王都観光~噴水広場~
ヴォルの買い物も全部終わり、美味しくて有名な喫茶店でお食事です。護衛の方も一緒ですよ?まあ、立ち食いとかで済ませる人も中にはいますが。
喫茶店の中にった中型の犬の魔獣や小型の猫の魔獣、蛇やカエル、私の母様のようなフィニック種の魔獣までいた。
「こうして見ると、俺のウルウの方が愛らしいな。」
『きゅう?!』
な、何を急に?!
「ニーニ(猫)やウォフ(犬)の奴等を見ろ。最近の流行を取り入れた服を着せてるが全然着こなしてない。」
……確かに微妙な感じではある。彼等は貴族が着るようなドレスまたはタキシードなど魔獣用に作られた服を着ていた。それが全然似合ってないのだ。地球の犬猫用の服がどれ程素晴らしい作品だったかと誉めたいくらいだ。
例えば、あのニーニはピンクの毛色だけどオスだ。でも貴婦人のドレスを着せられてる。ゴスロリと評価してもいいだろう。オスでも外見は可愛いから女装は許せる。でも、私なら白のスカーフを首に巻いてあげる。彼には余計な装飾品はかえって邪魔だ。彼は凛々しさもある。スカーフだけにしたならあの容姿に更に輝きが増すことだろう。だから非常に残念です。
「さて、昼食はどうしようか?俺は軽いもので済ませたいから……サンドイッチセットでいい。ウルウはミルクとハムにしようか。」
『きゅん。』
最近、私は固形物を食べる訓練をしてます。でも私は果物とかミルクとか蒸した野菜が好きで、生肉は駄目なんです。でも、魔獣専門のお医者様は栄養が偏って成長が出来ないと言われまして……ヴォルや皆さんが知恵を出し合った結果、ハムを食べさせることになりました。
こちらのハムは地球のハムと違い、少し生臭いですが生肉より遥かにマシなのです。贅沢を言えば、もっと血抜きして塩水で丁寧に洗って香木で燻製にして欲しい。
「お待たせ致しました。」
待ちに待った昼食が来たようです!ヴォルのサンドイッチも美味しそうです。
「そのハム二枚はこの子に。残りは俺にくれ。」
ヴォルは完璧に私の胃袋の容量を把握しているようです。ミルクはニーニと同じ容量で大体150ml位です。まあ、私はそんなに飲めませんが。後はハムも食べるのですから今の私にとって大食い大会に出る心地です。
「アシルド、前掛けを……」
「はい。ウルウ、動かないで下さいよ。」
アシルドさんに付けられたのは私専用の前掛けなんです。どうも食べるのが下手で胸元の毛を汚してしまうのでアイリさんに前掛けを作って貰いました。お陰さまで毛皮が大変汚れなくて済んでおります。
『きゅ……』
ありがとうございます、アシルドさん。でも、魔獣なのに情けない姿です。魔獣としてテーブルマナーは頑張って身につけますから!
「さあ、頑張って食べるんだぞ?いただきます。」
『キュキュ!』
いただきま~す!
……プハッ!もう食べられませんが何とか完食しましたよ!
「偉いな、全部食べたな。」
ナデナデしてもらうとお腹がいっぱいなのもあり、眠たくなる……子供の体は厄介なのです。しかし、この後は楽しみにしていた観光巡りなのです!眠ってたまるものですか!!
もはや意地でした。ウトウトしそうな頭を何度も振り眠気を吹き飛ばします。ヴォルはそんな私の意地と根性に面白そうな表情で見ていました。
「ククク……さて、ウルウ。この道を真っ直ぐに歩くと……着いたぞ?王都最大の噴水広場だ。」
目の前には巨大な噴水が大量の水を噴き上げていました。水は女神や聖獣、魔獣の彫刻を滑り落ち、光を反射して虹を作っていた。魔石と思わしき石が水底に沈んでおり、青い光がキラキラ輝いていた。とても美しい光景だった。
『きゅ~!きゅきゅう!!』
眠気なんてすぐに吹き飛びました。ヴォルが下ろしてくれた石の上にチョコンと座って水底を眺めます。時々前足を水にチョンチョンと触れたり、手についた水を舐めたり楽しんだ。
~ヴォルティスside~
目の前で跳び跳ねるウルウはとても可憐だ。
「ヴォルティス様、目が恐ろしく本気になってます。」
「…………。」
仕方ないだろう、ウルウが可憐すぎるのだから。
「見ろアシルド。あそこにいる豊満でそこそこの美しさを持ってる女よりウルウの方が遥かに美しいではないか!」
「……左様ですか。」
アシルドはもう手の施しようも無いことを悟った。
「ウルウのあの可憐な姿を絵姿に残したいな。あの瞳のなんと美しいことか。ああっ!手についた水を舐めてる!!」
彼女のすることが何でも俺の心を高ぶらせる。高ぶった感情のまま、ウルウを抱き締め頬擦りする。じゃないと発狂しそうだったから。
『きゅう?』
「ヴォルティス様、大変目立っております(それも変質者として)。」
「……さて、そこら辺を歩こうか。」
紳士としてあるまじき失態だった。次は気を付けるとしよう。だが、ウルウと歩いた噴水広場はまるで愛しい人との逢い引きのようだった。不毛な関係ではあるが、パートナーとは生涯の伴侶より絆が深く、共に生きる。そう考えればウルウを恋人のように愛しても問題ないと俺は結論付けた。
「まあ、妻なんていなくてもいいがな。」
ウルウさえいるなら伴侶がいなくても、この血が途絶えようと構わない。アシルドや王族、諸卿達は反対しそうな考えだが、それでも構わないと思うほどに俺は本気だった。
~ヴォルティスside end~
ヴォルの邪魔もあったけど噴水広場は楽しめました。ここは王都の重要な水源らしいのです。王都中の街にはここより小さな噴水と井戸、水路があるそうです。でもこの噴水が主要で、ここに住む皆の水を賄っているそうなのです。
「よし、次の場所に移動するぞ。」
『きゅう!』
はい!次の観光スポットはどんな所なのでしょうか?楽しみです!!
今度は自らヴォルの懐に入って先へ急ぎます。名残惜しいですが、またここへ来ましょう。今度は私がヴォルを背中に乗せて……。




