息の続く限り踊る!
~ヴォルティスside~
今、俺の目の前でウルウが踊っている。どうやら癒しの効果がある躍りのようだ。
今朝の躍りが力強かったのに対して、癒しの躍りはフワフワと滑らかで穏やかな印象だった。狐火の色が淡い黄色や水色、桃色、白など暖かい色をしていた。その炎を互いにぶつかって合わさり、七色の光を発する。ウルウは光の中を駆け回り、自身から美しい魔力の光を発光させた。
「すげぇな。体の疲れが消えていく……」
「何も教えていないのに、既に魔力をコントロールしている。ウルウは子供でも魔獣なのだな。」
俺はウルウはまだ子供で何も出来ないと思っていた。だが、ここに来てウルウは少しずつ成長していた。親がいなくても、ウルウは自分の力で成長している。この躍りもウルウ自身が見つけた力なのだ。
『キュン!』
「どう?大丈夫?」と聞いているような上目遣いと鳴き声に、俺は安心させるように笑って抱き上げた。
「凄いぞウルウ。お陰で疲れが取れた。ありがとう。」
『キュ~♪』
彼女が好きな首筋を掻いてやる。気持ち良さそうに目を細めた姿に癒される。
「可愛いなぁ~。なあ、反則だぜ?これ以上可愛い仕草をすると犯罪者……いや、変態が出てもおかしくないぜ?」
「例え出てきたとしても叩き潰して切り捨ててくれる。」
俺のウルウに変な気を起こす奴等が出てくるなら全力をもって葬ってやる。
「話は変わるけど、ウルウのその能力って後方支援向きだよな。」
「そうだろうな。狐火の炎で攻撃はできるが、護身程度だ。」
『きゅ!』(護身程度で悪かったですね!)
何やらウルウがムッとしているようだ。臆病なくせに負けず嫌いな部分もある。お転婆でじゃじゃ馬な姫だ。
「お前は前衛タイプだからウルウとのバランスは一応取れてるな。でもさ、攻撃タイプの魔獣の方が戦いで有利なのは確かだ。相手の魔獣と対決することになったらウルウじゃ不利だ。」
確かにそうだろう。ウルウは優しく臆病だ。勇敢でもあるが、滅多なことで他人を傷つける子ではない。
「今は不利と思うが、ウルウはまだ未知数の能力を秘めている。これからを期待しようと思う。」
『きゅん……』(情けないパートナーでごめんね。)
シュンと項垂れてしまったウルウを優しく抱き締めてやる。
「これからだ。これから心も体も共に鍛えればいい。」
垂れた耳を手で包んで揉み上げる。実に良い触り心地だ。
「それよりお前の躍りがとても好きだ。俺は今まで娯楽に興味はなかったが、お前の仕草や躍りを楽しみにしている自分がいるんだ。戦える魔獣がパートナーだったらこんな思いを持てなかっただろうな。」
『キュ。』(本当に?)
「お前と出会えて良かった。」
『キュンキュン!』
俺の首筋に顔を埋め、九本の尾が喜びを表すようにフワフワと揺れていた。
ウルウも不安なのだ。俺が勝手にウルウの価値を決めつけてはいけないのに、ライトと一緒になって要らぬことを言ってしまった。
「そうだ、また何か躍りを踊ってくれないか?今度は華やかな躍りが良い。ウルウらしい躍りが見たいな。」
『キュン!』
ピョン!とヴォルティスの腕から飛び降りた。そして再び軽やかに踊り始めた。
一方、そんな二人の甘い雰囲気にあてられ、げんなりとしていた。
「人間のバカップルみたいだ。甘過ぎて砂糖を吐きそうだ。」
あれはパートナーの域を超えた感情だ。特にヴォルティスはウルウに対してかなりの執着を見せている。
「ヴォルティスがこの先どんな男になるのか……人間の女よりウルウを嫁にしそうで怖いぜ。」
きっと自分もそんなヴォルティスとウルウに振り回されるだろうと未来に思いを馳せた。
「どうか二人がまともな主従になってオレに迷惑をかけないように!」
ただそれを祈るばかりだ。




