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第2話 日本のヒーローは異世界に行く!!

 

 ....。


「ここは一体ドコだい?」


「森ん中っスね。埼玉辺りまで吹っ飛ばされたスかね?」


「杏子…それは私の故郷が田舎だって言いたいの?」


「ちっちげェっス 颶さん!あっしは埼玉県人にはそこら辺の草でも喰わせておけなんて言わねっス!!」


「オラーとりあえずビンタさせろ電子っ!!」


「カカッテコイヤーーーッッ!!」


「い、いや君たち自由すぎだからっ取り敢えず落ち着こうねっヾ(゜д゜;)」


 博士達は凄まじい閃光に包まれ気が付けば、樹々が鬱蒼うっそうと生い茂る薄暗い森の中にいた。しかし先程おこった事への衝撃インパクトが強すぎたのか、どう考えてもオカシイ違和感にはまだ誰も気づかない。


「あ、あー聞こえまスか~斧偽さ~んス」


「駄目だねぇ携帯も圏外だよ」


「私もだ、ナビの位置情報も出んし衛星の受信もない」


「さっきのスパークで機械類ヤられちまったんじゃねーの?」



 皆が己の携帯電話や無線等の通信機器を確認するが、いずれも作動はするが通信は不可となっており まさおがジト目で電子を見やる。


「ガ・・カガッデゴイヤ~・・・」


「泣かないで電子…いつもの事じゃない( ´∀`)」


「っ!!?」


「フォローになってないよっつむじ君っっ!!」



 そんなお気楽なやり取りをしていた時、ようやく寧々がその違和感に気づく



「ところで今気がついたんだけどさ。この周りにある樹...なんか大きくないかい?」


「…そうか?森の木なんてこんなもんだろ。」


「そっスね。東京出たコトないスけど。」


「あはは~サスガ都会っ子w」


 

 寧々の疑念に まさおと杏子がシレっと答えるが博士はグルリと周りを見渡し眉をしかめた


「むぅ…確かに寧々君の言う通り少し尋常ではないな。」



 現在、日本で一番高いと言われる杉の樹高ですら60メートル程であり、世界一高い木の樹高は110メートルとも言われている。


 しかし今いる森の中では低くても50メートルはある樹木ばかりで、生えている草花もまた大きく見た事もないモノばかりだった。


 キチ…


 「もしかしてアノ馬鹿の作った機械でアマゾンのジャングルにでも飛ばされちまったんじゃねーのか?」


「う~む。空間移動という前代未聞の装置...その可能性は捨てきれんな。」


 まさおが博士と冷静にこの状況を分析し始めるが、杏子が急に顔を青ざめさせながら震えだした


 キチ…キチ…


「あ~これは夢っス。きっと夢の中にちげぇ~ねっス...」


「ん?おいどーした馬鹿杏子?」


「ほら大丈夫よ、落ち着きなさい。」


 普段はどんな状況に陥ろうとも楽天的な性格からパニクる事がまず無い杏子の取り乱す姿を見て、皆が不安げに声を掛ける.....が、


「だ、だって......そんなデケェ蜘蛛見たことねっス。」


 杏子が指差した皆の上の樹に、目が九つ脚が十本生えた体長4メートルはあろう まるで蜘蛛の様な生物がヨダレを垂らしてコチラをめ付けていた。


 キチキチキチキチキチキチキチキチキツ


 ーーーーーっっ!?!?!?!?!?!?!?



「「「「「ぎゃあおわいやうわどわーーーーーっっっ!!!?ヽ(ill゜д゜)ノ」」」」」



 全員が恐らく人生で初めてではないかという程の悲鳴を上げながら我先にと脱兎の如く駆け出した


「何これ何コレナニコレー!!」


「まさおっ早くブッ飛ばせっス!!」


「ざけんな杏子っ!絶対【ブチャッ】てなるわ!!おい博士っ」


「まさお君に同じくっっ寧々君っ頼む!!」


「今の勢いじゃ凍らせても突っ込んで来るよ?ここは颶ちゃんに」


「わ、わかりました。」


 ガッ!! ビューーーーーーン!!!


