らしい
昔は青かった空
緑豊かだった地平
明るかった人の顔
青春をして
恋をして
前向きに生きた
街では若者が笑っていた
夜には光が溢れていた
そうらしい
みんながみんな、美味しいものを食べたらしい
みんながみんな、希望を持っていたらしい
今は赤黒い空
茶に染められた地平
生気のない人の顔
春などなく
恋をせず
前向きに死ぬ
街には死体が溢れている
夜には闇が笑っている
そうなんだ
みんながみんな、生きるよりマシだと死ぬんだ
みんながみんな、絶望を孕んでいるんだ
ある日僕は思った
死ぬなら生まれなければいい
ならどうして生まれたんだ、と
そう思った途端に
どこか親近感のある男が現れ
こう述べた
「未来は輝いている」
言うが早いか男は姿を消した
そうらしい
楽しく過ごしてキラキラしているらしい
明るいだけでなく輝いているらしい
そうか
バカらしい
世界は絶望しない、ここからなんだ
ここで立ち止まっているのはバカらしい
手始めに僕は周りの人に声をかけた
「世界を変えてみませんか?」