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黒い夢と白い夢Ⅰ ――過去の呪い――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第3章 価値ある信頼 ――ハーベストフォレスト――
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第22話 連合軍の攻撃

 【中型飛空艇 最高司令室】


 私は最高司令席から旗艦の大型飛空艇プローフィビと通信していた。目の前に映る立体映像はクォット将軍とライト議員の2人。


[ケイレイトは七将軍の1人。連合軍は恐らく首都に護送する前に奪い返そうとするだろう。万が一の時は戦闘に参加せずに、即座に退避しろ]

「はい、将軍」


 そう言うと2人の立体映像は消える。実はケイレイトはこの艦にいる。本来ならクォット将軍の搭乗する大型飛空艇に乗せるのが一番なんだけど、連合軍は彼女を取り返そうと軍を差し向ける。

 その時、連合軍はケイレイトが閉じ込められている艦は旗艦の大型飛空艇と予測するだろう。大型飛空艇が攻撃を受けている間に、私の艦は中型艦2隻を率いて早急に戦線を離脱し、首都へ向かう予定だった。逃げ出したフリをして。


「ミュート准将、トワイラル准将がお呼びです」

「あ、うん。すぐ行くって言っといて」

「イエッサー」


 私は側の机に置いてあったクロスボウという手に持って使う弓を手に取り、最高司令室から出て行く。魔力を固めた矢を飛ばす特殊な武器だ。私はアサルトライフルなどの銃火器を使うのはあまり得意じゃないから、これを使っていた。



 【中型飛空艇 監房エリア】


 私は灰色の扉を開ける。左右に広がる短い廊下。全部で5つの独房が並ぶ監房エリア。入ってきた扉から見て、左右の方にエレベーターがあった。

 私はケイレイトが収監されている独房へと入る。中型飛空艇の独房の扉は薄い青色のシールドで出来ていた。


「トワイラル、どうしたの?」

「ああ、今ケイレイトから聞き出したんだが、封鎖区域テトラルに連合軍のリーダーの1人が常駐しているらしい」

「封鎖区域テトラルに?」


 封鎖区域テトラルはテトラルシティの跡地だ。11年前、財閥連合軍と政府軍の戦いの舞台となり、最後にはミサイルで街そのものが消された。……らしい。

 それ以来、テトラルシティには入れないように、瓦礫の山となった市内は巨大な城壁で囲まれているハズ。


「間違いないの?」

「…………」


 独房のベッドで横になっているケイレイトは無言で頷く。


「……封鎖区域テトラルには軍艦25隻とコア・シップ7隻が停泊している。旧市内中心には連合政府を支える組織の1つ――“製薬会社テトラル”の本拠地がある」


 私はトワイラルの手を引き、独房の外まで出ると、シールドを再起動させ、扉を閉める。


「ねぇ、本当だと思う?」

「俺は間違いないと思う。アイツの部下が封鎖区域テトラルに向かったのは事実なんだ」

「“製薬会社テトラル”ってアレでしょ? ウォゴプルの開発にも携わった組織。そんな組織の本拠地を簡単に言うと思う?」


 トワイラルは少しだけ黙り込むが、すぐに私の方に真っ直ぐな視線を向け、言った。


「調べる価値はあると思う」



◆◇◆



 【大型飛空艇 最高司令室】


「クォット将軍!」


 いきなり部下の1人が声を上げる。わたしは半分ウトウトしていたが、ハッと目を覚ます。すぐに最高司令室の大窓から外を見る。

 真っ暗な空。そこに突如として連合軍の軍艦が姿を現した。魔法ワープで飛んできたのだろう。全部で10隻。


「連合軍の軍艦の艦隊です!」

「全艦、戦闘準備!」

「将軍、攻撃してきましたぁッ!」


 この連合軍の軍艦は異常なほど動きが早い。指揮を執ってるのは人間だ。バトル=アレスやバトル=アテナといった戦術シリーズの機械じゃない。

 10隻の軍艦は素早い動きで瞬く間に我々の艦隊を包囲する。一斉に近くの中型飛空艇を攻撃していく。


「…………?」


 わたしはふとおかしな事に気がつく。連中はこの艦にケイレイトが乗っていると予測するハズだ。なのに、どの軍艦も、わたしの艦を無視している。そして、よく見ればケイレイトを乗せた2号艦以外の艦を攻撃していた。


「クォット将軍!」

「ライト議員!」

「戦況は見ておりますな」

「うむ。連中、何故かこの艦に攻撃を加えぬ。これはどういうことだと思う?」

「考えたくはないですが、明らかに作戦はバレているかと……」

「やはり……」


 なぜ作戦はバレた……? まさか、裏切り者がいるのだろうか? いや、この作戦はわたしとライト議員。ミュート准将とトワイラル准将しか知らないハズだ。

 バレたと判断するのはまだ早いか? ここで、我々が2号艦を守るようなそぶりを見せれば、自ら作戦をバラすようなものだ。


「指揮官はあの子でしょう」

「ライト議員?」

「ケイレイトの事を“ママ”と呼んでいた子です」

「だが、アレはフィルドのクローンだ。本当の親子ではない」


 わたしは戦場と化した空中を見ながら言う。2号艦は作戦通り逃げようとするが、2隻の軍艦が邪魔していて、上手く抜け出せないでいる。他の中型飛空艇も軍艦を相手にしていて救援に行く余裕は全くない。


「ありえないですが、もしあの子が“母親”であるケイレイトの存在を感じ取れるとすれば……」

「まさか、そんなことは……」


 だが、クナはあのフィルドのクローンだから、な。フィルドは魔法を使える。11年前、生体実験にかけられて以来、アイツは……。

 あり得ないとは思う。だが、魔法を操る人間のコピーだ。もしかしたら、魔法の一種でケイレイトの存在を感じ取れるかも知れない。


「将軍! 2号艦に無数のアサルト・シップが!」

「な、なに!?」


 わたしは窓に目を向ける。1隻の軍艦から小さな黒色のカプセルのようなものが2号艦を目がけて落ちていく。その先端は鋭く尖っていた。連合軍のアサルト・シップだ。尖った部分で無理やり飛空艇に突っ込み、突き刺さる。中にはバトル=アルファやベータなどの軍用兵器が30体近く入っている。


「間違いない、作戦はバレている! 直ちに救援に向かうぞ!」

「イエッサー!」


 その時、アサルト・シップを投下していた軍艦と逃げるのを阻止していた軍艦はいきなりこっちに向かって動き出した! 救援の邪魔をしようとしていることは一目瞭然だった。

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