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 日本のヒーローは異世界に行く前にも【やらかす】

 東京都千代田区オタクの聖地秋葉原。その駅前の三十一階建てのビルからツインテールのピンク髪の猫耳メイド姿をした女の子が出てくる。


「にゃ~日曜のお昼ともあって人込みでいっぱいにゃ~」


挿絵(By みてみん)


 そんなビルの前で軽く伸びをしながら能天気に呆ける猫耳メイドっ子に三人組のオタク達が声をかけてきた。


「おおー逸材発見!今日は此処のメイド喫茶で休憩しますかな?」「異議なしっ」「君のお店はこのビルの何階だい?」


 その三人のオタクに軽く詰め寄られ「またかにゃー」と小さく呟きながら項垂れるも猫耳メイドっ子は優しく答える


「このビルにメイド喫茶はにゃいし、吾輩はメイド喫茶の店員でもないにゃ~・・・っていうか、このビルも結構テレビで取り上げられてるんにゃけど~」


 タハハと笑いながらヤレヤレのポーズをする猫耳メイドっ子にオタク達の一人が何かに気付いた様に「あっ」と声を上げた次の瞬間ーーー


    「「「「ドオオオオオオオオオーーーーーーーーンン」」」」


 百メートル程離れた大通りの方で突如 大爆発が起こり、辺りは大混乱に陥る。そして怒号や悲鳴が飛び交い爆発のあった場所から人の波が押し寄せると、


「ななな…何が起こったんですかなっ」 「と、とにかく我々も退避しますぞっ」 「はっ早くっ…」


 そんな慌てふためくオタク三人組とは裏腹に、ネコ耳メイドっ子は人混みを縫う様に音もなく静かに…然れど素早く爆発地の方へと向かって行った。


「ちょっメイドさん危ないですぞっ」

「そっちへ行くのは危険っっ」


「い、いや恐らく彼女は大丈夫ですかな…」


 パニクるオタク二人に先程「あっ」 と声を上げたオタクが二人を制止する。


「だって彼女が出てきたこのビルって確かーーー


   ーーー日本ヒーロー協会東京支部」



 そしてオタク三人組に見送られたネコ耳メイドっ子が爆発現場に着くなり、近くの電柱へスルリとよじ登り辺りを見回すと、


 その爆発の中心であろう場所には大型のトラックらしき物が木端微塵に吹き飛んでおり武装集団がボロボロになって山積みにされていた。


「おーい、フィーリス~ こっちだ。」


 そのネコ耳メイドっ子を"フィーリス"と呼ぶのは、スーツを着た頭から爪先まで全身真っ白の出で立ちの三十代半ば程の男。


 フィーリスは頭に?マークを出しながらその男に話し掛けた


「"楯男たてお"にゃん…これは一体ど~いう事かにゃん…」


「いや…俺はちゃんと作戦を伝えたぞ。テロ組織の目標はヒーロー協会なんだから一般人に被害が出ないよう協会内部で迎え撃つってよ。………なのに "燃恵華もえか" が敵の乗ったトラックに突っ込んで他のAチームメンバーもそれに続いてよ。」


「まったく楯男にゃんの"バリアの能力"がなかったら周辺の被害甚大 大惨事にゃん…」


「まぁ俺が居たからだろ。それに世界五大テロ組織の一角"ヴィナシス"は超大物だし気合いが入りまくりだったんだろう。」


「んで、燃恵華にゃんや他のヒーロー達はどこ行ったにゃん?」


「別の場所に行ったよ。今回のテロの標的は[ヒーロー協会][国会議事堂][スカイツリー]の三ヶ所だろ?俺も此処が本丸と思って敵ボスを待ち受けたんだが、見ての通りハズレだ。まっ主力が揃ってたんで一瞬で片付いたが...」


「わかったにゃ、とりあえず管制室に連絡するにゃ。」


 溜め息を吐きながらフィーリスは耳につけた小型無線機でヒーロー協会 管制室と交信し、警察の手配をしたのち残りのチームの現状を確認する。


『あ~フィーリスさん聞こえますか~。管制室の"斧偽おのぎ"で~す。協会周辺に待機していた警察の部隊をそっちへ向かわせました~。あと協会内部で敵を待ち受けてた他のヒーロー達がスカされてエライ殺気だってるんで、Aチーム外部待機メンバーは暫くこっち来ないでくださ~い 喧嘩になるので~。』


「はいにゃ~」


『それと今 [国会議事堂] 担当のBチームもテロリスト制圧に成功したとの報告で~す。ヴィナシス首領確認せずで~す。』


「過去の経験上、敵ボスがテロを部下任せにした事は無いにゃ。って事は残るはCチームか…もしくは吾輩らが把握してない第4の標的があるって事かにゃ…」


『恐らく前者ですかね~。先程からCチームとは連絡がとれませ~ん。一応[第4の標的]の場合を考慮して各ヒーローには各々の現場待機を命じてま~す。』


「了解にゃ。」


 管制室との交信を終えたフィーリスは目蓋を閉じ祈る様に天を仰ぐ。


 それは今回ヒーロー協会が世界五大テロ組織ヴィナシスの壊滅を掲げる以上、敵首領の確保は必須であり本丸と予測された[ヒーロー協会]、次に[国会議事堂]へと トップヒーローの半分が投入されたのだ。そして[第4の標的テロ]があった場合に備え、一人でも対処できるよう残りのトップヒーローは東京23区の散り散りに配置されたのだった。


 つまりは[スカイツリー]に配置されたCチームメンバーは他のチームに比べ ヒーローの数も総力も格段に低く、そこへ敵主力との決戦にもなれば最悪の事態も考えうる。

 


 そんなフィーリスの不安と苛立ちを察した楯男が声をかけてきた。


「Cチームの事なら心配いらね~よ。確かに6人だけだが 、"博士はかせ"や"寧寧ねね"に"つむじかぜ"もいるし、"まさお"と"電子でんこ"ちゃんはトップヒーローに負けじと強いぜ。それに"杏子あんこ"ちゃんの能力なら死ぬことはー…


「ヒーローをナメるにゃ~~~っっっ」


 バチコーーーーーーーーーーーーーーン!!!

