第19話 王との謁見、っていうか突撃!!
王都イシュダリアの闘技場の外では、住民やら兵士らが今だ伝説の竜を目撃した事での驚きと、それを撃墜した事への歓声と興奮とで賑わいをみせていた。
しかしそれとは打って変わって闘技場の内部では、
「杏子っス ヨロシクっス竜さんっ、あっしんち寿司屋なんでウチ帰れたら親父に頼んで腹一杯ゴチするっス!」
《スシィィィッッ!?》
「いや杏子君、流石に親父さんのお店が潰れてしまうぞ?」
「私は今モーレツに背脂チャッチャッ拉麺が食べたいわ、残った汁に白飯ぶっかけて。」
「太るわよ電子?」
《セアブラチャッチャ~~~?!?》
「いやぁ長生きしてみるもんだね、まさか本物の竜に出会えるなんてねぇ。」
「おい寧々さんっ竜さんと写メ撮ってくれ写メっっ!」
復活した竜とあろうことか自己紹介しつつ雑談を始める日本のヒーローら一行に対し、それ以外の者達の間に困惑と動揺が広がる。
そしてそんな周りの空気など一切読まず勝手に盛り上がる まさおらに周囲の兵士らはーーー
[おっおい、あいつら竜と普通に会話してるぞ!?]
[実は伝説の竜って言い伝えほど悪い奴ではないのか?]
[馬鹿言うなっ!?さっきの息吹見ただろっっ迂闊に近づいたら死ぬぞ!!]
[っていうか、なんか食いもんの話してないか?!竜を手懐ける食い物って一体なんだ?気になるぞ!?]
そんなざわつきをみせるも、しかしそれでも竜への恐怖が勝るのか誰もその場から動こうとしない...
そんな中、意を決した様にまさお達と竜との間に割って入る強者が現れたーーー
「こっこれは竜殿ぉ私はトルネと申しましてぇ~コチラの博士殿達とは懇意にさせて頂いておりましてぇぇ以後お見知りおきを~~!」
「そそそっそうサネっっまさお殿達とは大の仲良しサネェ~?」
まさおらと竜との関係の変化を察したトルネとネルコが必死に震えを堪えながら竜へ自己紹介を始めると、それを見たクラリやコークにレイビィも我先にと追随しだした。
「わわわ私もまさおとは仲間よ仲間っっっ分かる?分かるわよね!!」
『そっそうだゼ!?俺は杏子達と友達だからお前とも友達だゼッッヨロシクな!!』
『ダッダチを傷つけたり食っちゃイケないカイッッッ!!!』
《 グルゥ ダチ イッパイデキタ。》
そんなまさおらをダシにして竜の懐に入り込もうとするトルネらの姿に、周囲の兵士らが心の中で一斉に叫んだーーー
[[[[[クッソ~ズルいぞ貴様らぁ~~]]]]]
その兵士達の心の声のほとんどが、竜の後ろ楯により交戦しづらくなる苛立ちよりも単純に竜の危険から回避された羨ましさが十割だった。
そしてその中でもイシュダリア王直属の眷属である五眷聖ゴラン、ガーナ、シュナは誰よりも表情を曇らせ歯噛みした。
今回の有事に対し一番の責任者である五眷聖が伝説の竜の捕獲を成せば、逆賊まさおらを取り逃しても弁解どころか称賛すらされるだろう。
逆にまさおらを確保していれば、竜を逃がしたとしても『一国を滅ぼすほどの伝説を簡単に打ち取れるわけもない』と言い訳のしようもある。
だがその両方を逃がしてしまっては、それでも伝説級の不測の事態に多少の釈明や責任逃れは出来るかもしれないが、そんな失態による許容に甘んじるほど眷聖達の眷聖たるべき意識は低くはない。
ーーーというか既に眷聖らの怠慢により軽装備・小部隊での対応で逆賊まさおらにいいようにやられ、しかも竜の襲撃の際には敵に助けられる始末であり、眷聖らにとってこれ以上の恥の上塗りは出来る訳がないのだった。
だからこそゴラン、シュナ、ガーナは頭を抱えながら唸り声を上げる...
