第21話 プランナーの反乱
※プランナー視点です。
【ハーベスト支部要塞 監房エリア】
扉が開かれる。わたしは監房エリアの司令室へと入って行く。中には10体ほどのバトル=アルファがいた。
[止まれ、何しに来た?]
「我々は国際政府と共に生きていきます」
[…………??]
わたしは素早くハンドガンを取りだすと、そのバトル=アルファを撃ち壊した。それと同時に後ろに控えていた4人の兵士達がアサルトライフルの銃口を前に向け、残りのバトル=アルファたちを撃ち壊していく。勝負は一瞬でついた。
「クォット将軍とライト政府代表代行を!」
「はっ!」
4人の兵士が席に付いて操作パネルに触れる。その間にわたしは他の兵士たちと奥の扉を開け、独房が並ぶ廊下へと進んでいく。
薄暗い廊下にはバトル=アルファが何体もいた。わたしと部下たちは、彼らがアサルトライフルを構える間も与えずに撃ち壊していく。
「クォット将軍、ライト政府代表代行!」
「プランナー長官!」
わたしは扉を開け、クォット将軍とライト議員を助け出す。2人とも、危害を加えられたような跡はなかった。
「……信じていましたぞ」
「えっ?」
「あなたは正しい判断をすると思っていました」
「クォット将軍、ライト政府代表代行……!」
わたしは胸を締め付けられたかのような感覚を覚える。目頭が熱くなった。2人はわたしのことを……! つい、涙を流しそうになりながらも、わたしは堪える。今は、まだその時じゃない。
「ケイレイトを捕えるぞ!」
「はっ!」
◆◇◆
【ハーベスト支部要塞 正門】
私は激しい頭痛にフラフラしながらも正門までやってくる。後ろでは撃ち合いが続いている。30体のバトル=アルファじゃすぐに全滅する。急いで逃げないと……!
[ケイレイト将軍、監房エリアの兵と連絡が取れません!]
「そ、そう……」
私は森の方に向かっていた。ひとまず身を隠して、朝になったらクナが率いる軍艦の艦隊が来るはずだから、まずは隠れて……。
だが、私はもう限界だった。頭痛とだるさで、その場に座り込む。銃声が少なくなってきた。もう壊滅したかな……? 私の周りには5体しかいない。本当にヤバい。
[将軍、森はすぐそこです]
「う、うん……」
私はなんとか立ち上がると、真っ暗な森に向かって必死で足を動かす。その瞬間、森の方から銃弾が飛んできた。それは隣のバトル=アルファの頭を撃ち抜く。
森の中から20人ほどの兵士が現れる。白い装甲服に灰色の肩当て。ハーベストの警備軍兵士だっ! おまけに後ろからも兵士がやって来る。私の兵は全滅したのだろう。
「クッ……!」
後ろと前からの挟み撃ち。あっという間に私を守っていたバトル=アルファたちはやられてしまった。彼らは私にアサルトライフルの銃口を向け、完全に取り囲む。
「降伏しろ、ケイレイト」
後ろから1人の男性の声が聞こえてきた。この声、クォットのだ。11年前、テトラルシティの惨劇を止められなかった愚将がッ……!
私はブーメランを捨て、両手を上げる。もはや、降伏するしかなかった。私の立てた作戦は完全に失敗に終わった。
「プランナー、本当に裏切るんですね?」
「ああ、わたしは国際政府につく」
「…………」
ハーベスト警備軍の兵士達が私に歩み寄り、手錠をかける。
「話は聞いたよ。あの時、国際政府は援軍を送ろうとしたそうだ。だが、お前たちがウォゴプルを撤収させた為、援軍の必要がなくなった」
私はぎゅっと拳を握る。そう、彼のいう事は正しい。私は彼にウソをついた。“国際政府はハーベスト地方を軽んじ、援軍を出さなかった”、と。
クォットとライトの2人を捕えるにはそれしかなかった。私はすでに多くの戦いで敗北し、七将軍の地位を奪われそうになっている。なにか大きな手柄を立てなきゃ、連合政府で地位を維持できない。
「クォット将軍、護送の為に呼び寄せた政府軍の艦隊が来ましたよ」
「おおっ、そういえば呼び寄せましたな。艦隊の兵士は我々が捕えられていたこと、知らんでしょうな」
「でしょうね」
空を見る。大型飛空艇1隻に中型飛空艇7隻。そうだ、政府艦隊に連絡を忘れていた。“ハーベスト郡に近づいたらクォットとライトを殺す”と連絡する予定だったんだけどな。
私は兵士に連れられる。ここまで、だ。私の夢は終わる。クナが引き継いでくれるだろうか? ……無理かな? 私がいなくなったら、あの子はどうなるんだろう。
「クォット将軍、ライト政府代表代行! ご命令通り到着しました」
「うむ、これより重要な囚人を送る」
「重要な? ……まさか、あれはケイレイト!?」
「プランナー長官のお陰ですよ」
「…………! ライト政府代表代行……。そんな、わたしはあなた方を――」
「プランナー長官がわたしたちを信じてくれたから、です」
信頼、か。“戦争を操るあの男”にそれはない。人が彼を信頼しても、彼は人を信じない。道具として扱うだけ。たくさんの人間を不幸にしながら……。
クォット、ライト、プランナー。お前たちもあの男の駒に過ぎない。教えて上げようか? 戦争の黒幕を。世界を奴隷人形のごとく扱う男の名前を――。
国際政府総統マグフェルトと連合政府の黒幕パトフォー。2人は“同一人物”って知ってる?