 

 フィーリスの本気の手刀じみた平手打ちが楯男の頬へ痛恨の一撃を喰らわせた。


「ぎゃあぁっ!? 何すんだフィーリスっっあった」


「楯男にゃんは分かってないにゃんっ。強ければヒーローに成れる訳じゃないにゃん。知力 体力 判断力 統率力 精神力 経験 人望 運 慈愛 純愛 情愛 敬愛 寵愛 友愛 聖愛 金愛 愛に愛に愛にィィッを持って初めてヒーローに成れるにゃんっ‼」


「それだと世のヒーローのほとんどが失格だろが。あと金愛って何だっ?」


「とにかく敵が下っ端ザコ ヒャッハ~な連中ならいざ知らず、敵主力相手に個々が強いだけでは危険にゃん!」


「それでも時間稼ぎ位はできんだろ。すでにAチーム外部待機メンバーは向かってるしBチームも編成して向かうハズだ、信じろよ…仲間を。」


 地団駄を踏みながら頬を真っ赤に膨らませたフィーリスもやがて落ち着き、再度祈る様に天を仰いだ。


「……」


「………楯男にゃん。斧偽にゃんが協会に"戻って来い"って言ってたにゃん…。」




 ……………時を遡ること十五分前……………。




 東京都墨田区にそびえ立つ世界で二番目に高いタワー[東京スカイツリー]。

 それを近くの東武橋とうぶばしにもたれながら見上げるのは茶色のブレザー女子校生服を着たミディアムヘアーの女の子。


「ねぇ…敵が予告状出して来たのって今回が初めてなんでしょ?もしこれがブラフなら どエライ事になるよね…」


「んでもよ~電子。ヒーロー協会はヴィナシスの日本潜入にゃ気が付がなかったんだ。黙ってりゃテロ成功したかもしれねーのにワザワザ犯行予告して迄 嘘つく理由あるか?」


 ミディアムヘアーを電子と言うのは全身黒ジャージにバスケットシューズを履いたボサボサ髪の青年。


「まさおのゆーとーりナメてやがんスよっこれは挑戦状っス!テロ組織の野郎共は止めれるものなら止めてみろって言ってんスよ‼」


 そしてボサ髪をまさおと呼ぶのは、バックパックを背負い横ポニテ髪のパーカーにカーゴカプリパンツを履いた下っ端口調の元気な女の子だった。


「おい落ち着け 杏子。」


「あ~ん。まさおこそナメられて何落ち着いてんスかっ。あれスか?Aチーム外されてヘコんでんスか?強い奴とれなくてワクワク出来ねっスからっ‼」


「テメェ俺は自分をオラと言った事はねェし年上やぞ! この中坊がっっ。おい電子っお前も何か言ってやれ‼」


「いやまさお?…それなら私 高三なんだけど…一応アンタのひとつ年上なんだけど…」


挿絵(By みてみん)



 そんな人目をはばからず 騒ぎだす三人を前に、四十代位のスーツ姿をしたビジネスマン風の顎髭男が声をかけてきた。


「こらこら何を騒いでいるんだ?作戦中に目立ってどうする君達...」


「あっ博士、周辺はどうでした?」


 電子が顎髭中年男を博士と呼ぶと、博士もまた両肩を上げながら静かに首を振る


「あぁまだ現れてないな。引き続き超小型ドローンで索敵中だよ。」


「そすか。つーか博士も今のうちアイア○マンスーツに着替えたら?」


 ぶっっっっっっっっ!!!?


「お、おい まさお君っ、前にも言ったが私の方が本家だからねっ。こっちが先だからねっっ!?」


「禁句っスよ…まさお。只でさえアイア〇マンのパクりだってネットに書かれて落ち込んでんスから。」


 グサッッッッッ


 まさおと杏子に博士のステータスシンボルであるヒーロースーツをイジられ博士は胸を押えてよろけた。


「まぁ博士は ここ2、3年の間 第一線から退いてたし若い子は知らないのよね…」


 グササッッッッッッッッ


 そして電子のトドメの言葉に博士は軽く泣く


「うぅ……。」


「ははっ冗談だってw。つーか博士はトップヒーローなのに何でAチーム行かなかったんだ?」


「何を言っとるか...君たち問題児のお守りに私以外いるのか?」


 まさおの問いに博士が答えるとーーー


「はぁぁぁぁ!?ちょっと博士っ今のは聞き捨てならないんですけど!!まさおや杏子ならともかく私まで一緒にされたくないんですけどっっ!!!」


「殺すぞ電子…」 「電子っち…」


 お子様三人が火花を散らす。



「あのね…君達も協会に登録されているヒーローとは言え、今回のテロリスト討伐に未成年を参加させる事など本来はあり得んのだよ。ただ君達三人に限っては【ほっとくと独断でヒーロー活動を始める】だろう?だから私が保護責任者として、仕方なく目の届く場所で戦闘被害の少ないであろうCチームに組み込んだのさ。」


「なるほど手の平だって言いてェんスね?」 

「ほほう俺の手綱を握れると?」 

「はーかーせーぇー!」


「いや違うからっ悪い方に取らないでくれるっっ!?君達の身を案じてだねぇ~~」



 そして より一層ギャースカ騒ぎだす四人の頭の中に突如 女性の声が響いたーーー


(((ターゲット確認。南側に緑の大型トラック三台、敵三十六。戦闘警戒体制をー…っっ)))


