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AGAIN…  作者: 昆布もぐもぐ
AGAIN…/第一章
15/21

楽しさをとあたたかさを教えてくれたあなたに

新たに登場人物がふたり追加です

しばらく歩くと、かわいらしい洋館が目の前に見えてきた。

ここです、という相馬さんの声に思わず目が輝く。全然下宿っぽくない!

「ただいま帰りました」

ドアを遠慮なく開ける相馬さんの目の前には、にこやかに笑う男性がいた。

「お帰り、葵。ああ、佐和千早さんですね。お久しぶりです」

「は、え、あ……、おひさしぶりです」

確か……、岩崎(めぐる)さん、だったはず。

「なあ、寒いから部屋いこう」

身体をぶるりと震わせた葵さんの頭を撫でて、岩崎さんは先導する。

「ああ、そうだね。佐和さんもどうぞ」

ドアの一番近くの部屋が、彼らの部屋らしい。

小奇麗に片づけられた部屋に入り、勧められるままに腰かける。

「さて、佐和さん。これをぞうぞ」

岩崎さんがポケットの中から何かを取り出して、わたしの目の前に置いた。

「これは……?」

「202。あなたのお部屋です」

それは小さな鍵らしかった。

わたしはそれをまじまじと見つめた。

「……おいくらですか。といってもわたしには支払い能力がありませんので、借りることになりますが」

ごんっ。

言い終わると鈍い音が前から響いた。

見ると岩崎さんが苦い顔をしている。

「めぐ。仕事なのに説明が下手でどうするんだ」

殴ったか蹴ったかしたのは相馬さんらしい。

チッと顔をしかめて舌打ちしたかと思うと、女性と見紛うほどに綺麗な笑みを浮かべて言った。

「ごめんなさい、佐和さん。私たちはあなたにこの部屋を丸ごとあげようと思っているんです。お金は一切いらない」

「どうして、そんなことを……」

「正直に言った方がいいかな、めぐ」

ちらりと岩崎さんを見る相馬さん。岩崎さんは目じりを下げて笑った。

「……だろうな」

「うん。……実はね、皇后さまと、天皇陛下からのお願いなんです」

「は?」

目を丸くした。相馬さんは苦笑すると、軍部の連中から入れ知恵されたみたいですと言っていた。

「は、なにを……」

ぱっと岩崎さんを見る。

「……っ!」

居たたまれなくなって下を向いた。相馬さんは小首を傾げると、言葉をつづける。

「“死なない少女”。格好のネタでしょう? 聖女だ女神だと崇められることは不可避でしょう」

聖女に、女神。

そういえば、殉職した軍人の母や妻は軍神の母とか言われたとかなんとか、という淡い記憶がある。そんな風になるのか。ばかみたいだ。

「今年はベルリンオリンピックもありますし、威信をかけないといけないですから……」

日本の選手団のシンボルというか、20年にある東京オリンピック招致のときの委員会の「おもてなし~☆」の人みたいな扱いを受けるかもしれないと想像してぞっとした。

それにこの時代、軍人しか出れない競技もあるって聞いてるし。

……ん?

