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第5話 日本のヒーローは異世界を知る!!


 のどかな陽気の昼下がりーー

 

 二匹のトカゲに引かれた荷馬車で滅多に誰も通らない大深淵の森の側道を緩やかに進む一行...その御者台には自称 大商人のトルネと博士が座る


 そして先の魔獣の襲撃で、この世界の馬である毛がモコモコしたダチョウ【フィボコ】を失った老人騎士ブランカ・若い女騎士クラリが颶や自称 真の大商人ネルコと共にトカゲ馬車の荷台に乗って揺られていた



 一方まさおは、セントリーズ傭兵騎士団 副長の女騎士 ナタリカと共にフィボコに乗ってトカゲ馬車を並走する


「イャッホ~イ!!あっ最っ高だ~~w」


「はぁナニあれ...ハシャイじゃって馬鹿みたい。完全に田舎者の子供ね...」


 テンションアゲアゲのまさおにクラリはため息をつきながら悪態をつく



「ははは、まぁ私達の国ではこういった乗りモノに乗る機会は中々ありませんからね。

 特にまさおは都会っ子ですし馬...いやフィボコ的なモノに乗る事自体初めてでしょうからな。」


「はて?では博士殿の国の移動手段とは一体何ですカナ?」


 「都会?フィボコに乗った事が無いとか実はまさお殿は良い所の出サネ!?実は貴族出身とかっ?」


 博士とトルネの会話にネルコが目を光らせ食いぎみに割って入る。


 それはこの世界の一般的な交通手段として用いられるのが今トルネ達を引いている土蜥蜴かフィボコであり、子供の頃から親の手伝いや仕事をさせられるこの世界において 土蜥蜴やフィボコの操舵は幼少時に始めに習う一般教養とされているのだ


 つまりはそれを出来ない者はする事を必要としない金持ち生まれだとネルコは金の匂いを嗅ぎ付けた


 

「あっいいえ!!まさおも私達もただの庶民ですよっ...フィボコとはちょっと形が違うから珍しがってるだけで根本は同じ様なモノに乗ってます」


 博士は少し しまったと思いながらトルネとネルコに話を合わせる


 特に嘘をつく理由も隠す必要もないとは言っても、分かるように説明するとなれば単純に超めんどくさいと思ったからだ



 博士はちょっと疲れていた...そこへ まさおが満面の笑顔で博士に叫ぶ


「お~い博士っちょっと写真撮ってくれよ!」


「ん?いや持ってないよ?そーいった機能はスーツに内臓されてるからね。それに今は電子君もいないし その為だけにスーツを起動させるのもね...バッテリーの残量もあるし」


「ちょっと言ってる意味が分かんないんだけど...何か怪しい。」


 クラリが怪しむ



「...そー言えば他のお仲間達は本当に宜しかったんですカナ?夜の森の中は大変危険ですぞ?」


「まー大丈夫だろ?彼奴あいつら野生児だし。ほら博士っ俺のスマホ!」


「まさおが言うのね...」


 颶が軽くツッコむと、博士がまさおの携帯電話を受け取ってタップし始める



『「《【んっ?!』」》】



 トルネ一同が大きく目を見開くなか、博士がまさおの携帯電話でフィボコに股がり超絶笑顔でピースする まさおと思いきりカメラ目線で目が点になるナタリカをフォーカスした


「ほら行くぞーはいチーズ~~」



        カシャッ



『「《【んんっ?!?!』」》】



 トルネ一同が更に超目を見開くなか、今度はまさおがフィボコの上でジョジ○立ちをする


「ほら、もう一枚行くぞ~はいチー...」




「「「ちょっと待ちなさいよーサネカナヌッッ!!」」」



 

 颶以外、荷馬車の全員が博士に覆い被さり トカゲ馬車が激しく蛇行する


「わわっ危なっ!?ーーートルネさん舵を!!」


「いややっなっ何ですカナ それはっ!!?」


「博士殿は魔道士様だったサネ!!」


「只者ではありませヌと思うておりましたっ」


「嘘っただのしがないオジサンだと思ってた」


「え?ちょ、ちょ何があったのですかっ!!」



 皆が一様に驚き、ナタリカだけが何が起きたか分からず慌てていると 博士は再度しまったと額に手を当てた


 博士は少し疲れていたのだ...



