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九尾の異世界転生と幸せライフ  作者: 十六夜
イグドシア騎士学院 学友編
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クリストの才能③

今回はヴォルティスsideの話です。その次にクリストとウルウ視点の話を書いていこうと思います。

~ヴォルティスside~


ウルウが倒れて、ライトが不安定になって日毎に悪い方向に向かっていく。けれど、クリストのお陰で何とか踏み止まっている。正直、俺までライトに引き摺りかけられているのだ。意地で理性を保ってはいるが、大切な存在が死ぬかもしれないという現実に心が弱っていた。



「ヴォルティス君、しっかりして!ウルウちゃんを助けるんだ!僕に協力して!」


「協力……?何をするつもりだ。」



暗い思考の中、クリストが俺を揺さぶり現実世界に連れ戻してきた。普段は頼りなさげな友人が今はとても眩しく見える。



「僕、何でか分からないけどウルウちゃんの声が聞こえるようになったんだ。でも、ヴォルティス君は聞こえてないでしょう?」


「お前にはウルウの声が聞こえるというのか?何故……。パートナーは俺だ。その俺が聞こえないのにお前には聞こえると?」



確認をしたが、ウルウの首輪には俺が贈ったロロア石の契約石が確かに機能していた。ならば、何故、俺にはウルウの声が聞こえない?



「ヴォルティス君が怒る理由も分かるよ。で、でもウルウちゃんを助けることが優先なんだ。僕の能力を解明するのは後回しにして、今はウルウちゃんを助けようよ!」


「……本当にウルウの声が聞こえるのか?」


「僕の誇りと女神に誓って。」



クリストの目を真っ直ぐ見て、俺はクリストを信じることに決めた。あんな真剣な目を見たら信じるしかないだろう。……俺にはウルウを救うことができないのだから。可能性があるならどんな非道な取引にだって応じるつもりだ。



「ライト君、聞こえてるよね?そのままウルウちゃんに魔力を送っていてね。ヴォルティス君、ライト君の上から更に魔力を送ってあげて。」


「どういうことだ?」


「ウルウちゃんの訴える内容を総合的に考えると、今、ウルウちゃんは成体になろうとしているんだよ。だけど、ウルウちゃんは親から成体になるための知識も方法も学ばなかったから身体に負荷がかかっているんだ。」


「成体になるためには魔力を流すだけでいいのか?」


「ただ流すだけじゃ駄目。ウルウちゃんの魔力の波動に合わせて、魔力の質と強さを調節するんだ。ほら、今は微弱な波動で質も薄いでしょう?今は身体を休めているんだ。その内、波動が高くなって魔力の濃度が濃くなるから一気に同じ魔力を送って!」


「分かった。」



魔獣の生態に詳しいクリストの話は納得できるものだった。なるほど、ウルウは成体になろうとしているのか。



「波動が高くなった!ライト君、ヴォルティス君最大級の魔力を送って!!」



クリストの指示通り、自分の最大級の魔力をウルウに込めた。すると……



(あたたかい……暖かいよ。側にいるの?ヴォル……?)



久しぶりに聞いたウルウの声だった。だが、その声は以前とは違っていた。優しく包容力のある落ち着いた女性の声だった。



「ああ、ここにいる。側にいるぞ。」



(何だかね、ずっと苦しかったの。でも、クリスト君が私の苦しさを見つけてくれたの。暗闇の中にいた私を助けてくれたの。)



「そうか……。後でクリストに礼を言わないとな。だから元気に大人になれ。あと少しだ。」



俺とライトとクリストの魔力が交わった瞬間、ライトの腕の中に収まった繭が七色に光輝いた。



「ウルウ……?」



ライトが夢から覚めたように意識が戻った。


繭がライトの腕から離れて部屋の中央に停止した。七色に光り、宙に浮く繭が次第に獣の姿に変化していった。


形が完成していくと、光が静かに消えていった。



「ウルウ……なのか?」



俺は茫然と呟いたのは仕方ないと思う。光から現れたのは、ベアー種(熊)程の大きさの獣だった。美しい白銀の程よい長さの毛並み。長くピンと立った耳。尾は九本。ウルウ石の切れ長の瞳。そして、俺が贈ったロロア石の首輪が良く似合っていた。



『キュウ……クォン?』(ヴォル。私、ちゃんと成長してる?おかしくない?)



成長したウルウの声は美しかった。何もかも美しすぎて、傍らにいる友人達に気を配る事など、そんな余裕はなかった。



「大丈夫だ。女神より美しくなっている。美人だウルウ。」



俺はウルウに心を奪われていた。  


人間の男としておかしいと自覚はしているが今更だ。この世のどんな美しい女よりウルウの方が魅力的で最高の女なのだから。


彼女が俺のパートナーなのだ。俺だけのウルウ。


けれど、ウルウは俺だけじゃなくクリストやライトにまで気を配る魔獣だったのを失念していた。気づけば俺達三人はウルウの九本の尾と大きな身体と毛並みに包まれていたのだ。


最高の毛並みに手触り。そして花のような優しい香り。嗅いだことのない花の香りだった。



『クゥォン。』(三人とも助けてくれてありがとう。本当にありがとう。)



ウルウの感謝の言葉と優しい魔力が俺達を包み込んだ。それはまるで母上に抱かれているような心地だった。


俺達は白銀の美しい女神に抱かれて至福の時を過ごした。


今回はライトが役立たずでした。 なので名誉挽回のためにライトが格好よくなる話を書いていきたいと思います。

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