私はホステスNo.1!
入学式が無事に終わり、ヴォルと私、ライトさんは迎賓館に向かった。これから王太子殿下や国の上層部と顔合わせがあるみたいなの。
「お、王太子殿下と直接話せるなんてっ!…勉強と修行頑張って良かった…!」
ライトさんはとても感激していました。それも涙目になるほど。…そりゃ、私も前世で天皇陛下のご尊顔を直接拝見できて物凄く感動しましたし、嬉しかった。私は天皇陛下を尊敬していたし、国民の一人として陛下が大好きでした。だから何となくライトさんの気持ちが分かるの。
「確かに殿下とお会いできるのは光栄なことだ。だが、泣くほどか?」
『きゅう?』
まあ、泣くほどではないと思う。
ヴォルティスの右肩の上で首を傾げるウルウの姿はとても愛らしかった。
「オレ、ウルウが首を傾げるだけで殿下を落とせると思った。」
「確かにそうかもしれないが、殿下にウルウを奪われるかもしれないから止めてほしいよ。」
ヴォルったらそんな事を気にしてたの?なら、私はあまり愛想を振り撒かないようにするわ!例え殿下や王様にだって私の心はあげない。私の全てはヴォルのものよ!
『きゅううう。』
ぐりぐりぐり…
私は思いっきりヴォルに甘えた。彼の首筋に頭を擦り付けて全身で甘える。「くすぐったいよ」とヴォルは嬉しそうに笑っていた。うん。大切な人の笑顔って一番よね!
「やっぱりウルウは良いよなぁ~。オレもパートナーは愛玩系の魔獣にしよっかな~。」
ライトさんは羨ましそうに私達を見てそう呟いていた。でも、ライトさんはきっとドラゴンとか獅子とか戦闘系の魔獣をパートナーにすると思うんだよね。何せ、ライトさんは主人公タイプの人間ですからこれからどんなパートナーを見つけてくるのか楽しみです。
~迎賓館~
迎賓館にやっと着いた。迎賓館はイグドシアの本館の側に建てられており、殿下や来賓の方々が宿泊するための特別な館だ。
「やっと来たようだな。」
門の前に立っていたのは担任のアーノルド教官だった。
「殿下達がお待ちだ。一緒に挨拶に行くぞ。」
「「はっ!」」
厳重な警備の中を歩いて一番大きな扉がある部屋に辿り着いた。
殿下直属の親衛隊が扉を開いてくれた。
「失礼します。アーノルド・キリスイア、今期の首席と次席の二人を連れて参りました。」
「失礼します!首席のヴォルティス・シェライザー、参上しました。」
「同じく、次席のライト・ビザイル、参上しました。」
入室と同時に殿下達に敬礼をした。
「ああ、待っていたよ。そこのソファーに座ってくれ。」
殿下の側近の人がソファーに案内してくれた。コポポポ…と美味しそうな紅茶を淹れてくれた。
殿下と理事長は紅茶を飲んで一息ついていた。
「君達も遠慮しないで飲みたまえ。」
「私も殿下も君達とお茶を楽しみたいのだ。なに、私達のことを気にしなくてもいい。」
いや、殿下と理事長を前にしてお茶を飲める訳ないでしょうに。そこまで厚かましくないわ。
でも二人に促されて主にライトさんがカチコチに緊張しながら紅茶を飲んだ。
「その仔にも何か用意しようか?」
『キュウ?』
先程から殿下は私を凝視してました。成る程、きっかけを作りたかったのね。
「報告ではその魔獣の仔は新種らしいな。」
理事長はヴォルの肩の上に座っている私を見てそう言った。
「親はフィニック種のようですが、ウルウはヨウコという魔獣です。」
ヴォルは肩から私を膝の上に下ろしてくれた。私は大人しくお座りして殿下達を見上げる。
「成る程、ウルウ石のような美しい瞳だ。聖獣とは違った美しさだな。」
殿下はキラキラの顔をもっとキラキラに輝かせていた。ま、眩しいです。
『キュウ…』
私は恥ずかしくなってピトッとヴォルに引っ付いた。
「……!!」
「殿下、落ち着ついてくださいませ。」
理事長が懐から取り出したハンカチを殿下に差し出した。
「す、すまないっ!」
殿下は急いでハンカチを鼻に当てていた。
(殿下って可愛いものに過剰反応でもするのか?ハンカチで鼻を押さえる姿が何とも言えない。)
ライトは殿下の新たな一面を目の当たりにして、威厳がない姿に力が抜けた。
「はぁ……相変わらずなのですね。先程まで王太子として威厳ある姿に安心していました。でも、殿下は殿下でした。」
「殿下は素晴らしいお方ですよ。ですが、可愛いものに妄信的なだけです。」
殿下の側近の人が誉めてるのか貶しているのか微妙なフォローをいれた。…思ったのだけど、理事長も側近の人も殿下に遠慮がないよね。どういう関係なんだろう?
「あ、あの、理事長と殿下は親しいのですか?」
ライトさんが代わりに私の疑問をそのまま聞いてくれた。ナイスだわ!
「私の剣術の師はエバルだからな。見た目通り厳しい師だった。」
「何を仰います。厳しい訓練に耐えたからこそ今の殿下があるのです。剣も扱えない王子はただの坊っちゃんです。」
「ついでに俺も理事長の教え子だ。鬼の教官とはエバル理事長を言うんだ。」
殿下とアーノルド教官は遠い目をしていた。どれ程厳しい訓練に耐えたのだろう。なんだか哀愁も漂ってるし…。
『キュウ?』
あまりにも可哀想に見えたから思わず殿下の所に行ってその手に擦り寄ってしまった。
「あ……」
殿下が驚いて私を凝視していた。
「ウルウ!」
ヴォルが珍しく慌てていた。そして私を殿下から引き離し、抱き上げた。でも殿下が無言で私をヴォルから抱き取ってしまった。
「ウルウ、ウルウか。なんて愛らしい…。この極上の手触りは最高だ。」
ギュウ!っと人形よろしく私を抱き締める殿下は恍惚としていた。
ヴォルは無表情ながらも困ったように私と殿下を見ていた。どうしたらいいか分からないのだろう。
『きゅ~…』
「よしよし。大人しく良い仔だ。ウルウは…そうか可憐な姫なんだな。君が人間の姫なら嫁に欲しいくらいだ。」
「ご自分の女性嫌いをその仔に言わなくても良いでしょうに。嘆かわしい。」
「エバル殿も分かってくれますか。我々側近も殿下の女性嫌いに苦労しているのです。」
側近や王様が苦労しているのが想像できます。
それにしても女性嫌いとは意外です。殿下は金髪碧眼の美青年だ。文武両道で臣下にも人気がある。当然、女性にもモテる。というか、女性がオーディル殿下を放っとかないだろう。
『きゅううう~!』
でもですね、そろそろ離して頂きたいのですよ!
ヴォル助けて~!