表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/26

第11話 決戦 序列第7位国 王都イシュダリア 【Ⅱ】


 カンダミリア大陸において王族が覇権を握って千年の間ここまで露骨に反旗を翻した者など皆無であり、ましてやこの王都イシュダリアより上位国の催事をぶち壊すなど天変地異にも劣らぬ事である。


 故に集まった民衆らだけでなく周辺を警備していた衛兵ですら『これも予め用意された催しの一つなのか?』と、辺りから悲鳴や戸惑いはあるものの誰もがその場に佇んでいた。



 そしてそれは皇帝席でも同じ問答がなされるーーー


「こ、これもトンガマ宰相が用意した芸術的な処刑演出なのですかっ? だが流石にこれはやり過ぎですゾ!?」


「そっそんな訳あるざまぁすかっ!! 謀反ざまぁすっっ今すぐその大罪人らを処刑するざまぁすっっっ!!!」


 デスラム王が突然の出来事に腰を抜かしながら問い叫ぶと、トンガマ宰相は皇帝席から身を乗り出して周囲の衛兵らに命令を下すーーーその怒号で我に返った兵が次々と事の重大さを認識し事態は慌ただしく動き出した。



 現場を統括する兵隊長が指揮を執り闘技舞台周辺を警備していた衛兵が民衆を掻き分け中心の処刑台を取り囲むように集結すると、まさお達も臨戦態勢をとる。


「颶さんはその子ら頼む! 博士はイケるか?」


「スーツのエネルギー残量が少なくてアームだけしか起動 出来ん、私は颶君の援護にまわる。」


「了解です」



 颶が罪人として処刑されそうになった獣人の子供二人と自分の周りに念動力サイコキネシスのバリアを張ると、博士が背中合わせでバリアの外を陣取る。


 そして まさおが軽く指を鳴らすと、


      「 全集中の呼吸!!」


 ーーーなどと今一番ハマっている漫画のネタを口にしながら内氣功を身体中に巡らせ【皮膚】【骨】は鋼硬度に硬くなり【筋肉】は太く柔軟に強化され、


 同時に鋭さを増した【嗅覚】【聴覚】は周囲50メートル360度、敵兵士がどんなに多くの人混みの中に紛れていようとその剣に染み付いた血の匂いや鎧の金属音がまさおに場所を知らせる。


「さぁ超激怒ちょうげきおこプンプンまさお丸 暴走モード突入」


 そう言ってまさおは前方へ飛び上がり空中で一回転して刃を向ける兵士らの固まりに突っ込んで行くと、まさおの繰り出す突きや蹴りが兵士らの纏う鉄鎧をアルミ缶の如くヘコませてブチのめすーーー


 それを皮切りに敵兵士らも一斉にまさおへと斬りかかるが内氣功で五感を強化しているまさおに死角は無く、例え目を閉じていても僅かな空気の揺れや微かな音は気配として認知し動きを察知する。


 故に敵兵士の攻撃がまさおに当たる事はなく、次々とまさおは相手を一撃で沈めていったーーー



 同時に颶や博士達にも敵の攻撃の手が伸びると、颶は両手で展開していたバリアを右手で張りながら左手で拳サイズ程の念動力の塊を発射し衛兵達を吹き飛ばしていくーーー


 一方 博士も腕に装着したスティール スーツのアームで相手の刃を防ぎながら、打撃や手の甲のジェット噴射ノズルから高圧縮空気を噴射し敵を宙へと舞い上げていく


 そして闘技舞台では まさお達と衛兵らの戦闘は激しさを増して民衆が悲鳴を上げながらその場を退避しようと各入場口から出ていくのと入れ替わりに次々と増援の兵士が突入し闘技舞台はかつて無い程にごった返し大混乱に陥る...



