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九尾の異世界転生と幸せライフ  作者: 十六夜
王都観光編
20/49

九尾の勾玉

楽しかった王都観光も終わり、現在、屋敷ではヴォルの入学に向けて準備で大忙しなのです。あと5日後にはイグドシア騎士学院に向かうことになっています。このお屋敷ともお休みの日以外はお別れです。少し寂しいと感じます。


さて、今日はヴォルと一緒にあの【九尾の勾玉】について実験していきたいと思います。


「よし、ここにあの時と同じ無属性の魔石を用意した。俺にくれた勾玉のように作ってみてくれ。」


『きゅ!』


了解です!


あの日、時計台で起きた出来事はやっぱり魔獣の常識を覆す

程のものだったらしいのです。魔獣が魔石に属性と能力を付け加えるのはあり得ない事だったらしく、もし、悪い人達に捕まれば解剖か、強制的に勾玉を作らされるか、もしくは……その、無理矢理に子供を産まされると言われました。聞いた当初はショックと恐ろしさで後悔しましたよ。何故、あの時に力を使ったんだろうって。でも後悔しても遅いですし、ヴォルが「お前を誰にも渡さない。だが、お前も抵抗出来るように少しずつ強くなろうな。」と私を本格的に訓練してくれるようになったのです。私はヴォルに守られるだけのパートナーになりたくはないです。ヴォルも守って自分も守れる、そんな魔獣になりたい。


だからその第一歩として能力の把握を行っているのです。


『きゅう~……きゅう~……』


私の足元には透明の魔石が一つ置いてあります。メイド長が水の魔石が無くなったと言っていましたから、今回は水の魔石を生成することになりました。


……と意気込んだは良いのですが、全く反応がありません。


「……魔力の出し方は分かっているのか?」


魔力の出し方ですか?えっと、身体中に巡っている血液を意識して、それを額に集めるイメージでやっています。そうすると暖かい力が感じられるのですよ!


「出来ているな。次に属性の感覚だ。水のイメージを具体的に思い浮かべるんだ。川でも雨でもいい。」


『きゅう~!!』


イメージは海です!前世で見た海の記憶を思い出してそれを魔力に溶け込ませます。すると額に溜めていた魔力が私の体全体を覆って、まるで水の中にいるような感覚になりました。


「良いぞ!その魔力をあの炎に出来るか?」


炎に?……ああ、狐火のことかな?そういえば狐火を吐き出していたっけ。


『ケホッ!』


ポウッ!


咳をするように吐き出すと水色の火の玉が目の前に現れた。

それをヴォルが指先でつついたのだ。


「上手く出来たな。……うん、思ってた通りだ。炎なのに熱くはない。」


『キュキュ!』


危ないよ!もし、本当に熱かったら火傷してたんだよ!?


ヴォルの軽率な行動に焦ってしまう。自分でも能力の把握は出来てないのに止めて欲しい。今後も安全な能力とは限らないのだから。


『キュ~!!キュ!!』


私はヴォルに行動と態度で怒ってやる。不用心に触るなと、怪我でもしたらどうするんだと。


私の怒りが伝わったのか「……ごめん。」と謝ってくれた。危ないことをした自覚はあったみたいです。二度とこんな事をしないで欲しいものです。


さて、続きをやりましょう!魔石が宙に浮かんで狐火の中に包まれます。イメージはお鍋の中で溶かすような感じで魔石に水属性の狐火を溶かし込みます。狐火の中で魔石の形が崩れて液状化して徐々に勾玉の形に固まっていくのが見えますね。


『きゅう~!きゅう~!』


なるべく長持ちするようにありったけの私の魔力を練り込みます。いつも洗濯やお掃除を頑張ってくれるメイドの皆さんのためですから!


九本の尻尾がフワフワと動きます。体もプルプル震えて、力んでしまう。


『キュ~~!!』


目をカッと見開いて叫ぶ。


勾玉が淡く光り輝いて、その存在を露になった。澄んだ水底のような水色の勾玉が完成したのだ。大きさは玉子位でしょうか?意外に大きかったです。


『……きゅぅ。』


成功した……。


無事に成功したと思ったら、身体中の力が抜けてヘタ……と床に倒れこんでしまいました。もう、立てません。


「魔力の使いすぎだな。無理をするからだ。だが、予想以上の出来だ。このような質の高い魔石は王族の家宝レベルに匹敵するかもな。となると、これからは無闇に魔石を作ってはならないぞ。」


わ、分かりました。でも、今は少し休ませて……。凄く体が重いのです。


くた~っと寝そべって動かないウルウを抱き上げて、自らのベッドに寝かせるヴォルティス。勾玉を拾い上げ、ベッドの端で座ってそれを眺める。その様子を寝ぼけながらも見守るウルウだが、酷い眠気には勝てなくて結局は気絶するように眠りについたのだった。


その後、ウルウは知るよしもなかったが、水の勾玉は使われることなくヴォルティスが家宝として管理することになった。そして、その勾玉とこれからもっと作られるだろう勾玉が彼の子孫代々の家宝になるだろう。でもそれは先の話である。



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