第一話
半袖を着るのには少し寒いくらいの早春の日だった。ボクは昼食を食べ終えする事も無い自由な時間をどう過ごそうか考えながらわずかに開いていた窓から外を覗いた。上に目を向ければ雲一つない晴天で下に目を向ければ小さな花壇にひっそりと咲くタンポポの花とその横をアリさん達の行列。よく見ようと体を乗り出すとひんやりとした風が頬を撫ぜる。せっかく窓の縁の突起が腹から腰にかけてダメージを与えるのを我慢しながら先ほど見たアリの集団の中でとびきり大きいのを捕まえたというのにその冷たい風に驚いて指を離してしまった。おかげでただ単に自らの身体に傷を与えたという悲惨な結果に終わる。ちぇ~っという言葉が口から漏れた。
ゴンゴンッ
今更遅いかな、そう思いながら離してしまった大アリをもう一度捕まえようと窓に向かって小さく跳ねた時、店の扉を叩く音がした。今にも扉を壊してしまいそうな衝撃的な音だった。ちなみにこれは比喩表現などでは無く文字通りの言葉だ。家の扉は木製なのだ。
ゴンゴンッ
誰も答えないからか、再びノックが聞こえる。先ほどよりも幾分か強く叩いているのだろう。こちらの耳に入ってくる音もより大きくなっていた。そろそろ答えないと次は扉が壊れるんじゃないか、そんな考えが頭をよぎる。しかし、それを実行に移す事が出来ない。小ジャンプによって窓にぶら下がり、完全に重心が腹に移動している。この状況からではどう考えても間に合わない……
修理代が……
再び綺麗な扉がつけられた後、業者の者から手渡される白い紙を想像して硬く目を瞑った。
「あ~、今行くから扉叩くのやめてくれ~」
もっとも、そうなるの止めた男がいたのだが……
第一話:大男とお仕事
「しっかし、なんでお前は人もろくに来ないような山奥に店を開いてるんだ?えぇ?」
直径1mほどの小さな円形の机をはさみ二人の男が向かい合っている。少し挑発するかのようにそう言ったのはとびきりの大男で、それと同時にこれまた大きな音を鳴らして机をぶっ叩くもんだから、その振動が家全体に伝わりボクは運んでいた飲み物を危うく落としかけた。
「まぁまぁ、ここは自然の香りをいつでも嗅ぐ事ができて、良いところだよ」
細身の男はそこで一旦区切ってありがとう、と小さな声でつぶやき、運ばれてきたお盆から茶飲みを取ると静かにそれをすすった。
「まぁ、おかげで君の言う通り、客は滅多に来ないけどね」
「自然の香りとやらが、そんなに大事か。まぁお前が都市部に移ってきたら俺の仕事が無くなっちまうから良いんだがな」
大男はボクが目の前に置いた茶を一気に飲み干してガハハと笑った。もう一人もまたつられて微笑む。
そこからは少し世間話が続いた。今の王の政治がどうとか最近物価が上がってるとか色々だ。
「小僧、酒はないのか?」
相手が「お手洗いに」と席を離れたところを見ると大男は素早い動きでボクの耳元に口を近づけ小声でささやいた。
突然の出来事で少し驚き茶をこぼす。
「あぁ、悪い。驚かせちまったな」
その大きな手でポケットを探る、ズボン、上着、鞄と捜したが探し物は見つからなかったようだ。
「すまん、ハンカチはもってきてなかった」
「いえ、大丈夫です。自分のがありますから」
「ん、そうか」
大男はボクの動きが止まるのを待っている。じーっと見つめるのをやめてほしい、そう思いながらとっとと拭き終えると、彼は(そこまで時間はかかっていないはずなのだが)待ってましたと言わんばかりに大口を開けて自らの意思を伝える。
「酒をくれ!家だと嫁が睨みを利かせてるせいで飲めねーんだよ!」
ああ、それはかわいそうだ。
しかし、その女性はおそらく貴方の為を思っていっているのですよ。二つの意見が頭の中で対立する。そしてたった数秒だが激しい戦いが起こり、勝利はボクの意思を尊重する考えとなった。
「ちょっとだけですよ」
席を立って台所へとつながる扉を開く。しかし、そこにはお手洗いから帰ってきた大変健康的な男が居たのだ。
「酒は駄目ですよ」
にんまり、とした笑顔を浮かべている。
大男がすごく小さく見えた。
しばらくは説教タイム。どうやら大男がボクに頼んでこの家の酒をちょっとずつ消費していた事に大変お怒りのようだ。ボクもまた少し怒られてしまった。そして、一段落つき、一度茶をすすったところでもう一度説教が始まるのを恐れた大男が話題を変えてみせる。
「そろそろ、本題に入らないか?ほ、ほら、日も傾いてきたし……」
あれっ?もうそんな時間だっけ?先ほどまで昼だった気がしたのに……
窓の外に視線をやるとそこには真っ青な空が満ち溢れていた!
「うん、そうだね。そうしよう」
彼もまた外を見たのだが、その言葉を大男のそろそろ勘弁して下さいというメッセージと捉えて話題転換に乗った。
ふぅ、というホッした一息も聞こえてきた。
「さて、こいつが今日のメインディッシュ」
大男は足下に置いておいた荷物を机の上に乗せる。大きな筒だ。
「なんだか分かるか?」
「筒だけじゃ何も分からないさ、開けてみせてくれよ」
「まぁ、いいだろう。驚くんじゃねーぞ、ほれ」
筒から出てきたのは一本の刀。
「皇帝陛下の持つ宝剣『○○○○』だ。家臣の誰かが乱暴に扱ったらしくてな……」
しかし、それは刃の丁度半分あたりで二つに分かれていた。
「こいつを直してくれ。頼むぞ」
無茶を言わないでくれ……小さく呟きが聞こえた。
こういった場所に小説を投稿するのは初めてとなります
というか今までは書いても公開せずに自己満足で終わらせていたり、そもそも途中で飽きて完結しなかったりといったものでした
温かく見守っていただければと思います
さて、この物語についてですが一応中編、5~6話で完結を予定しております
しかし、書いてみたところ、思った以上に1話に内容がない
もしかしたら予定をはるかに越える長編になってしまうかもしれません
曖昧で申し訳ない
時代や舞台は剣とか槍とかで戦うくらいの西洋をイメージしています
追記:最初のほうどこら辺で改行すればいいのかわからず全部つながってるんですけど問題ないですかね?
あと剣の名前が思いつかん!