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AGAIN…  作者: 昆布もぐもぐ
AGAIN…/第一章
2/21

あなたが消えてから







『黙ってろ』

私の口を押さえて、静かに言う。

『今お前の姿は見えていない。だが喋ればパアになる。このままやり過ごせば安全に市内へ出られるから黙ってろ』

鬼灯の声と同時に、乱暴に扉が開けられた。

「中隊長殿!」

一人の声で全員が“中隊長”殿の方を向き、一斉に敬礼した。

「……成功、したのか」

中隊長は喜びと悲しみ、どちらともとれる声音で言った。

「はい」

「本人だな」

「はい」

「寝床に運べ」

「はっ」

数人の軍人が、倒れている男性を抱え込んで寝床に降ろした。

「安藤大尉、終わりました」

「ご苦労。……昭和10年、2月26日、午前15分。鈴木貫太郎侍従長官邸、制圧、占拠完了」

(安藤大尉……?)

聞いたような、聞かないような名前。

そして、

(2月26日……)

そう、何か、この日は歴史的に大事な日だった。





安藤大尉と呼ばれた男性は、部屋の電気を付けた。


―――寝床に寝かされている男性の顔は、

「……首相?」

大学入試の時に必死で覚えた、ある首相の顔と一致した。

名前は確か――、

「す、鈴木、……貫太郎首相!?」

『……発するなって言ったのに』

鬼灯が私を咎めるような目で見た。

次の瞬間、

「誰だ貴様は!!」

鼓膜が破れそうなくらい大声で怒鳴られた。

しまった、私の姿が見えるようになってしまった。

「あ、いえ、私は、その」

「どこから入った!」

軍人に詰め寄られる。

「どこからって、それは、その」

「言え!!」

鬼灯を見ると、彼は無表情で言った。

『女中だと言えばいいだろ。信用されないとは思うが』

「こ、この家の女中です~」

思い切り作り笑顔(きっと引き攣っていた)を浮かべてみるが、

「嘘つけ」

の一言で切り捨てられてしまった。

「もういい」

安藤大尉が一声、遮った。

大尉は私をじろりと一瞥すると、

「……鈴木貫太郎侍従長(・・・)夫人でおられますね」

侍従長、をことさら強調して言った。

(…………鈴木貫太郎侍従長? 馴染みがない……)

「はい。そうでございます」

鈴木夫人は畳の上で正座していた。

夫が撃たれて重症だというのに取り乱した様子もない。

安藤大尉も畳の上で正座をし、鈴木夫人に向き直った。

「私は安藤輝三と申す者です。今日、鈴木貫太郎侍従長殿の官邸へこのように襲撃を行ったのかというと――――」








つらつらと難しい言い回しで決起理由を述べる安藤大尉。それを要約すると、

『国民を苦しめている、腐敗、堕落した政治勢力から国家権力を奪還し、軍部の手で、天皇親政の新しい政府、国家を作る昭和維新を成す』

つまりはこういうことらしい。









「―――以上が、我々が行動を起こした理由でございます」

静かに言い終わると、安藤大尉は鈴木侍従長夫人に向かって、もう一度頭を下げた。

そして無駄のない動きで立ち上がる。

(……そりゃあ、それはそれは辛かったと思いますよ? 日本市でやったように、この頃は飢えとか、身売りとか、大正デモクラシー後の倦怠期的な感じなのはわかりますよ)

鬼灯に腕をグッと掴まれて動けない私は、心の中で叫んだ。

(だけどそんなに、人を、殺す必要なんか、なかったじゃないですか。話し合いで、どうにか、すれば――)