ベルリン(・・・・)オリンピック……!」

「はい。それがどうしました?」

「ドイツ……へ、渡れるかも……?」

若干目を潤ませながら相馬さんを見ると、彼はにこりと笑った。

「ああ、あの彼を探しているんですね。その可能性もなくはないでしょうね。……話を元に戻しましょうか、皇后さまがそういう噂にならないように配慮していただいたんです」

「良子さまが……」

確か鬼灯は由依と言っていたけれど。たぶんそれは彼女の平成での名前なんだろう。

「それに、元々私も無一文のあなたから何も取ろうとは思いませんよ。私とめぐの稼ぎと、それから海軍のお二方の家賃で十分潤っていますし」

「そ、……ですか……」

「じゃあ、受け取ってくれるね。佐和さん」

机の上に置かれていた鍵を、そっと手に取った。

「ありがたく、頂きます」

「で、ですね。話はここからなんです。佐和さんにはこれを……」

と言いながら、相馬さんがゴツい南京錠を差し出した。

「危険なのでですね、どうかこれをつけて頂きたく……」

「き、危険ってなんでですか⁉」

岩崎さんはため息を吐くと、話しはじめた。

「君のほかにも海軍の人がふたり住んでいるんだよ。といってもほとんど帰っては来ないんだけど。仮にも男性と同じ階だしね、念のためにね」

「ただいま帰りましたー……っと、誰その子」

「ただいま帰った」

にょっとドアから顔をのぞかせた男性二人に腰が抜けそうになりました。

「ああ、ちょうどいいところに。二人とも入って」

岩崎さんが手招きすると、二人はにこやかに入ってきた。

「この子誰ですか? 親戚?」

「入居者だよ。取り敢えず自己紹介して。こっちの人が、霧ヶ峰で、こっちが山陽」

「紹介にあずかりました山陽俊貴(としき)です。26歳、医官です」

軍人さん=スポーツ刈りなイメージがあったけれど、この山陽さんはいかにも優しげな大学生みたいな雰囲気を出している。

にこりと笑うとえくぼが見えた。

「はじめまして、霧ヶ峰勝利(かつとし)です。皆さん勝利(しょうり)と呼んでるんで、そう呼んでくれたらうれしい。21歳、つい先日木更津に配属されました」

屈託なく笑う霧ヶ峰さんを、相馬さんは冷たい眼で睨みつけた。

「では佐和さんも」

「佐和千早です。22歳で……、なんだろう……学生? ……みたいなことをやってます」

「ほう。どこかのご息女で?」

目を丸くして聞いてくる山陽さんに、手を振って否定する。

「いえいえ、普通の一般家庭の娘です」

すると、霧ヶ峰さんが相馬さんの肩を叩いた。

「ああ、そういえば」

「はい?」

「竹中大佐から軍服渡して来いって頼まれたんだけど、どこにいんの、そいつ」

ほれ、と言いながら住所がメモされた紙を差し出した。

相馬さんはちらりとわたしをうかがう。

「俺が野郎の使い走りになるのは吐きそうなくらい嫌だから渡すついでにボコろうかと思ったんだけど、いないのか……」

相馬さんが冷や汗をかきながらわたしを見た。

何今からわたしボコられるの⁉

「あー、ゴホンッ」

岩崎さんがわざとらしく咳をした。

「めぐ、やめ」

相馬さんの言葉を遮ると明瞭な声で言い放った。

「それ、……佐和さんのだろう」

「ははははははい。た、多分そうです。な、中に、ヤマモトイソロクって人の言伝か何かあれば確実です……」

「……千早の? ちょっと失礼」

霧ヶ峰さんが紙袋をびりっと開ける。さりげなく呼び捨てにしましたね年下のくせに。

軍服の上に置かれていた茶封筒の中を開けると、

『サイズに注文がなかったので見た目で作らせた。不備があれば航空本部まで』

と達筆な字で書かれている。

航空本部って言った時点でヤマモトイソロクさんでしょう……。

「……ふうん、まあ使い走りが女の子のためならいいや。ちょっと着てみてよそれ」

納得いかない様子ですが、ここで着てみろと⁉

「嫌ですよ。とりあえずその服はいただきます。部屋は……202ですね。じゃあ失礼します」

「あ、俺203だわ」

「チェンジを所望します!!」

