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黒い夢と白い夢Ⅰ ――過去の呪い――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第5章 ある女性騎士の台頭 ――封鎖区域テトラル――
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第36話 テトラル総帥エリアにて

※パトラー視点です。

 【テトラル本部 テトラル総帥エリア】


 私は大きな扉を開ける。真っ黒のそれは左右にスライドして開く。開いた先の部屋は黒に近い藍色の光りが放たれる不気味な部屋。

 私は黒の金属で出来た階段を上って行く。階段の先には広い空間。奥には黒の椅子に座る1人の男性。テトラル代表のララーベル。そして、彼の後ろには巨大な円柱の水槽。中に誰か入ってる……。


「国家反逆者ララーベル、即刻降伏願いたい」


 私は低く、怨みの籠った声を放つ。


「ハッハッハ……。降伏条件をお聞かせ願いたい、パトラー准将」

「無条件降伏だ」


 私は両手にサブマシンガンを握り、その銃口を向ける。真っ直ぐとララーベルの頭を狙っていた。こんなヤツ、生きてなんになるッ!


「断る、と言ったら?」

「死んで頂く」


 ララーベルはしゃがれた声で笑う。私の手に力が入る。コイツ、私に引き金を引かせたいか? 今すぐ殺してもいいんだぞ?


「“優しい軍人”、よくぞここまで来た。だが、お前の出現など予測済みよ。優秀な人工知能がついておるからな……」


 また人工知能か。財閥連合も人工知能オーロラという人工知能を持っていた。何年にも渡り、財閥連合を支え続けてきた最新の機械だ。

 この男もそれと似たようなものに頼っているのか。だとしたらバカだな。人工知能オーロラに頼り切った財閥連合が、オーロラ支部の戦いで負けたのを知らないのか?


「だが、予測は1つだけ外れた」

「……なに?」

「それは、お前の仲間が意外と弱く、頭も悪く、ここに来れなかった事だ。ハッハッハッ……」


 確かに一見見れば、ララーベルに有利な想定外なのかも知れない。だが、クォット将軍やピューリタン、クラスタたちがここに来れなかったからと言って、状況が悪いワケじゃない。みんなはもう別の行動を始めているだろう。それはお前の負けを呼び寄せる。


「我はお前たちがここに来ることを予測していた。ならば、その対策もあるというものよ」


 ララーベルがニヤリと笑う。その瞬間、暗闇から6体ものバトル=パラディンが姿を現す。先端に電撃を纏った槍をぐるぐる回しながら私を取り囲む。

 私はサブマシンガンの銃口をバトル=パラディンの1体に向ける。それを見たララーベルは立ち上がる。


「さらばだ、パトラー准将……。また縁があれば合うかもしれんの、ハッハッハ……」


 ララーベルは懐から操作パネルを取り出し、何かをした。

 椅子の後ろにあった円柱の水槽が下から上へと開いていく。濁った緑色の液体が流れ出す。その中から裸の女性が一緒に出てくる。……七将軍の1人ケイレイト! 彼女は激しく咳き込みながら起き上ろうとする。


「逃げるのか? ララーベル」

「無駄な戦いを避けるだけよ……」


 そう言い残して、ララーベルは奥の暗闇へと姿を消していった。アイツ……! でも、こんなバトル=パラディン6体程度なら……!