 そんななか ナタリカ達やトルネらも別の意味で右往左往していた。


「あわわわわっ!? どうすんのよ副長 始まっちゃったわよっっ!もう無理 付き合ってらんないわ早く逃げないと!!」


 クラリが頭を抱え涙目になって叫ぶが、ナタリカは周りの喧騒を他所にその場に静かに佇み眼を閉じる...そして、


 『我の死地は此所にアリ!』と急に眼を見開き抜刀してそのまま まさお達の元へと姿を消す。


「ちょっっっ嘘でしょおぉぉぉーーー!!!」


 そんな絶叫するクラリの肩をブランカが優しく叩くとブランカも又、


「なに副長一人では死なせヌ、クラリよ 達者で暮らせ...さらば。」


「ブラ爺まで何言ってんのっっ!!?」


 そう言ってブランカも人混みの中へと姿を消して行った。



 クラリは暫し呆然としながら首をギギギッと鳴らして横を向くとトルネとネルコも何やら問答をしていた


「ネルコよ、大商人への道も流石にこうなってしまっては元も子もないカナ。命あっての物種、博士殿達には申し訳ないがここは...」


「そ、そうサネ。本当に惜しい気持ちはあるけど死んだら意味ないサネ。」


「..........。」


「さぁ早く逃げるカナ?」


「何言ってるサネ。アンタこそさっさと行くサネ。」


「.......。」


「い、いっせ~ので逃げるカナ?」


「そ、そうサネ。んじゃ いっせ~の~でーーー」


「.....。」


「ぬぁ~~っっ!! 貴様さては逃げる気なんて無いカナ!!? 」


「ハッあったり前サネ! 命よりも金が在っての物種、おいしい商売の原石をほっぽり捨てて逃げるほど商人として腐っちゃいないサネ!!」



「「くっ博士殿っ今行くカナ サネーーー!!」」


 

 そうしてトルネとネルコも張り合う様に人混みへと紛れて行き、クラリだけがポツンと一人の残された。



 闘技場では次第に民衆よりも増援され続ける兵士の方が増え、より一層 戦闘は激化するがそれでもまだ まさお達の方が相手を圧倒する。


 だがそれに業を煮やした皇帝席のトンガマ宰相は皇帝席の横に待機させていた弓小隊へ弓撃の指示を出す

 

「ま、待ってくだされっ 今 矢を射れば兵や民にも被害が出ますゾ! 流石にそれは何でもーーーッッ」


「何を言ってるざまぁすかっっ 大事な催事をぶち壊されて これ以上好き勝手にされては互いの面子も丸潰れざまぁす! それに今この場の指揮を執っているのは私ざまぁす!!」


「ぐぬっ」


 デスラム王が味方ごとの弓射に難色を示すがトンガマの圧に押され黙り込む。


 そして弓小隊員も少し逡巡したが上位国であり王族であるトンガマの意向に逆らう事は出来ず、言われるがまま まさお達へと矢を放った。


 皇帝席の側近を警護する弓隊だけあり、その熟練度は高く放たれた矢の軌道はほぼ まさお達の立つ場所へ集束する...しかしそれでも多少のバラつきを見せながら地へと降り注ぐ数十本の矢は仲間の兵や民衆をも襲う。


「おいっ矢が飛んでくるぞ!!」

「冗談だろっ俺たちごとか!?」

「伏せろぉーーーみんな伏せるんだ!」

「ヒイィィィッッ!!?」

「た、助けっっっ...」


 一人の兵士が腰を抜かし涙目でヘタり込むと、今まさに己を貫こうとする矢の先が目の前のところで静止する。


 そしてその兵士がゆっくり辺りを見回すと同じ様に無数の矢が仲間の兵や民衆の前で宙に留まり浮かんでいた。


「はぁっはぁっ、た、助かった...?」



 颶は念動力で受け止めた全ての矢の向きを180度変え弓隊や皇帝席に飛ばし返すーーー


「ぎゃあぁぁーーーっ」

「ぐわっっ」

「なっ相手は魔法を使うぞ気を付けろぉ!」

「ひやぁっ危ないですゾ~~~!!?」

「ゆ、弓隊っ打ち方 止めぇ~ざまぁっす!!」

 

 まさお達と戦っていた兵士らが弓隊の次射が来ない事にホッと胸を撫で下ろすと、先ほどヘタり込んだ一人の兵士が颶を見上げボソッと呟いた...