まあまあ、と言いながら山陽さんが割って入る。さすが大人だ。

「とりあえず祝宴だ。酒持ってくるから待ってろ」

……と思ったのに。

「よし、じゃあ三十分後に佐和さんの部屋ね」

ぽん、と手を叩く岩崎さん。

「ちょ、待って! 酒臭い部屋とか嫌ですから!」

「問答無用っ!」

ぐるんと視界が歪み――、

「うっわ、嫌だ下ろしてください‼‼ 気持ち悪いへんたい!」

「変態で結構! さあお部屋へお連れする! つかこれは筋トレだし! あーふとももやわこー」

「死ね! っていうかあなた死にますから!」

「そりゃ人間だからな! あーふともも」

「黙ってください!」






* *  *





「うぇ……呑んだ……」

「さすが軍人さんと言ったところかな、強いねえ」

「それほどでも……」

酒瓶が転がり、赤い顔をした男性三人が会話している。

わたしは一杯飲んでそれ以上は飲みませんでした。だって酔っ払ったらあの変態(きりがみね)に何されるかわからないからです。まる。

『作文か』

「違います。……あ、鬼灯」

『……おう』

居心地悪そうに角を触る。腕に抱きかかえていた黒い塊が落ちてきた。

「みゃう」

ぴんと尻尾を立てて近寄る。

「紅ちゃん!」

抱きかかえると鼻をわたしの鼻とくっつけた。

『……連れてきてやった。あと薬箱。と、日用品とか。これでいいな』

キャリーケースをどすんと部屋に置く。そして酔っている三人を適当にかわしながらてきぱきと部屋を作っていく。

『……これでいいだろう』

わたし好みの配置にしてくれるところが、この鬼のやさしさなんだろうなあ、と思いながらその作業をぼんやりと見ていた。

『相変わらず過保護なのですね。鬼灯さん』

『…………長門か』

「長門さん……!」

黒髪をなびかせた綺麗なお姉さんがそこにいました。

『わたしの医官様はどこかしら? ……ああ、あそこね、では失礼しますわ』

わたしの医官様……?

「長門さんまさか」

『ふふ、秘密です』

彼女はそう言うとすうっと消えていった。

『……俺は過保護じゃない』

「そうですか」

「うにゃう」

髪をいじりながら言う鬼灯に抱き付こうとした……けれどそれはかなわなかった。

「ありがとう、ほおずき」

見上げて、そっと名前を呼ぶ。

鬼灯は一瞬、ふと表情を緩めた。

『……ああ。あまり気負うなよ』

それはきっと、岩崎さんと霧ヶ峰さんのことを言っているんだろう。

彼らにも、首元に黒い輪が見えた。

「うん……。もう、気にしても仕方が、ないんだもんね」

『酷な言い方だが、その通りだ。俺の仕事は終わった。あとは……、おまえの好きに生きろ』

「うん」

すう、と鬼灯の姿が消えた。

紅は尻尾の先を早く振った。ちりちりと鈴が鳴る。

そして、くあ、と欠伸をすると、目を閉じてしまった。

「お休み……」

紅の毛を撫でながら、ゆっくりと目を閉じた。





……翌日、部屋の中がどんなことになっているかも知らずに。









あげいんあとがきこーなー


作者:お久しぶりです。成績ガタ落ちでガクブルしています。

鬼灯:色々悩んでたからだろうが。

作者:そりゃね……。

鬼灯:さあ、今回は。

作者:そうそう、新たな登場人物の紹介ですよ!


霧ヶ峰 勝利(かつとし)

21歳、170cm

職業:操練出身(36期生)、木更津航空隊所属

容姿:癖のある茶髪

趣味:女性と遊ぶこと

性格:性格が悪い


山陽 俊貴(としき)

26歳、178cm

職業:医官(長門乗組員)

容姿:黒髪ストレート、えくぼ

趣味:読書

性格:礼儀の良い好青年


作者:以上だよ!

鬼灯:……霧ヶ峰と千早とのピソード聞いた知り合いの中じゃ性格が糞過ぎて、

作者:糞ヶ峰とか呼ばれてるもんね……。

鬼灯:まあ、真正の悪い奴じゃないんだがな……。

作者:まあね。では、またお会いしましょう。




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