教えて欲しいことがあります。
前回までのあらすじ☆
時は6月終わり~7月初め☆
SS軍医さんを追って昭和時代に来た主人公、千早は下宿で暮らしているよ☆
イソロックさんに渡独を断られた千早は、愚痴りながらお酒を飲んでいるようですよ☆
「俺は……何とも言いようがないな。それについては」
「やろーね。来年のことやけんがね、確証がないけん何も言えんったい……」
頭がもうろうとしている。霧ヶ峰さんの部屋で一升瓶を抱えて飲み会もとい愚痴り会。
「千早、素出てんぞ」
案外思い手が降ってきた。
「いたいれふ」
「お前もう戻れ。前後不覚になって倒れられでもしたら俺が殺され――」
「それをわかっててどうしてするんでしょうかねえ?」
「相馬……さ」
「大概にしてくださいね。千早さんには後日言っておきますが……変なことしたらただじゃおかないからな」
最後だけ妙に声が違った。
霧ヶ峰さんは、はーい、と言ったものの妙に顔が引きつっていた。
「千早? もうこのくらいにして……」
「やれふ(やです)」
「頼むから。俺が相馬さんに殺されちまう」
「やーれーふー! やめるっち言うならこれ持っていくけんね!」
「年頃の女が一升瓶抱えるんじゃない! あとそれ開けてない奴だから、今日は開けないからって何でもう開けてんだ馬鹿‼」
霧ヶ峰さんの怒鳴り声が遠く聞こえる。何を言ってるんだろう。
「……かえりまふ」
視界がふらふらする中で、辛うじて立ち上がることができた。おいやめろと言う霧ヶ峰さんの言葉の、途中で、
*
「ん……んんっ……!」
なぜかわたしは。
「今後、このようなことは決してないようにしてください」
正座させられ。
「ごめんなさいっ……」
足には分厚い本が10冊ほど。
「二度はありませんからね」
「はいっ……充分、分かってます……あの……そろそろ……」
足が限界なんですが。
と言おうとしたときに、もう一冊重しが増えた。
「ぐぅっ……」
「あと気軽に男性の部屋へ行ってはいけません」
「わ、分かってます……ごめんなさいぃっ!?」
相馬さんはにこりと無邪気に笑った。
「はい。30分待機お願いしますね」
その背後に般若が見えたとか、口が裂けても言えない。
30分耐えると、足の感覚が全くなかった。足をずらしたら絶対に激痛が来ると分かっている。
「わるかったよ」
もごもごした、ふてくされたような声が霧ヶ峰さんのものだと分かる。ばっと顔を上げて睨もうとしたが。
「あなたのせいで……って、どうしたんです、その顔面」
見る影もなくボコボコにされていた。
「ひょうははん(そうまさん)」
「……お疲れ様です」
ぎごちなく身体を動かして、痺れる脚を抱えて立ち上がる。痛そうに頬を擦っている霧ヶ峰さんを見上げた。
「……湿布、いりますか」
「……たのむ」
そう言って、霧ヶ峰さんは床に腰を下ろした。
「はい」
薬箱を取りに自室へ戻る。部屋に入ると、黒猫の紅が出迎えてくれる。
遊びたい気持ちはあるけれど、すぐに湿布を取って引き返す。
「アトピーとか、ありませんか?」
「……なんだそれ」
「例えば、そうだなあ、テープ貼ってたりすると痒くなったりとか……、肌が弱い、とか」
「とくにはない」
肌が弱い人用の湿布なんて持っていなかったから、良かった。
「そうですか。じゃあ貼りますよー」
「つめたっ。あとこの臭い好きじゃない」
「でしょうねー。はーい、我慢ですよー」
「子ども扱いすんじゃない」
「湿布の臭いで騒ぐような子ども、いまどきいませんよ」
鼻をでこぴんの要領で弾いてやると、ふいと顔をそむけた。
「るせぇなぁ」
頬の辺りを気にしている。
「ぷっ。ほんとに苦手なんですね」
「笑うな。千早のくせに」
「あー! その言い方はひどいですよ」
「なぁ、今から行こうか!」
「あはは、一升瓶片手に言う科白じゃないですよね! 置いて来い」
「じゃあ行こうか」
瓶をごとりと机に置くと、わたしの肩を叩いた。
「はいはい。あと奢りですからね」
「は⁉」
「わたしはこちらで使えるお金を持っていません」
霧ヶ峰さんは、頭を掻くと、わーったよ、と言った。
「行くか。……っつってもその格好じゃ俺が変態みたいに見られるな」
「変態じゃないですか違うんですか。違いませんよね」
「変態じゃねぇし。お前制服着てこい」
「着物とか持ってないんですか⁉」
「女物なんか持つわけないだろ」
お前は俺を何だと思ってるんだとかなんとか不満げな声が後ろから聞こえていたけれど無視した。もたもたと軍服に着替える。
「よろしくお願いしますね。お財布さん」
「財布扱いかよ……」
自然な流れで肩を組まれて焦ってしまった。
遠くで、紅の鳴き声が聞こえた気がした。
*
「……これとかどうかな」
「趣味悪っ」
わたしが選んだものを悉く却下していく霧ヶ峰さん。時間は大体午後四時。
