靴箱
それは、俺にとって初めての手紙だった。
高校の靴箱に添えられた、ハートマークがついているお手紙だ。
誰からなのか、宛先人を表面を探してみたが、誰かは分からない。
そこへ友人がやってきた。
「お、なんだラブレターか?」
「どうもその様子なんだ。ただ、まだ封を開けてないから、誰からかは知らんがな」
「早く開けてみろよ」
ニヤニヤしている友人に、俺は聞く。
「なんだ、誰からか知ってるのか?」
「きっとお前は知ってるだろうよ」
「誰か知ってるなら、教えればいいじゃないか」
「何を言うか。そうすると面白みが半減、いや激減するだろ?」
そういう友人は、ラブレターなんてもらったことが無い、彼女無しの身だ。
もっとも、女友達は多いから、当人としてはそれで満足なのだろうが。
教室へ上がり、授業中に、その封筒を開けてみる。
確かに、友人の言った通りだ。
俺は手紙の送り主を知っていた。
その子は、部活の後輩で、俺より1年下だ。
とは言って、あまり人数が多くない部活だもんで、けっこうすぐに親しくなる。
部活の時に、最後まで残ってくれないかと、手紙には書かれていた。
なにを彼女が言うつもりなのかは、すぐに見抜けた。
その日の放課後、俺は部活にいた。
部活は、校内新聞の発行をしている。
ただ、それ以外にも、生徒会が決めたことを、全校生徒に周知するという役割もあるため、校内放送も、部活動の一部になっている。
放送部は別にあるのだが、そちらは休部になっているため、俺たちが兼ねているのだ。
「あ、先輩」
すでに手紙の送り主の金内愛美が、部活をはじめていた。
「おう、今日はまだ一人か」
俺は気軽に声をかける。
「……手紙、読んでくれました?」
「…ああ」
短く答える。
「それで先輩、あの……」
部活後と書いてあったが、誰もいなかったからか、我慢ができなかったようだ。
彼女が、俺に話してくる。
それも、今までにないほどに積極的に。
そんな彼女を、俺は何も言わずに抱きしめた。
「好きだよ」
彼女は、ボンッと音が鳴るような勢いで顔が紅くなった。
他には誰もいないこの部室で、俺たちは、永遠の歩みを始めた。