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九尾の異世界転生と幸せライフ  作者: 十六夜
イグドシア騎士学院 学友編
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クリストの才能①

~クリストside~


ヴォルティス君とライト君、ウルウちゃんと友達になってから1ヶ月。僕は二人の友人に助けてもらい、自身も努力を重ねながら何とか授業についていけている。落ち込むことはあるけど、もう辞めたいなんて甘えた事も言わなくなったんだ。僕はヴォルティス君とライト君に誇れる自分になるって決めたし、一緒に卒業したいからね。


今日も厳しい訓練が終わり、夕食を大食堂でいつものメンバーで食べていたのだけど……。


「あれ?もう食べないのウルウちゃん。」


『キュ……』(ん……。もういいです。)


「もういいって、半分も食べてないだろう。」


ヴォルティス君はウルウちゃんの皿に盛られたご飯を見て険しい表情になりました。


量は小皿一杯程度で、内容は焼いた肉と温野菜、穀類を混ぜたものでした。いつもは完食していたのに最近は残すようになってしまって、終には殆ど食べなくなったようです。これは流石にまずいでしょう。魔獣の仔は成長するためにエネルギーが何より必要とします。だからこの時期は沢山食べさせないと強い個体に成長出来ないのです。


「ヴォルティス君。まずはお腹の調子を聞いてください。」


本当はグルシオ教官かクルド教官に相談する事が一番早いのだけど、先ずは事情を知ってからでも遅くはないと思った。


「ウルウ、お腹でも壊したのか?」


『キュ……』(ううん。ただ、もういいだけ。後で食べるから残しておいて。)


「何て言ってるんだ?」


ライト君も心配そうに尋ねる。ヴォルティス君はウルウちゃんを抱き上げて腕の中にその小さな身体を包み込み、優しく撫でてあげていた。


「もう食べないと。後で食べるから残しておいて欲しいと言っている。」


最近になって分かってきたのだけど、ヴォルティス君は基本無表情なんだ。でも決して喜怒哀楽が無いわけじゃない。嬉しい時には口角を上げるし、目許も和らぐ。悲しい時や不安な時は……ほら、今も形の良い眉を寄せて悲しそうにしている。雰囲気も沈んでいるのが伝わってくる。余程ウルウちゃんが心配で仕方ないんだ。


「魔力はどうですか?」


「…相変わらず強大なのは変わらないが、いつもより弱い気がする。それに、魔力の乱れもある。」


「昨日まで元気だったよな?やっばり食べてない事が身体に負担があったんだ。」


食べない事でウルウちゃんの強大な魔力を維持するためのエネルギーが不足し、それを補うために自身のあらゆる部分からエネルギーを補っているんだろう。それは蓄えた脂肪であったり、体力であったり、筋力、魔力だ。


「どうして食べなくなったんだろう?」


「ウルウは何か言ってるか?」


「いや、何も。」


ヴォルティス君もこんな事態は初めてのようで、戸惑っていた。


「とにかく、このままでは何も解決しないよ。クルド教官かグルシオ教官の所へ行こう。魔獣に関してはトップクラスのエキスパートだし。」


こう提案している自分が情けなくて仕方なかった。いくら魔獣学が得意といっても所詮は学生レベルであると自覚せざるを得なかった。


悔しかった。僕を救ってくれたウルウちゃんが苦しんでいるのに何も出来ない自分が。でも、今出来る事を精一杯やるしか僕には……僕達には出来なかった。









      


~クルド教官の執務室~


急いで向かった先はクルド教官の所だった。グルシオ教官の所でも良かったが、僕達はクルド教官に教えを受けているので、彼に相談することにした。


駆け込むようにしてやって来た僕達を目を丸くして驚いた教官だけど、ウルウちゃんの様子がおかしいと説明するとすぐさまウルウちゃんを診察してくださった。


グッタリしているウルウちゃんを見ると、とても心が痛んだ。


「……確かに魔力に乱れがあるな。それに魔力値も少しだが低くなってる。鼻も乾いているな。体温も低い。総合的に言えば栄養失調だ。だが、あのジーン(料理長)が作った飯を残すというのは変な話だな。」


「ええ。料理長はウルウの好物を把握して料理を出してくれています。今までは普通に完食していたのですが、思えば一週間位前から少しずつ残すように生っていました。……もっと早く気がつくべきでした。私の失態です。」


「お前だけじゃねぇよ。オレ達だってウルウとずっと一緒だったんだ。オレ達全員がこの事態を招いたんだ。……今は自分を責めている場合じゃないぞ。早く食べなくなった原因を探さねぇとな。」


ライト君のいった通りです。ウルウちゃんの不調をすぐさま気づけなかったのは僕達の失態です。……そうですね。今は自分を責めるより原因を調査しないと!


「とりあえずはウルウを癒しの繭に寝かせるぞ。このままだと衰弱する一方だ。」


クルド教官は棚から「糸蜘蛛」の吐く糸で作られた

癒しの効果ある繭を取り出してきた。そして、繭の中にウルウちゃんを入れ、繭をヴォルティス君に渡した。


「繭に常時魔力を送れ。少しでいい。お前の魔力は契約獣のウルウと同調しやすいから適任だ。寝る時は魔力を送らなくても問題ない。繭がお前の触れている所から魔力を吸収してくれるからな。とりあえずはずっと抱いとけ。」


「はい。」


ギュッと繭を抱き締めたヴォルティス君は早速魔力を送っていた。繭はヴォルティス君の魔力に反応して淡く光を放っていた。


「俺もグルシオと協力して原因を調べてみるが、ヴォルティス・シェライザー。お前もウルウから何でも些細な事でも聞き出しておけ。いいな。」


「はっ!」


今日はもう遅いという事で調査は明日以降となった。


「ウルウちゃん……。」


情けなくも涙目になってしまう。


「泣くなよ。今はまだ大丈夫なんだからさ。」


ライト君は強い人だと思う。頼もしく余裕そうにニヤリと笑って僕とヴォルティス君の肩をポンポンと叩く。そうされると少しは落ち着くから不思議だ。ライト君の言う通り「大丈夫」だって思えてくる。


「ヴォルも一人で抱え込もうとすんなよ?オレ達は親友なんだからな。助け合うのは当たり前だし、ウルウはオレ達の姫なんだからさ。」


「俺がウルウの正当なるパートナーだからな。間違っても誰にもこの地位を譲るつもりはない。」


ヴォルティス君って冗談も通じないのですね……。まあ、ウルウちゃんに関してのみのようですが。


「僕も色々と調べてみます。皆でウルウちゃんを元気にしてあげましょうね。頑張りましょう。」


















こうして僕達はウルウちゃんを救うべく動き出した。



この時から僕達は更に結束力が強くなったのだと思う。後に英雄と呼ばれるようになった僕達三人組の原点がここから始まっていたんだ。


僕達はウルウちゃんによってまとまり、そして友情を深めていくんだ。


だからこそ、彼女を救いたい。


何としても原因を解明してみせる!


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