「す、凄いですカナ...風景をこの小さい板に閉じ込めるとは...こんな魔法見たことも聞いたことも無いですカナ...」


「はっ博士殿っちょっと見せてくれサネ!!」


 ネルコが博士から奪い取るようにスマホを受け取った瞬間ーーー



        カシャッ



 「ぎゃああぁっっ!!!?」


「なっネルコっ貴様いつの間に魔法が使える様になったカナ!?」


「んな訳ないサネ!!持ったら勝手にーーー」


「あー...それには魔法が込められていて誰にでも使えるんですよ。」


 考える事を放棄した博士は適当に答えた。



「嘘ぉーーっ!?私にも貸してぇ!!」


「わ、私にも貸すカナァッッ!!?」


「待つサネ!!?まだっーーーッ」


「ヌッッ!!!」


「おーい俺んだぞ~壊すなよ~~...」



       ポチポチッ



《 それはっクリ○ンの事かーーーッッ!!》



「えっ絵が動いて喋ってるさネッッ!!」


「何これーー嘘でしょーーーっ!!?」



        ポチポチポチッ



《 夢を棄てて 生き○ならァ~ 


     お前○もう 死んでいるゥ~ 》



「こ、今度は迷路みたいな絵が描かれた楽器を持った男がこの中で歌っておるカナ!?」


「こんな楽器の音も聞いた事もありませヌ!!」


「わっ、私にも見せてくださいっっ!!!」



 ナタリカがフィボコから荷台に跳び移り 皆でスマホの取り合いが始まった...そして颶が操作方法を教えると まさおのケータイの中身を好き勝手にいじくりまわされる


「まさおはこういうの観てるのね。」


「な、なんとこれはっーーカナ!」


「これは売れる。間違いなく大儲けサネ!!」


「はっ破廉恥です!?まさお殿~~」


「うぅ俺のプライバシーが犯されてゆく...」


「ーーーてゆーかあんた達何者なの? 怪しい.....」




   .........




「ま、まさかこれ一つで遠くとの会話や映像を送れたり他にも色々と...そんな物が存在しようとは...有り得ないですカナ.....はは」


 トルネが放心状態と化していた



「あの、この世界には この様な通信手段とかは無いんですか?」


「イヤ...あるにはあるサネ。ただ音通信するだけでも それ用の高価な魔法水晶と中級魔道士以上の魔力を持ち、つ通信魔法技術を会得した者だけサネ。ましてや水晶が映す映像通信ともなれば...はは」



 そしてネルコも放心状態のなか、博士がこの世界の歴史や文化について改めて詳しく話を聞いた。


 するとトルネは居住まいを正して語りだす...その姿はもはや、博士達が大陸の外からなどと荒唐無稽な話を疑う様子は微塵も感じられなかった


 そしてーーー


「...この大陸の名は《カンダミリア》


 とても広大で、その大地を【くに】と呼ばれる じゅうの国々が統治しておりますカナ。


 そして十つ国には序列が存在しており ここは序列 第7位国 《イシュダリア王国》の領土カナ。」



「..序列...ですか?」



「えぇこの大陸では遠い大昔に人族の他に、獣人族・亜人族・妖精族エルフ闇妖精族ダークエルフ小人族ドワーフ超小人族ホビット・魔女族・魔人族・などがそれぞれの国や土地を持って暮らしておりましたカナ」


「でも今から千年前に人種の王族の一人ーーー


 【ヴァリル・ガナード】王が人種以外の種族を穢れた血として、民族浄化による支配戦争を引き起こしたカナ...」



「なんと...」



「そしてその支配戦争は五百年続き、初代 王の意思を受け継いだ子孫【ハリエン・ガナード】王が争いに終止符をうち大陸の覇権を握ると、ハリエン王はこの大陸に十の国を作りその全てに王族の血を引く者達を王に据えましたカナ。」