「ど~するんだヨ...なんか竜とアイツら仲良くなっちゃってるんだけど?」
「ぐっ現状ではあの全てを相手にするのはキツイわね...せめてちゃんとした装備と部隊の半分でもいればーーー」
「流石にどちらかという訳にはいかんしな。だがこのまま両方をただ黙って見逃す訳にもいかんぞ...」
そんな三人に対し、剣聖ティクトだけが特に焦る素振りもせず〈のほほん〉とした口調で口を開いた。
「ならあの人達を客人として招き入れてはどうだい?」
するとティクトに向かって横目で睨むようにガーナがキレた。
「あん?馬鹿なの?奴等は王族に歯向かった逆賊よ?それに第4位国宰相が直々に取り仕切った催事をブチ壊したのよ?そんな奴等を迎えられるわけっーーーていうか王側の誰もが許しを出すわけないでしょ?」
ティクトに激ギレでまくしたてるガーナに、今度はシュナが恐る恐る口を開いた。
「じゃ、じゃあ~今回の騒動は第4位国の宰相様を驚かせる為にやったって事はどう?全部 仕込みみたいな~?」
「あのイケすかないトンバカ宰相が笑って受け入れると本気で思っているの?あなたも馬鹿なの?」
「ヒドッッ!!?」
ガーナの八つ当たりがシュナにまで及ぶと、ゴランがそれを諌めるように間に入った。
「落ち着くんだガーナ、そもそも相手も罠と疑って来んだろう。だがあ奴等の強さ、そして何故イシュダリアに現れたのか、何故そのような者達が今まで鳴りを潜めていたのかが非常に気になる所ではある...どうにか話を聞き出せんかーーー」
ゴランが頭を悩ませて まさお達に目をやると、まさお達が何やら騒ぎながら竜の背中に乗る姿が視界に入る。
「お~い、早く竜さんの背中に乗れ~い!!」
『だっ大丈夫なのカ!?本当に竜は怒らないカッ?』
「あ、危ないじゃないっっ私は絶対に嫌よ!」
日本ヒーローらが竜の背中に次々と乗り込み、まさおは他の皆にも騎乗を促すとガイハやクラリが真っ先に躊躇を見せ、他の者達も膝をガクブルさせてただ呆然としていた。
「ちゃんと竜さんに許可貰ったんで大丈夫っスよ。ほらほら早く乗らないと置いてくッスよ~~?」
しかし杏子のその言葉にトルネ達がイシュダリア兵士らにガッツリ囲まれているのを見渡しーーー
『じょっ冗談じゃないカイッッこんな所に置き去りにされてたまるカイ!!』
「この不肖ナタリカッまさお殿の行くところ何処までもお供致します!!」
「「くっっ竜に乗る初めての商人の栄誉を誰にも渡してたまるかカナサネッッ!!!」」
そう言って皆が色々な事を口々にしながら意を決した様に竜の背中に乗り込んでいった。
「ぐっしまった馬鹿か私は!敵が竜を味方につけた今 こんな好機を逃す筈はないっっこのままでは逃げられてしまう!!?」
ガーナがそう叫ぶと、まさおはーーー
「よしっ全員乗ったな?んじゃ今から王城に突っ込むか。」
「「『「『 ・・・・っっっっっはあぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!?!?!??」」』」』」
まさおのその言葉にガーナだけじゃなく、他の眷聖らや兵士達、トルネらやガイハらにナタリカ達も大声を上げて叫んだ。
「いっいや、ききき貴様...どう考えてもオカシイだろ.....普通は逃げるだろぅ?!? せっかくの僥倖を、えっ?今ナンつった?お、おうじょうに....?」
