パートナーの心得
無事に契約を終え、やっと一息つけると安堵したのも束の間、ヴォルティスにいきなり抱き上げられた私。何事ですか!?
「お前、上位種の魔獣だったのか!?」
え?
「ヴォルティス様、どういうことです?」
アシルドさんが聞いてくれました。そうですそうです。上位種とは何ですか?
「魔獣と契約できればその者の情報を知ることができる。契約してからウルウの事を調べたんだ。すると、まだ子狐だっていうのに戦闘能力がバカ高いんだ。魔力も相当だ。こんな魔獣聞いたことないぞ。」
……私を転生させてくれた神様、結構なチート能力を下さったのですね。お陰でパートナーから見放されないで済みそうです。騎士を目指すならパートナーも必然的に力を求められるでしょうから。貴方様には感謝しきれません。
「それで、種族はフィニック種で間違いはないのですか?」
「いや、それがヨウコ(妖狐)という種族らしい。ヨウコが何なのかは知らないが、ウルウがヨウコという種族で認識するしかない。」
妖怪の狐で妖狐です。九尾は化け狐ですからね。
でも、フィニック種の亜種にでもしてくれれば良かったのに。まあ、母様達は私なんかと同じ種族にされたら怒ると思うけどね……。
「俺はとんでもない拾い物をしてしまったようだ。ウルウが成体になったらどれ程の力を持つのか楽しみだな。」
どうやらヴォルティスは私の力がお気に召したらしい。ちょっと怖いと思った。力に溺れて暴君にならないといいのだけど……。
「ヴォルティス様、パートナーの力を無闇に使ってはいけませんよ。かの闇の者達のように破壊の限りを尽くして歴史の闇に葬られたいのですか?」
ヤシル神官長がヴォルティスの不穏な言葉をたしなめた。
「分かっている。少し興奮しただけだ。」
「ならよいのです。ですが、パートナーは戦いの道具にしてはなりません。血の味をしめた魔獣は例えパートナーの命令でも聞かなくなりますからね。愛情をもって共に戦ってあげてください。」
ヤシル神官長は素晴らしい人だと私は思った。ここまで私達の未来のために言葉をかけてくれるなんて、そうそう出来ることじゃない。この人は本物の聖職者だと思った。
「次にウルウの得意な魔法ですね。魔法を調べたい……というのも山々ですが、ウルウはまだ子供なのでもう少し育って体が出来てからにしてください。今の時期は体を安定させるために魔力の乱れが顕著になっていますからね。」
「そのようだな。魔力の増減が激しいのも、まだ安定していないからなのか。なら、王都の神殿で魔力を調べることになるな。」
『きゅん?』
そうなんだ。なんか自分が思っているよりまだ子供だったんだね。気持ち的にはヴォルティスより年上のつもりだったよ。
「この子の運動能力も同様に育ってから訓練すればいいでしょう。幸いにも魔獣育成に王都の騎士学校は充実しておりますし、医療も申し分ありません。神殿の神官も高位神官が沢山いますから知識も豊富ですよ。」
「ヤシル神官長、本日は大変世話になった。感謝する。」
どうやら今日はこの辺で解散するらしい。まだまだ分からないことだらけだけど、私がまだ幼いから成長するまでのお預けのようだ。
「いえ、これもリリクレア様に与えられた私の務めです。貴方達の導き手になれたことに感謝を……。また何かの縁があれば再び会えましょう。……王都で立派な騎士になってください。リリクレア様のご加護があらんことを。」
ヤシル神官長のお見送りを受けながら私達は屋敷へと帰った。道中、私はヴォルの膝の上で眠ってしまっていた。自分が思っている以上に緊張していたからなのか、馬車の中に入ると身体中の力が抜けた。ヴォルに撫でられて私は夢の中に突入していった。
私が寝ている間、アシルドさんとヴォルティスは今日の出来事を話し合っていたなんて知りもしないで。