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AGAIN…  作者: 昆布もぐもぐ
AGAIN…/第一章
14/21

だれかと一緒にいることの


2話連続投稿です!





ぽつぽつと頬に打ち付ける液体を感じて見上げるけれど、何も見えない。

後ろ手に組まされ、雪の上に正座させられる。

「言い、残す、こと、は、ありませんか。……千早さん」

「ありませんが、強いて言うなら」

きっと凛として綺麗な彼は、顔を歪ませているんだろう。

そんな顔をさせてしまったことにひどく申し訳なくなった。

「は、い」

「天皇陛下に、もしわたしが生きていたら、ひとつだけ我が儘を言わせてくださいとお伝えください」

「なっ……、わ、わかり、ました。どうか……」

ご武運を、と言われて、まるで出陣するような気持ちになる。

ええ、十死零生だとは分かっていますが。それでも意地で、くつりと笑ってみせた。

「っ、撃て」

ドンドンドン、と何回も音がする。身体を貫かれるような心地になる。

けれど痛みは感じない。

これが、死ぬということなんだろうか――。

そっと、目を閉じた。






「う、嘘だろ……」

「在り得ない……っ」

ざわめく声が耳に飛び込んできた。

恐る恐る目を開いたけれど、目隠しのせいで何も見えない。

『腕に力を入れろ』

後ろで鬼灯の声が聞こえた。

「ほお、ずき……?」

『いいから早く』

ぐっと力を入れると、ばらばらと嫌な音がした。

ふっと腕から力が抜けた。ゆっくりと動かすと、手を前に持ってくることができた。

「あれ……?」

ゆっくり、ゆっくり、目隠しを取る。

眩い光に思わず目をしかめた。

「い、きてる……」

ぱちぱちと瞬きをしてみる。いきている。

立ち上がると、雪にうずもれていた膝がじんじんと痛かった。

「おい、こいつ死なないぞ……」

「千早さん……ああ、よかった……!」

驚愕する銃を持った男性と、後ろから飛び出してきた女性。

『チッ』

鬼灯は小さく舌打ちすると女性の傍に飛んだ。

「ありがとう、鬼灯」

長いスカートの裾を持って駆け寄ってきた女性は、香淳皇后だった。

『俺は何もしていない』

けれど、鬼灯がふわりと微笑む姿は鬼の姿からかけ離れたものに見えた。

「……しんで、ない」

どうしてだろう。

どこかしこも、変わったところがない。確かに銃声は聞こえたのだけれど。

ふと壁に手をつく。

この壁の前で撃たれたんだなあと思い、地面を見る。

「弾……⁉」

確かに弾が十数発、壁に深々と刺さっていた。

透過した、ということなんだろうか。不思議だ。

「いやあ、君。凄いな。なんで死なないんだ?」

「……誰ですか」

豪快に笑う中年の男性が歩いてきた。

「私を知らんのか。まあそうだな。しょうがない。私は――」

『山本五十六中将だ。いや、少将だったかな。死後は元帥にまで昇格したはずだ』

失礼だけど変な名前ですね。取り敢えず鬼灯が言ったのを復唱してみる。

「ヤマモトイソロク……」

にこりと笑った顔にはうっすらと皺が見え始めていた。

その顔をじっと見ると、軍服の首辺りが透けるように見えている。首には、黒い線が入っていた。

この人も、大戦中に死ぬのか。

そう考えると居たたまれなくなった。

「私は山本だ。海軍で航空機の研究なんかをやっている。皇后陛下からの依頼できみの死に顔を見に来たのだが、とんだ杞憂に終わったな」

「笑えないですね、その冗談」

死に顔を見に来た――なんて。こっちはあなたの死に顔を見ることになるかもしれないのに。

「まあ冗談かどうかはさておいてだな、今度はきみの我が儘を聞いてやろうと思ってな」

「何でもいいんですか。幾つでも構いませんか」

山本さんは少し考え込んだ後、指を三本立てた。

「三つまでだ。それとわたしにも権限の上限はある。それを踏まえて言ってくれ」

「つまり叶えられないこともある――ですね」

なんだ。使えない。海軍なら船を出してドイツへ連れて行ってくれ――、そう頼みたかったけれど。きっとこの件に関しては、この人は使い物にならないと脳が告げている。

