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AGAIN…  作者: 昆布もぐもぐ
AGAIN…/第一章
4/21

そして何の縁があってか


鈴木貫太郎侍従長官邸で捕まって凄く遠い(と思えるほどの)距離を歩かされた挙句、とりあえず風雨はしのげそうな場所に連れてきてもらいました。






そして、

「首尾は上々だ。本部へ連絡を入れろ」

安藤大尉が命じ、連絡兵にこう言った。

「お前は陸軍省へ行け、そして鈴木貫太郎侍従長官邸襲撃成功の報を入れろ」

「はっ」

陸軍式の敬礼をした連絡兵の肩を軽く叩いた。

「いいな、頼んだぞ。寒いだろうが頑張ってくれ。行ってこい」

「はいっ」

こういうところが人心掌握術とても言うべきところなのかもしれない。





鬼灯は相変わらずぶすっとした表情である。

『ここは料亭“幸楽”だ。ここが安藤隊の拠点となる』

「拠点…………」

『隙を見て逃げるのが良さそうだ』

「隙、ねぇ……」

仮にも軍人だし、隙を見せることがあるんだろうか。あって欲しいけど。

そういう目で鬼灯を見上げると、

『隙くらい見せるだろ』

と当然のように言われた。



ぼけっと周りを見渡していると、遠くから安藤大尉がやってきた。

「佐和と言ったな」

「はあ」

「ついてこい」

「は、い……?」

料亭の奥へ連れられ、座敷の襖を開けた。

ブーツを揃え座敷に上がると、安藤大尉は厳しい顔で言った。

「逃げたら生命の保証はできない。警備の者に撃ち殺されるのが関の山だ」

「…………」

撃ち殺される。

その様子を想像してしまって体感温度が3度ほど下がった(ような気がした)。

「だから、ここに居てくれ」

「どうして」

“居ろ”じゃなくて“居てくれ”なんだろう。

大尉は困ったように笑うと、

「詳しくは聞かんでくれ。ただ君はそこに居ればいい」

くるりと踵を返して歩いて行った。

“君はそこに居ればいい”? 

……なんだかプロポーズみたいな言葉だなぁ。

そう思ったら顔が熱くなった。

『真っ赤だな』

「るさい!!」

ニヤニヤしている鬼灯に一喝。

『ま、あいつならイケるんじゃね?』

「は!?」

『だって妻子いないもの』

「みつを風に言うな! それにあの眼鏡はタイプじゃない」

鬼灯は眼鏡? と言うと、

『眼鏡はしょうがないだろ。あんなのしかないんだからよ』

ともっともらしいことを言った。

『眼鏡なきゃ完璧なのか? ん?』

「そういう問題じゃないんだけど」

ふう、とため息をひとつついて、鬼灯に向き直る。

「……で? 鬼灯。さっきの続きは」

鬼灯が目を細めた。ゆっくり腕を組んで、寄りかかっていた壁から身を離した。

言いたくないです的オーラが滲み出てるように見える。

『さっき、とは』

ほら、やっぱりはぐらかした。

「言わなきゃ分かんないかなぁ。なんで軍人さんがチョーカーつけてるのか、っていう理由だよ」

『ああ、そのことか』

口調は軽いが、雰囲気が硬くなっている。

「着いたら教えてくれるって、言ったよね」

じっと鬼灯を見上げる。鬼灯は少しだけたじろいで、

『…………ああ、確かに、そう、言った』

ため息をついて、ゆっくりとした動作で私の前に正座した。

『あれも俺と同じく、お前にしか見えていないものだ。だから不用意に口にするなよ』

そう、前置きを言った。

何も言わない私に、同意を求めるような目つきで見てきたから、

「…………分かった」

小さく頷いた。鬼灯は少し表情を緩めた。

私にしか見えていないもの。私にとって有利なことなんだろうか。

鬼灯は膝の上に置いた手を強く握り締め、

『あの黒い線は……』

私を見据えて言った。

『あの黒い線は、第二次世界大戦終戦までに死ぬ人間に付けられた印のようなものだ』

「は?」

今、なんて、言った? 目の前の理解不能な鬼は。

『だから、あれが付いている人間は、終戦の1945年8月15日までに死亡する』

「え?」

私の脳内がキャパシティーオーバーで。この鬼の言っていることが理解できないなぁ。

鬼灯は半ばキレたような顔と声で言った。

『何度言えば分かる? あれが付いている人間は、終戦までに死ぬ』

…………………………………………。

「……………………あ、ただの厨二病患者か」

『黙れ』

思い切り頬を抓られた。

「だって、それ、あまりに信じがたいよ」

痛みに顔を顰めながら言うと、鬼灯はとん、と自分の頭を指で押さえた。

『考えてみろ。安藤輝三』

幸楽に陣取る反乱軍のトップ。

が、どうしたって言うんだろう。

『彼は、銃殺される。首に線が入っていただろ』

「確かに、そう、だけど」

全然信じられない。胡散臭すぎる。

「だって、じゃあ、他の人たちも、皆、殆ど、殺されるって……?」

『ああ』

「ただ、反乱軍の将校の、命令に従っただけだよ。自分から行動を起こした人はそうなるかもしれないけど、何も知らない少尉級の人たちも全員、銃殺されるってこと?」

鬼灯は、こてん、と首を傾げた。

『そんなこと俺は言ってないぞ』

「じゃあどういう……」

鬼灯は、ぱっと手をかざした。朝の光が、座敷の中を照らす。

もう、こんなに時間が経ってたんだ……。

『もう日が高い。外を見てみろ』

「何、言って…………」

言いながらも、窓から外を見ると、雪がちらつく中小銃を持って白い息を吐きながら幸楽の周りを見張っている兵士たちがいる。

彼らの首にも、同様に黒い線が見える。

「あの人たちも、皆、殺されるの?」

『そうだ』

「どうして……」

鬼灯はいきなり障子を閉めた。

『口を挟むなよ。あいつらは曲がりなりにも安藤輝三の部下だろう』

「……うん」

『安藤輝三は主犯格だとして処刑されると言ったな。では彼の部下で彼に従った人間の処置はどうなる?』

「何も知らない人たちも殺される訳?」

鬼灯はふっと笑った。

それはまるで、憐憫の情でも抱いているかのような表情で。

『彼らは渡満――わかるか?』

「分からない」

鬼灯は呆れた表情をして、ガリガリと頭を掻きながら言った。

『満州へ行くこと、だ。それで、孫呉(そんご)、チチハルへ行かされる。そこを拠点にして討伐、訓練を繰り返すが、この事件に参加した者だけは過酷だった。死んだほうがましだと思えるほど……、彼らはもっとも死に近いところにいた』

想像しにくいけれど、それはきっと、悲惨で、私が見たら憤らずにはいらなれないほどの光景だったんだろう。

『彼らにはいつまでも反乱軍の汚名がついてまわり、市街地戦でも夥しい数の死者を出した。だから、全員が処刑、という訳ではないんだ』

「なに、それ……」

目の前が、真っ赤になった、ような気がした。






あげいんあとがきこーなー


作者:お久しぶりです。


鬼灯:海軍との絡みはまだか。


作者:……それがですね。


鬼灯:なんだ。


作者:次回、福留さんが出てきたりするかと。


鬼灯:なるほど。


作者:長門が~東京に~来る~かも~。


鬼灯:艦魂単体で?


作者:かもね~。


鬼灯:…………つまり?


作者:頭の中で構想段階……。


鬼灯:簡単に言え。


作者:決まっていません……。


鬼灯:さっさと仕事しろ! 


作者:…………はい。またお会いしましょう。




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