首席はライバル!後に親友!《ライトside》
オレはライト・ビザイル。庶民で年は15歳だ。家族は叔父夫婦と従妹で、オレは叔父の兄の子供だ。両親が亡くなったので引き取られたんだ。。
叔父達はオレに良くしてくれた。従妹と身を固めて本当の家族になろうと言ってくれたけど、オレは自立して騎士になりたかったから断った。家を出た時も引き止めたしな。
家族を振り切り、イグドシア騎士学院に来たオレは、今期で次席として入学を許可された。まあ、庶民だから教会や図書館で勉強して、知り合いの騎士に勉強を見てもらったりしてたからオレとしては良い成績だと思う。でも悔しいと思う気持ちもあって、1号室の中で相部屋になる首席様を待っていたんだ。どんな奴が首席様だろうと思いながら……。
コンコン……
「失礼する。今日から共に学ぶことになったヴォルティスです。この1号室に割り当てられました。これこら宜しくお願いします。」
1号室にやって来た首席はオレの想像を遥かに超えた絶世の美少年だった。輝く金髪に綺麗なロロア石(翡翠色)のような瞳で、無表情だが、玲瓏とした雰囲気があった。文句なしの美少年である。これは将来、女が放っておかないし、騒ぐだろうなとヴォルティスの未来を心配した。
彼は貴族らしい。シェライザー公爵だ。更に嫡男の筈なのに騎士になるなんて、余程の事情があるんだなと察した。貴族の争いに首を突っ込んだって何の得にもなんねぇしな。オレには関係ない話だ。
次に、ヴォルティスのパートナーの魔獣を紹介してもらったんだ。すると、驚くことに無表情のヴォルティスが少しだけど笑ったんだ。余程、パートナーが可愛いらしい。オレのテンションに着いていけなかったみたいだが、魔獣を通じて少しは心を開いてくれたみたいだった。ライバルだけどヴォルティスとなら良い友人になれるんじゃないかと思った。性格も良いし、無表情だけど喜怒哀楽がちゃんとあるって分かったしな。
「ウルウって小さいのに気が強いんだな。」
ウルウに唸られて思わずビビってしまったオレ。
「……臆病な性格だが、勇気はある。あまりこの子を怒らせない方がいい。先程も受付の教官に治癒魔法だが、脅しに攻撃したからな。」
「ま、マジか……。しかし、治癒魔法で良かったな。もし教官を傷つけでもしたら魔獣舎行きだったぞ。」
『きゅ~』
きゅ~…じゃねぇよ。こんな可愛い成りして案外凶暴なんだな。魔獣は魔獣ってことだろう。
ヴォルティスの膝の上で寝転ぶウルウの姿に気が抜ける。ヴォルティスも微笑みながら腹や顎の下、頭を撫でていた。
「なあ、ヴォルティスって王族直属の近衛騎士を目指してるのか?」
「……俺の事はヴォルと呼んでくれ。ヴォルティスでは長すぎるだろう?」
ヴォルティスが愛称で呼ぶことを許してくれた。それはオレの事を友達として認めてくれたという事だ。
「オレの事もライトでいいぜ!宜しくなヴォル!!」
「ああ、ライト。俺こそよろしく。」
やっぱりヴォルとは良い友達になれる気がするぜ。
「それより近衛騎士の話だったな。確かに王族を守護できるのは大変な名誉になるが、実戦で戦えない。功績も立てられないからな。俺は機動部隊か隠密部隊に所属したいと思っている。命の危険と隣り合わせだが、国を守るという目標を叶えるに相応しい道だからな。」
ヴォルは只の甘い貴族ではなかった。彼は実力主義者のようだ。さっきまで優しげな目をしていたのに、好戦的で鋭い目をしていた。
「ハハハハ!そうか!オレと同じだ。オレも機動部隊に入ろうと思ってたんだ。王族を守れば箔が付くだろうが、あの仕事は執事と何ら変わりはない。貴族の我が儘を聞き、時には使い捨てにされるんだ。特にオレのような庶民出の騎士はな。」
「王族の事は他の奴等に任せとけばいい。態々蛇の巣に入らなくても騎士として生きていけるからな。」
「違いない。」
それからオレ達は互いの価値観や目標を語り合った。どうやらオレ達は似た考えの持ち主で同志のようだった。会って間もないけど、親友と呼べるくらいにオレ達は気があった。
『きゅう!きゅう!』
(ヴォルを独り占めはダメです!ヴォルは私のパートナーなんだから!)
「うわっ!?ちょ、落ち着けよ!」
「ウルウ、止めなさい。」
ウルウがオレに飛び掛かってきた。オレは仰向けにベッドに倒れて、ウルウの肉球パンチと甘噛みを頭と耳に何回もやってきた。痛くはないけど、くすぐったくて、その行動が可愛くて仕方なかった。何だよこの生き物は!?
そんなこんなで濃い一日だったが、人生で2番目に最高の出会いだったと思う。ヴォルとの出会いがオレの人生に大きく関わってくるなんて、今のオレには想像も出来なかった。
これから始まる彼等との学校生活が楽しくなりそうだ。




