王都は都会でした
弓の弦に泊まった私達は朝食を食べてから再び王都へ向けて出発しました。皆さん元気そうで何よりです。
道中は魔獣や魔物に出くわす事もありました。初めて自分以外の魔獣を見ましたし、魔物がいることも知りました。
魔獣と魔物の区別は何なのか?首を傾げていたらヴォルが教えてくれました。
「魔獣はお前のように知能を持ち魔力がある獣のことを指す。反対に魔物は魔獣や人間、あらゆる生物が闇に堕ちて醜悪且つ狂暴、無差別に襲う。一説にはリリクレア様の信仰心や加護を失った者がなるという説もある。」
ま、魔物ってそんなに恐ろしい生き物なんですね……。それにリリクレア様の加護を失わないように沢山お祈りしますよ!
「お前もその内、魔獣と魔物と戦う時が来る。今の内に慣れるよう見ておくといい。」
あ、護衛の方がゴブリンを倒しました。
「ゴブリンは人型の魔物だ。繁殖力が強く、直ぐに集団を形成してしまう。一匹の攻撃力は弱いが、集団で襲ってくると厄介な奴等だ。」
ゴブリンってまるで蟻や蜂みたいだね。だって白蟻は家の天敵だし、蜂に至ってはスズメバチはまさに殺人蜂で厄介者だった。この世界では同じような扱いになるんだね。……ていうことは、もし、ヴォルが騎士になるとゴブリン討伐もあり得るよね?そしたら私も必然的に討伐することになる。
『きゅうう!?』
すっっごい嫌です!!
「っ!?どうしたウルウ?いきなり叫ばないでくれ。腹でもすいたか?」
違いますよ!私、ゴブリン退治なんてしたくないです。何か生理的に受け付けないのですよ!
きゅうきゅうと鳴く私にヴォルは原因が分からず困っていました。まあ、最終的には懐に入れられましたけどね。私、ヴォルの懐の中が気持ち良すぎて安心できるのです。それをヴォルが知っているから入れられちゃいました。……煩くしてごめんなさい。
「着いたぞ。我がライシルド王国の首都リースリードだ。」
レンガの造りの建物が中心の大きな街が私達を迎えてくれた。様々な匂いに満ちた場所だ。様々な人種や種族、魔獣が往来する都会でした。
『きゅう!きゅう!』
すごいです、人が沢山です!露店も沢山ありますよ!何やら香ばしくていい匂い。あ、あっちは甘くていい匂いがします。た、食べたい!!
思わず涎が出てしまいました。
「ククク……あ、後で連れていってやるから物欲しそうな目は止めろ。お前、可愛すぎる!」
『きゅ~…』
グリグリと頬すりされてしまいました。ヴォルって可愛い生き物が好きなんでしょうか?玲瓏な雰囲気で上品な外見の彼です。最初は見た目まんま冷めた人だと思いました。でも萌え属性をお持ちになっているようです。萌え=私ですね。まあ、ナルシストではないですが、ウルウって可愛いから仕方がないです。ヴォルの美形が残念になってしまうなんて罪な魔獣です。
窓から見える街並みは大きな建物が建ち並ぶ区間に突入しました。どうやらここは貴族が暮らす区域らしいです。
「俺達が住む屋敷は母の実家が所有する屋敷だ。今は俺の屋敷になっているから問題はない。」
あ、そう言えば前にお母上の実家の養子になるとか言ってましたよね?じゃあもうお母上の血筋はヴォルしかいないということかしら?
「着いたぞ。」
ヴォルと一緒に降りた屋敷はレンガ造りの大きな屋敷でした。レンガは赤茶色で確りした造りになっているみたい。芝生もフカフカ。ヴォルが歩くとサクサクと音がして駆け回りたい本能がウズウズ刺激されます。
屋敷の中に入ると豪華な内装が施されていました。前の屋敷に比べると本当に豪華華美。赤い絨毯が目に痛いです。
アシルドさんに私達の部屋を案内されました。二階の一番奥の部屋でした。中はこれまた豪華な部屋でした。スイートルームみたいです。
「お疲れ様でした。これから使用人達が屋敷に荷物を運搬、清掃していきますので部屋からお出にならないように。警備の配置については後程伺いにきます。それまでお休みになっていてください。」
「分かった。」
バタン……とアシルドさんが出ていきました。フゥ……と息をつかれたヴォルにやっと懐から下ろされました。私はチョコチョコと辺りを探検して回りました。
「ウルウ、おいで。」
『きゅ?』
何でしょうか?
トコトコと一生懸命歩いて近づくと微笑んでいるヴォルが私を膝の上に抱き上げました。
「明日から俺は忙しくなるから一緒にはいられないんだ。」
『きゅ……?』
え、そうなの?だったら私はどうすればいいの?
「明日からメイド達についてもらえるよう手配してある。いつもお前の世話をしている者達だ。」
『きゅう』
それだったら寂しくないね。だって彼女達は優しくて暖かいもの。
「引っ越しのゴタゴタが終わるまでの辛抱だ。王都観光は落ち着いてからにしよう。」
『きゅ!』
了解です!それまで大人しく楽しみにしてますよ。