表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/26

第10話 決戦 序列第7位国 王都イシュダリア 【Ⅰ】


 寧々達一行がフィボコ馬車にて峠を疾走する明け方、王都城下町にある安宿の一室でまさおがイビキを響かせる


 博士と颶にトルネとネルコの四人は朝早くから出かけ、セントリーズ傭兵騎士団の三人 ナタリカ・クラリ・ブランカがいつもの如く まさおのお目付け役として宿に残り、まさおの寝る部屋のテーブルで朝食を取っていた



「ねぇ副長っ私達いつまでここにいるのよ! トルネさん達を王都まで護衛するのが契約でしょっ? もういる必要はないじゃない!!」


 クラリはテーブルを激しく叩きながら、恨めしそうにまさおの寝るベッドへと目をやり叫んだ



「落ち着けクラリ、まさお殿達には命を救って頂いたご恩がある。セントリーズの名において恩を忘れ仇で返すは末代までの恥...今暫くは微力ながらも力になろうと思う。」


 そういってナタリカは飲んでいたティーカップを静かに置いて諭すがクラリは全く聞く耳を持たず、今度は老人騎士のブランカがクラリを軽く叱咤する


「これクラリ、静かにせヌか、まさお殿が起きてしまう。」


「ヌガーーーッ!!何よそれっどんだけ過保護なのよっってゆーか私がオカシイのっ? ねぇっ!!」



 クラリが少し涙目になりながら手足をバタつかせゴネ続けるが、そんなクラリの気持ちもブランカは内心察してはいた。


 このまま まさお達といる事は王家反逆の罪で死刑確実である以上、すぐにでもその場からの離脱を考えるのが至極当然だろう。


 しかし、頑としてまさお達と離れようとしないナタリカを置いて去る事は出来ない...



 まさお達に救われたあの四つ目狼の時の様に【任務遂行の為】ならば仲間の命を切り捨てる等の選択肢も苦渋の決断としてありえるが、現状として命の危機に瀕死てもいない今 ナタリカを置いて立ち去るのはただの薄情であり裏切り行為でしかないからだ。


 勿論 騎士団の団員として副長を支えるという使命もあるが、それらの感情を全て抜きにしても彼等の中にある絆は既に家族と遜色ない


 

「クラリ、ブランカ、これは私の我が儘だ、無理に付き合う必要もないし責める事もしない...だからお前達だけでも団に戻ってもいいのだぞ?」

 

 そういってナタリカが優しくクラリに微笑むと、頬を膨らまし唇を出した拗ね顔のクラリが小さく呟く


「出来る訳ないじゃない もぅ...副長ズルい。」



 ーーーなどと優しい空気が流れ、そんな光景を微笑ましくブランカが見ていると「仲間っていいよな~~、仲間っていいよ...うん、だって心がホッコリするもの。」と『志村○ん』のキャラの様な事を言って まさおが起きた。


「ちょっ、いつから起きてたのよ!? っていうか いつから聞いてたのよ! いつから!!?」


 なんか恥ずかしい所を見られたとクラリが耳を真っ赤にして叫ぶと、まさおは頬を膨らまし唇を出しながらーーー


「もぅ...今起きたばかりだよ。」


「ぎゃーーーーー死ねーーー!!?」


 

 また騒がしい朝が始まる...

 


 そしてまさおが朝食を取り今日も町をブラつこうと宿から出ると、昨日よりも人通りは多く 町行く人々の流れは同じ方向へと続いていた。


 その人ごみの中には何処か浮かない顔をする者も多数おり、少し変に思った まさおがナタリカ達に尋ねると本日は罪人を公開処刑とする催事が国を挙げて行われるらしいとの事だった。


 その話を聞いて一瞬まさおの眉がピクリと釣り上がるが特に何も言わず押し黙る。



 何故なら地球においても日本や他国で死刑制度は存在し、まさおはそれについて別段【否定派】でもなければ【肯定派】でもない


 それは一般の人達の感情と同じ様に、殺人を犯した凶悪犯罪者が死刑ならば被害者遺族の事を考え仕方なしと思う反面、だからと言って死刑になる者にも哀しむ善人の親を思えば声を出して自業自得と肯定する気もないからだ


 まさおにとっての正義とは『困っている人を助ける』『悪いと思った奴はブッ飛ばす』であり、その先の犯罪者の裁定・量刑という司法の領分には踏み入らず、一個人いちこじんとして犯罪者に下された量刑に対し重い軽いの不満を思う事はあれど異を唱える事はしない