じゃあ、どうしよう。

「ああ。まあじっくり考えてくれ。決まったら海軍省まで」

「いえ、もう決まりました」

にこりと笑って山本さんを見ると、彼は静かに瞠目した。

「どうぞ」

「一つ目、戸籍をください。二つ目、海軍に入隊? 志願? させてください。三つ目、ドイツへ連れて行ってください」

どれも無理だと断られると踏んでいるけれど、言わないと始まらないから。

もしかしたらすごく寛大で全部OKしてくれるかもしれないし。

「ふむ」

山本さんは困ったように腕を組むと、

「全て叶えてあげられそうにないな」

といった。ふざけんな。

「特に戸籍とドイツだ。これは難しい」

「承知の上で頼んでいますが、やはり無理ですか」

「……済まない」

できることなら叶えてやりたいと残念そうに言う山本さんに、わたしはにこりと微笑んでみせた。

「じゃあ、海軍に入れてください。それから、精鋭さんを紹介してください。できるなら軍医と、……飛行機乗りさんがいいです。三つ目は、後の為に取っておきます。どうでしょう」

「精鋭の紹介ならできる。海軍に入れる……実際に戦闘に参加させることはできないが、基地に出入りするくらいならできるように取り計らおう。これでどうだ」

それで今のところは充分だ。

三つ目は、また殺されそうになったときに使えばいい。

「ありがとうございます。陛下には謝りませんとお伝えくださいますか」

「学ばないな、きみは。……しかし実のところ、きみが死ななかったら陛下はもう干渉しないと言われたんだ。晴れて自由の身だ」

それもそれでどうかと思うけれど。

「ありがとうございます」

曖昧に笑うと、山本さんはペンを取り出しさらさらと何かを書いてわたしに手渡した。

「海軍省だ。軍服が出来次第連絡をするから、取りに来てくれ。階級は何がいい?」

「わたしが決めれるんですか?」

「できる限り尊重したいしな」

「うーん……、じゃあ、海佐で。2等でいいです」

「かいさ? なんだそれは」

ああ。たしか現代の呼び方だったっけ。

海軍時代は確か……。

「中佐あたりだったかな」

「ははは、随分大きく出たな。しかし面白い。いいだろう。作らせよう」

山本さんは踵を返すと歩いて行ってしまった。


「案内します。千早さん」

「あ……相馬さん」

傍に来ていた相馬さんがにこりと微笑む。

「鬼灯さんがおっしゃったとおりでした」

「え?」

相馬さんは目を伏せた。

「千早は死なない――、そうおっしゃっていましたから」

千早は死なない。どういうことだろう。

銃弾をぶち込まれても傷一つ負わないことを知っていたんだろうか。

じゃあなんで言ってくれなかった?

もやもやとしたものが胸に流れ込んでくる。

「ここから少し歩くだけですから」

「あ……はい」

にこやかに笑う相馬さんに気を使って微笑み返したものの、釈然としない。

「申し訳ありません、千早さん。(めぐる)の家、下宿っぽいんです。部屋が6つあるんですが、住んでいる方がすべて男性なんです」

「ええ」

「男所帯でむさくるしいかもしれませんが、よろしいですか」

「構いません。得体のしれないわたしを泊めてくれるだけでもありがたいのに」

すると相馬さんは困ったように笑顔を浮かべた。

「大家が環で、住んでいるのが私と、海軍の方がお二人です。……みなさん個性的で」

とんでもなく嫌な予感がしたけれど、とりあえず黙っておいた。



あげいんあとがきこーなー


作者:じ、次回ついに……!

鬼灯:あの、伝説の(作者調べ)男が……!

作者:かえってくr……いや、出てくる‼‼

鬼灯:あいついらなくないか?

作者:……いや、いるんだよ、嫌なことに

鬼灯:そうなのか

作者:うん……、だから頑張って書くよ

鬼灯:ああ、そうしろ

作者:それではまた!


キャラクター紹介


・相馬 (あおい)

 35歳、宮内省勤務

 女性と見間違うほどの流麗な容姿をしている

 次回登場予定の岩崎環と恋人

 真性ではないがゲイ

 趣味は裁縫と料理、格闘技



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