早いことにもう4年が経ち
ざくざくと雪道を歩く軍人さん達。
の間に混じっている私(半ば連行されている)。
これからどうなるんでしょう。不安です。
『お前。何で声出したんだ……有り得ないだろ』
物憂げな表情で髪をいじる鬼灯。
「すみません……つい……」
鬼灯は普通の人には見えないそうなので、取り扱い注意で小声で話しかけている。
『黙ってればあのまま市中に送り出してゲイカップルのもとに連れていってやったのに』
「お知り合いでしたか」
『あれもうちの失敗であり失態だからな。お前を調べていたら手違いで現代に吹っ飛ばしてしまった』
「……そうですか」
あくまで私のせいだと言い切る鬼灯。
『まあ、過ぎたことは仕様がないからもういい。……だがお前が全てから解放されるのは良くて4月の初めだろう』
「どうして?」
鬼灯は私の頭を小突いた。
小突くにしては力が強い、痛いです。
『察しろ』
「……ハイ。無関係な人間が官邸に紛れ込んでいたからです」
鬼灯は小さく頷くと、私を覗き込んだ。
『これが後の2.26事件だということは気づいてるのか』
鈴木貫太郎(後)首相襲撃。昭和10年2月26日に起こった。
「うん。なんとなく分かったような分からないような。でもそう言われたから納得した」
鬼灯は私の頭を軽く撫でる。よしよしいい子~、とか言いながら。
それが子供をあやすときにするようなものだったから、子供扱いしないでくれる? と無駄な抵抗だろうけど試みた。
鬼灯はやっぱり気にした風もなく、
『黙って聞けよ。これからの流れを一応言っておくから』
そう告げて話し始めた。
『お前が捕まったのは歩3でトップは安藤輝三。階級は大尉だ』
安藤輝三。主犯の一人、になるのかな。
『安藤は部下に厚く信頼されている。人格者だろう。とにかく時間がないから結論だけ言うぞ。彼は後日拳銃で自決を図ろうとするが失敗、その後軍法会議にかけられ10月頃処刑される』
だから、あんなに統率が取れてたのかと思う。一人も逆らうこともなく、彼に全幅の信頼を置いている。……帰り際軍刀に縋って泣いていたあの軍人は、いわゆる信奉者だったってことか。
そして最終的には安藤大尉は処刑される。……今みたいに絞首刑なのかな。
『おい。この頃の処刑は銃殺だ』
人を見下すような視線で言う鬼灯。
「人の考えが読めるんですかあなたは」
『なんとなくならな』
平然と言うから、取り敢えずむかついて足を踏んでおきました。
「何を喋ってる?」
突然横にいた軍人一人に話しかけられた。
「いえ、寒いなあと思っているだけです」
ふぅ、と手に息を吐いてあたためる。
「……そうだろうな。真冬の雪の中そんな薄着でこうやって歩かされている訳だし」
私をちらりと見たあと、慌てて目を逸した。
改めて私の格好を見てみると、白衣の下に薄手のシャツにスカートにブーツ。
凍えそうです。何で今までこれで平気だったんだろう。
「あの、寒いです……。どこに行くのか聞いていないんですか……?」
「さあ。僕も聞いていないんだ。殆どがそうだと思うよ」
……さっきから、心なしか私を見てくれないような気がするんですが。
「そうなんですか」
「ああ」
さっきから、心なしか私の目を見て話してくれないような気がするんですが。
「どうして目を逸らすんですか~~…………」
ぼそっと聞こえないように呟くと、
『そりゃ、お前がそんな格好してるからだろ』
「は?」
突然鬼灯が乱入。
『考えてみろよ、今は昭和初期。女は皆着物。若しくはスカートだがロングだ。足首までくらいのな。モダンとかそういう感じの言葉を世界史でやらなかったのか』
「……あ~…………、あのダサい感じの……」
だから足の露出が多めな現代の服装にはついていけないと……。
そういうことですか。
はっきり言ってしまえば私もこんな地球温暖化が本格的に始まる前の真冬の雪の中ミニスカートで歩きたくはないんですが。
寒さを気にしないでいいようにと話題を探してみる。
が、中々思いつかない。
唯一私が見ることのできた軍人さん達の後ろ姿に、ふと軍人にはありえないものを付けているような気がして。
「鬼灯」
『なんだ』
「皆黒のチョーカー付けてるけどどうして」
チョーカーとは首にぴったり巻く短いネックレスみたいなものだ。
主にヴィジュアル系の方々やロリィタの方々が付けるであろうものだけど、なんで軍人さんが付けてるのか気になった。
『チョーカー? お前何言ってるんだ、V系じゃあるまいし』
思い切り見下した目で見られた。むかつく。
「でも見えるんですけど。学ランのちょっと上の方に」
『あー…………』
鬼灯は言葉を切り、考え込んだ。
『あれは…………』
「あれは……?」
『着いたら言う』
は、はぐらかされた……!
着いたらってどこに、と言おうとしたけど、横にいた軍人から「歩けるか」と訊かれたので聞けなかった。
「あ、はい。一応大丈夫です」
指は痛いし足も手も首も顔も寒いけど。そう言いたかったけど控えておいた。
「おい、着いたらしいぞ」
そう言われた。
見上げてみるとそこは和風の料亭みたいな場所で。
ここ、どこですか、とも訊く暇もなくその軍人は私の腕をぐっと押してその建物の中に入れた。
「…………ここで拷問されるかも~……なんてさ……笑えないわ」
あげいんあとがきこーなーヽ(*´∀`)ノ
作者:お久しぶりです作者です。
鬼灯:鬼灯だ。
作者:またちはたんが……。
鬼灯:ちはたんといえばだが、あのシーンは書くのか?
作者:あのシーン?
鬼灯:ほら、あのちはたんの………………(笑)
作者:ああww 書くよ!
鬼灯:だが……?
作者:何話目になるかはわからない!
鬼灯:あのシーンとは?
作者:陸軍海軍どっちかの人にちはたんって呼ばれて、
「うっそあの97式中戦車? うけるわー。マジ弱そうww」
とか言われるシーンだよ!!
鬼灯:口調が現代になってるがな。
作者:気にするな! ではまた会おう!
鬼灯:今週中にもう一話はあげる予定だ。あくまで予定だからな。