私は九尾の子狐
九尾を見に来てくださった皆様に感謝します。拙い小説ですが、暇潰しと私の欲求のために書いた物語です。自分の愛ネコを見て「もしこの子が狐で、しかもモフモフの尻尾が九本あったらなぁ」とどうしようもない想像をして発案した作品なんです。自分が九尾になったつもりで書いていきたいと思いますので、今後もよろしくお願いします。
『きゅう?』
突然目が覚めました。目の前には獣臭い大きな狐がいます。地球にいる狐と違って……何ていうのかな、狼に近い感じの茶色の狐です。ちなみに彼女は私達の母親のようです。あ、私の他にも兄弟が3匹います。一生懸命お乳を吸っています。
『きゅうう~…』
お腹が空きました。でも、私には母親にお乳を飲ませてはくれません。どうやら母親は私の事が嫌いのようです。
あ、今思い出しましたが私は転生者なのです。地球で死んで神様に無理を言ってファンタジーな世界に転生したいとお願いしました。地球では人間でしたが、虐めに遭い、人間関係に疲れていました。だから私は動物に……それも九尾の狐になりたいと願ったのです。「何故九尾に?」と神様は言いました。アニメで九尾のその神聖なる美しさや強さ、あのモフモフの毛皮に尻尾。その全てに魅了されたからに他なりません。
神様は「九尾になっても受け入れてくれそうな世界に転生させてやろう。後はお前の努力で幸せになれ。」と、この世界に転生させてくれました。
無事に転生できましたが、始まりから運がありません。だって私はまだ乳飲み子です。ヨチヨチ歩きしかできない子狐。母親に見捨てられたら確実に死んでしまいます。でも、お乳を貰えない以上、この場にいても仕方がありません。私は何としても生きなければならないのですから。
『くぅん……』
さようなら、母様。さようなら、兄弟達。
私は彼女達を記憶に焼き付けてから巣から立ち去りました。僅かに母親に連れ戻されることを期待しながら私は旅立ったのです。でも来てはくれませんでしたが……くすん。
さて、どこに行けば良いのでしょうか。全く分かりません。そもそもこの世界の理も知らないのですからどうしようもない。
私はどういった存在に位置されるのか。ただの動物ではないでしょう。辿り着いた湖を覗き込めば真っ白で銀色にも輝く毛に私の前世の地球のような蒼い瞳。そして願い通りの9本の尻尾。まだ子狐だからモフモフのコロコロな容姿。思わず鼻血が出そうな可愛さでした。
『きゅんきゅん……きゅうう~……』
ぐぎゅるるる……
いくら可愛くても腹は満たされぬ。それを実感しています。
食べ物を探しても見つからない。虫とかいるけど食べる気にもならない。極限状態になれば食べられるかもしれないけど死んでも嫌だ。
空きっ腹を抱え、目的もなくさ迷い歩きました。そして三日後、自分ではよくもったと思います。街道らしき道に出て、そこで生き倒れました。
目が回り、空腹過ぎて気持ちが悪かった。喉も渇きました。もう、何もやる気はなかった。
『きゅ……』
ああ、折角神様に転生させてもらったのに、また死んでしまう。まだ楽しみたいことがあったのに……。まだファンタジーな所を見てないよ。まだ……生き……たいのに……。
そして私は気絶したのだった。
 




