度胸試しはパートナーの試練
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皆さん、ペットって主人に忠実で大抵は言うことを聞くとは思うのです。それは自身の身の危険がない事が前提なのですが……。
「どうした、早く来い。」
でもですね、まさか態々アスレチックを作って様々な刃物が飛び交う一本道を歩かさなくても良いのでは!?
振り子のように斧や剣、ノコギリ、包丁が私の行き先を妨害するのです。ヒュン!ヒュン!と鋭い音が左右に揺れる度に聞こえてくるのです。
『きゅ……きゅぅぅぅ……』
私はもう縮み上がって身を固くしていました。こんな恐ろしいアスレチックなんて遊びたくはありません。ヴォル、一体貴方は何を私に求めているのですかぁ?!
~ヴォルティスside~
困った。何度呼んでもウルウは怖がって動こうともしない。大抵の魔獣はこのアスレチックを余裕で通過すると魔獣専門家は言っていたのだが……。
「ヴォルティス様、明らかに怯えてますよ。……可哀想に耳がへたれてます。」
「臆病過ぎるだろう。お前のパートナーのジクスはこの程度の障害などモノともしてなかった。」
アシルドにもパートナーの魔獣がいる。鳥の魔獣で中型の大きさがある。種族はシーク。伝令や追跡に優れた鳥だ。闇に紛れやすい深い紺色をしている。
「あれは気が強いですから。魔獣と言っても性格はあります。ウルウは子供ですから仕方ないのでは?」
確かに子供だが、それにしたって……
「……まあ私も情けないとは思いました。」
そうだろう。それにしてもあの気弱な所を何とかしないと戦闘になった時の躾が大変そうだ。
「ウルウ、怯えていても終わらないぞ。早く来い。」
『きゅ!?(そんな殺生な!?この鬼畜!ドS!!)』
大きな目を見開いたその姿に腹の底から笑いが込み上げてくる。アシルドも肩を震わせていた。無表情なのに器用な奴だ。
どのくらい時間が経っただろうか、やっとウルウが前に進み出した。
『きゅ~~!?』(斧からギリギリの位置まで逃げてる)
『きゃん!?』(ノコギリの刃に尻尾の毛が引っ掛った)
『くぉん!!?』(包丁をぶら下げている紐が切れて落ちてきた。)
な、何だこの笑える見世物は……!!
「ククク……アッハッハッハ!!!」
俺はもう我慢できなかった。初めて思いきり笑っていた。だが、言い訳させてもらえばウルウの反応と行動が面白過ぎなのだ。見ろ、アシルドが口を手で押さえて震えているではないか!これは傑作だった。
『きゅおん!!?(酷い!人の不幸を笑うなんてっ!笑ってないで助けて~!!)』
「アッハッハッハ!!」
このアスレチックは魔獣のパートナーの度胸試しと様々な能力を見極めるための魔獣専用遊具なのだが、判った事はこれでウルウを遊ぶと笑える事だった。
「お前は最高のパートナーだよ、ウルウ。」
今後ももっと上級編を試してウルウを鍛え(笑い)たい。
~ヴォルティスside end~
お、終わりました……。燃え尽きましたよ。今の私は某ボクシング野郎のように真っ白に燃え付きました。
「楽しかったなウルウ。」
「沢山運動できて健康的になりますね。」
いや、主従揃ってあんた等二人は私の事を見て笑っていました。酷いです。こっちは生きるか死ぬかの一大事だったんですよ!?あんなのを遊びとは言いません!楽しくもなんともありませんでしたから!
後日、アシルドさんのパートナーのジクスに聞きました。あれは魔獣の能力を引き出すための訓練なのだと。そしてどの魔獣も私のようにボロボロになったことはないそうです。そしてパートナーに笑われたのも歴史上私が初だろうとお言葉を頂きました。
『きゅぅぅぅ……』
は、恥ずかしい。私の黒歴史ですよ。私は誇り高き九尾の妖狐なんです!は、恥なんて……これからは勇敢なる誇り高き妖狐として生きねば!!
見てなさいヴォルティス!私はやれば出来るんだから!!
でも結局は…………
「アッハッハッハ!!」
『きゃうぅぅ!!?』
い、いつかは余裕でクリアしてみせるもん!まだ子供だもの、大人になったら名誉挽回してみせる!!