王都観光~魔獣といえど乙女である~
~ヴォルティスside~
俺のウルウは大変な綺麗好きだ。風呂だって2日に一回は入るし、毛繕いは毎日欠かさない。使う石鹸も魔獣専用の仄か花の香りつきだ。
俺はあの極上の毛艶が保たれるならば文句はない。まあ、最初はメイド達に非難された。
「ヴォルティス様、魔獣といえどウルウ様は乙女、女なのです!そこらの安物の石鹸を使うなど論外です!」……と。
メイド達は古くから母上に使えてきた一族の末裔達だ。シェライザー公爵家に忠誠を持っていない。母上の生家、「ロズナイト公爵家」に忠誠を持っているのだ。まあ、家のことは後に語るとしよう。でだ、メイド達は自身が知る知識をフル活用し、ウルウを世話しだしたのだ。そして今のウルウがいる訳だが、問題は学校に行くに辺りウルウの世話を全面的に俺がしなければならないことだ。
「ヴォルティス様、学校ではウルウ様のお世話は貴方様が行われます。なので、僭越ながら私共がその技術をご指導したく思います。」
メイド長からアイリも含めた彼女達に囲まれ、それは厳しい指導をされた。男である俺には辛いものがあった。しかし、ウルウのパートナーとして見事免許皆伝に至った。
さて、本屋の次に向かっているのは薬屋である、そこで必要な物は俺の使う石鹸や服を洗う洗剤などだ。後はウルウ専用の石鹸と魔獣専用の傷薬だ。
【薬屋 リーフ】
「いらっしゃいませ。」
店は清潔に保たれた綺麗な内装だった。ウルウも興味があるのか、俺の服の中から頭を出してキョロキョロ見ていた。店主は女で、若い。アイリよりは容姿に劣るものの男にモテるだろうな。まあ、俺は興味ないが。
適当に見ていくとウルウが薄黄色の石鹸に興味を持ち出した。
「そちらはミルクと黄色い花を混ぜて作った石鹸なのです。上品な香りと肌の艶が良くなる石鹸ですよ。」
『きゅう!』
俺の懐からピョン!と飛び出たウルウはこの石鹸が気に入ったようで何度も匂いを嗅いでいる。
「この石鹸は使ってなかったな。気に入ったのか?」
『きゅう!きゅう!』
あの大きなウルウ石色の目を潤ませて見上げてくる。その破壊力たるや……
「ぐふっ!」
周りにいた女性客は鼻血を出していた。俺も危なかったが貴族として何とか耐えた!
『きゅぅ?』
ああっ!止めてくれ!首をコテンと傾げないでくれないか?もう俺の精神力は限界を越えてしまった。
「店主殿、この石鹸あるだけ買おう。」
俺に買わないなど選択肢は消失した。買わなければならないのだ。
「堕ちるところまで堕ちましたねヴォルティス様。」
「何とでも言え。俺はウルウの下僕に成り果てたのだ。後悔など一切ない。」
「でしょうね。貴方はウルウの忠実なる狗です。」
普通なら怒るところだが、俺には誉め言葉にしか聞こえない。それほどにまで俺はウルウの魅力に取り込まれてしまったのだから。
後はウルウの為のトリートメントに香油(ブラッシングのための物)、魔獣用の救急箱一式だ。……殆どウルウの為の物ばかり買ったように思うが、問題はない。
『キュ♪キュ♪』
欲しいものを買ったお礼なのか俺の肩に乗り、頬擦りとキスをしてくれた。思わずデレッとしてしまう。
「お顔が……」
煩い。仕方ないだろう、こんなに可愛いのだから。
「そう言えば最近、魔獣に服を着せるのが流行しているようだ。お前に着せたらさぞかし可愛いのだろうな。」
「お止めください。これ以上貴方の威厳が落ちるのは我慢なりません。……ただでさえ最近壊れていらっしゃるのに。」
失礼な執事だ。
「後は靴と武具くらいか。その後は昼を済ませてから観光に行くぞ。」
『きゅ~う♪』
大喜びで9本の尾を振る姿に心から嬉しさが込み上げる。予想以上にウルウにのめり込んだようだ。
俺はウルウがいない生活はもう考えられないようだ。
ウルウが喜ぶことなら何でもしてやる。彼女に愛想を尽かされないためにな。
~ヴォルティスside end~