「敵の俺達も...守ったのか?」



 そして次第に混乱から冷静さを取り戻していった兵士らは、統率に長けた兵隊長のもと怪我人や民衆を避難させつつ増援される兵と隊列を組み まさお達に包囲網を敷いていく。


 この戦いにおいて身体強化している まさおやバリアを張っている颶とは違い、スーツのアームだけを腕に着け重いスティールスーツを背負って戦う博士・四十代には分が悪くまさおと颶のフォローはあるもののやがて敵に狙われ始めていく。


「「博士殿ぉ助けに参ったカナサネーー!!」」


 そこへトルネとネルコが博士を襲う兵に突撃をかました。

 

「なぁっ!? トルネさんネルコさん一体何を!!」


「「ふっ、博士殿。危険は慣れっこですカナサネ、それに恩を仇で返すつもりはないと言いましたカナサネ。 それと...その面妖な鎧は何ですカナサネーーー!!?」」



 満面のドヤ顔を浮かべるトルネとネルコが博士のスティールスーツを見るなり急に目が金貨マークへと変わると、ナタリカも負けじと まさおの加勢に入り敵兵に剣を振るうーーーが、


「いや殺しは駄目だ。」


 ゴロンッ


 ナタリカが敵兵士の頭を叩き切る前にまさおに真剣白刃取りされ横に転がされる。


「「えっ!?なんでっっ?!?」」


 ナタリカがビックリした。


 助かった兵士がビックリした。



 そこへ遅ればせながらブランカと結局 あとをついてきたクラリが参戦する。


「フヌ、人助けを目的としその為に力を振るうとも殺しはせず。それでは敵は増える一方ですな、それでも茨の道を突き進むおつもりですか?」


「無理よ無理っぜぇ~ったい無理ぃ!! そんな意地を通せると本気で思ってるの!!!」


 ブランカがまさおに問うとクラリも泣き怒鳴りながら まさおに罵声を浴びせるーーーが、



「手前にもわかりませぬ」



 まさおがかぶいた。



 それから周囲を見渡して敵兵も含めまだ誰も死人が出ていない事を確認したブランカは、不殺ころさずがまさおの頑固によるものではなく博士や颶の総意なのだと理解すると即座にナタリカとクラリへ不殺の戦法を指示する


「あ~もうっ 死んだら絶対許さないからね 覚えてなさいよ!」


 クラリは嫌味と呪いを発しながらも素早く小回りを利かせ敵兵士の手足を狙い剣を振るうと その横でーーー


「おぉ 全てを救うと言うのか...なんたる崇高なる思想、まさお殿っこのナタリカ何処どこまでもお供致します!!」


 ナタリカがまさお教に入信した。



 そしてまさお達が圧倒していた戦いにも次第に変化を向かえる。


 始めは王族主催の催事をぶち壊すという驚天動地による混乱と、ごく少数の謀叛人むほんにんという油断から劣勢を強いられたイシュダリア兵だったが、王族主催の警備に就く兵士は皆 選りすぐりであり、まさお達の強さを見るや有象無象に襲い掛からず指揮者のもと隊列を組み牽制と連携を持って攻撃を仕掛ける。


 その波状攻撃と今なお増援され続ける兵に形勢はいつしか押される形となった。



「ふんぬっまだまだぁ、ネルコがカチュイ地方の盗賊に贋物商品を売りつけて追われた時の方が大変だったカナっっ」


「そうサネ、トルネが東ドルゴーの豪族に不良品を売って捕まりそうになった時に比べれば余裕サネ!!」

 

 そんな中トルネとネルコが互いの詐欺行為をシレッと暴露しながらも周りの兵士らが『何っあのトンズラマスターのインチキ商人か!?』と反応を示す程【ガラクタ売りのトルネ】と【贋作売りのネルコ】の名は伊達ではなく、戦闘力こそ無いもののショルダーバッグやウエストポーチから煙り玉や幻覚香に痺れ水などの小道具を取り出しては場を撹乱し博士をサポートする。