 そこで放心状態から目覚めたネルコが話の続きを語る


「あ~んで、序列ってのは王族の直系に近い順らしいサネ。

 特に序列4位国以上の国はやけに王族の血統にこだわりが強くてねぇ。庶民ですら虫ケラ扱いで王の血族でなければ例え貴族や豪族でも逆らうとその場で叩っ切られちまうらしいサネ」


 その狂気に博士はまさかとは思いつつも恐る恐る尋ねる


「あの...それで人間以外は滅んでしまったのですか?」


「いえ、全ては奴隷として国の労働源にされておりますカナ。」


「全てですか?」


「全てサネ。当然賃金は貰えず 僅かな食事と不衛生な寝床...でもそれはまだマシな方サネ。

 中には奉公する家の玄関の外で寝泊まりしながら食うモノも自給自足して仕えてる奴隷もおるさネ。」


 その言葉に博士と颶が顔をしかめるーーーだが それでもまだ話は終わらない


「いや、それも又 全然マシな方ですカナ。奴隷兵士や炭鉱奴隷の扱いともなればそれはもう耳を塞ぎたくなる程で.....」


「まぁ勿論そんな境遇から逃げ出す奴らもいるけど捕まれば見せしめに拷問されてから殺されたりもするサネ。

 国や冒険者組合が定期的に他種族の奴隷狩りをしてて逃げながら生き抜く事はとても困難サネ」




  カンダミリア大陸では


 王族を前にそれ以外の命の価値は皆無


 王族こそが至上であり至高




 トルネ達はこの世界で長く生き永らえる知恵として決して王族関係者とは関わらない事が最善と諭し、博士もこの事実に内心憤慨しながらも今の己の状況を熟考し迂闊にこの大陸の問題には立ち入らないよう心得たーーー


 博士の今一番の決意とは、この世界で生き残る事ではなく【まさお】【電子】【杏子】という子供達を何としても生きて元の世界に帰す事...その為には自分も又、泥水を啜ってでも生き抜く事を誓う。



「博士...」


「分かってる颶君。だがここは落ち着こう、私達が抱える命は一つではない。まさお君もーーー.....」



 ...そこには まさおの姿は無かった



「あれえぇ~~~?!まさお君はドコ行った!?」


 博士が振り返ると先程迄フィボコに乗って荷馬車の周りをクルクル廻っていた まさおは居らず、クラリがスマホの撮影アプリで連写しながらその行方を教えてくれた


「アイツなら町が《カシャッ》見えた途端[ハイヨーシルバー]とか意味不明な言葉カシャッを叫んで町に向かったわよ。《カシャッ》浮かれちゃって《カシャッ》馬鹿みたい。」




   「 ........」




「トットルネさんっ!?早く町へ向かって下さいっっ!!もう嫌な予感しかしないっっっ!!!」


「へ?あっ分かりましたカナ!?直ちに...」


「ど、どうしたのですかっ!?」



 博士は顔を青ざめさせながら急いでまさおの後を追うようにトルネへ促す。そして一行は大急ぎで町の敷地内へと入っていったーーー




 

 ーーー町の名は チンベルグ自治領


 東京ドーム20個分程の広さの領地があり、商業施設や居住区等の人の住むエリアはその 1/4程度で後は見渡す限りの畑や農場が広がっていた。


 町並みは中世のレンガ調の古い二階建の建物が多く建ち並び土道は綺麗に整備され、町行く人々は地元民に冒険者風の者の他に自警団や王都から派遣された衛兵等も数多くいた。

 



  ドカーーーーーーーーーンンッ!!!




 そして町中に響き渡る程の轟音が鳴り響く



「な、何ですか?今の音...」


「くっ遅かったか!!」



 博士が呟くと同時にトルネ達の荷馬車がまさおの所へ着くと、そこには領民の若い男が建物の二階の窓を突き破って下半身が外にブラ~ンとなり人だかりができていた



〈ひいぃ~~っっ弟がっ!!〉


「おいテメーもう一度言ってみろっ!!」


 

 その下では まさおが領民の中年男性に怒鳴っており、側には農作業姿の大人の犬獣人三人が固まって怯えていた


〈イヤだから所有物の奴隷をどうしようと私たちの勝手と...〉


「ざけんなっ!!」 ビシッ〈げはっ〉



 まさおのビンタ炸裂!!

