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黒い夢と白い夢Ⅰ ――過去の呪い――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第5章 ある女性騎士の台頭 ――封鎖区域テトラル――
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第35話 合流

 【テトラル本部要塞 避難通路】


 私とトワイラルは狭い避難通路を歩いていた。いくら電気属性を纏ったアローを撃ちまくっても、あれだけ数がいるんじゃ話にならない。

 挙句の果てには毒魔法を使う軍用ウォプルや回復魔法を使うウォプル、更にはウォズプル2匹で出来るウォプル系魔物の一番大きい(例外のウォゴプルは除く)ウォガプルを改造した軍用ウォガプルまで出てくる始末。

 そこで私たちはなんとか妨害魔法と煙幕で敵を撒き、狭い避難通路へと逃げ込んだ。でも、これでテトラル総帥エリアからは遠のいたな。


「ずいぶん、狭いな」

「それになんか焦げ臭いね……」


 ここ来る前、凄い爆音が聞こえたケド、どっかで爆発でも起きたのかな? まるで“自爆装置が作動し、エリア1つが吹き飛んだかのような音”だった。


「…………!」


 先行していたトワイラルが急に止まる。あっ、奥から誰か来る。私は素早くボウガンを構える。まさか、バトル=アルファ……?


「……うん? そこにいるのはトワイラルとミュートか?」

「クォット将軍!?」


 奥から現れたのはクォット将軍とピューリタン、クロノス大佐の3人だった。彼らの服や装甲服には所々汚れが目立つ。黒ずんでいたり、マントが破れていたりした。


「な、なんで3人がここへ……?」

「それが、軍用兵器量産工場と下層の軍用兵器保管庫を2エリアを自爆させたのだ」


 さっきの強烈な轟音はこの人たちのせいか。ついでに私の予測もほぼぴったりと合っていたな。ふふんっ。おっと、顔がニヤけちゃいそうだっ。


「そこまではよかったのだが、爆発に巻き込まれまいと逃げた先がこの避難通路」

「では、ここからテトラル総帥エリアに向かってはどうですか? 方向が逆ですが……」

「それが、爆発の影響でテトラル御座へと向かえる通路も崩れ落ちてしまったのだ」

「そ、そんな……」


 私たちにとっても凶報だった。3人一緒でもあの軍用ウォプル軍団を突破する事は難しい。何百、何千といるのだから。

 左ルートと中央ルートからじゃテトラル総帥エリアに行く事は難しい。パトラーとクラスタが進んだ右ルートから行くしかないのかな?


「この後、どうしますか……?」

「……道は2つ」

「2つ?」

「間に合わないと思うが、右ルートよりテトラル総帥エリアを目指す。これが1つ」

「もう1つは……?」

「この施設にある“人工知能テトラル”を破壊する」

「人工知能テトラルを……!?」


 このテトラル本部要塞には人工知能テトラルと呼ばれる超ハイテクなコンピューターが存在する。外の戦闘を指揮しているのはこの人工知能テトラルだ。

 テトラルは外の全バトル=アルファやバトル=ベータ、バトル=ガンマなどの軍用兵器・生物兵器とネットワークで繋がっている。全ての兵器が見た映像は人工知能テトラルも見ている。何百万もの兵器が絶えず送り続ける映像や戦闘データを瞬時に解析し、戦況を有利に展開する。

 もし、これがなくなれば、ここの連合軍は指揮官を失い、バラバラになる。つまり、外の政府軍は一気に連合軍を片付ける事が出来るだろう。


「……でも、今回の目的はララーベルの逮捕じゃないですか?」


 クロノスがハンドガンのマガジンを代えながら言う。そう、それが一番。ララーベルを逮捕すれば、連合政府はリーダーの1人を失うし、製薬会社テトラルをも同時に失う。


「でも、私たちの侵入はさっきの轟音で気づかれたと思う」


 私は爆発が起きた時、まだ左ルートで軍用ウォプル軍団と戦っていた。凄まじい爆発はその時に起きた。建物が大きく揺れ、私もその場に倒れそうになった。あれほどの音に気がつかないワケがない。


「難しい判断が、あくまでララーベルの逮捕が目的だ。右ルートからパトラーとクラスタを追おう」

「分かりました」

「イエッサー」


 こうして私たちは、元来た道を引き返す事になった。10分ほど走り、ようやく扉が見えてきた。一番先を走っていたピューリタンが扉を開ける。出た所は分岐点となったあのエリアだった。右の方を見れば例の3つの扉が――。


「…………!?」


 私たちはつい立ち止まってしまう。そこにいたのは12~15歳ぐらいの少年や少女たちだった。全員で10人ほどかな? なんでこんな所に子供が……?

 ピューリタンが私たちを見て動揺する子供の1人に声をかけようとした時だった。いきなり右ルートの扉が開き、複数の子供と一緒にクラスタが出てくる。


「クラスタ!?」

「ピューリタン? それにクォットたちも……。なぜここに?」


 それはこっちのセリフのような気もするけど……。ピューリタンがクラスタにこれまでのことを説明する。


「――で、なんでお前はここにいる?」

「私は、研究所で見つけたんだ。私の親衛隊員たちを……」


 クラスタが俯いて言う。よく見れば、目が僅かに赤く、頬には涙の痕があった。


 彼女の話だと、テトラル総帥エリアのすぐ近くまでなんなく行けたらしい。しかし、そこで消えたクラスタ親衛隊の発見した。

 子供たちは8ヶ月ほど前、クラスタが失脚してすぐに“クラスタ将軍がお前たちを呼んでいる”というララーベルのウソに騙されて捕えられたらしい。その数は200人前後。

 捕えられた子供たちのほとんどは人体実験や製薬実験に使われ、死んでいった。生き残ったのは結局60人ほど。

 親衛隊長のツヴェルクという少年だけは他の施設に移送され、そこで連合軍の将校にまでなったが、最終的には殺されたらしい。


 パトラーとクラスタはまだ生き残っていた親衛隊員を全員助け出した。そして、ララーベルのいるテトラル総帥エリアへと向かおうとしたが、そこで例の爆発が起きた。

 ずっと先を先行していたパトラーと後ろにいたクラスタとその親衛隊は、天井と壁が崩れたせいで、引き離されてしまった。


「……という事はテトラル総帥エリアに到達したのはパトラーだけか」


 クォット将軍の顔が曇る。右ルートからテトラル総帥エリアへ行く予定だったが、これじゃもう行くことが出来ない。


「こうなれば人工知能テトラルを破壊するしかない」

「人工知能テトラルを……?」

「そうだ。ここで待ってても仕方ない」

「分かった……。すぐに場所を調べよう」


 クラスタはまだ暗い顔で言う。そりゃそうだ。自分の率いていた親衛隊が、自分のせいで実験台にされたらショックだよね……。

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