「トルネさんネルコさん ありがとうございます助かりました。」


 博士が二人に礼をしながらスティール アームから発射する圧縮空気砲コンプレストゥエアガンで相手を一人一人吹っ飛ばしていくが、その表情は焦りを見せる。



 博士が背負う戦闘特化型ガジェットモデルのスティールスーツには


光線連射機関砲ガトリングレーザー

小型武装目標捜索機マイクロアームドドローンシーカー

迎撃誘導弾リパルサーミサイル

低温放射器クライオレディエイター

装光線砲ショルダーブラスター


 ーーと強力な装備が内蔵されており、もしスーツを全起動し装着していればヘルメットのブレインマシンインターフェースで博士の脳波を読み取り、強力な武器でも急所を外す自動照準や細かな出力制御による非殺傷の無力化攻撃をする事が出来た。


 しかしエネルギー不足でスティールスーツのアームしか着けていない今、全ての装備は手動操作・手動照準となり誤射や出力を誤れば敵兵だけでなく民間人にも死人が出かねない為、間違えても死人のでない圧縮空気砲コンプレストゥエアガンのみで戦うのが現状だった。


 

 一方 まさおも内氣功の身体強化能力によって既に敵兵150人以上はぶっ飛ばしていたが、それでもその表情には博士と同じ様に焦りが見えた。


 まさお一人ならば氣と体力が尽きるまで一日中でも戦い続ける事は出来るだろうが、それでは次々と湧いてくる兵士に博士やトルネ達にナタリカらの体力が保たないのは明白である。


 その為、まさおはずっと突破口を模索しながら戦っていたが予想以上に集まる兵士・兵隊としての熟練土は高く、思わず舌打ちが出る..


 まさおの能力・内氣功は身体と五感を強化して【攻撃力】【防御力】【索敵】【回避】【回復】を高め戦闘に特化した能力ではあるがその実、多対一には向いてない。


 勿論 『一人で』『時間が無限』ならば大勢の相手でも無類の強さを発揮するが、今回の様な時間に追われる戦いならばその弱さは露呈する。


 早い話 まさおの【通常攻撃は一回攻撃】の一拳ワンパンであり、そしてそれは今の博士も同じである。


 故に相手と同じ数だけ攻撃しなければならず、更には一撃一殺が出来なければ その行動コストは上り、相手を倒す以上に兵が招集・補充されれば事態はますます逼迫ひっぱくしていくのだ...


「クッソ...寧々に電子は何やってんだよ。」


 だからこそ まさおは歯噛みする。もしこの場に【通常攻撃が全体攻撃】の寧々や電子が居たならこんな状況など簡単に打開し撤退出来ていたであろうから。


 

 そして颶はというと、己の能力の一つ念動力サイコキネシスは基本的に手で操作する為に現在は片方の手で獣人の子供達を念動力のバリアで守りながらも、もう片方のサイコキネシスで相手を攻撃しつつ博士達の守護に徹する...だがその顔は【やっちまった感】を出しながらスーンと冷や汗を掻いていた。


 今だからこそ自分が始めに獣人の子供達を連れて空へ逃げ、トルネ達が参戦する前にまさおが博士を連れて脱出すればこんな窮地に陥らずに済んだのだと...


 しかし子供をも殺す制度とそれを煽る周囲に少し痛い目を見せてやろうと怒りで冷静さを欠いた己の未熟さに颶はまた怒りが込み上げていた。


 まさおが博士をおぶって逃げるとしても颶の念動力では許容量超過キャパシティオーバーで残りの七人を連れて空へ飛ぶ事は出来ない。


 ーーかといって取りあえず子供達だけでもと自分がこの場を離れれば、途端に先程の仲間もろとも射抜く矢が再び放たれる...


