王都観光~魔法の本屋さん~
恐怖の文具店での買い物が終わり、次に本屋さんに買い物に来ました。図書館のような広いお店で、様々な分野の本が所狭しと並べられてました。
『きゅう~!』
私は本が大好きです!でも今はただの子狐。ヴォルが読んでいる時にお膝の上で一緒に見ることしか出来ないのです。もし、この体が変化……または擬人化できるなら真っ先に本が読みたいと思っているの。特に古代の歴史書だったり、魔法書だったり、後は料理の本があったら是非とも読みたいな。
「お前は本当に本が好きなんだな。魔獣のくせに聖獣の頭でっかちな奴等に似るなよ?」
『きゅう!!』
聖獣と一緒にしないで頂戴な!それに私は石頭の頑固者じゃないんだから!
この世界には聖獣という存在がいる。私達、魔獣と相反する存在なの。古来より魔獣とは聖獣が闇に堕ちた為に生まれたのだと考えられていた。聖獣が聖なる光の魔力を持つのに対して魔獣は闇の魔力を有している。だから魔獣は本能的に聖獣を嫌うのだ。逆に聖獣も自らを汚す存在として魔獣を嫌っている。要するに対極の存在なんだ。だからいくら私が聖獣に憧れていても彼等を無条件に好きにはなれないのだ。
さて、そんな聖獣がいるのにも関わらず何故ヴォルティスが聖獣をパートナーにしないのか?
聖獣を持つだけでかなりのステータスになることは言っておく。騎士を目指すなら王族を護る近衛騎士に誰でもなりたいから聖獣は昇格するためにはいい駒である。
しかし、聖獣とは非常に誇り高く扱いにくい存在なのだ。数は魔獣よりは少ないものの沢山いることには変わりはない。奴等が厄介なのは主人を人間を選ぶのだ。そして自分を優先し最大限に甘やかしてくれる存在でなければパートナーになることはない。実力も魔力も見られる。容姿だって見てくる。要するに奴等はナルシシストなのだ。自分の美しさに映えるまたは見劣りしない存在が好みなのだ。
それを踏まえて考えるとヴォルティスは奴等にとって優良物件なのは間違いはない。でもヴォルは「可愛いげのない、ただ金のかかる獣をパートナーにするくらいなら俺は魔獣を選ぶ。お前は俺の好みだから最高のパートナーだ。」と言ってくれたの。でも、不安はある。いつか聖獣と会う機会があったらヴォルを取られちゃうかもしれない。……考えたくもないけど、私が情けなさすぎてヴォルに捨てられて聖獣に乗り換えしちゃうかも。いやいやいや、そんなことは絶対にさせちゃダメ!ヴォルは私のパートナー!半身なんだから!
そんな私の葛藤を他所にヴォルは店員に欲しい本を注文していた。用事が終わり、魔獣専門書のコーナーで何冊か本を選んでいるようだった。
『きゅう?』
何かいい本があったの?
「子供の魔獣を育てるための本に魔獣の魔力訓練の専門書だ。他にも面白そうな本があるぞ。」
魔獣図鑑に魔獣の家系図(何か意味があるのかな?)、魔獣の解剖図鑑(スプラッタ!?)に過去の偉大な人間と魔獣の歴史書(凄く見たい!)等々。
「ヴォルティス様、買いすぎですよ。そんなものは学校の図書館にも置いてありますよ。」
「図書館では別の分野の勉強をしたいから今のうちに見ておくんだよ。ウルウも本を読みたがっているしな。」
アシルドさんがたしなめても本を買う気のようです。私としても欲しかったので嬉しいです。
ちなみに私のチョイスは魔獣とパートナーの歴史書、全50巻である。偉大な先代達が行った政策や活躍が盛り沢山の本である。地球でいえば弁護士の方々の必需品である憲法大全集みたいな感じの巻数だ。
「屋敷に届けてくれるようだから次の店に行くぞ。」
『きゅん!』
欲しかった本が買えたので私は満足です!さて、次はどこに行くのでしょう?買い物も楽しいですね。またここに来たいな。