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部活が終わり帰路に着く。もうすぐ高体連の時期なので、どこも遅くまで練習をしていたらしく、帰り道にはたくさんの高校生がいた。
ゆっくり歩いていると急に背中を叩かれ、ビクッとする。恐る恐る振り返ると、見知った人間だった。
「芳野、びっくりさせないでよ」
「スタメン、おめでとう」
芳野はそう言って、背中をバシッと叩く。
「ありがとう」
練習の成果が認められて、初のスタメン入りだ。監督に名前を呼ばれたときは、今までにないくらい嬉しかった。
「お互い頑張ろうな」
「言われなくても」
そして、二人で他愛もない話をしていると、いつの間にか駅に着いていた。
「じゃ、俺あっちだから。じゃあな」
「バイバイ」手を振って別れる。姿が見えなくなるまで、見つめていると、急に制服の裾を誰かに引っ張られた。
――な、何?
「あいつ、誰?」
そこに立っていたのは端正な顔を歪めた真尋さんだった。
「誰って、ただのクラスメイトですけど」
「本当に?」
「部活が同じで、いろいろ話すので友達って呼んでもいいのかな?」
改めて考えたことも、確認したこともないのだけれど、男子の中で一番仲がいいと思っているので〝友達〟と呼べなくもないかもしれない。芳野がどう思っているのかは分からないが。
「ふーん」
納得しきらないような顔で、真尋さんは何やら考えている様子だ。
「一海ちゃん、話があるんだ。ちょっと来てくれる?」
こんなところで真尋さんが現れるまでは、確かにいつもと変わらない日だった――。