「おっつむじさんからテレパシーが来たっス。」


「ここからも見えー…あっあれじゃない?」


 頭の中に響く声をもとに四人が周囲を確認するとスカイツリーの業者車輌 搬出入口付近に言われた車がやって来る


「~ん?ヒーロー協会が主戦場として、此方の兵力を分散させる為とはいえ…数が多いな。」


 博士が少し違和感を感じながら首を傾げると、より強い口調の颶のテレパシーが皆の頭に響くーーー


(((問題発生っ"ヴィナシス首領"ならびに"幹部数名"確認!!博士指示をっ。)))


「げっっ!!嘘だろう!!?」






 現在世界196ヵ国のうち、ヒーロー協会の存在する国は78ヵ国である。そのほとんどはその国に属し、国の管理下に置かれているが、同時に【国際ヒーロー協会連盟】へ加盟する事により国を越えてのヒーロー活動が可能になった。


 そして昨年、日本のヒーロー数名がフランスヒーロー協会パリ支部へ海外研修に訪れた際、偶然にもヴィナシスの幹部二人の逮捕に成功したのである。


 そして此度のヴィナシス日本潜入からのテロ予告は、日本ヒーロー協会、並びに日本政府への報復が目的と誰もが予想した。しかし…

 

 「ぐっ本丸が此処とは!?だが何故…いやそんなことより管制室聞こえるか…繋がらんっ妨害電波か!」


 博士達はヒーロー協会 管制室との連絡を断たれてしまう…が、それも事前の作戦計画によって想定されており、その時点で現場の警察官らも含めこの場にいた皆が各々 次の行動へと移す。



 スカイツリー周辺では沢山の観光客で賑わいを見せていたが、しかしその殆どは観光客に扮した警察官であり実際の観光客等は覆面警官がそれとなく声を掛け避難をさせ、博士もまたスカイツリーに配備されたCチームへ指示を出す。


「颶君っテレパスでスカイツリー周辺の味方ヒーローへ連絡、各自行動を開始せよと。そして まさお君と電子君は一般人の避難誘導と警察の支援と補佐。杏子君は妨害電波範囲外まで後退し管制室と連絡ー…あれ?」


 だが博士が振り返るとそこには 既にまさおと杏子は居らず、電子が一人 突っ立っていた。


「あ~博士…まさおと杏子ならヒャッハーとか叫びながら敵陣に突っ込んで行ったわよ。」


「おお~~~~~いっっっ!!!」


「~~で博士はどーするんですか?妨害電波じゃスティールスーツを呼べないんじゃ…」


「いやスーツに人工知能エーアイの"デイビス"を組み込んである。異常があればーーー来たな。」


 博士と電子が上を見上げると、そこには【赤】【青】【金】【銀】の色が混じった人形ヒトガタサイズの人形ヒトガタロボットがホバーリングをしていた。そして博士の前に着地しロボットの後ろが開いて博士が乗り込む。


「………アイア○マン。」


「スティールマンだからっっ( 。゜Д゜。)!!」








 スカイツリーの南側にある店舗への納品搬入口。その前の片側一車線の道路に緑の大型トラックが三台停車する。そして運転席や助手席から厳つい軍人あがりの様な風貌の男達が降りてきた。


「おー流石にけぇーな。」


「ならボス、おっぱじめる前に観光でもしますかい?」


「馬鹿言ってんじゃねェ。早く荷台の奴らを出してやらねーと酸欠でぶっ倒れちまうぜ」


 …‥ォ


「分かりやした。んじゃ早速この辺りに居る奴らを血祭にして、その後タワーを占拠したりましょう。んでー… "あいつ"はもう来てやがんですかねェ?」



 …‥ォォオオラアアアァーーー~ッ!!



 ズドゴオオォーーーーーーーーーーーンッッ



「んなっっっっっ!?!?!?!?!?!?!?」


 突然の雄叫びと共に現れた黒ジャージの青年 まさおは、向かっていく勢いをそのままに先頭の大型トラック一台を蹴り飛ばし、"ニュートンの揺り篭"の様に三台目のトラックが50メートル後方へとぶっ飛んでいった。


「な、何だテメェッ…一体何モンだっっ」


「へっ俺は日本ヒーロー協会所属・斉田 まさお 17歳 趣味はアニメ系全般ですっ。 」


「聞いてねェッつか何故ヒーローが此処にっっ」



 ...。



「へ?」 「ん?」



 .......。



 まさおとテロリスト達との間にマヌケな空気が流れる。


「ま、まぁいい、だったらテメェからぶっ殺してやる。おいっ」


「へい。」


 テロリストは残りのトラックの荷台を開放し中から次々と銃やナイフを武装した屈強な男達が出て来ると、有無を言わさず まさおに銃を向け一斉射撃が始まった


「撃てっ!!」


 まさおは咄嗟に後ろ向きにしゃがんで小さく丸まるーーー


 ドンドンドンッパパパパッズガーンッバスバスッバンバンバンッバババババッズガーンズガーンドンドンババババババババババッ


 銃弾の雨霰あめあられがまさおに降り注ぎ、砂埃が宙を舞う。【普通なら】肉塊となっているこの状況と常識にテロリストの男共は下卑た笑いを浮かべながらまさおの立っていた場所を眺めた


