わたしにはよく、わかりません。
久しぶりの投稿。
2月27日午後5時の時点のお話です。
2時間後。鬼灯が口を開いた。
『秩父宮』
と。
秩父宮。誰だろう。海軍のお偉いさんかな。
この事件において海軍の出番はなかったと思うけど……。
「ねぇ鬼灯。事態は収束に向かってるの?」
鬼灯は、ん、と首を傾げると、
『明日、勅令が出される。それからだな』
と言う。この時代ネットなんてないし、テレビもラジオも新聞さえも与えられていない私の唯一の情報源はこの鬼灯だけ。大事にしないと。
「勅令って、天皇の?」
『そうだ。だが今は――
「なんて命令? 原隊復帰? それとも討伐?」
鬼灯が言いよどむ。
どうしたんだろうと思うと、
「邪魔して済まんな」
安藤さんが戻ってきていた。
やばい、今の話聞かれた?
「ああ、安藤大尉でしたか、すみません……」
私を見る大尉の目つきが厳しい。やっぱり、聞かれたんだろうか。
「どうして勅令が出ると言うんだ?」
「そ、んなこと、言いましたっけ?」
「はっきりと聞こえたが?」
う。
言い逃れできない。
「え、あ、あの、ら、らじお……?」
「ラジオでも流れていない筈だ。これは坂井さんとか、陸軍省に行ったものじゃないと分からない情報だろう。……しかし、出るとは言われても勅書を読んだわけではない。まだ、事実ではないのだよ」
釘を刺すように言う。
そ、そんなに怪しまなくてもいいじゃないですか。
「それから。原隊復帰の命令が出たらしい。馬鹿げたことだ……と、駄目だな、私は」
軍帽を深く下げ、言った言葉には、僅かながら怒気が含まれているように感じた。
憤って、いるんだろうか。
「原隊復帰……、するんですか」
大尉はぐっと口元を引き締めると、躊躇いなく言った。
「いや、我々……、いや、私は最後まで戦い抜く」
「どうして、そこまで……?」
あなたは、負けるのです。負けて、処刑されるんです。反乱軍という汚名のもとに。
喉元まで出かかった言葉を、飲み込んだ。
「以前、聞いたことがある。東北の方から、出てきた者だった。父親と長男は徴兵でとられ、母親と幼い子供だけで農作業をせねばならん。貧しいから、僅かな金と引き換えに娘を売ったり……、信じられんと思わんか」
悲痛な声と顔で、言う。
そんなの、今の日本じゃありえないんじゃないかな。
こんな時代が、あったんだ。日本にも。
神妙にうなずくと、安藤さんは続けた。
「私はそれが、今の政府の在り方が問題だと思った。だから行動を起こした。天皇陛下のものである兵までも動員して。それなのに、奴らは簡単に帰順すると言う」
許せん、と言う。
静かな口調から伝わる憤りに、わたしはただ圧倒されていた。
「陛下の兵を勝手に使った。維新のためとはいえ殺人未遂だ。それでも、行動を起こさねば気が済まんのだ。後世のために何かをしたい。このままではこの国が、どんどん悪い方向に、向かって行っているような気がした」
「あなたは、間違っていない」
強く、強く、言った。
歴史の教科書では、いつも悪者。政治家を殺して、国を変えようとした、反逆者。そんな扱いをされている彼等。
わたしもそう、思っていた。
だが現実は、実際は、そうじゃなかった。
彼等は人間味あふれ、魅力ある人物だ。悪者なんて、嘘だ。
……そりゃあ、人を殺したりはしているけれど。
「あなたは間違っていない。それを証明するにはもう少し、時間がかかるかもしれないけれど」
強く強く、言うと、安藤さんはふと微笑んだ。
「女性に励まされるとは情けない。済まんな、愚痴ってしまって」
ぽん、と頭に手を置かれ、そのまま出て行ってしまった。
頭に、あたたかみが残る。
「……安藤さん、ほんとに死んじゃうの?」
『ああ』
「助からないの?」
『そういう歴史になっているだろう』
「あんなに、いい人なのに。国と国民を思う気持ちは、誰よりも、強いのに」
社会的弱者は無視される。
これは現代でも変わらないなと思った。
「それしか、手段がなかったんだ。渡り合うためには」
『ああ』
「こんなの間違ってる」
鬼灯は、返事をしなかった。ただ目を瞑っていた。眉を寄せて。
それに少し引っかかったけれど、鬼灯の肩に頭を預けて、わたしも目を閉じた。
あげいんあとがきコーナー!!!
作者:お久しぶりです。
鬼灯:まったくだ。パソコンがぶっ壊れるしデータが破壊されるしだったな。
作者:うん……。おかげで艦これできなかったし。
鬼灯:まあ、今回はしょうがない。次からがんばれ。
作者:鬼灯が優しい……。あしたは槍が降る!
鬼灯:死んでしまえ。
作者:ちゅどーん。
鬼灯:では、また。