 颶達は完全に撤退の機を逃していたのだ。



「はわわっ減るどころかますます増えていくカナっっ!?」


「このままじゃジリ貧サネ! 」


 トルネとネルコが叫ぶと、そこへナタリカが一歩前へ出て仁王立ちしながら矜恃きんじる。


「まさお殿ぉっ、此処ここはこのナタリカが殿しんがりを努めます! 皆は振り向かず行ってください...そしてどうか.....ナタリカという騎士がこの世に居た事を時折想って下されば本望ーーーさぁ行かれよ!!」


「いや無理だから副長、私達三人でやっと一人倒せる程度だから...」


「そもそも周囲全体を囲まれておるので殿しんがりの意味を成しませヌ、まずは突破せん事には。」


 まさお教に盲信し毒されたナタリカが己の力量を考えず格好いい事を言うが敢えなくクラリとブランカに却下される...


 ナタリカは天然だった。



「いや、ナタリカさんの言う通りやるしかねぇ!颶さんその子供達を避難させて出来るだけ早く戻って来てくれっその間 俺が何とかする!!」


 だが まさおは、パッと見でも既に千人は超えるであろう兵士らが周囲を囲んで出入り口さえ塞ぎ、もはや一点からの強行突破と言えるレベルでは無いと判断すると空からの撤退を進言する。


「駄目また矢が飛んでくるわっ、私が居ないと此処ここにいる全員がーーー」


「いや颶君、まさお君の言う通りだ。今は相手も統率されて動いてる以上 味方ごと射られる様な指揮は取らないハズだ。私達だけなら何とかなるし最悪スーツのガジェットを使う!」


 颶は少し逡巡するが博士の言葉に一刻の猶予もないと覚悟を決め、まずは獣人の子供らを避難させるため空へ飛ぼうとした瞬間ーーー


「颶さん上だっっ!!」


「っっ!!?」



 ーーードゴォオオォォォンッッ



 まさおの声に颶は咄嗟に上へ念動力のバリアを張ると上空で大爆発が起こった。


 突然の事にまさお達だけではなく敵兵士ですら何が起こったのかと周囲を見回すと、闘技場の出入り口の一角から黒のローブを身に纏った集団が現れ、その先頭に一歩前へ出た紫髪の女が大声で発す。

 

「皆遅くなった!我はイシュダリア魔法兵団を率いるはデスラム王 眷属 五眷聖ごけんせいが一人 《 賢聖けんせい ガーナ レリコフ 》である! この重大なる王族主催の催事を汚すとは万死にあたいっ 骨すら残らぬと思え!!」


「おぉっ 賢聖ガーナ様!」


「ガーナ様が参られたぞ!」


「皆下がれっ巻き込まれるぞ!!」


 その賢聖と呼ばれる者の登場に兵士らから歓声が沸き上がると同時に、指揮者が兵士全員を下がらせ守りを固めた


 そして賢聖ガーナが前方へ手を振り、後ろに控えた部下の魔導隊三十人が一斉に詠唱をし始めるーーーすると上空に魔方陣が展開され そこから無数の火の玉がまさお達に降り注いだ。


 

 ドドドドドドドドドドオォーーンッッ



「くっ!!」


 颶は上空に手をかざし、降り注ぐ火の玉を念動力で防ぐ...だが火の玉は颶の念動力に触れると次々に爆発を起こし、炎は届かないまでもその肌を焦がすような強い熱気がチリチリと伝わる。


「くそっーーー」


 まさおは瞬時に唯一の逃げ道であった空への退路を確保するため、猛スピードで魔導隊に突進し攻撃を仕掛けようとしたーーーが、


「ぐぁっ!!?」


 何処どこからか投げつけられた まさおの身長と同じ程の鉄棍棒メイスがまさおの横腹にめり込み、そのまま闘技場の中央まで派手に吹っ飛ばされた。



「ガハハッ小僧にしては中々の判断と動きだが、魔法隊の防衛は戦いの基本だぞ?」


 そう言いながら次に現れたのは身長2m50cmはある巨漢の中年男で、その身に纏う分厚い鎧の重さを全く感じさせない程に軽やかな足取りで魔導隊の前へやって来る。


「ガハハッ おっと紹介が遅れたな。イシュダリア重装兵団を率いるはデスラム王 眷属 五眷聖が一人《 堅聖けんせい ダナ ゴラン 》様とはワシの事だっ ...ともう聞いてはおらんか? ガハハハハッ 」