「けっ糞が、ガキだからって容赦すると思うなよ。つってももう遅いかギャハハハハ」


 しかしバカ笑いをするテロリスト達の顔が瞬時に強張った。


 そこには体の一部すら欠損していないまさおが、額に青筋をたてて親の仇の様に睨みながら【半ケツを出して】立っていたのだ。


「初めてですよ…ここまで俺の服をボロボロにしたおバカさん達は…」


 プチッ


「絶っ対に許さんぞ、虫ケラ共っ!ジワジワと嬲り殺しにしてくれる!!」


「いやお前は フリ○ザ か…。」


         ゲシッ


 ブチ切れてテロリストに咆哮するまさおの半ケツに電子の前蹴りが ヒットした。


「ったく勝手に突っ走らないでくれる?バカ…バカまさおバカ。」


おっせェーんだよ電子っ、見ろ服ボロボロじゃんか!!」


「知るかっ。Σヽ(゜∀゜;)」


 テロリスト達は大勢に囲まれ銃を向けられているのにアホなやり取りをする【目の前の子供二人】に逡巡するーーーが、


「テメェら何ボサッとしてる!!死なねェなら死ぬまで撃ち続けろっっ」


 再び銃弾の嵐がまさおと電子に吹き荒れた。


「銃を使う相手ほど簡単な相手はいないわね。」


 だが電子はテロリスト達に手をかざしてのひらから電気を発生させると、まさおや電子に向かって放たれる銃弾はことごとく逸れていった。


「くそっ今度は何だっ何故弾が当たらねェーっっ!?どうなってんた!?!」



美作みまさか 美音みおと》通称・電子【能力】= それは名前の通り【電気】であるが、電力は磁力を生み、電子はその両方を操作する事が可能なのである。


 銃弾の殆どは鉛や銅で出来ている為 磁気による操作は不可能だが、鉄製の銃身自体の向きを変たり地にある砂鉄を巻き上げ弾に絡ませて 弾道を逸らすなど容易であった。


「さぁそんな物騒な物は没収よ。」


 パチッバチバチッッ


 「イテェッ」 「何だこりゃ」


 電子はテロリスト達の銃やナイフに電気を飛ばし磁力で引っ張る。取られまいと踏ん張るテロリスト達も、結局電子の出力アップに感電し武器を取られてしまう


「ちぃ何だってんだっおいトラックに予備の武器があんだろっ取ってこい!!」


 テロリストの首領が後ろを振り返ると そこにはーーー


「な、なんだぁ?バッ○マン!?」


「スティールマンだっ!!!」



 《谷井たにい たく》通称・博士∥スティールマン【能力パワードスーツ】= 手足に改良型ジェットエンジンを搭載し飛行が可能であり、ヘルメットには暗視装置・赤外線サーモグラフィ・通信機能・音声認識に人工知能(AI)付きのマウントディスプレイにて機体の各所に埋め込んだカメラで360°の映像を視ることが出来る。又、2tを超える重量を持ち上げ 機体の至る所に様々なガジェットが仕込まれている。

 機体のみの身長:190cm 体重:100kg 装甲に使われる複数の合金・動力炉等は《秘匿》とされている。

 


 スティールマンは手の甲のジェット噴射ノズルから圧縮空気を放ちテロリスト達をふっ飛ばす


「ぐあぁぁぁっっ」 「がはっ」


 そして博士・まさお・電子が派手に無双をかまし始めた。世界五大テロ組織ヴィナシスと言えど突然の奇襲と油断にその下っ端共は成す術もなく蹴散らされたが、そこへ敵首領の前に五人の男が立ちはだかる。


「まさお君っ電子君!!そいつ等は能力持ちの幹部だ。気をつけーーっ」


 博士が警戒を促す瞬間、幹部の一人がスティールマンに突進し遥か後方へと引きずっていくと、

 

 電子にワイリーのサングラスをした中肉中背男と、長身の金髪モヒカン男が対峙しーーー

 

 一方まさおにはガチムチスキンヘッド男とオールバックキザ風の男がー…


 ドオオオオォォンン!!!


 …まさおの中段突きがオールバックキザ風の男を現代アートの様にトラックにめり込ませる。


 《斉田さいた 正雄まさお》通称・バカ【能力】= 内氣功特殊特化型


 氣功を扱える者にとって大きく内氣功と外氣功の二種類に分類され、内氣功とは体内に流れる氣を制御し、外氣功とは外からの氣の吸収そして排出を主とする。

 誰しもに存在し、しかし普通ならば視るも感じるも出来ない氣というモノを、まさおは3歳の時に"とある事故"が切っ掛けで偶然にもその存在に気付いた。

 

 子供が新しい"玩具おもちゃ"を手にすれば、当然 遊び 学ぶ。

 

 目に氣を集めれば遠くの物が見え、耳なら遠くの音が聴こえ、鼻なら犬よりも鋭く、手足なら強く速く高く。

 まさおが小学四年生の頃には、建築現場や引っ越し宅配やら様々な所で、【表向きには】簡単なお手伝いをしてお駄賃を貰い、毎月大学新卒初任給以上のお金を持っては漫画やゲーム等で散財し、更に金を稼ぐ為 より速く より重いものを…まさおはそれが楽しかった。

 

 まさおが中学生の時には内氣功の扱いだけなら中国武術の達人をも遥かに凌ぐ程になっていた。


 それは氣を学ぶ為、苦しい努力と厳しい鍛錬に励む者と…【子供の遊び程真剣なモノはない】との違いだろう。


 ちなみにそれ程の力がありながら悪さをせず悪の道に入らず、高校生にそしてヒーローになる迄の間、ずっと地道に派手に真面目に稼ぎまくっていたのは一重に"育ての親"の賜物だろう。


「オオオオオオオォォォラアァ!!」


 再び まさおのこぶしが 皮膚が 筋肉が 骨が 内氣功によって強化され硬くなり、次にガチムチスキンヘッド男へとその正拳が突き刺さるーーーが、


 ブリンッ


「あれ?」

 

 まさおの正拳突きを喰らってもガチムチスキンヘッドは余裕な表情を浮かべ嘲笑する


「へへっ俺様の全身は全ての衝撃をほぼ無効化する柔軟体だ、打撃は利かねぇ。」


「んだと~? これならどうだクラァッ」


 ブリンッブリンッブリリンッッ!!


