表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒い夢と白い夢Ⅰ ――過去の呪い――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第2章 幻想の師 ――幻想都市ファンタジアシティ――
15/43

第14話 2年前

 【コア・シップ 最高司令室】


 私はロックもかけられていないコア・シップ艦橋の扉を開ける。濃い灰色をした扉は左右に開くと同時に中へと飛び込む。


「動くな」


 中にいたのは1機のバトル=アレスと操縦を行うバトル=コマンダーたちだった。バトル=アレスが私の方向を振り向く。


「残念ながら、ここまでだ」

[フッフッフッ、それはどうかな?]

「…………?」


 えっ?


[お前の性格とこれまでの戦闘データから、お前がこのような作戦に出ることはオーディン将軍が予測しておられた]

「え、えっ!?」

[作戦通り。この女を捕えよ]


 バトル=アレスの横に2体のバトル=メシェディが現れる。更に私の後ろの扉が開き、2体のバトル=パラディンが入ってくる。

 バトル=メシェディは黒い体をした人間型ロボット。バトル=パラディンは頭部の対になっている角を持ち、鋼の鎧を纏った人間型ロボット。その手には槍を持っていた。


「クッ、なんでっ……!」


 私は2丁のサブマシンガンを持ち、銃口をバトル=メシェディに向ける。震えていた。“あの時”の同じ……? 2年前のあの時と……。


[フッフッフ、痛めつけてやれ]

[イエッサー!]


 バトル=メシェディがナイフを片手に走って来る。私は乱射する1体のバトル=メシェディの胸部に無数の銃弾が当たる。だが、それでも倒れはしなかった。

 私は振り上げられたナイフを避ける。しかし、もう1体のバトル=メシェディが私を斬りつけようとする。つい、顔を守ろうと、そのナイフを腕で防ぐ。当然の事ながら鋭い痛みが走り、血が出る。

 だが、私は近づいてきたそのバトル=メシェディの頭に向けて発砲する。そいつの頭部に何発もの銃弾が当たり、火花と煙を上げながら倒れる。


「グゥッ……」


 痛い、痛い……! 斬られた右腕が痛い!

 振り上げられるナイフ。素早くサブマシンガンの銃口を向ける。発砲。銃弾は彼の手を撃ち抜く。ナイフが床に落ちて転がる。

 私はその一瞬の隙を突いてバトル=メシェディに飛びかかり、彼を押し倒す。押し倒すと、その額に銃口を押し付けて発砲した。


「クッ……」


 バトル=メシェディを撃ち壊し、バトル=アレスを撃とうとした時、後ろのバトル=パラディンが槍で私の背中を突き刺した!

 防弾コートをがその威力をほとんど落とすが、それでも確実に私の皮膚に突き刺さった。痛みが走る。クッソ……!


[作戦失敗だ]

「う、るさい……!」


 突き伏せられたまま、バトル=アレスを睨みつける。 同じなのだろうか? これは2年前と同じ事の繰り返しなのだろうか……?































 ――2年前(EF2010年12月)


 あの時は雪の降る日だった。コスーム大陸の北西部に位置する財閥連合の施設での出来事。


「捕えよ! ターゲットは1名!」

「逃がすな!」


 オーロラ支部と呼ばれる施設には財閥連合の極秘データがあった。私はそれを盗み出し、政府首都に戻ろうとしていた。だが、施設から逃げ出す途中、見つかってしまった。


「何としてでも捕えよ!」

「敵は1人だ! 囲んで捕えよ!」


 1人で施設に乗り込んだのはフィルドさんや仲間を死なせたくなかったから。もし、軍を動かして強襲すれば、たくさんの兵士が死ぬ事になる。それが嫌だった。

 厚い雲に覆われ、雪が絶えずに降り続ける暗い上空を見ると財閥連合の軍艦やコア・シップが何十隻も浮かんでいた。軍艦は全部で30隻はあっただろうか。コア・シップも10隻近くある。


「あうっ」


 雪に足を取られ、上手く走れない。私は倒れ込み、顔を雪まみれにする。でも、グズグズしているヒマはない。すぐに敵の兵士が追いついてくる。目の前に転がったサブマシンガンを手に取り再び走り出す。

 もし、戦争になっても勝てた。だが、これだけの大兵力、必ず双方にたくさんの死者を出す事になる。それだけは絶対に嫌だった。結果が見えているのに、殺し合うなんて、私には耐えられなかった。命を無駄に捨てるようなものだっ!


「そこまでよ」

「…………!?」


 私は声のした方を見る。いたのは少女と少年。その後ろには無数の連合兵……。勝てると思った。あと少しで突破できるハズだった。

 だが、最終的に私は負けた。今になって考えたら、あの2人を倒して、包囲を突破できたところで軍艦の艦隊やバトル=スカイに追われることになるのだから、逃げることは不可能だったのかも知れない。





「アタシはフェイシア。財閥連合傭兵部隊の長官さ。この地位を手にする前までは賞金稼ぎをやっていた」


 捕まった後、フェイシアという女性拷問官に出会った。彼女に色々と拷問された。それもつらかったが、彼女は自身が“所有する”少年へのあまりに酷い仕打ちを見させられるのもつらかった。それは私がされた事よりも酷かったかも知れない。

 最終的に政府軍によって施設が強襲され、私は助け出された。だが、少年は助け出されなかった。オーロラ支部の戦いが始まる数日前に彼は施設から去った。財閥連合代表コマンドの命令だったらしい。


「殺した、の……?」


 政府首都に戻った後、それを聞いた。

 コマンドは幼い少年とその姉に酷い命令を下した。グリードシティを強襲させた。それは私も知っていた。2人が負けることも分かっていた。だが、まさか殺されるなんて……。


「まだ、2人とも子供だったのに……!」

「しかし、フィルドさんは2人の即時殺害を求めておいでで……」

「そんな……!」

「まぁ、死体を確認したワケじゃないので、もしかすれば生きて……」


 結局、あの施設で私は何もなせなかった。自分自身は拷問され、私よりもずっとひどい目に合わされた少年は殺され……。私は無力で何も出来ないと分かった瞬間だった。

 そして、それから2か月後、2年経った今も続く世界大戦ラグナロク大戦が幕を開けた。私のしたことは全てムダだった。

 【これまでの流れ】


◆2010年12月

 ・パトラーがオーロラ支部に侵入し、極秘データを盗み出すも、途中で捕えられ、拘束される

 ・女拷問官フェイシアによって拷問される

 ・少年とその姉が首都グリードシティを強襲。失敗に終わる

 ・オーロラ支部の戦いが勃発し、財閥連合の敗北に終わる

 ・フィルドが突如として行方不明となる

 ・財閥連合は解体され、事実上崩壊する


◆2011年

 <<2月>>

  ・世界大戦ラグナロク大戦が勃発


◆2012年

 <<12月>>

  ・政府元老院にて軍事予算追加案が上がる[第3話]

  ・グリードシティで爆破作戦が実行される[第5話]

  ・ファンタジアシティの戦いが勃発[第2章]

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