来ることができました。
「あの、キカンって……」
目の前で会話するお姉さま方(爆乳)。自分のそれと彼女たちのそれを見比べて悲しくなって、目の前の彼女たちが美女すぎて居た堪れなくなりました。
『 あら? 私たちが見えるの? 』
目の前のお姉さん1(大胆に胸元が空いた白い服を着ている方)が意外そうな目で私を見る。
見えてますすみませんでした。胸の迫力で思わず謝ってしまう。
『 まぁ、珍しいですね。鬼灯さん? 』
『 お久しぶりね、鬼灯さん 』
お姉さん2(ロザリオを首にかけて修道女っぽい紺色の服を着た方)とお姉さん1が交互に話す。
鬼灯と知り合い? 何か意外。
『それを言わないでくれ、長門に陸奥』
「ナガト、ムツ?」
どこかで聞いたことがある名前。多分日本史とかでやった。
「ああ、旧国名ですよね!」
『 ……まぁ、そうですね 』
お姉さん2が微妙な顔で言った。
『 私は長門です。こちらは妹の陸奥。同じ名前の戦艦があるのはご存知? 』
お姉さん2が言う。長門さんっていうんだ。
そういえば長門と陸奥っていう日本を代表する戦艦があるって大学の先輩が言ってたなぁ。
でも、それとどんな関わりがあるんだろう。
黙って頷くと、
『 私たちはそれの艦魂……分からないかもしれないですね、船に宿る魂のようなものです 』
穏やかに笑って長門さんが説明してくれた。
……カンコン。艦魂。どこかで聞いたような。
「あ、赤峰さん……?」
そう、赤峰さんも艦魂だった、ような気がする。
それに、防衛大や自衛隊の基地付近ではそれらしきものをよく見かけた。
大概変な子ばかりだったけど。
「私、あなたと同じような人を見たことがあります」
『 まぁ、本当に珍しい方ですね。けれど理解していただけたのは嬉しいです。ね、陸奥 』
『 そうね、姉さん 』
陸奥さんがふわりと笑った。
「あ、よろしくお願いします、長門さんに陸奥さん」
正座したまま頭を下げると、鬼灯がふっと笑った気配がした。
『艦魂が見えるのは山本もだったか?』
『 ええ、そのようですね 』
『 私たちに興味が尽きないようで 』
苦笑する二人。山本って誰でしょう。
『山本は山本五十六のことだ』
また私は困惑した顔をしていたんだろうか、鬼灯が笑いながら教えてくれる。
「元帥の?」
『 中将ですよ? 』
長門さんが意外そうな目で見てくる。
『ああ、今は中将だ』
鬼灯は今は、を強調した。
……しまった。
「ごめん、鬼灯」
『 どうして元帥だと言ったの? 』
陸奥さんがキラキラした目で私を見つめる。
「えっと……それは……その…………」
『 どうして? 』
「ほ、ほおずきぃ……」
鬼灯に助けを求めると、彼は気持ち悪いくらいの笑顔を浮かべて(逆に怖いです)、
『言えばいいだろ』
と言った。そんな簡単に言っていいものなんでしょうか。
「山本さんが死後元帥に昇格? することくらい、知ってる人は知ってますし……?」
『 どんな人たちが知っているの? 』
陸奥さん好奇心旺盛です。
「えっと……山本さんの死後生きている人なら……」
『 彼は今生きていますよ 』
追い討ちをかけるような長門さんの鋭い一言。
「えっと……あの……それは……」
『 ……こう考えると面白いわ、姉さん 』
ぴっと長い人差し指を立てて陸奥さんが言う。
『 千早さんは未来からやってきたロボット 』
『 な、なるほど……! 』
「ロボット違いますよ!?」
自信満々に言う陸奥さんと、それを輝く目で見つめる長門さんに、思わずつっこんでしまった。
『 未来人なのね! やっぱり 』
陸奥さんは私の顔を覗き込んだ。近いです!
