろうが、蝙蝠翼頭竜に襲われちゃ流石に生きてないだろ?』
『あぁ、まだワイバーンが近くを彷徨いてるかも知れない。森を良く知る俺達なら兎も角、あいつらだけでわざわざ死地に向かわせる気か?』
今回の合議において寧々達を解放する事は決議されたが、その事が結果的に寧々達を殺す事になりかねないかとアルパカ獣人とハクビシン獣人が危惧する....何だかんだでこの二人も寧々達を少しは気に入っていた
そこでレオムは先程の食事会で寧々と話し合った事を皆に伝える
『うむ、それなんだが寧々曰く〔仲間は森を抜けて近くの人里にでもいるだろう〕との事なノダ。勿論 根拠はないーーーが、寧々達の強さを知る者もいる通り その仲間ならば生存の可能性はあると私も考えている...故に寧々達は人里の方を捜し、我々はいつも通り森の巡回ついでに捜索もする形ではどうだろうか?』
レオムの提案にカリードが頷く
『あぁ賛成だ。どの道ワイバーンが現れたなら村への脅威を考えて偵察しに行かなきゃいけねぇジャネェか...最悪 村を捨てる準備もしなきゃならねぇ』
カリードが言うのも今この村での最優先事項はワイバーンへの対策である。次の瞬間にも襲来しないとも限らず、そして現れでもすれば村に甚大な被害を被る事になるだろう。
決して獣人達にとって勝てない相手ではないが魔物の強さと倒しやすさは比例しない
特にワイバーンなどの空飛ぶ相手に関しては此方の攻撃が届かなければ打つ手はなく、魔法もロクな武器もない今の獣人達にとって余程の入念な下準備をした罠でも張らなければ万が一の可能すらないなのだ
ましてやそれが複数いた場合、海鳥が海面に滑空して魚を捕食するように次々と仲間が喰われていく悲惨な光景をただただ見るだけしか出来ないのだ
早い話が村を捨て逃げるしかなく、その為にも迅速な情報・把握は必須であり 仮に寧々達が奴隷狩りの人間を引き連れて来るとしてもそれは先の話であり下手な抵抗をしなければ奴隷にされるだけで死にはしない...
全員が目を見合せ頷きあった
『よし決まりなノダ。では早速明日にでも行動を開始する、まずは寧々達を森の麓まで案内する者をーーー』
レオムが言い終わる前にガイハ、コーク、レイビィが手を上げる
『そうだナ、俺が行こう』
『俺もだゼ!』
『アタシも行くカイ?』
『『あっっ!!?』』
出遅れたとばかりにカリードとシチャが声を上げた
『よし、ではお前達三人に頼むノダ。他は村の警備、周囲の巡回、ワイバーンが現れた場所への偵察と三つの隊に分かれ行動をせよーーー明日は忙しくなる、今日はゆっくり休め 解散』
レオムの号令と共に皆が思い思いに散って行く...
とても長い一日が終わり、
すぐにまた朝日が昇る。
そしてまた長い一日が今日も始まった...
「はよっス~!今日も元気にいくっスよ~!! っほら電子っちも早く起きるッス!!!」
杏子と電子は獣人達が住む小屋の一室を借りて藁の上で寝ていたが、突如 パチクリと眼を開けビョンッと飛び跳ねた杏子が電子を元気百杯にバシバシ叩いて起こす
「うぅ眠ぃ...杏子アンタ朝強かったっけ~?」
「何言ってるっスかっ!学校行かなくていい日は早起きしないと一日が勿体ねっス!!」
「うわ~チョ~ウザ~~いぃ」
...ドンッ!!
電子と杏子が他愛もない会話をしていると外から大きな地響きがし、村中の者達が叫んだような大きな歓声が上がった
ドドンッッ!!!
