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九尾の異世界転生と幸せライフ  作者: 十六夜
出逢い編
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パートナーの心得Ⅱ《ヴォルティスside》

今日は驚くべき発見が沢山あった。こんなに驚いたのはウルウを拾った時以来だ。


あの日の事は忘れられない。ウルウを拾ったあの日はシェライザー公爵家に行った帰り道だった。騎士になるためには保護者の許可が必要で、俺は嫌いな父親に頭を下げなければならなかった。まあ、実際は下げてはいないがな。


許可を貰えないなら絶縁し、母方の祖父母の家名を名乗ると脅した。要するにシェライザー公爵家と絶縁し、祖父母の養子になることだ。義理の母のメアリーナが何故か父親を説得し許可を出した。何のつもりかは知らないが、母親面をされるのは気持ちが悪かった。


許可を貰ったので引き止める妹達を振り切り、急いで自分の屋敷に帰ったのだ。馬車の中で本家で起きた出来事に苛ついていた時、不思議な暖かい力を感じたのだ。今思えばあれがウルウの魔力だったに違いない。


アシルドに馬車を止めさせ、俺は魔力を辿り外に飛び出した。馬車から数歩歩いた道端に、雑草に埋もれるように横たわっていた小さな獣。今は真っ白な毛皮だが、この時は泥まみれで汚かった。


「何だこの獣は……それに尾が9本ある。こいつ魔獣か?」


よくよく観察してみると他の魔獣にもない9本もの尾があった。多くてもせいぜい2本から4本までだ。


「ヴォルティス様、急に外へ飛び出さないでください!魔獣や山賊に襲われたらどうするつもりですか!?」


「ここはそんな物騒な街道じゃないだろうが。それより魔獣の子供を拾った。」


片手に乗る小さな魔獣をアシルドに見せると、かなり驚いていた。そして周囲をキョロキョロと警戒し始めた。大方、親がいないか探るためだろう。


「親はいないと思うぞ?こんなに子供が衰弱しているのにここまでになるまで放置されてるのだ。……それより、尾が9本もある魔獣なんて見たことあるか?」


「いえ……。ヴォルティス様、早くそれを捨てなさい。そんな訳の分からない魔獣をどうするおつもりですか。」


捨てろ……か。確かに未知の魔獣はどんな驚異を持っているか分からないからこそ恐ろしい。だが、この衰弱した魔獣を俺は自分に似ているようで、どうしても見捨てることなど出来なかった。それに、こいつからは不思議と暖かい魔力を感じる。先程、俺を導いた魔力だ。こんな暖かい魔力を俺は他に知らない。


「いや、俺はこいつを気に入った。育てて俺のパートナーにする。」


「な、何を言ってるのですか!いくらなんでも危険過ぎます!!」


アシルドは俺に過保護な執事だ。反対するのは当たり前だった。けれど、俺はどうしてもこの魔獣を欲しかった。だから保護した後、俺や他の者達に危害を加えたら始末することを条件に納得してもらった。



屋敷に着くと俺はメイドに魔獣を丸洗いさせ、人間の医者に診察させた。医者は「魔獣は専門外じゃ!」と怒ったが、真剣に診察してくれた。


結果は酷いもので、このまま目を覚まさなければ死ぬだろうと言われた。


俺は母の時以来に絶望感を味わった。


綺麗に洗われた魔獣は白銀に輝く真っ白な毛皮で、その愛くるしい容姿は痩せ衰えていた。大きな耳を時折ピクッとさせている。


「お願いだ死なないでくれ……。俺はお前とパートナーになると決めたんだ。ああ、目が覚めたら俺が暖かいミルクを飲ませてやる。それに育ったら美味しい木の実や果物だって食べさせてやる。だから……俺を置いていかないでくれ。」


こんなに魔獣に執着するなんて自分でも驚いていた。その可愛さにやられたのか、それとも運命を感じたのか。


大地の女神、リリクレア様に必死にお祈りをし、3日もの間、俺は魔獣を看病し続けた。


3日後、やっと魔獣が目を覚ました。か細い鳴き声を発していた。


開いた目はウルウ石のような美しい蒼だった。


「よし、お前の名前はウルウだ。」 


ウルウ石から貰った名前だ。彼女にこれ以上似合う名前はないだろう。


ウルウは衰弱していたが、俺が手ずからミルクを飲ませ、薬も与え、少しずつ少しずつ体を癒していった。今ではコロコロと健康的な体つきになっていった。子供だから小さく、穏やかな性格で我が屋敷の人間達のアイドルとなっていた。


ウルウは俺に穏やかで優しい時間をくれた。ウルウが来てから俺の日常は幸せに満ちていたのだ。


「ウルウ、パートナーになるために神殿へ行くぞ。」


ウルウの体調が良くなったし、俺も王都へ行かなければいけない。誰ともパートナーになっていないウルウを名実ともに俺のモノにしたかった。この愛くるしさに狂ったならず者達にウルウを奪われたくなかったから。ウルウは俺のモノだ!


以前から予約していた契約を行うためにシェライザー公爵領にある神殿に赴き、リリクレア様に誓いを立てた。


ヤシル神官長の立会の下、正式に俺達はパートナーとなった。


しかし、驚くべきことがあった。パートナーであるウルウの情報を調べてみると、とんでもない数値の戦闘能力と魔力があった。


▼名前▼

ウルウ ♀

▼年齢▼

生後二ヶ月

▼種族▼

ヨウコ

▼攻撃力▼

100000/100000

▼魔力▼

500000/500000




生後二ヶ月でこれほどの力があるとは……思わず武者震いしてしまった。ヤシル神官長に叱られたが、俺はウルウを破壊の道具になどするつもりはない。


次に魔力の属性を調べたかったのだが、それはウルウがもう少し育ってからということになった。まあ、当然だろうな。


ヤシル神官長に礼を言い、屋敷への帰り道のこと。


「よく寝てますね。」


「初めての遠出だからな疲れたんだろう。」


俺の膝の上で眠るウルウ。その背と尻尾を撫でる。嗚呼、相変わらずの極上の手触りだ!!


「それにしてもヨウコとはどのような種族なのでしょう。やはり新種なのでしょうか。」


「聞いたことがないからな。だが、ドラゴンや魔狼、獅子より危険ではないと思うがな。こんな愛嬌のある魔獣はいないさ。」


ニーニ(猫)やウォフ(犬)、ララット(兎)より愛嬌がある。


「後はその珍しさ故に狙ってくる輩も王都にはいます。くれぐれも目を離さないようにしましょう。」


「ああ。」


騎士学校に入ったら四六時中俺の側に置く。そうじゃないとあっという間に拐われそうだ。……そうだな、人脈を作ってウルウを守らせるのもいいだろう。


「入学が楽しみだな。」


それにウルウと共にいれば俺が探していたものが見つかるかもしれない。





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