「や、やっぱりって……」
『 ロボットは否定したけれど未来からやってきた、っていうのは否定しなかったわ 』
「や、でも……」
しどろもどろになりながら否定の言葉を探そうとするけれど見つからない。
「あの、えっと……その、」
『 山本さんには絶対に…… 』
「言っちゃ駄目ですよ?」
念を押すようにこちらから陸奥さんを覗き込むと、
『 やだ、可愛い……! 』
彼女は頬を真っ赤にして私を胸に抱きしめました。
「むっ、むねが、苦しいっ……!」
『 可愛いです姉さん! 』
ぐっと親指を立てて言う陸奥さん。
『 まぁ、良かったですね 』
満面の笑みで長門さんは答えると、真剣な声音で鬼灯に言った。
『 正面衝突がないといいのですが…… 』
『あぁ、そうならないことを祈る』
正面衝突、って、多分海軍と陸軍が武力衝突するってことですよね。
元々から仲悪そうに見える海軍と陸軍がやりあったらとんでもないことになりそう。
……でも、そんなの歴史の教科書に載ってなかったし。
「むぎゅ、う、多分それはないです、よ」
相変わらず抱きしめられて苦しいけど、長門さんに向かって言うと。
『 ……っ! あなた、可愛いです、陸奥、私にも貸して? 』
目を潤ませた長門さん(と胸)が目の前にありました。貸してってなにそれ怖い。
両方のお姉さま方に抱きしめられてむぎゅむぎゅ言っていると、
『……長門に陸奥、明日には東京に戒厳令が出る筈だ、そろそろ戻れ』
冷静に鬼灯が言った。
『 ええ、そう致します 』
『 戒厳令が出るのと帰還と、関連性はないように思えるのだけれどね 』
二人がそれぞれ返し、それにまた鬼灯が頭を掻きながら、
『長門、特にお前は旗艦だからしっかりな』
と言うと、二人の頭をぽんぽんと撫でた。
二人はにっこりと笑うと、
『 明日も遊びに来るかもしれません 』
『 ええ、武力衝突はないようだし 』
優雅に一礼して幸楽の外に行ってしまった。
空は紫を含んだ赤に染まりかけていた。
冬の昼は短い。外にいた兵士さんの人数も、半分位になっている。
「そういえば、お昼食べてない……」
女将さんにお願いして、遅いお昼を食べながら考える。
「艦魂、かぁ……」
『会ったことがあるのか』
「まぁ、ね」
曖昧な返事を返して外を見ると、カリカリカリ、と窓を引っ掻く猫がいた。
「猫だぁ……! 入れてもいい?」
「好きにしていい」
「……え?」
鬼灯ではない、聞いたことがある男性の声。
後ろを振り向くと、安藤大尉が立っていた。鼻が赤い。寒かったんだろうなぁ。
「あ、ありがとうございます」
窓を開けると、猫はぴょんっと飛び込んできた。
白い毛並みの綺麗な女の子だ。
「……安藤さんは、どうしてここに?」
まさか殺すことはないと思う、でも、殺されない確証はない。
だから少しだけビクビクしながら聞くと、
「愚痴に付き合ってくれんかな」
と苦笑しながら靴を脱いだ。こちらの意思はあまり関係ないらしい。
出来ることなら関わりたくないなぁ。でもこれといって断る理由もない。
「……ええ、構いません」
とりあえず下座に来て、大尉を上座に案内したが彼はそれを固辞した。
「下座で構わんよ」
「でも」
この男尊女卑の時代に、それは厳しいんじゃ……。
安藤大尉は苦笑いしながら言った。
「勝手に押しかけた身だ、こちらに座らせてくれ」
きゅん。
としたのは事実じゃない。絶対。
こんなダサい眼鏡の人にきゅんきゅんしてたまるか!
いやでも眼鏡とったらかっこいい。かもしれないし。
この人ほんとに人心掌握うまいなぁ。
膝の上で丸まった猫ちゃんを見ながら、耳は安藤大尉に傾ける。
「お……いや、私は悩んでいるんだ」
どこからか猪口と酒瓶を取り出す。一升瓶抱えて来るなんて。
「隊士たちは誰ものものだろうと、誰に属するだろうかと考えると」
栓を開け、酒を注いでいく。
「陛下だと、思うわけだ。……君も一杯どうだ」
「ありがとうございます」
差し出されるまま受け取り、飲み干す。
「天皇陛下が、我々を所有するなら……、」
眼鏡を外し、自分の頭を撫でる。
「下士官、兵は、紛れもなく陛下の軍隊だ……。そうだ、なのに何故……」
私は黙るしかなかった。
大尉の言うことは正論で、
「自分の私兵のように、使って良い訳が無いのだ……!」
大尉の苦しみも相応で、
「いくらそれが国のためとは言え、……勝手に使う責任は大きい。身に余るほど、大き過ぎる」
大尉の優しさと堅実さが、彼を板挟みにした。
大義と、責任と。
狭間で、揺れ動く。
「君は、どう思う?」
かたん、と猪口を机に置く音がした。
あげいんあとがきこーなー!
作者:ああ、もう1ヶ月くらい経つんだね。
鬼灯:放置しすぎだ。
作者:2.26事件の資料をなくして探し回ってた。
鬼灯:馬鹿の極みだな。
作者:ここで長門さんのキャラ紹介を。
『長門』
1936年時、第1艦隊旗艦。
黒髪長髪、黒目、純日本人。
修道服を着ている。
爆乳。すりーさいずは上から105、56、84。
現在キリスト教徒。
性格:おっとり、健気。でもしっかり者。皆のお姉さん的立場。
愛されキャラのためしばしば「愛してる」と艦魂達から言われる。
が、その度に赤面して「ありがとぅ」と言うため、艦魂と一部の人間の中では萌えキャラ化している。
恋人について:後々フラグを立てるつもり。
兵力はwikiをどうぞ。
作者:ふふふ……8話まではできてるんだぜ。
鬼灯:更新しろ。
作者:次回はいつになるかわからないですが、今週中には……!