お泊まりします!
ヨルゲンさんに案内されて入った部屋には沢山の本や道具が置かれていました。でも散らかって汚い感じはありません。ただ「物がたくさんあるな~」ってくらいに感じます。
「その椅子にお座りください。その子を机の上に。ヴォルティス様のギルドカードも出しておいてくださいね。」
ギルドカード!?ヴォルってばギルドカードを持ってるの?見せて見せてー!
懐から出された私はヴォルが取り出したギルドカードに夢中でした。
「俺のカードに興味があるのか?」
『キュ!』
ええ、興味津々ですとも!
ギルドカードはテレフォンカードと同じ大きさでした。色は透明で文字がスゥッと黒く浮かんでいるのです。不思議です。水晶の中に物が浮かんでいる感じと言えばいいのでしょうか。
さて、ヴォルのギルドランクは……何とBですか!?ここの世界のランク基準がどうかは分からないですけど、ヴォルの年齢でBは凄いのでは?
「お待たせしました。こちらにその子の血とカードを水晶に翳してください。」
「分かった。」
『キュ!?』
また血を取るのですか!?嫌ですよ!痛いし、怖いんですよ!?
思わずヴォルから距離をとろうとしますが、子狐の抵抗など無意味でした。またもや抱えられて耳から針でチクッと血を取られました。まあ、ナイフじゃないだけマシでしたが、痛いです。
私から取った血を水晶に垂らし、カードを翳すと水晶が光り、それも一瞬で消えた。
「登録完了です。……おや、ウルウ様は女の子でしたか。では、女の子には優しくして差し上げねば。特別に夕食には最高級のミルクを差し上げます。」
『きゅん!?』
「……お前は本当に女性には破格の優しさだな。」
「ギルドとはむさ苦しい男ばかりで癒しは女性と決まっています。数の少ない女性に優しくして当たり前ではないですか。」
どうやらヨルゲンさんはフェミニストらしい。それほど癒しに飢えてるのか。
「さて、お部屋に案内させてもらいますよ。1時間後にはお夕食を食堂に用意してありますので時間をみていらしてください。」
案内された部屋にはアシルドさんが待機していた。ヴォルは私を床に下ろすとソファーに座ってアシルドさんから報告を受けていた。
さて、私は部屋の探検をしたいと思います!
今の私は子猫と同じような大きさなので室内は広く感じます。床はフローリングで木の匂いがします。
まずは水回りを確認します。この世界は水道が設備されているようで、蛇口があります。だからお風呂も入れるようですが、ここのお風呂はビジネスホテルの浴槽と同じ小さな浴槽がありました。トイレは……嬉しや水洗のようです。ボットンだったら近寄りたくもありませんね。
次に寝室を確認したいと思います。寝室は大きなベッドが一つ。VIP専用の部屋のようですね。フカフカの毛布が気持ちいいです。
「ウルウ、ここにいたのか。」
『キュ!』
もう話し合いは終わったのですか?
ヴォルはベッドの上にいる私を抱えて横になりました。ああっ!肉球をプニプニしないでください!
「もう少ししたら夕食を食べに行くぞ?……今日は疲れたな。」
夕食は凄く楽しみですが、いい加減肉球をプニプニするのは止めてください!
『きゅ~……』
ああっ!首マッサージ最高です!ヴォルはマッサージ師になれますよ。腰もキクゥ~!!
身も心もフニャリと蕩けてしまった私。そんな私をヴォルは楽しそうに笑っていました。……本当にヴォルってSです。
夕食の最高級のミルクは極上の味わいでした!何ですかあの甘さとまろやかさは!?
満足した私達はお風呂に入って眠りについた。
いよいよ明日は王都に入ります!