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黒い夢と白い夢Ⅰ ――過去の呪い――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第5章 ある女性騎士の台頭 ――封鎖区域テトラル――
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第31話 財閥連合と連合政府

※クォット視点です。

 【テトラル本部要塞 軍用兵器製造工場】


 わたしはベルトコンベアーの影を利用して身を潜める。中は巨大な工場だった。無数のバトル=アルファやバトル=ベータが吊り下げるレーン、ベルトコンベアー、管理用の通路が複雑に入り組んでいた。工場は遥か下まで続いているのか、一番下の床が見えなかった。


「意外ですな。これではもはや、迷路です」

「愚痴を言うなクロノス。一番重要そうな所にハンドボム投げときゃいいんだよ」

「その一番重要そうな所が分からんのだがな」

「……確かに」


 わたしは工場を見渡す。工場内は鉄を溶かしているせいもあってか、かなり温かい。通路には何体ものバトル=アルファが警備をしている。


「ここで立ち止まっても仕方があるない。ひとまず先に進むぞ」

「了解」

「イエッサー」


 わたしは半ば急ぎ足で通路を走って行く。それにしてもここまでの巨大工場とは…… この調子で生産され続けたら我が軍が本部要塞に到着するのはかなりの時間がかかるぞ。

 剣を引き抜く。バトル=アルファ3体が進路方向にいる。彼らが進むのを待っていたら、時間がかかりすぎる。わたしは彼らに近づくと、無言でその細い身体を斬り壊した。


「お見事です、将軍」

「油断するな。まだ敵は無数にいる」


 わたしは近くの吊り下げられたバトル=アルファを見ながら言う。レーンに吊り下げられたバトル=アルファはどこかへと運ばれていく。よく見れば腕がついていなかった。これから腕を取りつけるのだろうか?


[止まれ]

「…………!」


 わたしは来た方向を振り返る。2体のバトル=アルファがいた。いつの間にやって来たんだ。周りの騒音で全く聞こえなかった。

 わたしはハンドガンを素早く引き抜き、その2体のバトル=アルファに向けて撃つ。銃弾は彼らの頭を貫いた。2体のバトル=アルファは火花を散らしながら倒れる。


「ク、クォット将軍、銃火器を使うとマズイかと……。見つかったらどうするんですか?」


 ピューリタンが心配そうに尋ねてくる。わたしはハンドガンの銃口から上がる煙を払いながらそれを腰にしまう。


「たぶん大丈夫だ。銃声も周りのこの騒音に遮られてほとんど聞こえないだろう」

「なるほど……。確かにそうですね」


 わたしは会話もそこそこに走りながら進んでいく。静まり返っていたさっきまでのエリアよりもこっちの方がずっと動きやすい。ただ、突破するのに一番時間がかかりそうなのもここだ。


「しかし、これほどの大工場、世界にいくつあるんでしょうかな?」

「……今確認されているのは、連合政府首都ティトシティとパスリュー本部、氷覇本部じゃなかったか?」


 パスリュー本部は大陸の北西部にある巨大な地下要塞だ。氷覇本部は封鎖区域テトラルの北にある施設だ。ただ、管轄は連合軍とは無関係を主張する財閥連合。

 実際、ここまでの大工場は少ないが、小規模工場なら世界各地無数にある。連合軍の支部なら基本的にはある。


「……そのほとんどが旧財閥連合の施設だ」

[攻撃セヨ!]

「どけっ!」


 ピューリタンが後ろにいたバトル=アルファを撃ち壊す。気がつけばいるから危ないな。ここはここで細心の注意が必要なようだ。

 財閥連合は少なくとも10年以上に渡って軍用兵器や軍用物資を量産し続けた組織だ。そのほぼ全てが連合軍によって使われている。

 連合政府とは無関係を主張しているが、兵器・物資・資金・あらゆる面での技術を提供しているのは間違いなく財閥連合。連合政府を支える8組織中6組織が元財閥連合傘下の組織だ。このテトラルだって元は財閥連合の一部だった。


「2年前、私やクォット将軍がフィルド閣下と共に参加したオーロラ支部の戦いはなんだったのでしょうね」

「……アレはアレで意味があったさ。ムダじゃない」


 パトラーがオーロラ支部で捕まって、最後は戦いになった。だが、兵力ですら勝っていた我々は一夜で財閥連合を打ち負かした。だが、その夜、フィルドは消えてしまった。

 そして、フィルドが望んだように財閥連合は軍用兵器・生物兵器の開発及び製造で組織は解体された――ハズだった。

 だが、解体されて、財閥連合から分離・独立した「テトラル」や「ナノテクノミア」などの大企業はそのまま連合政府に加わり、財閥連合が量産し、隠していた軍用兵器を使って戦争を起こしたのだった。


「それにしても、テトラルやナノテクノミアは財閥連合から連合軍への移籍が早すぎますな」

「……全ての組織が最初からウラで繋がっていたのだから、何も問題が起こるハズがない」


 オーロラ支部の戦いも仕組まれたものだったのかもしれない。我々はあのマグフェルトの手で踊らされていただけか……。


「……ずいぶん複雑に入り組んだエリアですな」

「今の世界と似てるな」

「……なるほど。上手いことを言う」


 わたしはややため息を付きながら言った。世界はあまりに複雑すぎる。この戦争は利権と黒い夢が絡まり合っている。その犠牲となるのは……何も知らない人間だ。一部の人間のせいで、罪もない市民が死んでいく。この戦争そのものに、何の意味があるというのだ……。

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