 まさおの拳骨連打ゲンコツラッシュが炸裂するも、ガチムチスキンヘッドはいくら打っても無駄だと言わんばかりに無防備にただ立ち続ける


 それは決してまさおが弱いのではなく、むしろ まさおが100%中の100%の力を出せば衝撃無効とはいえ相手の体に穴を開ける事など造作もない。


 だが普通に考えればヒーローでなくとも相手の臓物が飛び散る姿なんぞ流石に見たくはない…故の手加減攻撃をする まさおの顔面に敵首領の飛び蹴りが強襲した。


「がっっ!!?」


「まさおっ」


 電子がフォローに入ろうとするも残った幹部の二人がそれを邪魔する。


 相手の一人は能力の痛覚耐性により電子の電撃に多少麻痺するも構わず突っ込んで来る。


 そんな電子もまさおと同じで本気の電撃を出せば相手を消し炭にする事など訳ないが、やはり殺人はしない。


 なので電子はもう一人の長身の幹部を先に仕留めようとするが、痛覚耐性男が盾となり常に距離を縮められ隙が無く攻めあぐねていたのだが―――


「おい下がるぞ。」


 突如 距離をとる相手に対し、電子はここぞとばかりに大技の電撃をだそうとした刹那―――パチッ



 バアアアァァーーーーンンッッ...



 電子のいた場所が突然大爆発した。


 幹部の痛覚耐性男とは別のもう一人の幹部が爆発した場所を見据えながらケラケラ笑う


「カハハァ~俺は口から無臭のガスが出せるのさぁ~、テメェの電撃に引火させて一気に大爆発を起こす様に腹に溜めて一気に吐き出してやったぜぇw」


「おいおい誰に言ってんだぁw もう木端微塵だぞぉ?」


 二人の幹部は下卑た笑いをしながら爆心地を眺めていたーーーしかし、



「だーれが木端ミジンコっスか?」


 ――――ッッ!!!!?


 そこには後ろのトラックの上から見下ろす杏子と電子の姿があった。


「ゴメン杏子、助かったワ。帰ったらビールを奢る!!」


「いやドコの軍人スか...( ´Д`)。それより まさおがぶっ飛ばしたトラックん中の敵連中は近くの警官隊に引き渡したっス。」


 《千葉ちば 杏子あんこ》通称・不動のバカ【能力】= 瞬間移動テレポート


 一回のテレポートで最長50メートル迄の移動が可能だが、連続で跳ぶ回数は五回が限界であり、跳ぶ毎にその移動距離は短くなってく。 


 五回連続のテレポート最長記録は150メートル。

 テレポートの距離と回数次第で、次に跳ぶ迄 0.5秒~300秒の間隔インターバルを要する。

 体調次第では跳べなくなる事アリ。


「さぁ反撃開始っスよ!!」


 杏子と電子が幹部二人と対峙する。



「上等だっ!! 女子供おんなこどもだからって容赦しねぇ…んっ何だっ?」


「おい体が動かねぇ!」


 しかし幹部の二人は急に動きが止まったかと思うと、突然 体は10メートルほど宙に浮き そのまま―――



 ドゴオオォン ベキペキ ポキッ


  「かっ」 「ぎゃピッ」



 激しく地面に叩きつけられ、何らかの"力"で死なない程度に押し潰されてはいたが その絵面はホラーそのものだった。


 そして中心から弧を描く様に風が吹き荒れ、空からボブカットのOLチックな二十代位の女性が舞い降りる。


 《つむじかぜ 真葵まき》通称・つむじ【能力】= 念動力サイコキネシス念波テレパス


 念動力は基本 手で操作しなければならず、その力は十トン トラックですら簡単に持ち上げれるが脳内だけでの念動操作は精度と出力が格段に落ちてしまう。


 念波は個人から全体での交信を可能とし、相手と場所が分かれば数キロ先でも交信が出来る。


「あっつむじさんっス。ドコ行ってたんスか?」


「てゆーか...グロテスクなモノ見せないでモラッテイイデスカ.....うっっーー」


 そんな二人の軽口に颶は、ほの暗い水の底よりもドスぐらく笑みを浮かべながら杏子を睨む。


「何言ってるの? 杏子が博士の指示を無視するから私が協会と連絡を取ってきたのよ...まぁ無事で良かったわ。ふふふ~」


「うわっ颶さんが超本気でガチギレてるっ! 杏子っ土下座よ寝土下座しなさい!!」


「すんませんっしたっス!!!」


 杏子はうつ伏せになり指先から爪先までピーンとして今世紀最高の寝土下座をした。


「はぁ~まあいいわ。あなた達に戦わせるつもりは無かったけど、非は読み間違えた協会側だし.....ただ少しでも危険を感じたなら迷わず逃げなさい、これは約束よ。」


 颶は本気で子を案じる親の様な優しい眼で、軽く笑みを浮かべた。


「うぅすんませんっス。」


「あっそうだ 颶さんっまさおが向こうで...」


「平気よ、北側を張ってた寧々さんを連れてきたから。」



 ーーーーーーーーー、


 まさおはガチムチスキンヘッドと敵首領の連携攻撃に苦戦していた。


 殴る蹴るの単純な攻撃力なら、まさおは【世界中のヒーローの中でも上の下】以上には位置するが、フィーリスの言う様に【力】だけで大成出来る程ヒーローは甘くはない。


 まさおは武術を習った事など一度も無く、完全なる喧嘩殺法ケンカサッポウなのだ。戦闘経験不足の者が戦闘のプロと戦えば その差は一目瞭然だろう。


 しかし今回の作戦でヒーロー協会も他のヒーローも、まさおの参加に異を唱えた者はいない。


 それどころか世界中のヒーローが一目置く存在...