そんな私の心中を知らない安藤大尉は鈴木侍従長の首元にそっと手を当てた。

「…………ぅっ…………」

小さく呻き声を上げた侍従長を見下ろし、

「最後の止めを、させて頂きます」

軍刀を抜き、剣先を喉元に突きつけた。

大尉の態度は驚くほど冷静で―――――、

「……っこの、人でなし!!!」

叫ばずにはいられなかった。

鬼灯が私を睨むのが分かった。

「そこまでしますか?! 死にそうな人間を、これから終戦まで(・・・・)生き抜かなければならない人間を殺そうとするなんて―――

「この娘を捕えろ」

大尉が鋭い口調で命じた。

私は軍人の一人に腕を抱えられた。

それでも止まらなかった。

「反乱なんて、不毛なだけでしょう!?」

「反乱だと! 我らは悪ではない、正義なのだ!」

「人殺し!!!」

「……娘、それとそこのお前。黙れ」

安藤大尉が静かに命じた。

軍人は私を睨みつけると、口を閉じた。

とりあえずむかついたのでヒールで足を踏んでおいた。


「もう、これ以上のことはしなくてもよろしいでしょう?」

安藤大尉は言葉を発した鈴木侍従長夫人を一瞥し、私を一瞥した。

大尉は剣先を喉元に突きつけていたが、暫くしてゆっくりと軍刀を収めた。

「…………では、これ以上のことは致しません」

傍に居た軍人全員が不動の姿勢を取った。

安藤大尉が静かに言った。

捧銃(ささげつつ)

全員が侍従長に対して捧銃を行い、部屋から出ていこうとした。

が、

「そこの娘。名を何と言う」

「…………佐和です」

安藤大尉は佐和か、と言うと、部下たちに命じた。

「意味不明なことを言う娘だが、部外者に知られ事が拡大するのは良くない。捕えろ」

「拷問にかけますか」

拷問!? 冗談じゃない。逃げようと思って腕を振りほどこうとしても無理だった。

「何を言うか」

安藤大尉は怒気を含んだ声で言った。

「一般臣民(・・)、しかも女だぞ。捕らえるが、手を出すな。殺したり傷をつけるのも無論禁止だ。いいな。それでは引き上げる」

私は腕を捕まれ、連れて行かれた。

……それにしてもこの時代の人間は、女女言い過ぎです。








部屋を出たところで、軍人の一人が泣きながら安藤大尉に近づいた。

軍刀にしがみつき何かをわめいている。

「……っ申し訳ないですから、私を殺してください!」

何してるんですかあなた、とは捕らえられている身では言えず黙っていたけれど。















そんなこんなで、昭和10年2月26日、午前5時30分前。

陸軍属の反乱軍に捕まってしまいました。









あげいんあとがきこーなーヽ(*´∀`)ノわーい


作者:前回からすごく間が空いているような気がします。

   お久しぶりです作者です。


鬼灯:鬼灯だ。久し振りだな。


作者:さあ捕らえられてしまいましたよ?


鬼灯:俺は助けないからな。


作者:ちはたんが可愛くないんですか。


鬼灯:そ、そんなことを言うな。これは俺の仕事なんだよ。


作者:ツンデレ……。


鬼灯:死ね作者!!!


どっかーん。


作者(たましい):作品のサブタイトルは、話の内容と全く関係ありません~。


鬼灯:言うに事欠いてそれか。


作者(たましい):山王ホテル書きたかったけど安藤隊は「幸楽」だった~。


鬼灯:そうだな。そして作者。


作者(たましい):んぁ?


鬼灯:……作者、フランスとドイツとオランダとトルコとポーランドとほとんどのヨーロッパの国々とモンゴルの位置がわからなかったそうだが、それは事実か?


作者(たましい):じ、事実です。


鬼灯:枢軸国と連合国の国名が全て言えなかったのも?


作者(たましい):じ、事実です!


鬼灯:ベトナムがわからなかったのもか?!


作者(たましい):は、はい! 死んでお詫びを!!


鬼灯:死ねぇぇえ!! ……ってもう死んでるな。おい、作者?



シ――――――ン。



鬼灯:作者が消えたので、今回はここまでだ。

   次回でまた会おう。


   


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