 故に【公開処刑】という部分には引っ掛かるものの、この異世界においても司法に首を突っ込む気はサラサラなく ナタリカ達はそんなまさおを見て深い深い溜め息をついた



「.....何だよ。」


「あっいえ、流石にまさお殿も『罪人でも一つの大事な命だ』と救う事はしないのですね。」


「あたりめーだろ、自分を万能の神とは思ってねーよ。」


 

 ナタリカ達がホッと安堵すると、ブランカもふと疑問を呈す...それはこの第7位国イシュダリアにて公開処刑とは大変珍しいとの事だった。


 この異世界・そして十つ国自体では公開処刑など普通にある事なのだが、王都イシュダリアだけは現君主 デスラム王という人物は争いや血を見るのが苦手な性格との噂で、十つ国の他国と比べても圧倒的に罪人死刑数は少なく、その分 炭坑奴隷や奴隷兵行きが多いとされるのは周知の事実であった

 

「確かにこの国で【公開処刑】なんて変ね...っていうか私19年間 一回も見た事ないわ?」


 突然のクラリの年上発言に少し動揺した まさおがそれを悟られない様にしていると、ナタリカが顎に手を当て思案する。


「今まで執り行われなかった事をするという事は、何か通常の公開処刑とは違う異例さを感じるな...」


「フヌ、少し様子を見に行った方が良いかも知れませヌな。」



 ナタリカとブランカの言葉にまさお達は今から行われる催しを観に行く事となり、人々の流れに続いてその先へ進むと そこには古代ローマのコロッセオを彷彿とさせる円形闘技場の建物が目に入った。



 その高さ60mはある建物は火山灰を利用したコンクリート施工で作られ、直径250m、短径200m程の楕円形で出来ており、外観を飾る装飾としてギリシャ神殿のドーリア式やコリント式の様な壮大で立派な柱が各所に建ち並ぶ


「おぉ~すげぇ。」


 まさおが感慨の息を漏らしながら闘技場の八ヶ所ある入場アーチの一つをくぐり抜けると、そこには闘技舞台を中心に客席が棚田のように広がり天井部分は開放され まさに圧巻の一言だった。



 そして まさおが周りを見回すと、闘技舞台には一般人と思われる群衆で溢れ返っており、2階以上の客席部分には宝飾品を着けた身なりの良い服装の者達、更にはその三階位の高さの一角に皇帝席とも呼ぶべきだろうか豪華な天幕が張られ 周囲には物々しい程の兵隊達が厳重に警備警戒していた



「お~い、まさおくん!」



 その呼び掛けにまさおが振り返ると遠くから手を振る博士に颶、トルネとネルコがいた。


「何だ 博士達も来てたのか。」


「おぉまさお殿も来ましたカナ、確かにこの国では珍しい事ですからな。」



 まさおが博士らと合流すると、今回の催事について色々聞き回ってたトルネから詳しい情報を教えて貰う



 それは先日、十つ国 序列第4位 オラリウム法皇国・現君主の再従兄弟マタイトコがこの第7位国イシュダリアへと観光バカンスに訪れた所から始まり、何でも何者かに殺害されてしまったとの事だった。


 そしてその時に人は拘束されているのだが、当然 相手国の逆鱗に触れる事となり、第4位国の宰相 直々にこの王都へと訪れ 今回の公開処刑を取り仕切ったというのだ


「フヌ、なるほど。それでは地下で処刑する訳にもいきませヌな...民への見せしめだけでなく、ここまでしたという第4位国への配慮もせねばなりますまい。」


「妥当ですね、十つ国の王様 全員が遠縁の親戚なので争う訳にもいかず体裁も保てるのですから。」


 

 ブランカとナタリカが納得するのを横目に、トルネとネルコはハラハラしながら まさおを見ていた


「.....何だよ。」


「「いやぁ流石にまさお殿も罪人を救ったりは~~しないカナサネ?」」


「もう その下りやったわよ。」


 トルネとネルコにクラリがツッコむ。



「それでトルネさん、公開処刑とは一体 何をするんですか? 場合によっては...いや いずれにせよ死刑ならば まさお君には【R指定】の【R36+】だから見せないようにしないと。」


「いや過保護すぎんだろ博士!?聞いたことねぇよってか36歳以上が観覧可能ってナニ!?」


「また訳分かんないことを、怪しい。」


 博士とまさおにクラリがツッコむ。

 


 そしてトルネが言うには、この大陸での一般的な処刑方法は斬首刑であるという。ただ十つ国で主に公開処刑を行っている序列第1位~5位までの上位国に関しては、処刑とは王族・貴族を楽しませる娯楽的な要素が強く、その為に趣向を凝らした変則な処刑方法が目立つとの事だった


 そんな話をしている内に闘技舞台の中心では兵士達が処刑台を完成させる。同時に辺りがざわめき始め皆が闘技場 皇帝席へと目をみやると、そこにはトルネ以上に恰幅の良いでっぷりとした中年男が皇帝席の真ん中の豪華な椅子に腰掛けた...