 颶が空高く飛びサイコキネシスで蜘蛛を掴み、そのままオリンピックハンマー投げ選手顔負けな位に 遠くへブン投げた。


「はっはっあ~~~...助かった。」


「何だアレまじで...ホントにアマゾン来たのか?」


「アマゾンにもいないと思うケドねェ..」


 

 全員が盛大に息を切らしながらも警戒しその場に腰を下ろして落ち着いた。


 そしてよく見ると先程の蜘蛛よりは断然小さいが、それでも地球で見るより遥かにデカイ虫が辺りにうごめき、電子達は顔を青ざめる


 〈 ピー~~ 〉


 〈 エネルギー20% チャージ推奨 〉


 そこへ博士のスティールスーツから警告音声が流れた


 「ぬぅやはりか。3日前からスカイツリー周辺に配備しっぱなしだったから そろそろとは思ったが…」


 「あれ?そのスーツに発電機能ついてなかったっけ?熱エネルギーとか電力に変える...そーいや声もAIじんこうちのうのデイビスさんじゃね~し。」


まさおが首を傾げながら博士に聞いた。



 「あぁ此度テロリストの戦いでおくれを取らんよう戦闘特化型ガジェットモデルにしたんで 発電機ジェネレータ系統は外したんだ。あとデイビスはさっき妨害電波が解除された時にヒーロー協会のスーパーコンピューターの中に移したし電波が届かん今は応答できんよ。...で、電子君 充電をお願いしたいんだが。」


「あ~ごめん博士。さっき全力でレールカノン打っちゃったから電気バッテリー切れ...後でいい?」


「まぁ仕方ない。それじゃぁこれ以上電気をくわないよう仕舞っておくか。」



 博士がスティールマンから出てきた後、スーツはカタカタと自動で折り畳まれバックパック型に変化し博士が背負った。


「いつ見てもカッケーな、博士ぇ俺にも作ってよ。」


 まさおが玩具をねだる子供のように目を光らせながら頼むが博士はフゥッと溜め息をつく。


「頑丈な君には必要ないだろ?…あと絶対壊すし…」


「あっしも欲しいっスッ、寝てる間に学校まで飛んで行って貰うっス。」


「私のステータスシンボルを何だと思ってるのっっっ!?Σ(゜Д゜)」



 こんな状況になっても変わらないこのいつものやり取りに颶もまた額に手を当てながら深く溜め息をついた


「それより博士、これからどうしますか?」


「ん?あ~そうだねぇ~~.....」


 ..........。


 全員が押し黙るなか、それは突然やって来た


 皆が座って休んでいる場所に巨大な影が差し込む。...高さ10メートル 翼開張ヨクカイチョウ20メートルはある伝承や神話にしか登場しない伝説上の生物

 

 《《《ドラゴン》》》


 その竜の体には先程 颶が遠くへ投げたデカ蜘蛛の欠片がベッタリと媚りついていた。



「「「「「「あぁ...( Ⅲ´Д`)」」」」」」



「もっかい逃げようか...。 」


 先程とは打って変わり、皆が驚き半分 タメ息混じり半分でゆっくりと重い腰をあげる中 、一人だけ舞い降りる竜に 仁王立ちで立ち向かうおとこがいた。

 

「フッヒーローが背を向けてたまるか」



 その名は まさお。



「さっきの蜘蛛の事 無かった事にしてるっっっ!!?Σ(゜Д゜Ⅲ)」


「まぁアレは【ブチャッ】とならなそうでスしね...」


 そんな電子と杏子を尻目にまさおが内氣功を脚に集中させ竜の真上へ跳びあがり、次は右手に氣を溜め 皮膚を 骨を 筋肉を こぶしを強化する。


 「蜘蛛に比べりゃ屁でもねぇっ!燃えろ宇宙コスモ!!ウルトラ必殺のーーー【超拳骨ちょうげんこつ】」



「おいネーミングセンス」


 電子がツッコむ



 ーーーゴッツンッッ!!  