 発砲。1体のバトル=パラディンの頭を撃ち壊す。それを合図に残り5体のバトル=パラディンは一斉に飛びかかって来た。


「邪魔だ!」


 私は前へと素早く飛ぶ。前から来ていたバトル=パラディンを押し倒し、ソイツから離れると、ララーベルを追う。


「うあああぁぁッ!」

「…………!?」


 ケイレイトの叫び声。彼女は身体を丸めて、その場でもがき苦しんでいた。私は慌てて彼女の元に走り寄る。


「だ、大丈夫か!?」

「痛い、痛い痛いッ! 助けてッ!」


 痛いって何も外傷はないけど……? 私は不思議に思いながらも彼女の濡れた身体を抱き締め、ゆっくりと立たせる。

 だが、そんな私たちにバトル=パラディンが近づいてくる。その手には槍。相変わらずぐるぐる回しながら近寄ってくる。


「うぅッ、ぐぅッ……!」

「どうした……!?」


 ケイレイトは再び咳き込み始めるが、突然、彼女は血を吐き散らす。真っ赤な液体が私の足元に広がる。

 バトル=パラディンが槍を振り上げる。私ははっとそれを見る。ヤバい! 電撃を纏った鋭い槍の先端は無防備な私かケイレイトの頭を貫こうとした。

 だが、ケイレイトがいきなり私を押し倒して、両手をバトル=パラディンに向ける。彼女の手から放たれる紫色の電撃。それは一撃でバトル=パラディンを吹き飛ばした。

 私はフィルドさんの剣だったデュランダルを引き抜き、残りのバトル=パラディンに突っ込み、次々と彼らの頭を斬り壊していく。ケイレイトも両手から放たれる電撃でバトル=パラディンを吹き飛ばす。


「…………ッ!」


 バトル=パラディン全機を破壊した時、ケイレイトはまた血を吐く。そして、彼女はその場に座り込んでしまう。それを見た私は慌てて彼女の元に駆け寄る。


「ケイレイト!?」

「ぐぅッ、痛い痛い!」

「何もケガしてないけど……?」

魔力マナを、無理やり引き出され、た……」


 そう言うと彼女は気を失ってしまう。その時、暗闇からまた新手のバトル=パラディンが姿を現す。今度は4体。4体程度なら素早く倒せる!

 私はデュランダルを握り、バトル=パラディンに向かって行く。バトル=パラディンは槍を振り上げる。それをデュランダルで防ぎ、隙をついて頭を破壊する。

 残りの3体が近寄ってくる。私は彼らの前の方にハンドボムを投げる。僅かな時間を置いて爆発。3体のバトル=パラディンは吹き飛ばされる。


「頭壊さないとね!」


 吹き飛ばされ、半壊したバトル=パラディンに近づくと、その頭部にデュランダルを突き刺す。バトル=パラディンは頭を完全に壊さないと機能を停止しなかった。

 全てのバトル=パラディンを破壊すると、私はケイレイトの元に行く。まだ気を失ってる。


「…………!」


 再び上がる電撃音。私はハッと来た方向に目をやる。そこにいたのは6体のバトル=パラディン。まだいたのか! 一体何体いるんだ! 私はデュランダルを握り、立ち上った。

 だが、バトル=パラディンは急に動きを止める。1分ほど動きを止めていたが、再び顔を上げ、槍を持つ。


「うッ……」

「ケイレイト!」


 ケイレイトはゆっくりと目を開け、小さな声で言った。


「ララーベルを……。これは人工知能の罠、パトラーの性格を利用した……」


 罠? 私の性格を利用した? ……そうか! そういうことだったんだ!

 ここでようやく私は人工知能テトラルの罠に気がついた。ケイレイトを解放したのは彼女と私を戦わせる為じゃない。私にケイレイトを助けさせる為のもの。これは彼女を利用した時間稼ぎだ。

 バトル=パラディンが少数ずつで現れるのも、恐らくは時間稼ぎ。少数なら勝てると思って戦う。もし、多数で一気に現れたら、私は戦いを諦め、ララーベルを追っていただろう。


「私は、いいから、アイツを追って……」

「でも!」

「アイツを逃がせば、更に多くの子どもたちが……」

「わ、分かった……!」


 私はケイレイトを放置することに躊躇しながらも小さく頷き、ララーベルを追って走り出す。だが、隠れていたバトル=パラディンが次々と姿を現す。その数は10体近くいる。これじゃ……!


「下がれ、バトル、パラディン! 私は連合政府の、七将軍ケイレイトだッ!」

[…………!]

「……ケイレイト!?」

「行って!」


 私は力強く頷き、走り出す。バトル=パラディン達はケイレイトの命令で私に道を開ける。私は暗闇の中にある扉を開け、夕日が差し込む明るい廊下を走る。ララーベル、絶対に逃がさない!

 その時、ふと思った。あのバトル=パラディン達、なんでケイレイトの命令を素直に聞いたんだろう? さっきまではケイレイトをも殺そうとしていたほどなのに……。

 私はそんな疑問を抱いたが、頭から打ち消す。そんな事を考えてる場合じゃない。ララーベルを捕まえるんだ! 窓から射しこむオレンジ色の夕日を浴びながら、私は廊下を走り続けた。

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