個性的な先輩達
お待たせしました!一話だけですが更新です。
今回は個性的なユーグの友人を出してみました。
ユーグさんの呼び出しに嬉々として近寄ってきた四人の先輩達。どの人もイケメンでした。騎士を目指す男の人ってイケメンが必須条件なのかしら?
「紹介するよ。僕の同期の友人達だ。皆、2年生だよ。」
「新入生か!それにしても随分と見目麗しい奴が入ったもんだ。その容姿なら騎士にならずとも楽に生きていけるだろうに。」
「ドルガー!……ごめんねヴォルティス君。彼はドルガー・ログナー。ログナー商会の次男なんだ。この容姿で商売の才能があった余りに長男の嫉妬と周りの思惑に巻き込まれてひねくれただけなんだ。」
「こら!余計な事まで言うなよ!!」
ドルガーさんは茶髪に緑色の瞳をした気の強そうなイケメンだった。体つきはユーグさんより逞しいけどマッチョってほどじゃない。バランスのとれた容姿だと思う。身なりは商家の次男というだけあって品のいい服を着ていた。
「容姿だけで食べていけるなら俺は騎士なんて目指してねぇよ。金持ちの女共の良いようにされたくないからドルガーだって騎士を目指してるんだろ?……ああ、紹介が遅れたが俺はロード・ウィングガン。生家は代々騎士の家系で男爵家だ。俺も女や周囲の思惑から逃れるために騎士を目指してる。よろしく。」
ロードさんは眼鏡をかけた理知的な人という印象がある。藍色の髪に藍色の瞳の美形だ。眼鏡貴公子って感じの紳士です。ただ、言葉使いは乱暴だけど……。
「……ユーグ、僕にも……抱かせてよ。」
『きゅ!?』
な、何事!?
いきなり目の前に現れた長身の男の人に抱き上げられた私。優しく抱き上げられたので何ともなかったけど、驚いてしまいました。あぁ……心臓がバクバクしてます。
「……可愛い……名前……?」
「ウルウです。」
ヴォルが私を抱いている先輩に答えます。
「ウルウ……ウルウ……何て可愛い……」
この先輩は銀髪に緑色の瞳を持った美形でした。前髪が長いけど、彼の澄んだ瞳が子供のように無邪気さが伝わります。どうやら私の事を気に入ってくれたようです。
「彼はルルシス・ツウェル。見ての通り魔獣マニアなんだ。話し方は片言だけど、少し話すのが苦手なだけだからどんどん話しかけてやってね。ルルシスは平民だけど剣術や魔獣の扱い方はトップクラスなんだ。」
「そうなんですか。俺も剣術と魔獣の扱いを上手くなりたいと思ってるんです。ウルウは俺の初めてのパートナーですから、この子と共に騎士になりたいのです。」
『きゅう……』
ヴォル……
私はルルシスさんの腕の中で感動していた。ヴォルの中で私の存在は愛玩動物になっていたのかなって思っていたの。いつまでも子供扱いで、実際は子供だけど、もう少し信じて欲しいなって思ってた。でも、ヴォルの未来に私が存在していることがとても嬉しかったの。相棒として隣で戦えることが。
「僕で……よければ……一緒に訓練を手伝う。……その代わり……ウルウを抱かせてね。」
「はい。」
『きゅう』
交換条件がまさかの私でした。しかもヴォルもあっさり了承するし……。先輩との付き合いです、喜んでこの身を捧げましょう!
「いいなぁ、ルルシス。俺にも抱かせてよ。」
「ダメ……アレクシスに……抱かれたら……ウルウ、妊娠する。」
『きゅ!?』
に、妊娠ですか!?私はまだ乳飲み子ですけど??
