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AGAIN…  作者: 昆布もぐもぐ
AGAIN…/第一章
11/21

でも、間違いなくあなたは

お久しぶりです。

今回は少し流血表現があります。苦手な方はご注意ください。


翌日。

決起部隊に勅令が発布されるとの伝達が行き届き、自決と帰順という雰囲気になりつつある。

「もうすぐ、終わるね……」

『ああ。俺もお役目御免になるな』

紅を見下ろしながら、言う。

「寂しくなるね。ねえ、紅ちゃん」

紅はにゃう、と小さく鳴いた。

日はもう高く登っている。

窓を少しだけ開けると、真冬の空気がなだれ込んでくる。

耳をそばだてると安藤さんの怒声が聞こえてくる。

彼は、最期まで戦い抜くのだろう。

自決を選ばず、抗戦を選ぶ。

そういう、人なのだ。

「わたしも捕まるのかな」

『まあ、参考人として呼ばれるくらいはあるかもな』

そう楽観的でいいのかと不安になるけれど、鬼灯がいいというならいいんだろう。多分。

『それより、これがひと段落着いたらどこに行く気だ?』

「どこ……って……、どこだろ」

そんなこと考えてもみなかった。

東京に知り合いは多分いないだろうし……っていうか、昭和時代に知り合いなんかいないし。

『考えとけよ』

「うん……」

力なく頷く。

と、みゃお、と鳴き声がした。

鬼灯が眉をひそめる。

「あれ……?」

なんだか、視界がぼやける。

『……どうした?』

「ううん……すごく、眠い……」

わたしは重さに耐えきれず、瞼を落とした。



***



次に目が覚めたとき、わたしは幸楽とは全く違った場所にいた。

豪勢な、洋風の、部屋だった。

傍には安藤大尉が居た。

「ここ、どこですか」

半ば詰問するように言うと、彼は力なく笑った。

「帝国ホテルだ。因みに今は二月二十九日午前十時。私が君をここへ運んだ」

「にがつ、にじゅうくにち……」

半日以上、経っていたのか。

『……見る、つもりなのか』

後ろから声がした。

振り向くと、眉根を寄せた鬼灯がいる。

「見るって……?」

小声で訊くと、彼は小さく溜め息を吐いた。

『こいつ、拳銃自殺を図ろうとする。失敗するがな。……女子供には、流石に見せないだろうが……』

拳銃自殺未遂。

そう言えば、顎を撃ったが貫通せず入院、というような話を聞いたことがあるようなないような。

どちらにしろスプラッタな光景には出くわしたくない。なるべくで良いから。

「離れる……」

『懸命だ』

鬼灯は眉を寄せると、どこかへ行ってしまった。

わたしは安藤さんの姿を探した。

「あの、安藤大尉……」

控えめにその背中に声をかけると、彼はゆっくりと振り向いた。

「なんだね」

「子供……ましてや女に言われて気分を悪くするかもしれませんが……、」

「言ってみなさい」

思いのほか落ち着いていて優しげな声に、わたしは胸が抉れるような気持ちで尋ねた。

「死ぬおつもりですか」

「……私は死にはしないよ」

「そう、ですか……」

「ああ」

にっこり笑うと、わたしの頭に手を乗せた。

「今の日本は、生きにくい。だが、……それでも、泥を舐めてでも、這いつくばってでも、生きろ。いいな?」

「え……」

それはまるで臨終間際の人間が言うような台詞で。実際自殺を図ろうとしているんだからそうなのかもしれない。だけど、わたしに言うような言葉じゃない。

女に言うとするなら、“巻き込んで済まなかった、このことはもう忘れて、良い夫を持ち、家を支えなさい”くらいのものだろう。

何かがおかしい。

訝しむ私の目の前で、大尉はわたしの目線に合わせて少しだけしゃがむと、

「何か目的があって来たのだろう。未来人の少女よ」

囁くように、からかうように、そう言った。そしてくるりと背を向けると、拳銃を取り出した。

「諸君。私は自決する。諸君らはこの意志を忘れず、どうか貫いてほしい。誠に国を思い、愛する人を護りたい……、護れるような、そんな国に、諸君らがしてほしい」

「安藤やめろ! お前はまだ死ぬべきじゃない」

誰かが大尉を羽交い絞めにし、そして多分お偉いさんが泣きながら安藤さんの肩を掴んだ。

「安藤が死ぬなら俺も死ぬ、おまえひとりに責を負わせるなど、俺にはできない」

「大尉が死ぬのなら我らも死ぬ覚悟であります!」

泣きながら、そこにいた兵士全員が、安藤大尉に駆け寄った。本当に部下に慕われている。大尉はこんなところで死んではいけない。彼が生きていたならきっと、きっと未来は変わっていた。

こんな人を、殺す決断をさせる天皇が憎いと、初めて思った。

「駄目だ、天皇陛下の兵をむざむざ死なすわけにはいかん。おまえたちは兵営に戻れ。私だけで――」

「それはなりません!」

「東北の農村の話をしてくれた奴がいたな。……彼らを救えず、済まなかった。だが私が死んでも終わりではない。……どうか、良い日本にしてくれ」

「大尉、そんなことを仰らないでください」

彼らの必死の説得を眺めて、ただ、泣きたくなった。

雪が、ぱらつき始めていた。

どんよりとした雲から下りてくる灰色。視界を覆い隠してしまう雪。

まるで今の日本みたいだ。

「…………兵営へ戻ろう。私は、おまえたちを死なせるためにこんなことをしたんじゃない」

説得に応じたのか……、大尉はふと笑った。

「大尉、では」

「ああ。……吾らの六中隊を、歌おう」

合唱が始まる。浪々とした声で歌う彼らを、鬼灯がひとり、苦しそうな目で見ていた。

大尉はぐるぐると下士官や少尉たちの間を歩く。曲の終盤だろうか、大尉がゆっくりと後ろのほうに来た。

曲が終わった瞬間、大尉は確かにわたしに敬礼した。

「たい……」

ばあん、と鈍い音がこだました。

ゆっくり、ゆっくり、コマ送りのように、大尉が、倒れて、いく。

血が、溢れて。

ベルベットの絨毯を、更に赤く、染めた。

「――――――っ‼‼」


あげいんあとがきこーなー(*´▽`*)


作者:お久しぶりです。

鬼灯:本当に久しぶりだ。

作者:これから物語は動きますよ! わくわく。

鬼灯:作者の頭の中だけで話が勝手に歩いてるだけだろう。

作者:ぐさっ……。

鬼灯:赤点も取らなかったようだし今回は許してやる。

作者:あ、ありがとう。

鬼灯:いい加減このあとがきコーナー長いんだよ。本編書け本編を。

作者:す、すまぬ……。じゃあここで終了、またお会いしましょう!



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