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梅雨

アナタへ

作者: 奥野鷹弘

わたしが好きだったアイドルが亡くなった・・


わたしの好きだったアイドルが、まだ沢山の愛を注げないうちに亡くなった・・


わたしは好きだった。あの不器用な笑顔や歌にダンス。実際そんなにも人気でもないと思うのに、アンチがわたしの好きだったアイドルを粉々にした。そんなの言わなくても解っているし、そんな誹謗中傷しなくてもそれをひっくるめてわたしは好きだった。


ねぇ、好きだったていう他に何があるというの・・


わたしの好きだったアイドルは、どうしてこの時期を選んだの。このジメリとして鬱陶しい雲と雨の中の季節を選んだの?今日もあいにくの雨だよ、ずっと低気圧がわたしの頭上で渦巻くよ。気持ちが積乱雲のように触れなくて、でも危険で、でもそれが美しくて…わたしの想いと似ているよ・・


ねぇ、わたしはあなたを追いかけていたのよ。

あなたがデビューすると決まってから、わたしは忘れた日がなかったと想うわ。

それはそうよね、だってわたしはアナタのファンだもの。応援だってするわよね。CDだって雑誌だってテレビ番組だって、今時珍しいラジオ宣伝だってしっかり遺してあるわ。そう、アナタのファンだもの…。


でも、ホテルの追っかけはしたことはないことだけ伝えておくわ。

週刊誌に売りつけるようなこともしてない。アナタの恋人に、刃物を送ったりをもしてない。



昨日久々にラジオをつけてみたの。デジタルなこのご時世に飽きちゃって、ラジオパーソナリティの声に身を寄せていたんだ。そしたらね、アナタの好きだった海外グループの歌が流れたわ。今年の流行曲になるかもしれないわね‥。あの子たちあれから5年の月日でどれだけ頑張ったのかしら、ねぇアナタはあの子たちのファンだったから、応援していたから知っているのよね…きっと。

メンバーの一人が旅立ったあの日、世間は騒ぎ立てよね。母国はあまり騒ぎ立てないようにしていたけれど、それが余計にネットという存在だったりメディアを通した映像に映ったメンバーがメンバーの一人を送り出す姿が辛すぎて哀しみで溢れかえったよね。でも間もないころに次の曲を発表してびっくりしたよね。一番つらいメンバーが、『いつまでも五人だよ』という意味を含めたMVを発表したよね…マイクという形を通して…。

アナタから聴かせてほしい。私にはもう、ただのアイドルに収まり切れないあのグループの子たち…一回聴いただけで鳥肌が止まらなくて、五人よりも五人らしくなった素晴らしさを、アナタの熱弁であの子たちの魅力をアナタの声で聴かせてほしい。

ややこしいだなんて云わないで、聴かせて。


だって、わたしの彼氏だったじゃない?


もう、感情が高まって「彼」って文字打ちした後エンターしちゃって「氏」を打ち込もうとしたら『死』って出ちゃったじゃない。そんなの言われなくたって、アナタはこの世にはもう居ないけれどわたしの胸で生き続けているの!


泣かさないでくれる?


・・


泣かさないで・・くれる・・?

天気予報士は「もうすぐ梅雨があける」とか言ってたわ…。でも、わたしはまだまだ梅雨時期が続くみたいだわね・・



いいわ、泣き腫らしてお肌を荒らしたくないから、また今度にするわ…。

いや、わたしがそっちに行ってから、アナタが旅立ってからあの子たちの報告させてもらうわ。まぁ、わたしの記憶が正常に動いていればの話だけどね…。



わたしの記念日のうるささを自分で知る限り、向こうでも嫌われそうね。それでも、付き合ってくれたアナタが好きよ。あなたの大ファンよ。



夢を追い続けて良かったわね、お疲れ様。

そして、今度はゆっくりと休んでね。




んじゃ、



 アナタのファンより



P.S:実はわたし、アナタより先にファーストキス奪ってたわよ。アナタのの寝顔って、ホント可愛すぎてブサイクわよねw 


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