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黒い夢と白い夢Ⅰ ――過去の呪い――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第3章 価値ある信頼 ――ハーベストフォレスト――
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第20話 選択

※プランナー視点です。

 【ハーベストフォレスト 管理局】


 裏切り……。わたしはかつての友を裏切った。この自然を守るが為に。だが、裏切りは国際政府だって同じだ。ウォゴプルが暴れ回った時、政府軍は援軍を出してはくれなかった。そうだ、だから――裏切りではない。


「連れていけ!」

[イエッサー]


 ケイレイト将軍の部下が声を張り上げて言う。あの子は噂のクローン・フィルドか。生命を作るなど、自然の掟に反しているが……。


「ママ、やったね」

「ん、ああ……」

「プランナー! 連合政府につくとこの森を焼き払われ、連中の機械工場になりますぞ!!」

「そうです! あなたは自然を連合政府に安く売るつもりですか!?」


 クォット将軍とライト議員が叫ぶように言う。バトル=アルファたちはそんな2人を半ば強引に連れて行く。

 わたしは、ただ自然を守りたくて……。連合政府は約束してくれた。連合政府に加盟するならハーベスト地方では全ての軍事活動を行わないと……。


「あのっ、ケイレイト将軍、約束の方は守って頂けるのですよね……?」


 わたしは大きめの石に腰掛けたケイレイト将軍に声をかける。彼女、ここに来る前から体調が悪そうだったが、ますます悪化しているような気がする。大丈夫だろうか……?


「もちろんです……」

「ママ、大丈夫?」

「クナ、ティワード政府代表に、作戦成功の報告を……」

「うん、分かった!」


 クナと呼ばれた女の子は大きめの無線機で通信を始める。青色をした大型の立体映像が浮かび上がる。ティワード政府代表の姿だ。この男が連合政府のリーダーか。昔は政府軍の軍事総督だったんだがな……。


[コマンダー・クナか。作戦はどうなった?]

「成功です、政府代表。クォットとライトを捕えました」

[よし、よくやった。護送艦隊の指揮官としてお前を任命する。これより封鎖区域テトラルに戻り、軍艦10隻を集めよ。そして、クォットとライトを――]


 わたしはチラリと後ろの方を見る。クォットとライトはすでに支部内の監獄に連れて行かれた後だった。いるのは周りを取り囲むバトル=アルファばかり。友はいない。


「ティワード政府代表……」

[これはこれは、プランナー長官。あなたのご決断は誠に素晴らしいものです。あの軍事の良心と政治の良心と悪名高いクォット、ライトの両名を捕えることが出来たのですからな]

「しかし、お二人は誰の目にも善人に御座います。どうか、丁重な扱いをお願い致します」

[もちろんですとも。世界平和の為に使わさせて頂きます]

「…………? といいますと?」


 世界平和……? それなら戦争をやめればいいだろうに。


[クォットは政府軍によって奪われたファンタジア州・クロント州・プレリア州の3州返還の為の人質に。ライトは悪名高き国際政府の政府代表代行ですから処刑でしょうな。本当は彼の娘パトラーも一緒に処刑したところですがな]

「な、なんですと!?」


 わたしはつい大きな声を上げてしまう。2人は本当に善き人なのだ。連合政府の人間ですらそれは分かっているハズ。それを交渉の道具はさておき、処刑するとは信じられん……。


「しかし、2人は」

[黙れ!]

「…………っ! そ、それで、ハーベスト地方での軍事活動は――」

[もちろん、それは分かっておる]

「以前の様なウォゴプルの戦闘実験はなさらないのですね……?」

[…………? お主、何を言っておる?]


 は?


[アレは軍事活動ではない。あくまで生体実験だ。第2ウォゴプルを始め、生物兵器の実験は行う予定だ]

「…………!? 約束が違うでは――」

[黙れ、プランナー! お前は元々は政府元老院議員。その罪は山よりも高く海よりも深い! その罪が咎められぬだけでも幸せに思え!]

「そ、そんな!」

[コマンダー・クナ、お前はすぐに封鎖区域テトラルへ! ケイレイト、捕えた2人の監視と――]


 ティワード政府代表がわたしの方を見る。その視線は決して対等なものではなかった。明らかに見下していた。


[――プランナー長官殿が道を誤らぬようにしておけ]

「は、はい。ティワード政府代表」

「せ、政府代表! 今一度お考え直しを!」

[くどい!]


 通信は一方的に切られた。それと同時にクナは周りのバトル=アルファを引き連れて森の中へと走って行った。確か、森の方に1隻の運搬用の飛空艇があったハズだ。それで封鎖区域テトラルまで向かうのだろう。


「ケイレイト! お前、約束という言葉を知っているのか!」

「そうだ! お前は最初、全ての軍事活動を行わないと言ったではないか!」

「我々がウォゴプルの事を話した時、そんな酷いことはさせないと言ったのはウソだったんだな!」


 わたしの部下である兵士達が声を荒げながら1人残されたケイレイトに詰め寄る。騙された。ティワードは約束を平気で破った。


「あ、いや、それは、私の知らないことで……」

「知らないだと!? お前、自分の発言に責任を――」

「し、知らない、知らない!」


 ケイレイトは逃げるようにしてその場を去る。

 ああ、わたしは道を誤ったのか……。わたしはがっくりとその場に倒れ込む。クォットとライトの顔が浮かぶ。すまないっ。わたしはなんと愚かなことをしてしまったんだ……。


「……プランナー長官、いいのですか?」

「な、なに?」

「ケイレイトの兵はせいぜいバトル=アルファ50体。こっちは250の兵があります。それにケイレイトは幸いにも体調不良。監視は部下がやるでしょう」

「ど、どういう意味だ?」

「分かるでしょう。今ならまだ間に合います」


 わたしは全身から汗が滲み出る。ケイレイトを捕える気だ。


「今、選んで下さい。連合政府か国際政府」

「…………!」


 約束を簡単に破った連合政府。援軍を送らなかった国際政府。どちらか片方を選ぶ。連合政府か国際政府か。


「……お前たち、わたしは――」




















 ――選択の余地なんて、なかった。

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