「何だコイツっ何十発もブチのめしてんのに全然倒れねぇ!!」


「嘘だろ腕へし折ったんだぞっ!!」


 まさおは折れた腕をグルリと回しまるで何事も無かったかのように平然とその場に佇む。


 そしてーーー


「氣功本来の姿は【治癒】【治療】【美容】【健康】だぜ。ふふん♪( ゜д゜) つー訳で、お前らがバテる迄 何日でもったら~~ヒャッハ~~~!! 」


 まさおは折れた腕や体を氣功で治癒し、満面な凶悪面で飛び掛かっていった。


「おいおい まさおく~ん、相変わらず はっちゃけてるね~。何かオモシロいモノでも見つけたのかい?」


「寧々っ!!やっと来やがったな。」


 そこには金髪ツンツン頭のアロハシャツを着た三十代の男が煙草に火を着けていた。


「吸うなっっ!!」


 この状況に全く緊迫感のない寧々にまさおがツッコミつつ敵首領へと襲いかかるが、やはり打撃無効のガチムチスキンヘッドが邪魔をし首領の盾に入ろうとする。


「はっ何度やっても同じだぜ小僧! 俺にはお前の攻撃はーーーー!?」


 パキパキッパキキッッ


 「何だっ足が動かねぇ!!!」


 ガチムチスキンヘッドの足元が氷で固まり身動きが出来なくなる



 《星野ほしの 寧々(ねね)》通称・ネネ


 【能力】= 氷結・空気中の水分や水蒸気を凍らせる事も可能であり又 氷を創造クリエイトも出来る。


 「見てたけど まさお君の攻撃が効かないみたいだし全部終わるまでソコに居て貰おうかな?」


「くそおおおぉっっ...」


 そしてガチムチスキンヘッドは口の部分だけを残しそのまま氷づけにされてしまい、盾を失なった敵首領の横っ腹にまさおの拳がめり込む。


 「うごぉえっ!?クソッごーなったらぁーーー」


 敵首領は着ていた服を突然 脱ぎ捨てると、一瞬でその場から姿を消した。



「あっいなくなった。」


「まさおく~ん。手を貸そうかい?」


「いや、その必要はねぇよ。」


 だがまさおは慌てる様子もなく、瞬時に耳と鼻に氣を集中させる...


 そしてーーー


 「そこだぁ」


 ベキボキッッッ


 「があああああぁっ!!?」

 

 まさおの滑り込みながらの強烈な足払いがくうを切るが、何も無い場所から骨の折れる嫌な音と共に絶叫があがった。


「ぐうぅ何故だぁ!?俺様の不可視(インビジブル)の能力に、この服の下に着ていた高性能スニーキングスーツで音も姿も体温さえも分からねぇ筈なのにっっ」


「それでも完全に音を消す事は出来ねェし、俺は無臭の消臭スプレーすら嗅ぎ分けるぜ。服を脱いだ時点で【消え系】の能力だと思ったしな。」



 まさおが敵首領を拘束した所で颶達や最後の幹部を抱えたスティールマンが飛んで来ると、近くで待機していた警官隊がテロリストらを次々確保していく。


「おー博士終わったぞ。」


「お疲れさんっスー!!」


 そして皆が集り取り敢えず事態の収拾に一段落し腰を落ち着かせた。


「でも世界五大テロリストって言ってた割には何か呆気なかったわね。」


「まぁ万全の準備と態勢で望んだし、ヴィナシスは武闘派型ぶとうはタイプというよりは隠密型ステルスタイプのテロリストだから助かったに過ぎん。いやそれでも凄い事なんだが...」


「確かに予告状がなければ苦戦しただろうけど、でも何かオカシイと思わない?犯行予告を出したなら此方こちらが待ち受けるのは分かってたハズ...何故 奇襲が成功したのかしら?」


 電子が今回の世界五大テロ組織と言われる程の討伐任務に呆気なく成功した事に何だか肩スカシ感を食らっていると、博士や颶も変な違和感を覚える。


 そこへ話を聞いていた拘束中の敵首領が口を挟んできた。


「何だとっ!? おいっふざけんなぁ!俺達ぁ犯行予告なんざ出しちゃいねぇぞっ。一体何の冗談だ!!」



 !?!?!?!?!?!?ッ



「でも現にウチラがココに居るっスよ。仲間に裏切られたんじゃないっスか?」


「何だとっ、仲間を売るような奴は俺様の組織にはいねぇっ そんな奴は........あいつかっっ!?」


「「「いたっ!!?」」」


「いやちげぇっ "あいつ"は仲間なんかじゃ...やはり手を組むんじゃなかったぜっ くそっくそぉっっ」


 杏子の問いに敵首領は体を震わせ、怒りに顔を歪ませながら額を地面に打ちその後口を開くことはなかった。


 今回のテロ計画は、その"謎の人物の犯行予告"により未然に防ぐ事ができ奇跡的にも死傷者は出なかったがしかし博士は嫌な予感を拭えない。

 

 敵首領の言葉から察するに、謎の人物とは組織内部の者ではなく外部の者であり、世界五大テロリストの首領と接触コンタクトをとれる者。

 

 そして敵首領が外部の者を簡単に信じ計画を話す程の者か、話さらざるをえない者か。


 達観はしても楽観は出来ない。考えを巡らせ沈黙する博士達を嘲笑うかのようにーーーいや実際に嘲笑い、その謎の人物の正体はすぐに判明する



〔だわぁ~~~はっはっはっ!!〕


 