 


「お前だってこんな風に蹴られたらイヤだろうがっ」


 ゲシゲシゲシゲシゲシゲシゲシゲシッ


〈 痛ぁっ!? は、はいイヤです~~!!〉



 まさおの百裂脚 炸裂!!



「いいかっ!自分がされて嫌な事は人にすんじゃねぇっ」


 この領民に奴隷の獣人達が暴力を振るわれながら農作業をさせられている所を目の当たりにした まさおは、暴力は駄目だと暴力で領民に説教する


 そんなまさおをトルネ達は大きく目と口を開けながら遠巻きに見ていた


「アガガ、まさお殿は一体何をしてるんですカナ~~!!?」


「何故獣人を庇っているさネッ!!」


「何やってんのよ あの馬鹿ーーー」



 すると騒ぎを聞き付けたこの領地の衛兵達が、木の笛をピーピー鳴らしながらまさおの元へ駆けつける


〔こらー何の騒ぎだっ!そこで何をしているっ凄い音がしたぞ?〕


〈た、たしゅげでぐで衛兵さん...ただ奴隷共を働かせてたら急にこいつが暴力をーーー〉


「あぁっお前らが先にこの獣人達ひとたちに暴力を振るってたんだろがっ 俺は悪くない!!」


 まさおにやられた領民が衛兵にすがるよう助けを求める。まさおも暴力を振るっておきながら全力で己の正当性を訴えると、衛兵は凛とした態度で真摯に対応する



〔落ち着きなさいっ君たち!!〕


 そしてその衛兵は双方からの言い分を凄く良くしっかりと聞き、親切丁寧に神対応した



〔うむ、なるほどな。話は良く分かった...確かに酷い話だ〕


 衛兵がそう言うとまさおが腕を組みながらウンウンと頷く



〔ダメじゃないか君!!〕



 まさおが捕まった



「なんでじゃっ!?」 バキッ 〔グハッ〕


 まさおが衛兵をブッ飛ばす



〔貴様ッ抵抗するかっ大人しくしろ!!〕


「イヤイヤ俺じゃねーだろっ大体まず奴隷が駄目だろーーッ」


〔何を訳の分からん事を、獣人と違い人に手を出すのは違法だっ!出あえっ出あえぇーーー〕


「なんでっっっ!!!?」



 衛兵の呼び掛けに他の衛兵や町の自警団に冒険者共が群がると まさおの周りを取り囲む


 そこへーーー



[コレ! 一体何の騒ぎゾェェッッ!!?]



[〔〈『はっっこの声は!?]〕〉』



 まさおが起こした騒ぎに野次馬の人だかりが群がると突如、どこから声を出しているのかと言うほどの甲高い声が辺りに響き、周囲は一気に静まり返る


 するとモーゼの十戒の如く町の人混みが真っぷたつに割れ、その奥から現れる者にこの場に居る誰もが一斉に片膝をつき頭を垂れた



 そして一人の衛兵がその者にかしずく


〔 【領主様】。今日もご機嫌麗しゅう御座います、ただ今無法者が暴れておりまして...〕


 しかし衛兵が全てを語るより先に領主は衛兵の頭にムチを打ち罵倒した


[だったら兵を総動員してすぐ捕まえぬかっこのグズがゾェ!!]