「フッ決まっ.....んぎゃぁ~~~~~っっアイッタ~~アイタッッカテェェェ何だコイツ!!?」


 まさおは竜を殴った右手を押さえながら地面を転げ回る


 そしてまさおの100%中の100%の拳骨がヒットした竜はその頭を一瞬 地につけるがすぐに顔を上げ、まさおを睨み怒りの咆哮を放ち電子は腰を抜かした。


 「ちょっ、まさおの拳骨で倒せないッス!!」


 杏子が寧々の後ろに隠れながら膝をガクブルさせていると、竜の口がうっすら明るくなる


 ゴオォッ


「あの、あれ火を吐こうとしてませんか?」


 颶が呟くと同時に博士が寧々に向かい叫んだ


「寧々君っ!!」


「はいはい任せて下さい。氷結楯アイスシード....」


 チリッ


「はっ全員避けろっっっ!!!」


 寧々は竜のブレスに対し氷の楯で皆を守ろうとしたが己の経験と勘が危険信号を発し、即座に全員に避難指示を出した



 ゴオオオオオォォオオオオオォオォオォオオオオォオオオォォオオオォオオォオオオオオオオオォォオオォオォオオオオオオオオオォォオォオォオォォォォォオオオォオォオォォォォオオオォォオオオォォォォォオオオオォォォッッッ



 竜から放たれたブレスを例えるならば、灼熱の炎と呼ぶには生ぬるい程に焼くを超越して一瞬で辺りを消し炭に変えた。


「まじっスか、一瞬で灰に...」


 杏子は電子と寧々を連れ、竜の150メートル後方のテレポート限界まで避難する

 

 そして颶もまたサイコキネシスで博士とまさおを連れ、竜の遥か頭上へと浮かんで避難した。


「あっぶね、危うく死ぬトコだった~」


「シ~~っまさお君、竜に気づかれるから静かに...」


 なんて言ってる博士の靴が脱げ....



 ポロッ ヒューーーーーー・・・・・ コンッ



 『グルゥ』 「「げっ!!?」」


 博士の靴が竜の頭を直撃し、竜は鋭い眼光で上を見上げ翼を羽ばたかせてきた。


「めっかったーー!!」


「颶君っ早く逃げてーーー!!!」


「くっ...」


 竜と颶達との大空を舞台にダイナミックなフライトチェイスが始まった。

 竜は颶のスピードに負けじと劣らぬ速さで、時には小ブレス 時には噛みつこうと追ってくる。


「うおおおおぉっ」

「ぐぇ気持ぢ悪い...」

「颶君っ最悪まさお君は捨て置け っっ多分死なん!!」

「おいオッサンッ!?今一番役に立たねーのオメーだろがっっ!!」


 颶が必死で竜の追撃から逃れようとするなか、まさおと博士が醜い争いをする



 ゴオオオォオォォオォゥッ



「アチッ!?アイツの吐く火に気をつけて颶さ~ん!!」


「颶君っ下下したしたぁっ森の中へ~~っ!!」


「分かりましたっ」


 颶達は森の中へ入り、尚も猛スピードで樹々を縫いながら追跡を逃れようと飛び去って行った。



「な~にやってんスか~あの人達は~...」


「あ~あ、向こうに行っちゃった。」


「完全にはぐれたねぇ...」


 その姿を杏子達は樹の上から呆然とただ眺めていた。




 