 そして高笑いをする堅聖ゴランの後ろを50人程の重装兵達が魔法兵団を囲むように立ちはだかった。



「ままままさお殿ぉ!? まさお殿が殺されてしまったカナ~~っっ」


「お、終わったサネ...イシュダリア最強の五眷聖が出て来てしまったらもう勝ち目は無いサネ.....」


「やだやだ...死にたくないよぅ」


「うヌ...」


 トルネとネルコが膝から崩れ落ち、クラリやブランカも絶望の顔を覗かせる。しかしナタリカだけが堅聖ゴランに向き直り まさおの仇とばかりに殺気を放つとーーーーー



「ぬがーーーーーーーっ!!!」



「「「「まっまさお殿っっっ!?」」」」


「生き返ったですカナーーーーー!!?」


「くそ油断したぜっチックショウ.....いや死んでねぇよ?」


 まさおが雄叫びを上げながら飛び起きるとナタリカ達だけではなく場内の兵士ら・客席・眷聖・デスラム王・トンガマ宰相と一同が目を見開き時が止まる ...そして僅かな静寂に包まれた後ーーー



「『「『 っええぇえぇぇーーーー!?!?」』」』



       《 クスクスッ 》



 闘技場の外にまで響き渡る程の絶叫が木霊した。



「だ、大丈夫ですカナっまさお殿!?てっきりもう駄目かと...」


「ん?あぁ肋骨何本か折れたけど治した。」


「あんたも大概ね...」



 まさおの規格外にクラリが唖然とすると闘技場内にいた者達も皆一様みないちようにに呆然としていたが、その静寂を打ち破る様に誰かがボソリと呟く。


 『お、おい、あのガキ...堅聖様の一撃をまともに喰らわなかったか?』


『あ、あぁ俺にもそう見えたが...』


『いやきっと手加減されたのさ。相手は子供だからな?』

『なるほど、堅聖様が子供相手に本気を出す訳がないよな!』

『なんだそ~ゆ~事かぁ』


『『『ワ、ワハハハハハ~~~』』』



 そして場内が先程の殺伐とした空気から少しマヌケた和やかな雰囲気へと変わると、依然 固まったままの堅聖ゴランへ同じ重装兵団の副長が声を掛ける


「ゴラン様。」


「 ........。」


「 ...あの、ゴラン様?」


「ハッーーーあっガハハッ 確かに子供相手に無意識に手を抜いておったのかもな? 何せワシは堅聖ゴラン様だからな~~ガハハハハッ」


「それは勿論 ゴラン様が本気を出せばあんな子供ごとき跡形も無く吹き飛んでおるでしょう、その慈悲深さ感服いたします! しかし子供とは言え王族に逆らう逆賊であり王の御前、情けは無用に御座います。」


「わ、分かっとるわっ!!」


 そう言いながらゴランはまさおに投げつけた鉄棍棒を拾い、そのまままさお達に向かって重装兵団共々 進み始めるーーー



「「ひぃっ今度こそ終わりカナサネっ!?」」


「ヌゥ、ならば老い先短い我の命から持っていけっっ!!」


「共に行こうぞっ 不肖ナタリカ参る!!」


 トルネとネルコがお互い抱き合いながら泣き叫び、ナタリカとブランカは命を賭して剣を構える...


 

 だがクラリだけは別の所を見て一人 身震いをさせていた。それは昨日 公園で見た悪魔ーーー



 いや、まさおの顔.....



 そしてホントにヒーローか?と思うその男は静かに囁く...




「まだまだ俺のターンだ。」





今日は おざわむかいです。


読んで頂き誠に感謝です(>_<)


 ただいま、過去に投稿の修正に挿し絵を描いたり書くのが遅いくせに別の小説も書き始めたりとダメダメな者では御座いますがもっと面白くなっていくとは思いますのでどうぞよろしくお願いします。


 ちなみに挿し絵がある程度 貯まったら一気に載せていくと同時に別小説も載せていきたいと思いますので、楽しみに待っていただければ本望です。が、一話くらいは先に載せてみようかなと思う次第でございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