「なんスか?朝っぱらから五月蠅いっスね~。」
「お前が言うんじゃねぇ...」
そーいって電子達が寝床から外へ出ると、村の中心に体長四メートルの額に大きな角の生えた猪風の獣 三体が氷漬けになって転がり それを村人達が取り囲んでいた。
『げっ一角猪豚ジャネェか!!』
『しかも三匹も...これは一体ど~いう事カイ?』
皆が驚いていると、村を囲う6メートルの塀の外側からトロール戦で見せた[氷結の拳]で打ち上げられた寧々が宙を飛んできた。
『おぉ~い寧々っこれはお前の仕業カ!?』
『こいつの角は岩をも粉砕しちまうぐらい危ね~んだゼ!無事かっ!?』
『おい何だこりゃっ! あれかっ? 喰うのかっ? 俺たちの前で自慢気に喰っちゃうのかっ?』
『せっせめて焼いた時の匂いだけでも嗅がせてくれっっ!!』
『肉から出た汁だけでもっっっ!!!』
皆が集まる所へ寧々が華麗に着地すると獣人達は涎を垂らしながら一斉に詰め寄り、今だ奴隷根性が抜けないのか卑屈な事を言う者もしばしいた
「驚かせたかな?昨日肉を食べたいって言ってたから捕ってきたよ。まぁ寝てるとこ氷らせただけで血も出てないし他の獣達呼び寄せることもなく安全だよ?」
しかし皆は既に寧々の言う事は聞いておらず、生で齧りつこうとする者まで出始め暴徒化一歩手前状態であった。そこへ何事かと村の長であるレオムが駆け付け沈静化を図るが一気に波に飲まれてしまう...が、
『ちよぉーーーーっと待つベエェェ!!!』
そこでまさかの熊獣人がロックバスターの前に仁王立ちで立ちはだかった!!
『オメェら今まで散々ひもじい思いをしてやっと肉にありつけるだぞっっもう少し位我慢できるベ!!それを【生肉】で本当にいいべかっ??
〔肉野菜炒め!〕
〔肉入り香草汁!!〕
〔果実入り肉団子!!!〕
〔そしてぇ熟成肉焼きぃぃ!!!!〕』
『『『『おおぉおぉぉおぉぉぉ!!!』』』』
肉の先導士 熊獣人の誕生により獣人達の暴動は抑えられ、正しき肉の道へと皆を導いた
『さぁ今日中に必要な具材をかき集めるベ~~~!!』
『『『『 おおおおぉ~~~~~!!!!
にっくまっつり!
にっくまっつり!! 』』』』
辺りは割れんばかりの大歓声が上がると狂気から狂喜へと変わり、各々が自らの仕事や肉祭りの準備に取り掛かり大忙しとなる。
そして寧々達も出立の用意を始めていた...
『そろそろだナ...暫しの間 村の事は頼む』
『あぁ任せておけ、気をつけて行くノダ』
レオムとガイハがまるで今生の別れの様に握手をする、それと同じ様にコーク、レイビィ、シチャ、カリードも互いに拳を当て別れを惜しんだ
『フッ早く帰ってこんと肉が無くなるぞ』
『いいか絶対に死ぬんジャネェぞ...』
『じゃあな、行ってくるゼ』
『アンタ等こそ体に気をつけるカイ...』
アルパカ獣人は寧々達を森の麓まで送るだけなのに、まるで今生の別れの様に振る舞う姿に首を傾げながらその光景を眺めていた。
.....別れの時
村の門に村中の人達が集まり、寧々達と別れの挨拶を交わす...
『あのぉ...ごえ おがしのおがえしぃ』
村の子供達が細工した木や石に紐を通した首飾りを寧々達にプレゼントする
「おーありがとぅっス~!!」
「わ~スゴい綺麗!!」
『スイマセン..子供達がどうしてもと...』
子供獣人の母親が畏まって言うが、寧々は感謝の言葉を述べ首飾りを手にすると子供達の頭をそっと撫で優しく問い掛ける...
「君達の夢は何だい?」
『ゆめ~?』
『ゆめっでな~に~?』
「ん~ コレがしたいとか、こ~なりたいとかかな。」
『じゃあ おながいっぱい食べだい』
『にぐ~~』
『またおがし食べだい!!』
『おがぢ~~』
『カァッファらーふぇんっ』
『あだちはぁ~・・・
子供達が口々に語ると、寧々は一言「わかった」とだけ言って村の人達に手を振り門を後にする
杏子も「まぁ任せるっスよ」といつもの軽口と胸を叩いて寧々を追い、ガイハ達もそれに続いた
村の者達は、何が分かったのか?何を任せるのか?を不思議に思っていると最後に電子が子供の獣人達の頭をシュッシュッ撫でながら呟く
「杏子は悪者を倒すのがヒーローなんて言ってたけど、他にも意味はあるのよ。事故・災害から生命を守るとか...困ってる誰かに寄り添ったりとか~あとは...」
そう言いながら電子は振り返り拳を強く握ながら去っていく
「子供達の夢を守るとかね。」
その真のヒーローの後ろ姿を村人達はまだ分かっていない
それでも皆がいつまでも見送っていた...
無事を祈って...