〔は、ははっ!おい兵をかき集めろ!!〕



 衛兵が指示を出すと周りが慌ただしく動き出す。


 集まる者達の顔は真剣そのものであり殺気さえ感じるその雰囲気に、群がった領民やトルネ達から悲鳴さえ上がる



 ...だがその中心である まさおは怖じ気づく事も無く、むしろ逆転裁判の主人公以上に領主に指を差し大声で吼えた。


「お前かぁーーこの町の偉い奴はーーー!!どーなってんだこの有様はーーーっっ」



(〔〈《「『【 っっ!!!?)〕〉》」』】



 領主に対するまさかの暴言にこの場にいたもの全員の時が止まり 辺りは静寂に包まれる...そして領主の側付きの兵士が一番に動き出し怒りをあらわにする


〔ぬぁっぬぁぬぁ~ぬぁんだ貴様ぁーーっっ領主様に対し何だその口の聞き方はーーー!!!〕



 その激昂する兵の怒号で我に返った領主は突然の事に面食らい、怒るどころか逆に冷静を装いコホンと咳払いをすると まさおに向い語りかけてきた


[ほ、ほう?お前か無法者というのは...まだガキではないか。偉大なる王族への教養が行き届いておらんとは嘆かわしい、おい私が誰なのか教えてあげるゾェ。]


〔〔はっっ〕〕



 そういうと ふんぞり返る領主のそば付きの兵士達が一歩前へ出て講説を始めた


〔えぇ~い 聞いて驚け!!そしてひれ伏すのだっ〕


〔こちらの御方こそは このチンベルグ自治領の8代目領主であり、

 【序列第7位国 現君主 デスラム王】の母方の 祖父の弟の 娘の旦那の 兄嫁の 姉の...え~と息子? の~従兄弟いとこだっけかの、あれ再従兄弟はとこ?...のなんやかんやでコイツが王族の血を引く【チン・ドルグ】様なるぞ~!!!〕



 [そう コイツこそ..ん?コイ...まぁ 気のせいゾェ! 私こそが偉大なる王族の血族 チン ーーー]



 「ハリケーーー○ ミキサーーーーーー!!!」



 [ぎやあぁ~!!]〔ゲハッ〕〔マッソーーッ〕


 領主の自己紹介を最期まで待たず まさおが荒れ狂う猛牛の如く頭から突進し、領主とそのそば付きの兵士が回転しながら空高く弾き飛ばされる



 [〔〈「領主様ぁ~~~!?!!?]〕〉」


 周りにいた町の者たち全員が、宙でクルクル回りながら空を舞う領主と側付きの兵を見て叫ぶ

 


「あわわ...王族に...し、死刑ですカナ...関係者全員殺されるカナ~~」


「お、終わったさネ...短い人生だったさネ...」


「クラリにブランカッ今すぐ鎧のセントリーズ騎士団の紋章を削れっ!!他の団員に手が及ばない様にするのだっ」


「知らないっ関係者じゃないっっ私達は会ってない!!」


 そしてトルネ達も又、まさおの所業に膝から崩れ落ち絶望に泣きながら頭を抱えると、誰もが血の気を引かせるこの状況に "王族に刃向かった罪人" を捕らえる事での出世や褒美に目が眩む兵士 冒険者 自警団など三十人程がまさおに群がってきた


退け、俺達が捕まえるっ〉

〔邪魔だっっこっちが先だ!!〕

〈コラ獲物を横取りすんじゃねぇーー〉

〔こんなのは早い者勝ちだ!!〕

〈とにかく行けっ突っ込め〉



「い、いかんっこれだけの数は流石にまさお殿でも 一溜ひとたまりもありませヌ! 今こそが恩人への恩返しの時 いざ参らん!!」


「はっそうだ!恩を仇で返すなど ききき騎士としての誇りと名がゆ、許さん。皆 覚悟を持て!!」


「いや無理よ!!ブラ爺も副長も何言ってんの!?」


 その光景を目にしたブランカが真っ先にまさおに加勢の意を示すと、ナタリカも足をガクブルさせながら腰の剣に手をかけた


 しかし博士と颶は既に諦めた顔をしながらナタリカの肩を叩き静かに首を振る



 そして当の本人である まさおはそんな仲間の気苦労など露知らず、悠々とした態度で指をポキポキと鳴らすと四方八方から襲いかかる者達に向い空を指差す

 

「傷つく者の涙を照らす蒼天に輝いた北斗七星が...俺をここへ導いた.....」



 勿論その様な星はない。



「テメーらに明日を生きる資格はねーーーッ


         拳骨百裂拳!!


 おーわたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたホォ~~終ワッチャッタ~~~ッッ!!」


〈ブベッ〉〔がふっ〕〈ゼハッ〉〔カベシッ〕〈ひです〉〔ヘネッ〕〈みげぇ〉〔マメッ〕〈ごまぁ〉〔プビョッ〕〈やろっ〉

〔ナニハッ〕〈げきあつっ〉〔グレート〕〈ぴれにーず〉〔チェース〕〈しゃおっ〉〔レーー〕〈ぴわっ〉〔チバァ〕・・・・・・・



 まさおに飛び掛かった者達全員が まるで噴水の様に360度綺麗にふっ飛ぶと まさおはーーー


「お前らはもう...死んでいる」


 最後に勝利のポーズ決めっ!!



 ...当然 まさおは誰も殺してないが、そんな二千年続く暗殺拳の第六十四代伝承者みたいな台詞なんぞ知らない異世界の住民らは、その驚きの光景とまさおの言葉に畏怖し茫然と立ち尽くす


 そして誰かの悲鳴をきっかけに恐怖に駆られた人々は【悪魔の子】【地獄の使者】【人に化けた魔物】等と いい加減な事を叫び、それが群集心理と相まって辺りはパニックに陥ると皆が我先にと逃げ惑った


 そんななか、まさおのハリケーン○キサーにやられ足腰の立たなくなった領主もパニックに乗じ這って逃げようとするが後ろの気配に気づき振り返るとそこにはーーー

 


 ンゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ.....



 先ほど北○神拳 末弟の台詞を吐いた割りには寧ろその義兄で三男のような禍々しいオーラを放った まさおが無言で領主を見下ろしていた


 [ヒィッヒエェェェェ!!?]


「おいお前...奴隷解放って言ってみろ」


 [な、何を言っているゾェ!奴隷は合法...イヤそれ以前に【王族の頂点】が人間以外は奴隷と定めた以上、それに逆らえば例え王族関係者の私でもタダでは...]

 

 まさおは領主の胸ぐらを掴み握りこぶしを作る



「俺より優れた王族など存在しねぇ


   もう一度チャンスをやる...


      奴隷解放って言ってみろおぉぉ!!」


[ぎゃぃぁぁ~~分かっっか、解放するゾェ好きにするゾェ!!]



 まさおに凶悪な圧で詰め寄られた領主は心がへし折られ、この大陸で前代未聞の王族による奴隷解放を口にする


〈ちょ、領主様っいいんですか!?そんな勝手な事をされては...〉


[だったらお前がこいつを何とかするって言ってみろぉぉぉゾェェェ!!!]


〈そっそれはーーー〉


 領主の言葉に側付きの兵士は異論を唱えたがチラッと見た まさおと目が合うや兵士は顔を反らして声すら出せなくなった


[し、仕方ないゾェ、王都へは盗賊の奴隷狩りに拐われたとでも言っておくゾェ。もしバレたらこの事態を収拾出来なかった貴様等も責任取らされるゾェ!!]

 