 それからどれぐらいの時間がたったか、やっとの事で颶達は竜から逃れ木々の陰で腰を落ち着けていた



「はぁはぁはぁ...行ったか?」


「死ぬかと思った。颶君、寧々君達との連絡はどうだ?」


「駄目です。大体の場所が分かれば交信テレパシー出来るんですが...完全に見失いました。」


 颶達は竜の追ってを振り切ろうと森の中を低空飛行し右往左往していた為、杏子側からも何処まで逃げたのか、どちらの方向へ逃げたのかすら分からなくなってしまっていた。



「これから どうしますか?」


 颶が息を切らしながら問いかけるが、博士やまさおは腕を組ながら唸り続ける


「うーん、俺や颶さんがその辺の樹や石を空にぶん投げまくるか、電子が電気花火を打ち上げりゃ多分 分かるんだろうけどな~...」


「だが下手に動くと またあの竜に見つかるかも知れんし、今は静かにする他無いな。」


「だな~でも とりあえず開けた場所に行こうぜ?こんな密林地帯じゃ変な虫とか獣とかウジャウジャ出てきそうで落ち着かねぇよ...」


「確かにな...」


 まさおと博士が怯えた目をしながら周囲の薄暗く不気味な森を見渡した



「そうね、でもまだ竜がいるかもしれないし空から確認する事はできないわ。」


「まさお君の耳内氣功で周囲の音とか探れないか?竜とか人里の気配とか...」


「博士も聞いただろ あのキチキチおん。そこら中から聞こえて来んだぜ?遠くの音を聞く所じゃねぇよ...つーか暫く何も聴きたくねぇ。」


 まさおは意外と虫嫌いなトコロがあり、鳥肌をたて 顔を青ざめさせながら耳を塞ぐ


「仕方ない。まずは山を下っていこうか。」


 鬱蒼とする樹木に囲まれ太陽がどちらを向いているのか、ここが日本でないなら今は朝か昼か夕方か...そして寧々達の安否も解らず 博士達は意気消沈しながらも山を下りて行った



「なー博士はどー思ってんだこの状況...てかさっきの怪物とか何とか?」


「ふぅ~ふぅ~..ん?あぁそうだな。恐らくだが狂翁院は空間移動装置を使って自分のアジトから爆弾を転送させたと考えるのが自然だろう。」


「この森がアジトってか?」


「いや、電子君の強力な電磁波攻撃によって装置の制御が狂い アジト付近に飛ばされたと言うのが正確かも知れん。」


 博士が現状を憶測の範囲内で考察する...それは過去に狂翁院が起こした事件が起因するからである


「確かに電波妨害や巨大化ハムスター事件も現在の状況と繋がる所はありますがあの竜は...」


「なるほどっ異種胴体キメラか!アンブ○ラや他の組織が遺伝子組み換えの生物兵器を研究しててもおかしくねぇ時代だっ!!ましてやあのイカれ馬鹿なら絶対にやるっっ。」


「ん、んん~ちょっとバイオが入っているが概ね私の予想もそんな感じだ。実際に幾つかの企業の黒い噂も耳にした事はあ......」



『 - - - - ― ・・・£жヰδΠЖЁ~』


『эычщхкрφБпЭЮФψφчэωБ~~~』


「な、なんだ?誰か叫んでいるのか?」


「あちらから聞こえて来ますね」


 颶が声のする方へ向かうとそこは20メートル程の緩やかな崖になっており、その下には街道が通っていた。

 

 そして右側から二足歩行のトカゲの様な生き物が荷馬車を引いて猛烈な勢いで走り、御者台ギョシャダイには中世時代の格好をした恰幅かっぷくのいい中年男性がトカゲの手綱を必死に振っている。


 その後ろの荷台には、やはり中世の格好をした三十代位の女性が恰幅男に罵声を浴びせ、男もまたその女に叫び返していた。



「なぁ博士ぇ...間違いなくここは日本じゃねぇとして.....」


「う、うむ。」



「あんなカッコしてトカゲで馬車を引く国なんてあるかぁ~~~~~っっ!!?」





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