 その男こそが 十つ国 第7位国 王都イシュダリアの王 デスラム王である。


 そして右隣にはやはり豪華できらびやかなドレスに身を包む上品で物静かげな王妃が続いて座り、その後ろにやたら格好の良い女性が立つ。



「はあぁぁ~、憂鬱ゾ...何故こんな事に。私はこういう事が苦手とあれ程.....カルラ、お主この国の宰相として何とか出来なかったのか?」


 顔を青ざめさせながらデスラム王がボヤくと、王妃の後ろに立つ宰相と言われたその格好の良い女性は王にへつらう事もせず凛と言い放つ。


「無理ですね。第4位国の宰相とこんな田舎者国家の宰相わたしとでは権威に差異がありすぎます。ご自身で申されては如何ですか?」


「うぬぬ、それが出来たら苦労せんゾ...」


「まぁそうですね、血を見たくないという理由だけで王族に仇をなした罪人に情けをかけては民にも相手国の王にも他王族の方々へも示しがつきません、これは必要な事です。」


 カルラ宰相が王相手に冷たく突き放すと、そんなやり取りを王妃は表情どころか目線すら動かさずただ前を向いて微動だにしない。



 そこへもう一人、今回の公開処刑の立役者となった第4位国 宰相のド派手男が皇帝席にやって来る


「お待たせして申し訳ござぁません デスラム王。処刑は芸術!少し準備に手間取りざまぁした。」


「おぉトンガマ宰相 別に構わんゾ、何ならもっと時間を掛けても構わん...いっそ延期に?」


「フフフッおもろい御冗談ざまぁす」



 トンガマが皇帝席から闘技舞台を見下ろすと周囲に待機する兵に合図する


「さて、民も集まりざまぁしましたな。それではデスラム王よ、そろそろ始めざまぁす...」


 

 その言葉と共に闘技場 各所に配置された楽器隊が演奏を奏で始め、闘技場の客席からは歓声が上がる。


 そして闘技舞台 中心に設置された処刑台の上には本日の公開処刑・司会進行役を任された一人の男が静かに面持ちを上げると次の瞬間、闘技場に割れんばかりの大声を発すーーー


「さあ~~~紳士淑女のお集まりの皆様ぁ 此度は我が第4位 オラリウム法皇国 主催 追悼の儀にお越し頂き誠に感謝致します!

 既に御存じの方もいらっしゃるとは思いますがそれはつい先日、大変痛ましい出来事から端を発します...そう 何とオラリウム法皇国 法王様の近しき御親族の御方が、このイシュダリアの地にて不浄なる者の手により殺害されてしまったので~す!!」



 司会者が芝居じみた口調で話を進めていくと、会場では乗せられた観客達から罪人に対する怒号が飛び交う


「皆様のお気持ち痛み入ります、私も全く同じ思いで御座います。親愛なる王族の御方に仇なす所業を断じて許すまじ!

 これからその罪人に神罰を与え、命を対価に償わせ、偉大なる亡き御方の追悼へと捧げたいと存じます


  .....さぁ罪人を此方の処刑台へ!!」



 「「「「「おおオぉおォぉーーー」」」」」



 会場が異常な興奮と熱気に包まれるなか、数ある入口の一角から数人の兵士と身長2メートル以上はあるガチムチの巨大な戦斧せんぷを持った如何いかにも処刑執行人ですみたいな大男が入場する


 そしてその後ろを鎖に繋がれた罪人が引きずられるように処刑台の方へと向かう...が、それを見たまさお達は絶句した。



 処刑台の上に立たされた罪人の姿とは、まだ幼い姿をした獣人と亜人の女の子が か細い足を震わせながら立っていた...


