第15話 過去と現在
※パトラー視点です。
バトル=アレスの額に穴が開き、彼は最高司令席に背をぶつけて倒れる。突き伏せられていようが、発砲は出来るんだよ!
私はバトル=パラディンが怯んだ隙に全身の力を振り絞って無理やり立ち上がる。槍が抜ける。痛みに堪えて立つ。
「……2年前の私なら諦めてずっと倒れていただろうな。所詮、お前たちが持っているのは2年前の私だ」
私はサブマシンガンを握り、残ったバトル=パラディンを睨みつける。2体のバトル=パラディンは血の付いた槍をぐるぐる回しながら私に向かってくる。あの頑丈な鎧はサブマシンガンの銃弾を防ぐだろう。なら……。
「あまり剣は好きじゃないけど……」
サブマシンガンからデュランダルという魔法クリスタルを混ぜ込んで作られた剣を握る。私は片方のバトル=パラディンが突きだした槍を避けると、一気に近づき、その首を斬った。角のあるその頭は濃い灰色をした床を転がり、そのまま最高司令室内の階段を転がり落ちていく。
「よしっ!」
1体壊した。背中も右腕も痛いけど、残り1体壊せば後は楽だ。私は最後の敵と向き合う。槍をぐるぐると回し、私に向かって来る。
だが、その途中で首のないバトル=パラディンとぶつかる。首を失ったバトル=パラディンは槍を回しながら、仲間のバトル=パラディンの胸に槍を突き刺す。
それを受けたバトル=パラディンは彼の腹部に槍を突き刺して、空中に放り投げる。彼は空中で暴れながら、一段下の階層でコア・シップの操作をしていたバトル=コマンダーの押しつぶす。
私は放り投げると同時に首と胴の繋がったバトル=パラディンに近づいていた。そして、バトル=コマンダーが押しつぶされると同時に、私はソイツを真っ二つに斬り壊した。
「……よし」
私は最後のバトル=パラディンを破壊すると(自滅のような気がしてならない)、最高司令室の階段を数段降りて一段下の階層に降りる。
[緊急エラー!]
[緊急エラー!]
バトル=コマンダーたちはコンピューター・パネルがセットされた場から慌てて逃げ出す。私は容赦なく彼らを斬り壊していく。
第2層にいた8体のバトル=コマンダーを破壊すると、私は第3層へと飛び降りる。慌てふためくバトル=コマンダーたちを容赦なく斬っていく。
ふと見れば床にバトル=パラディンの首が転がっていた。遠くではまだ首を失ったバトル=パラディンが暴れて周りのバトル=コマンダーを壊していた。私はその首を挿し壊す。遠くのバトル=パラディンの動きは止まった。
「これで全部……だね」
私は全てのバトル=コマンダーを破壊すると、ガラスで出来た操作パネルに触れ、全ての隔壁を作動させ、更に全ての扉をロックし、艦内の兵員を動けないようにする。
次にこの艦にシールドを張り、軍艦やバトル=スカイ・バトル=デルタの攻撃に備える。これでいい。後は艦をファンタジアシティの指定の位置まで運ぶだけだ。
「こちら、パトラー。作戦は成功」
[了解です。エリアG4-3まで対象艦を運んで下さい]
「イエッサー」
私はコンピューターに目的の座標を入力する。後は自動で運んでくれるハズだ。それが終わると、持ってきたたくさんのハンドボムや小型爆弾を最高司令室のあちこちにばらまく。出て行く時にこれらを爆発させて、最高司令室を破壊する予定だった。
しばらくすると、コア・シップはファンタジアシティの中央市内に到着した。私たちはここでこのコア・シップを破壊するつもりでいた。すでに下には誰もおらず、周囲には無数の銃砲が配備されていた。それだけではなく、中型飛空艇10隻が辺りを包囲していた。
「クロノス! 準備は出来ているか?」
[もちろんです。到着を待っていました]
「よし、始めよう」
私はコア・シップのシールドをカットすると、バトル=パラディンが使っていた槍を起動させる。先端に強い電流を纏わせると、それを窓ガラスに向けて投げつける。槍は刺さり、窓ガラスにヒビが入る。そして、大きな音を立てて砕ける。
私は割れた窓から飛び出すと、脚に付けた小型ジェット機を起動させ、空に飛び上がる(正直、コントロールがしにくいので使いたくないのだが……)。
「攻撃開始!」
[イエッサー! 撃て、撃て、撃てッ!]
墜落予定地の周辺かに配備された銃砲から一斉に砲弾が飛んでくる。それはコア・シップの外殻を破壊していく。
周りの中型飛空艇セルディスからも無数の砲弾が飛んでくる。10隻の中型飛空艇艦隊による総攻撃。コア・シップはたちまち炎と煙に包まれていく。
一方、私は何度かバランスを崩しながらもなんとか1隻の中型飛空艇に乗り込む。周りの兵士が集まってくる。
「大丈夫ですか!?」
「よくご無事で」
「お待ちしておりました」
兵士たちに交じってクロノスが駆け寄ってくる。私は差し伸べられた手を取って立ち上がると、一緒に最高司令室まで走って行く。
最高司令室に入ると、すぐに窓からコア・シップの様子を見る。機体は完全に炎につつまれ、すでにバランスを崩し始めていた。そして、高度を下げ始めていた。
「パトラー准将、もう落としてもよいかと……」
「……そうだな」
私は左腕につけた小型コンピューターを操作する。その途端、コア・シップの最高司令室が爆発し、炎上する。最高司令室に置いてきた起爆装置が爆発し、ハンドボムや小型爆弾をも爆発させたのだろう。
コア・シップは機動力を失い、中のウォゴプルの水色の身体を一部見せながら、市内へと一気に落ちていく。クリスタルの建物にぶつかり、突き刺さりながらも地上へと墜落した。
地上の銃砲部隊と空中の飛空艇部隊はもはや燃える残骸と化したコア・シップに向けて一斉砲撃を加える。完全にウォゴプルの息の根を止めるつもりでいた。
「撃て! 一気にウォゴプルを潰すんだ!」
砲撃だけでなく、飛空艇から戦闘機やガンシップまでも繰り出し、大量の爆弾で爆撃をも加える。何度も轟音と爆音が鳴り響き、コア・シップと墜落現場は完全に炎と煙に包まれていった。
2年前とは違う。過ちの歴史を繰り返さない。私は学んだんだっ――!