〈うぐっ、た 確かに....〉



 そこへ場の混乱に隙を見てナタリカ達がまさおの元へ駆けつける


「「まさお殿っっ」」  「馬鹿まさおっ」


「ん?何だよ...いや馬鹿って言った?」


「言ったわよ大馬鹿!!何してんの早く逃げるわよっ」


「今なら場も混乱しております故、兵も直ぐに追っては来れませヌ!」


「はぁ?俺は何も悪い事はしてねぇし逃げるつもりもねぇ!!」


「な、何を言っているのですかっ!?このままでは捕らえられ死罪になりますよ!」



 ナタリカ達が慌てながら まさおに逃走を促すが頑として動こうとせず、それどころか奴隷の獣人達の方へ向かうと今日一番の笑顔で獣人らに話しかけた


「よぉ大丈夫か?今あの偉い奴から自由にするって言って貰ったからよ~ もう無理に働かされる事も殴られる事もねぇし好きにしていいんだぜ?」


 しかし奴隷の獣人達は俯き震えるばかりでその場を動こうとせず ただお互いに身を寄せ合っていた


「どーした?...あっ金か?確かに先立つもんがね~とな~、よしあの偉い奴から借りてきてやるよw」


 そー言って領主へと踵を返す まさおに獣人の一人が小さく口を開いた



『イディァ そゆ事でア 無いィんでズ、おデダ 金があっだっデ 住むドゴロ貸ずノモ 物売っデ くデェるドゴロもェデズ


 ズグに 奴隷がりィに会っデ 金モ 取られディまヴ


 炭鉱や兵し奴隷ディ 売られぢマヴ ぐれなラ ゴコで畑ジゴト じながら ブダれる方ガ 安全ダンだ』



 ザワッ



「さ、さぁまさお殿っ早くここを離れましょう」

「動かヌと言うならば無理にでもっ」

「こっち来なさいよ糞馬鹿!!」



 ナタリカ達が無視やり まさおを抱えその場から立ち去ろうとした その時ーーー



 獣人から一滴ひとしずくの涙が落ちる



『に、人間ざま オデダの為ディ 怒ッデ くデェる 人がいるドは 思わながッダでズ あディがどぅ ゴゼマズ...』





 《ブチイイイィィィィィィッッッ!!!!》






 その場にいた誰もが己の心臓を握り潰されたと錯覚する程の精神的圧力が心身に重くし掛かる

 

 

 この世界での命の価値は軽い



 大深淵の森でなくとも、人間の生活圏である森林や河に草原、時には町にも魔虫、魔獣、魔人ゴブリン等が現れ命の危機に瀕する事もあれば、当然ただの獣にすら命を奪われる事もある


 王族絶対主義の世界に置いて学業を積めるのは一部の限られた者であり、数少ない医者や治癒ヒーリングを使える魔導師等は皆 国や王族貴族に囲われている事が多く一般の人間がその恩恵に授かれる事は少ない


 更には奴隷・格差・差別・処刑・拷問が当たり前の世界に生きる者達にとって死とは隣人であり、死に対する耐性や免疫も地球のそれとは天と地ほどの差があるだろう。



 それでも皆がまさおに恐慌した...

 

 外氣巧ならば氣の放出により それに当てられた者が気分を害すのはよくある事だが、まさおの能力である内氣巧は体の内にあり いくら高めた所で人はそれを察知する事は出来ない...


 それでもまさおの中から発する何かにナタリカとブランカは腰を抜かし、クラリは過呼吸におちいうずくまる...町の者達の中にも己が殺されるかの如く発狂する者や、気を失う者もいた。



 しかしまさおは、ゆっくり大きく深呼吸すると顔をひきつらせながらも優しく獣人達に話かけた。


「そ、そっか...そーだよな。悪かったな...そっちの都合も考えねーで、じゃぁもっと偉い奴と話てくらァ...」



 そしてまさおは再び領主に向かい静かに尋ねる


「おいお前ェ、この国で一番偉い奴はどこに行ったら会えるゥ...」


 今この男に逆らえば殺されるーーーそう感じた領主は口から泡を吐き 辛うじて動く指を震わせながら方向を指差した


「ソ、ソウカ...俺ハ必ズ戻ッテクッカラソレマデ獣人コノヒト達ニ手ェダシタラ殺スゾ...」


[ヒ、ヒイィエェァァァ...]



 領主がそのまま気を失うとまさおは、領主が指差した方向を鋭い目付きで睨んで超スピードで走り去っていった


「いかんっ颶君!?まさおを止めてくれっっこのままじゃ本当に人を殺しかねん!!!」


 博士がそう叫ぶ前に颶は既にまさおを追って飛び出していたーーー


 まさおがここまでキレた事は人生で一度もない...


 彼をよく知る博士や颶ですら狼狽えるこの状況に、ナタリカは様々な感情が入り交じり声すら出せない


 王族こそが至上であり絶対、王族に従える事こそが正義であり名誉。王族が人種以外を奴隷と定めたならば疑うなどあってはならない...


 勿論 思うところが無いと言えば嘘になるが、それでもナタリカは獣人達が虐げられる姿を見る度に自分を正当化してきた


 だがまさおの一つの命を想う慈愛の姿を目の当たりにし胸を熱くする何かがナタリカの頬を濡らしていた.....



 

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