そしてガーナがパニクりながらも必死に自制しつつ まさおに詰め寄る様に問うと まさおは、
「あぁ、元々ここに来たのは獣人さん達の待遇やこの世界の在り方について偉い奴に一言 物申したかったんだ。んじゃ竜さん、突撃となりの晩ゴハン..じゃなくて王城!!」
〈 グルゥ、トツゲキ。〉
まさおがビシッッと王城の天辺を指差すと、竜は皆を乗せたまま翼を大きくは羽ばたかせ大地を蹴って大空へと飛び立つ。
「えっ?いやいや嘘だろう?賊も竜も取り逃がしただけじゃなく王城に突撃?? いやこれ絶対ダメなやつ...私達だけじゃなく部下達とその家族の首もぜんぶ飛ぶヤツ.....アイツぜっっったい大馬鹿だあぁぁーーーーーー!!!!?」
絶叫と共にガーナは腰が砕け その場にヘタり込むと、そんな飛び去った竜の後ろ姿をただ見送るしかなかった。
ーーーんで大空でも竜の背中にて、
『おいぃまさおぉぉぉふざけんじゃねーーゼ!?今から王城に突撃だぁ?せっかく窮地から脱したのにっっっ馬鹿か!!?』「馬鹿っス」
コークが誰よりも先にまさおにツッコむと、杏子が食いぎみに肯定した。
「ヌゥまさお殿、流石にここは一時撤退をされた方がーーー」
「ちょっと博士も颶も何で黙ってんのっっ? 流石に無茶よよ!!」
さらにブラ爺が竜の頭に乗っかったまさおに撤退の説得をしつつ、クラリも半ベソをかきながら博士達に逃げるよう必死に懇願していた。
しかし博士も、
「まぁせっかくここまで来たんだから王様というのを一目みるだけでもね、私達の目指す先に進むには遅かれ早かれお偉いさんとの謁見は避けて通れない訳だし。」
「そ、そんなぁ~~...」
そう言って博士が処刑から救った子供の獣人の頭を優しく撫で、クラリも諦めたように項垂れるしかなかった。
再び闘技場にてーーー
「おいっ滅入ってる場合かガーナ!今すぐワイバーンを飛ばして後を追うのだシュナ!!」
「わ、分かったヨ!でも流石にゴラりんは重量超過で乗せては飛べないヨッッガーナちんにティックは早く乗ってーーー」
王城へと飛び去った竜を見て即座にゴランがワイバーンによる追尾をシュナに指示するが、しかし剣聖ティクトは焦る様子を見せるどころか まさお達の追撃の指示に首を横に降る。
「ちょっティック~何してんのヨッ早く乗って!!」
「おいティクトッふざけてる場合か!?王の大事ぞ!!」
そしてシュナとゴランはティクトに向かい何の冗談かと怒鳴るが、しかしティクトはそのいつものニヤケ面を崩さず静かに口を開く。
「ン~~悪いけどさっきの竜への攻撃で魔力も尽きたし足手まといにしかならないから僕は遠慮するよ。」
そのゴラン達に向けられたティクトのいつもの軽薄そうな笑顔とは裏腹にゴラン、ガーナ、シュナは背中にうっすら寒気を感じた。
普段のティクトなら誰の意にも介さず王の危機とあらば疾風の如く駆け付けたであろうはずが、そのティクトの初めての反応にゴラン達は少なからず動揺と混乱をみせ、ゴラン達はしばし沈黙し立ち尽くす...
だがそれもすぐに、
正気を取り戻す程の轟音が王都中に鳴り響いた。
何事かと眷聖らを含めた王都中の者達が王城の方に視線を向けると、そこには王城・王室のある場所に竜の頭がメリ込んでいる姿があったのだ。
大分遅くなりまして申し訳ございませんでした。
次話はもう出来ておりますのでそちらもぜひ見て頂ければ幸いです。
今は大変な世の中ですが皆様の健康を切に願っております。




