首席と次席
教官に渡された鍵を持って三階に上がる私達はユーグ先輩達と二階でお別れをしました。先輩達は二年生でも三年生の生活区域でお部屋を与えられているらしいのです。何でも二年生でトップクラスだから三年生と混じって訓練することがあるからだそうです。……只者ではないと思っていましたが、規格外の人達だったようです。
「先輩達のように優れた成績を残せば俺も二年生や三年生と混じって訓練ができるだろうか。」
『きゅ!』
出来るよ!ヴォルは首席で入学したんだし、何より私のパートナーだもの。私も頑張るし、ヴォルも努力をすればきっと先輩達と訓練が出来るわ。
「ははっ、お前の言葉を早く聞き取れるようになれるといいな。でも、何となくだけど俺の事を励ましてくれていると感じるんだ。そうだろう?」
『きゅう!きゅう!』
そうだよ!いっぱい応援してるよ!
それより会話が出来るようになるんだね。早くお互いに会話が出来るようになりたいな。そしたらもっと楽しく会話ができるもの。
「さて、俺達の部屋は……1号室らしい。何というかあっさりした番号だな。」
『きゅう』
確かにそうですね。1号室かぁ~……どんな部屋なんだろう?もしかして相部屋なのかな?同室の人、いい人だったら嬉しいな。
1号室は階段を上がって直ぐの場所にありました。ここなら遅刻しそうになっても直ぐ近くに階段があるから駆け降りる事が出来るよね。
コンコン……
「失礼する。今日から共に学ぶことになったヴォルティスです。この1号室に割り当てられました。これこら宜しくお願いします。」
ヴォルが礼儀正しく挨拶をしている間に私は相手を見ていた。どうやら室内にいるのは一人だけのようだ。相手の容姿はかなりのイケメンのようで、でも人懐っこい顔をしていた。赤い髪に両サイドに金髪が一房ずつ混じっている不思議な髪色だった。瞳は青色で、黙っていれば文句なしの王子様な人だけど……
「こちらこそ宜しく!オレはライト・ビザイル。今期の次席なんだ。ヴォルティスは首席なんだろう?」
「……そうです。」
「オレも驚いたんだけど、首席と次席は必ず一緒の部屋割りになるらしいんだ。先輩の話だと切磋琢磨できるライバルだからという理由があるらしい。つまり、オレとヴォルティスはライバルってことだ!」
「…………。」
このライト・ビザイルという人、元気過ぎるわ。何というか、ポジティブな性格です。彼の勢いのせいでヴォルが気圧されてしまったじゃないですか。
ライトさんはヴォルの荷物を持って私達を室内に招き入れました。室内は二人部屋で、左右にシングルのベッド。窓側に勉強机があり、二人用の小さなテーブルと椅子が二脚が備え付けられていました。
「ヴォルティスって貴族なんだろ?でも、他の奴等より優遇されてるんだぜ?他の奴等は四人か三人部屋なんだ。成績優秀者だけ与えられる特典の一つが二人部屋なんだよ。」
「実力主義が徹底されているな。」
「だろ?だから少しでも待遇を良くするために皆努力するんだ。例えこの学校でトップ10に入れなくても良い成績を修めれば卒業後の配属先に恵まれるからな。」
それは誰でも頑張ろうと思うでしょうね。まともな就職先に就きたいと思うなら尚更です。
『きゅ!きゅ!』
ヴォルにベッドの上に下ろされて布団に体を擦り付けます。はわわわ~…気持ちいいですぅ。
「な、な、何だコレ!?」
『きゅう?』
コレ呼ばわりですか?酷い呼び方ですね。この人、女心が理解できない天然ボケか阿呆ですね。
「俺のパートナーのウルウだ。教官に許可も取ってあるし、ウルウも危険な魔獣ではないから安心してほしい。ただ、臆病で人見知りだからあまり怖がらせないでくれ。」
私は寝そべったまま上目でライトさんを見上げていました。ライトさんもキラキラ表情を輝かせて私を見下ろします。
「ウルウって名前なのか!オレはまだパートナーがいないんだ。一年の後半になってから魔獣と契約できる授業をやるみたいだから、それでパートナーを得ようかと思ってたんだ。」
「ライトはパートナーがいなかったのか。」
「うん。オレって庶民で貧乏だったからパートナーを養う余裕がなくてさ。騎士になれば養えるし、配属先で養ってもらえるだろ?それにしても……スゲェ可愛いな!オレ、ドラゴン族かウルフ族、レオ族の魔獣を選ぼうと思ってたけど、ウルウみたいな癒し系も捨てがたいぜ。」
こらこら、癒し系って何ですか。私は今は役立たずですけど、あなたの言うドラゴンには負けるつもりは無いのですよ!その内大きくなって、私が強いことを証明してみせるんだから!
ライトさんを睨んで鼻息を荒くしていれば、ライトさんは少し怖がってました。
私に怖がっていてはドラゴンなんてパートナーに出来ないでしょうと呆れるしかなかった。……ビビりめ。