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日に日に迫る修学旅行。バスの座席とか部屋割りはだいたい決まったけれど、班別行動でどこに行くかは具体的にはまだ決まっていない。
一時間目の授業は、それを決めるためにあてがわれた。机の上に並んだガイドブック。楽しそうな笑顔。一人浮いた感じがする。
「やっぱり、近畿って言ったら神戸に行くべきだよ。異人館とか中華街とか楽しそうじゃない?」
「えー、近畿って言ったら京都だよ」
「京都って、中学の修学旅行で行かなかった?」
「成田さんはどう思う?」
「えっ、あ」
戸惑って言葉が出て来ない。急に話を振られるなんて思いもよらなかった。彼女らの視線を一身に感じる。
「成田さんって、あんまり喋らないよね?」
答えられなかった。笑うことも話すことが出来なかった。声にならない声が宙に舞う。
昔、チームメイトに言われたことがあった。「成田と喋ってると疲れるんだよね」と。それは、私にとって凄くショックなことだった。それ以来、話すことが億劫になって、必要最低限何も話さなかったし話せなかった。クラスメイトに悲鳴をあげられ、友達作りに失敗したから、せめてチームメイトとは仲良くしようと思っていた。チームメイトは辛いとき、励ましてくれたし、慰めてもくれた。でも、そう言われたとき、私はダメな人間なのだと思い知った。
もがいてもがいて、悪足掻きして。そんな風にできない。それが運命なら足掻くなんてことさえしないで、受け入れて流してしまう。試合なら、最後の最後まで諦めることはしないはずなのに。
どうしてなんだろう。どうしてなんだろう。どうしてできないんだろう。
二年になっても友達がいないのは、どうして―――。