店頭に無造作に置かれた新聞がちらりと目に入った。小さな記事。ベルリン五輪。
「あ――……」
ハーケンクロイツがかすかに見える。
「何やってんだ。置いてくぞ」
頭に衝撃。ぐっと手を引かれた。何泣いてんだ。前を行く人がぼそっと言う。
「うるさいなあ。何でもいいでしょ」
「そうかい。次は……呉服店行くか」
「なんのために?」
「布から買って切って作りゃいいじゃない」
「成る程……って何してんですか」
学ラン、じゃなかった、詰襟の軍服の釦を外していた。
「暑いから」
ばさりとそれを肩にかけて歩き出す。少し後ろを駆け足で追う。
「待ってください」
「あ?」
何故か睨まれてしまった。
「私脱ぎたくなったらどうすればいいですか⁉」
「脱げばいいんじゃねーの!?」
「私は幼児じゃないんですけど!」
「じゃあ黙って着てろ! もう着いたから」
「あら、いらっしゃい。彼女かい?」
店先でぎゃあぎゃあ騒いでしまった。お店のおばあさんがにこりと笑う。
「あれ、男性か。済まなかったねえ」
「はは。こいつ声高いし背ちっちゃいからなァ。おばちゃん、首輪に使えそうないい生地ない?」
背が小さいとか言わなくていいんですよ。恨みがましい目を向けたけどスルーされたので、軍靴で足を踏んでおきました。
「今流行りの柄はこれかねえ。あ、これは着物の柄ね。洋装はこっち」
「俺にはさっぱりわかんねーな」
「こんなのが流行ってたんですね……! すごくかわいい。そういえばこんなの最近見たことある気がするー」
呉服屋さんは、服もそうだけど生地も売っているみたい。おばあさんと話し込んでいると、霧ヶ峰さんがぶすっとしているのが分かった。けどスルー。
「へぇ、この大柄なのはいいですね。暖簾用? 凄い!」
「お兄ちゃん、若いのに話が分かるねぇ。ちょっとまけとくから何か買わないかい?」
「じゃあ……この、赤いのください」
指差したのは、赤の地に薬玉の模様が描かれた布。
「縁起がいいものだけど、ちょいと夏にはお勧めできないねえ。ほら、これもつけてあげるよ。代金はこの生地の分だけでいい」
といいながら、紺地に赤い小さな花がついた布を持ってきてくれた。
「霧ヶ峰さーん。出番ですよ」
こそっと呼ぶと、彼はふてぶてしい態度で歩いてきた。
「おばちゃん、いくら?」
「1円さねー」
1円? 安い? と思っていると、霧ヶ峰さんが眉を顰めた。ちょっと高いのかな。私と目が合うと、顎で合図された。
「ね、おねえさん、ちょっとまけてくれませんか?」
「んー……これ以上は」
「私たち、また来ますよ? 今度は恋人に洋服を仕立ててあげたいんです。夏物にワンピースとか……」
「まけないならもう来ねーけどな」
「もう、霧ヶ峰さん! おねえさんまけてくれますって!」
「しょうがないねえ。90銭でいいよ」
「よし」
とまあなんだかよくわからない会話をして、私は生地を二枚手に入れたのでした。
「ここのお金の換算ってどうなってるんですか」
「んー? シラネ」
「何か買って帰りませんか?」
「おお、良いね。酒買おう」
「もう叱られるのは嫌です」
「へいへい」
どんどん先へ歩いていく霧ヶ峰さんを駆け足で追う。赤くなっていく町並みを眺めていると、何やってんだと言いながら戻ってきてくれるあたりが、元来優しい人だということを物語っているんだろう。
「どこに行ってるんですかー」
「んー…………着いてからのお楽しみ」
とかなんとか言いながら、人が溢れた商店街を急ぎ足で進んでいく。わたしは迷子にならないように、なんとか走りながらついていくのに精いっぱいだ。
気づいたら、全く人気のない場所に出ていた。
「ここ、どこなんですか」
「どこだろうな」
ふう、と大きなため息が聞こえた。霧ヶ峰さんを見上げると、
「俺って最低だよなー」
「今更ですね」
なぜか、無性に霧ヶ峰さんが幼く見えた。詰襟を羽織り、釦を留めていく。
「でもさ」
向き直って、わたしに近づく。反射的に一歩引くと、ぐっと肩を掴まれた。片手で軍帽を取られる。
「何するんですか」
風に髪が煽られるのを、彼は何故か破顔して見ていた。
「俺、さ……」
あげいんあとがきこーなー☆
作者:……タダィマ☆
鬼灯:何でもかんでも☆つければいいってもんじゃねーんだよ。
作者:キミほんと出番なくなったよね。
鬼灯:……。
グシャッ。
作者:……うぅ……反省してますよ! すみませんねえ‼‼‼
鬼灯:ほらもっと土下座して謝れ。バカが。
作者:す、すいませんでしたあああああああ‼‼だからもう許して! ぐはあっ……。
鬼灯:これが作者の最後の言葉となった。まる。
作者:し、死んでないから! また更新するよ! それまで待っててください!それではまたお会いしましょう‼‼‼