「酷いな。」
クスリと色っぽく笑ったのは赤髪に琥珀色の瞳を和ませた、とんでもない美青年でした。なんというかフェロモンが駄々漏れで、触られるだけで人間の女の子は妊娠しそう。気だるげな雰囲気がエロい。……私、この人が苦手かも。
「ヴォルティス……だっけ?俺はアレクシス・ローバル。ローバル伯爵の長男だ。ああ、家督は弟が継ぐから問題ないよ?自由の身なんだ俺は。」
「俺と同じですね。」
アレクシスさんと同じ境遇なのでヴォルティスも親近感を持ったようです。ただ、アレクシスさんは本当に自由が欲しくて家督を弟さんに譲ったのかもしれませんが。
「俺と同じって、ヴォルティスも貴族なのかい?まあ、その身なりで平民ですって事はないだろうけど。」
流石に分かりますよね。アレクシスさんと同様、高そうな服を着てますから。
「……俺はシェライザー公爵の長男なんです。」
「シェライザー公爵!?……確か君の家には男が君しかしなかったよね?」
その通りですよユーグさん。
「へぇ。」
アレクシスさんは面白そうに笑ってました。何やら面倒くさくなりそうな感じです。
「公爵の人間かよ。また面倒な……」
「ドルガー失礼ですよ。イグドシア騎士学院は公爵だろうが奴隷だろうが、実力があれば誰でも入ることができます。勿論、騎士とは無縁の貴方のような人でもね。」
「喧嘩売ってるなら買うぞロード。」
「では、戦術の授業では二度と教えませんからね。」
「ぐっ!……それは困る。」
ロードさんとドルガーさんのやり取りに二人の力関係が見えてきました。ドルガーさんって見た目通り剣術が得意そうで勉強とか苦手そう。ロードさんに厳しく勉強を見てもらっているのでしょうか。そんな彼等の様子が目に浮かびます。
「二人の痴話喧嘩は日常茶飯ですから慣れておいて下さい。いつもドルガーがロードに負けるのです。それにヴォルティス君が公爵だろうと関係ありませんよ。イグドシア騎士学院は僕たちみたいに様々な事情がある人間が大半ですから。純粋に騎士になりたい人なんて希少です。」
ユーグさんの言葉にヴォルも少しは落ち着いたみたい。
「そう言えば、ユーグさんの名字を聞いてませんでした。」
「ああ、そうだったね。」
「貴方はヴォルティスに聞かれるまで答える気などなかったでしょうに。」
「酷い言われようだねロード。ただ、言う必要はなかったと思ったからだよ。そうだね、僕はユーグ・アルバルト。」
「アルバルトって、あの先代王兄の?」
先代の王様の兄ですよね?大公ですよ?え、ユーグさんって大公の人なんですか!?
「やっぱり驚くよね。だって大公は父の代で現王陛下に没落させられたもの。でも没落しても家名は残るもので、名前だけが有名なんだよ。今の僕は平民のユーグ・アルバルトなんだ。」
ニッコリと笑うユーグさん。本当なら王族として敬われて、華々しく生活していたはずなのに。
そんな私達の考えが分かったのかユーグさんは私達の考えを否定した。
「皆は僕が大公だったらって同情するけど、僕は平民で良かったよ。父上もそう言っていたよ。貴族なんぞろくでもないってね。今はリリクレア様に召されたけど、庶民の母上と結婚できて幸せだったみたいだし。僕は今の生活が気に入ってるんだ。」
この様子だと本心で言ってるんだろうなって分かる。現王を恨むことなく前向きに生きてきたからこそ今のユーグさんがいるのだと思った。それって凄いことだと思う。贅沢に慣れた貴族が平民の生活に我慢できる筈がないもの。
「ユーグって逞しいだろ?俺達の理想とする人間なんだぜ?」
「地位や名誉など関係ない。自分の力で幸せになるということを実現してるから俺達はユーグと一緒にいる。」
「俺も……ユーグと一緒にいると……楽しい。大公なんて関係ないって……思う。」
「俺達は周囲からすれば変人の集まりだよ?ユーグを中心に5人でつるんで自由同盟を掲げてるんだ。まあ、それは地位を捨てないと出来る事じゃないけどね。」
上からドルガーさん、ロードさん、ルルシスさん、アレクシスさんがそれぞれの思いを語った。皆さん、ユーグさんの事を大切に思ってるんですね。ユーグさんもそれほどまでに皆さんを友人として大切にしてらしたのでしょう。
「自由同盟ですか。素敵な活動ですね。」
あれ?ヴォルティス、興味があるの?
「俺は弟が生まれれば自由になれる。父もそのつもりですし、俺は騎士として生涯を国に捧げるつもりです。もし、先輩達が許可してくださるなら、俺も自由同盟に加えてください。」
「勿論だよヴォルティス君!歓迎するよ!!ね、いいよね皆?」
ユーグさんは歓迎してくれました。
「俺は……いいよ。ヴォルティスと……仲良くなれれば……ウルウと遊べるし。」
ルルシスさん、私目当てですか?
「俺も歓迎しますよ。正直、ドルガーだけで手一杯ですからヴォルティスとウルウがルルシスとアレクシス、ユーグの面倒を見てくれれば負担も減ります。」
ちょい待て!ユーグさんはいいとして、アレクシスさんとルルシスさんを押し付ける気ですか!?ルルシスさんは主に私の担当になりそうだなぁ。アレクシスさんは……私のヴォルに大人の世界に誘いそうだから、やっぱり私が目を光らせとかないと!!
「俺がお前の面倒を見てやってるだろうが!!」
ドルガーさん、間違いなくロードさんに面倒を見られてますよ。でも、二人はお互いに支えあってるからお互い様なのでは?
「俺は歓迎するよ。ヴォルティスが友人になってくれたらもっと楽しいことがありそうだ。よろしくね?」
アレクシスさんは絶対ヴォルで遊ぶ気なんだ。ほら、ヴォルだって顔がひきつってるし。
「全員賛成のようだし、歓迎するよ!ようこそ我が自由同盟へ!!君で6人目の会員だよ!」
それは随分と少ないメンバーですね。
これでヴォルも変人の仲間入りだわ。……同学年の友達もできるといいのだけど。