 ...............。



「おいこの声...」


「うわぁ~...」


「うげっス.....」


「は~頭痛くなってきた。」 



 この何処かで聞き覚えのある腹立つ笑い声が空に木霊し響き渡ると、寧々以外の全員の顔があからさまにゲンナリする。


 『 ーーーかせ~。はかせ~。』


 『颶さ~ん。寧々さ~ん。バカお~。』



「!!?っ、斧偽くんか!!」



『あっ繋がった、はいど~も~管制室の斧偽ちゃんで~す。妨害電波は解除されたんですね~そちらの状況はど~ですか~?』


「おいテメェ斧偽、今なんつった?」


『まさおく~ん。私の方が年上ですよー』


「イヤまさお君っ今それどころじゃないからっっΣ(゜Д゜;≡;゜д゜) それより斧偽君っ今回の裏にいるのはまさかーーーーー」


『はいそうで~~す。たった今、東京都全域で電波ジャックが行われ~各テレビチャンネルでバカ笑いする《狂翁院きょうおういん鬪舞とうま》のドアップ映像が流れてま~す。』


「なにっ!!!」


 博士はスティールマンの腕から宙にテレビの映像を映し出す。



〔 だわぁ~はっはっはっ日本の諸君お待たせ。私が狂気のゴォ~ッドサイエンティィ~ッスト 狂翁院 鬪舞っ その人でっあ~~~る♪〕


「うわ殴りてぇ。」まさおが拳を握る



〔 観ているかなヒーロー諸君よ。此度の騒動は昨年に君達のお仲間が、世界五大テロ組織ヴィナシスの幹部をフランスにて逮捕した所から始まる。 ...あ、分かんないって人はブログにアップしたんでググってねw〕


「グゥ殴りてぇっス。」杏子が拳を握る



〔 その逮捕した幹部は資金洗浄マネーロンダリング担当者でね。ヴィナシスは一気に活動資金を失ってしまったのさ。 そして日本ヒーローに恨みを持つヴィナシスに【日本潜入の手引き】【豊富な活動資金】【復讐の機会】を与えただけで彼等は犬の様に尻尾を振ってきたよ。〕


「 ...ぶっ飛ばしてぇ」電子が拳を握る



〔 そう全ては我が野望の為に利用されていたとも知らずにっだわぁ~はっはっ。〕


「...ねぇこの人は一体 何者なんだい?」


 そして寧々が呑気に煙草を吸いながら杏子に狂翁院 鬪舞の事を訪ねた。


「あ~寧々さんは半年前まで海外だったから知らんかもっスけど、タダの迷惑イカレ野郎っス。」


「ホンットに最低な奴よ。東京中の水道の水を全部コーラに変えたのよっっ!!お風呂にも入れないし歯を磨くのも一苦労だったんだからっ(`Д´)ノ」


「そ~いや東京を大停電させた事もあったっけな~   (・´ω`・)」


「日本中の新幹線を各駅停車にしたり、ハムスター巨大化事件とか細かいの上げたらキリがないわね...」


「あのハムスター達が港の倉庫で大量繁殖しててドエライことになったっスね~...つか、ドコにってぐらい金持ってるっス。」


「はは~中々面白い人のよ~だね~。」


挿絵(By みてみん)



 寧々は日本生まれだが、十年以上前からマスメディアの殆どない海外の貧しい地域でヒーロー活動をしていた為に【彼】を知る事はないが、その狂翁院という男はそれなりに世界でも有名人ではあった。


 そして狂翁院 鬪舞を知らない日本人はまずいない。それほど数々の奇行や迷惑行為が連日テレビ新聞ユーチューブを賑わせていたのだが、一年前から急に姿を眩ませる。それが突如 有名なテロ組織を連れて現れたのである。

 

 何の為に...少なくとも彼が現れて何もなかった事など一度たりとてありはしない。


 狂翁院は電波ジャックしたテレビにラジオやネットライブ配信にて不気味な笑いを見せるーーーその映像に東京中の誰もが固唾を呑んで事のなり行きを見守った。



〔 今宵...いや今昼、今からこの私っ狂翁院 鬪舞がお披露目する歴史的大発明に日本が・世界・宇宙がこの私をスゥ~パ~ゴゥ~ッドサイエンティィ~~ッストとして崇め銀河に名を馳せる事となるだろ~う!!!〕


〔 ...まっそれでだ、そのお披露目の準備をヒーローや警察に邪魔されないよう私が連れ込んだテロ組織の方に目を向けさせたのさ! 勿論テロが成功して私のお披露目が台無しにならないようテロの予告状をヒーロー協会へ送って簡単に捕まるようにしてあげてねw 〕


 「くっ斧偽君っ、奴の位置情報はまだ分からないのかっ」


『駄目で~す。映像の解析をしようにも顔がドアップすぎて僅かに見える背景も空だけですし~彼を撮す~多分ドローンカメラの電波も拾えませ~ん。』


 狂翁院 鬪舞は今まで人を殺めたり危害を加えるような事をしたことはない...だが洒落にならん面倒くささに置いては世界トップクラスであり、例えるなら暴力を使わないだけの【ジョーカー】の様な奴である。