 それには まさおや博士に颶だけではなく、ナタリカ達やトルネ達...そして集まる一般市民の群衆ですらその光景を理解できず困惑する。


 「あの...あんな小さな子達がその王族の人を殺せるものなのですか? 」


 颶が明らかに不信感を抱きトルネに尋ねると、当然トルネは横に首を降った。


 先のチンベルグ自治領の領主のような王族 遠縁の者とは違い、国王の十親等ほどの近親者ならばその身辺は精鋭の兵士達によって警護され一般人はおろか奴隷など近づく事さえ出来なく、当然 王族の殺害が奴隷の子供などと本気で思う者は誰もいない...


 しかし此度の【第4位国 主催】の【茶番劇こうかいしょけい】に【第7位国】の者達が異を唱えられる筈もなく、それは下位国のこの国の王ですら例外ではなかった。



「さぁ御覧くださいっ穢れた血を持つ悪魔の顔を!この小さき身体を利用し亡き御方の寝室へと忍び込みその喉に刃を突き立てたのです!!

 その非道なる所業に首を跳ねるだけでは生ぬるいっ先ずは四肢断切ーーー後、斬首とする!処刑人前へ!!」


 いよいよ処刑執行が間近となった司会者の弁舌に、ただ処刑という娯楽を楽しみたい者や王族の機嫌を損ねないよう周りに合わせる者など様々な感情が入り乱れつつも、会場は大いに沸き立ち狂喜に満ちた歓声が響き渡った。



「あ、あのトンガマ宰相...やはり労働として使った方が良いと思いますゾ? まだまだ幼きゆえ勿体ないかと.....」


「ほほう、死ぬまで国の礎にさせるとはデスラム王もお人が悪いw  ですが此度の件は【この国で起き】、【この国の警備の甘さ】が招いたと諷刺ふうしする国もある以上、デスラム王が率先して罪人を処刑し我が国と和解をしたとの体裁は必要ざまぁすよ?」


「う、うむ....」


 デスラム王は幼い獣人に対する一縷いちるの情か単純な血嫌いかはともかく、トンガマ宰相へまさかの処刑の取り止めを打診したが敢えなく一蹴される...

 


 詰まるところ今回の王族暗殺の事件、真犯人など互いの国にとって【全くではないが】どうでも良いのだ。


 それは第7位国 イシュダリアとして犯人が誰であろうと結局は自国で第4位国の要人が殺された事に責任を取らねばならなく、又 暗殺されてしまう程の警備しかしてなかったとなれば下位国が上位国を軽んじているとさえ取られ他国への申し開きも出来ない。


 そして第4位国としても君主の近しき親族がイシュダリアで殺され犯人が分からない捕まらないでは、上位国の面子上 イシュダリア王国に手を振り上げ強硬姿勢を取らざるを得ず 長引けば国交にも支障がでる...


 故に取り敢えず犯人をでっち上げ処刑し和解する...それが茶番であっても互いの国交・貿易を考えれば王族貴族どころか市民ですら暗黙の了解と口をつぐむだろう


 もし第4位国の君主と暗殺された又従兄弟しんぞくが親しき仲ならばこうも簡単にはいかなかっただろうが、そうでなければ利益優先とし真犯人などは後で内々に突き止め処分すればいいだけであり、その生け贄として処刑台に立たのが幼き獣人というだけであった。



「いや~でもこれは仕方ないですカナ、真実は分からない訳ですし何より今後の事を考えればここで騒ぎを起こしてはーーーーー」



    バンッ 「ぐわっ」

 


 トルネがいち早く空気を敏感に察知しまさおに釘を刺そうとしたが時すでに遅し。


 まさおのバスケットシューズが司会者の顔面にブチ当たると、まさおはそのまま処刑台上へと跳んで司会者の目の前に迫った。



「んなっな!? 何ですかあなたは~っ 王族追悼の儀を邪魔なさるとは無礼にも程があります!今から王に仇なす大罪人の処刑をーーーゲフッ!!」


 突然の事に慌てふためく司会者の腹にまさおが強烈な前蹴りを食らわせ吹っ飛ばすと、周囲も又 突然の事に静まり返る...



 そして まさおは処刑台の上に立つ幼き獣人らの元へと進むと【その二人の子供】を優しく抱きしめ呟いた...


「もう大丈夫だ。何があっても俺が守ってやっから...もう大丈夫!」


 その包容に獣人の子供達は涙をポロポロこぼしながら口を開く


「でぼ、わだぢたちが罪をみどべないど家族達かどくだぢも殺ずっでーーー」


 それでも まさおは優しく満面の笑顔で答える


「大丈夫!家族も友達もそうでない奴等も全部 俺が守ってやるよっだからもう大丈夫!!」


 例え嘘でも無理でも...一番欲しかったまさおのその言葉に獣人の子供達は大声で泣き出し、木霊する声は静まり返る闘技場の隅にまで響き渡った...


