お引っ越し準備
ヴォルティスとパートナーになった翌日、屋敷では皆さん総出でお引っ越し準備をしております。男性の方は家具や装飾品の移動を。メイドの皆様はヴォルの服やその他色々。皆さん大忙しです。
私はというとヴォルティスに抱えられて外に設置された椅子とテーブルの上でまったりしております。
『きゅん』
「気にしなくていい。あれが彼等の仕事なんだからな。それにお前が行ったところで潰されるのがおちだ。」
そうですね……この小さな体では何も手伝えません。大変心苦しいですが、ここで応援させてもらいます。ファイトです皆さん!!
「二日後にはここを発つ。……お前にはここの良い所を見せてやりたかったな。」
『きゅうう?』
どうしてそんなに寂しそうな顔をしてるの?やっぱりどんなに家族を嫌っていても、ここがヴォルの故郷には変わりないんだよね。……私と違って故郷を愛する事ができてるんだもの。私は故郷を家族を捨てた最低女だもん。
『きゅう!』
私はヴォルティスに私のような最低な人間になってほしくないって思った。だから全身で甘えて慰める。
「はは……随分甘えただなウルウ。」
そう、笑っていて。ヴォルが笑っていてくれたら私も嬉しいの。過去の汚い部分も振り切って今を懸命に生きていけると思うから。
ヴォルは私を懐に抱き締めてくれた。上品な香りが私を包み込む。ヴォルが好んで付ける香水の香り。優しくて甘い香り。
「ありがとう。」
『クン!』
とんでもないですよ!私こそありがとうって伝えたい。何かね私達ってとても良く似てるんだと思うんだ。家族に恵まれなくて、一人で抱え込んで。でもね、一番違うところがある。それはヴォルには心配してくれて愛してくれるアシルドさんや使用人の皆さんがいる。何より今は生きているんだから。何度だってやり直せるんだよ。それをヴォルには気づいてほしいな。
それに私もいるからね。
大好きだよヴォル!