 そして狂翁院が過去に何か問題を起こす度に指揮を取らされ逮捕へと奔走してきた博士は狂翁院にメッチャ腹が立っていた。



〔 さぁそれでは皆のものよ!!刮目せよっ イッツァ ショ~~タァ~イムッ〕


 彼のドアップ映像が引いて全体を映し出されると、狂翁院 鬪舞は目を閉じ両腕を広げながら空を仰ぐ。


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


 そしてその上には、直径百メートルはある超巨大なドーナッツ型の機械が光学迷彩を解きながら回っていた。


『あっはかせ~、これって~。』



「「「スカイツリー!!!?」」」



 狂翁院鬪舞が立っている足元の映像からスカイツリーの天辺が写り、博士達は真上を見上げる


「アンニャローはこの上っスか!?」


「迂闊っヴィナシス幹部が此処に集まったのも奴が何か始めると知っていたからかっ...くそっ」


「博士っ俺も連れてけっ」


 まさおがスティールマンに掴まりそのままスカイツリーの頂上へ飛び、それを追うように颶がサイコキネシスで寧々を持ち上げ飛んでいった。


「杏子...私もツレテッテ(゜ロ゜)」


「ひぃっ!!電子っち恐いっ何か恐いっス!!?」



 ドーナッツ型の機械は高速回転を初め、周囲に多大な電磁パルスを発生させる。


 それを悦な表情を浮かべ眺める狂翁院 鬪舞は前を見据えると対峙するまさお達に向い口を開く。


〔 こんにちは ヒーローの諸君。 〕


プチッ


「ナーニが諸君だっおいこの野郎ぉ!!テメーが大発生させた巨大ハムスターの内まだ78匹は飼い手が見つかってねぇーんだぞコラっ。俺も3匹飼ってんだからなっお前も責任持てっっこの野郎!!!」


〔 うっ...それでもよく1000匹以上も里親を見つけたねぇ.....後でヒーロー協会に飼育費用振り込んどくね。だってオスメスの区別つかなかったんだもん~〕


「まさお君っ!?その話はあとでいいかなっっっ!!?」


 激ギレのまさおを博士がなだめすかしていると巨大ハムスターを六匹飼っている颶も若干キレながら狂翁院に向い指を指す


「狂翁院 鬪舞っっ、今度は一体何を企んでいるのですか!!!」


〔 へ?は?...あっ だわぁ~はっはっはっ それは世界の変革さ。君達もあれを見るがいい!!〕



 狂翁院が上を指差すそこには、電磁パルスを発し超高速回転するドーナッツ型機械の中心部の空間がゆがみ、ドクロマークのついた直径50メートル程のドデカ爆弾の先端部が突き出てきた。

 そして博士が...否、その映像を観ている全ての人が驚愕の表情を浮かべる。


「まっまさか...これは空間移動!?」


〔 だわぁ~はっはっはっ~その通ぉ~~り!!私は遂に完成させたのだ。この夢物語と言われ誰も成しえず成そうともしなかった世紀の超絶大発明をっっっ!!!〕


「そんな...バカなーーー」


「おいっ博士こそ呆けるのは後でいいだろ!!まずはあのブリブリ出てくる爆弾を何とかするのが先だっ」


「まさおの言う通りです。博士っ」


「あっああ、スマン 行くぞ!」


「じゃあ僕は爆発しない様にしてみようかな。」


 博士 まさお 颶は機械の中心部の歪みから墜ちて来る爆弾を押し戻し、寧々は爆発する事を避けるため爆弾を氷結させる


〔 頑張れヒーロー諸君w あっほれ ノコッタ~ノコッタ~♪〕


「テメーーー後で絶対ブッ飛ばすからなーーーーーッ!!!」


「ぐぬぬっもっと押すんだ...」


「お、重い...」


 

 ーーーが、後日談。ヒーローは口を揃えて語る。

 

 【別に驚きはしない。だってあの三人がいれば必ず "やらかす" からw】



 そして下の方から何やら不吉なものがやって来る

 

 「真打ち登場っス~~~!!」


「行っくよーッ[電磁加速砲(レールカノン)]ッッ」


 杏子がテレポートとインターバルを繰り返し、スカイツリーの頂上まで 電子を連れてやって来た。

 電子は磁力でテロリスト達から取り上げた沢山の武器を一塊ひとかたまりにし、そこに電流とレールの電流を発生させ[電磁加速砲]をドーナッツ型機械に ぶっぱなすーーー



  ちゅど~~~~~~~ん!!!


 

 「いや電子君っ爆弾に誘爆するからっっ!!!!」


 「おっと危ない。氷創造楯アイスクリエイトシールドッ」


 〔 っって何してんのーーっ!?それ超を百万回かけた位の超精密機械でデキテンノヨーーーッッ!!!長さ温度圧力電流磁場回転等等等々々っっっほんのちょっとでも計器が狂えば超大爆発スーパービッグバンしかねないのヨーーーーー!!!?ヽ(ill゜д゜)ノ 〕



「「エエエエエェーーーー!!?Σ(Д゜;/)/」」



 狂翁院が叫ぶとまさお達も絶叫する



 バチバチッバンッドカ~~ンッッ



「おいなんか爆発してんぞ!!?寧々っ凍らせて止めろ!!」


「流石に僕でもこの大きさは無理だね~~凄い回転してるし...」


 バリバリバリボンッガガガガガドン ビビビバビバビ


 ボボン シュゥーズドン ビリヂヂヂヂ ドドーン


 ウウウヴヴヴぅぅキュウゥゥゥ~~~


 ~~・・・カッッッッッッッッッ。



 ドーナッツ型機械が激しく揺れ所々爆発し強烈な電気を発した後、突如凄まじい閃光が辺り一体を真っ白に包んだーーーそして


「ぐわっーーー」

「電子恨んで出てやーーー」

「人生に一片の悔いはあるかなーーー」

「南無ーーー」

「上等だカカッテコイヤーー!!」

「ちょっ電子っち逆ギレーーー」



 ...............。




 初めまして、おざわむかい です。


 初めて書く小説であり至らない所は多々ござると思いますが、どうぞ宜しく御愛読お願い致します。

 そしてなるべく掲載間隔も短く出来る様にがんばります。


二話以降もそのうち挿絵を載せていこうと思いますので見てください。


「超職人大家族 せっかくの異世界転移でウハウハ生活も、その頑固一徹が邪魔をする」の連載も始めましたので見てください。

 


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