 それは幾ばくかの民衆の心に突き刺さるように.....



 しかしその光景を第4位国の宰相 トンガマは面白くないとばかりにワナワナと震えながら怒りをあらわにする


「なんざまぁすかっっ我が国 主導の神聖なるもよおし事に土足で踏み込むとは冒涜ざまぁす!許せないざまぁす!!絶ぇ~~対に許っせないざまぁ~~~すっっ!!!」


 トンガマの怒号に我に返った会場の特に貴族席の者達がそれに合わせるように まさおに罵声を浴びせ始めた


「引っ込め~!」

「罪人を庇うとはどういう了見だ!!」

「王族に楯突く気かっっ!」

「聖なる場を穢すなんて何処の下民よ!!」

「あいつも捕らえろ!」

「あいつも罪人だ!!」

「処刑だっ!」


「「処刑っ!!」」「「処刑っ!!」」「「処刑!!」」



 次々とまさおに対する非難の声が大きくなり会場を包み込む。


 だが まさおは動じずゆっくりと皇帝席へ振り返ると、喉に内氣功を溜め何万もの大観衆の声を掻き消す程の大声で怒鳴った。


「 うっせぇーーーークソ共がぁ!!! 王族なんざボンクラ知ったことかぁーーーーーっっブチ殺すぞぉっっっ!!!! 王だろうが神だろうが誰だろうがカカッテコイヤァ~俺は まさおだぁバカ野郎!!!!!」



        《 クスッ 》



 地獄の...いや天国の大沢親分も真っ青な まさおのかつに、逆に顔を真っ赤にした宰相トンガマは まさおの横にいる処刑執行人にGOゴーサインを出す


「えぇ~い不愉快ざまぁす!こんな侮辱は生まれて初めてざまぁす!! 執行人っっ、まずはその小僧からやってしまうざまぁす!!!」


 この言葉に二人のガチムチ処刑執行人は持っていた巨大戦斧を大きく振り上げまさおに振り落とそうとするーーー瞬間、まさおは博士と颶に向かい申し訳なさそうに笑った...



「わりぃ博士、颶さん...やっぱ俺ダメだわ。ほっとけね~よ....あとは俺一人で何とかすっからーーー」


       ゴンッ ガンッッ 

    

     「ぐおっ!?」 「がはっ!!」


 しかし まさおが言い終わるよりも先に颶の念動力サイコキネシス何処どこからか吹っ飛ばされてきた兵士らが処刑人の二人にブチ当たりボーリングのピンの様に弾き飛ばされると、博士と颶は処刑台の方に向かい歩いていく


「はぁ、まさおは本当に馬鹿ね、何にも分かってないわ...」


「颶君の言う通りだねぇ...確かに今後の事を考えて戦うなとは言ったけど私達も一応ヒーローだよ?」



 そう言いながら二人は処刑台の上にのぼり皇帝席を静かに見据える...そしてーーー



「子供が殺されるのを黙って観てる訳ないでしょうがーーーっっ!!」

「子供が殺されるのを黙って観てる訳ないだろうがーーーっっ!!」



 それは先程ぶちギレてた まさおが一瞬怯むほどに博士と颶は超絶ぶちギレていた。


 博士はスティールスーツのアームだけを腕に装着させ、倒れているガチムチ処刑人の足を掴むとそのまま皇帝席へ ぶん投げるーーーと同時に颶も念動力で処刑人を皇帝席へと吹っ飛ばした



  ドガガンッ バゴォォーーーン !!



「ぎゃあぁぁ!? あっ危ないですゾーー!」

「何者ざまぁ王族にこん..前代未聞ざまぁす!!」

「王妃様お下がりください!!」


 もうスピードで突っ込んで来た二体の処刑人が王の玉座を派手にぶっ壊し、間一髪のところで王や宰相が避けると皇帝席では大パニックが起きた。


 このカンダミリア大陸が王族至上国家になってから千年、ここまで王族にケンカを売った者などいる筈もなく会場の民衆はまるで己が粗相を働いたかのように顔を青ざめさせ悲鳴をあげる。


 

 そして カンダミリア大陸 十つ国 序列第7位国 王都イシュダリアとの決戦が今 始まったのだ...



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